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30話 第一歩
しおりを挟む翌日、久美子は店長に昨日の話をした。
「それで家まで送ってもらったの⁈」
「はい…」
「えー、びっくりなんだけど‼︎何話したの?」
「特には…ジスンはチスンを気に入ったみたいでした」
「でもチスンさんは、ジスンがホンユさんとの子供だと思ってるから嫌だったんじゃない?」
「いや…ジスンには優しかったです」
「そっか…なんか複雑だねぇ」
ホンユが店にやって来た。
「パパー」
「ホンユさん」
「これからジスン連れてランチに行っていい?」
「…いいですけど…」
「じゃジスン、ご飯食べに行こうか」
「わーい」
ホンユはジスンを連れて出かけた。
「そういえば明日、ホンユさんの誕生日って知ってた?」
「そうなんですか⁈」
「食事にでも誘えば?それともチスンさんが気になるから嫌?」
「もうチスンとは終わったんです。ホンユさんはジスンのことでお世話になっているし、誘ってみます」
「じゃあ、ジスンは預かるから行っておいで」
「ありがとうございます」
そして次の日の夜、ホンユと久美子はレストランに食事に行った。
今日が誕生日のホンユの携帯はメールや電話がひっきりなしに鳴っている。
「大丈夫ですか?声がかかってるんじゃないですか?」
「大丈夫」
ホンユは携帯の電源を切った。
「誕生日に久美さんと一緒に過ごせるだけで充分だよ。誘ってくれて嬉しいよ。ありがとう」
「日頃のお礼も兼ねて、お祝いしたかったんです。ただ…プレゼント何がいいかわからなくて用意してないので、ここだけでも払わせて下さい」
「ありがとう。でも、ここは俺が払うから」
「そんな、いいです‼︎誕生日くらいは私に払わせて下さい」
「これ飲んだら次は10万のシャンパン頼んじゃうけどいいの?」
「…え。それはちょっと…」
「それにプレゼントは別にもらうから、ここは俺に払わせて」
「…は、はい、じゃあ」
その頃、店長は仕事が長引き20時を過ぎても店にいた。
「お腹すいたよぉ~」
「ごめんね~ジスン、もうちょっと待ってね」
店の片付けをしていると、店長の携帯が鳴った。
「もしもし?お母さん、どうしたの?」
店長が電話で話していると、ジスンが店の外に出て行った。
「え⁈お父さんが⁈わかった、すぐ行く!」
お父さんが倒れて病院に運ばれたと聞き慌てる店長は、ジスンがいないことに気づいた。
「ジスンー、どこー?」
店中探してもジスンは見当たらない。
え…いない…どうしよ…まさか外に⁈
店の外に出ると、暗い中停まっている車の前に男性と子供がいた。
近づいて確認すると、ジスンとチスンだった。
「ジスン!!チスンさんも⁈え…どうして⁈」
「店長さん!ちょっと通りかかったら子供が1人で外にいたので…こんな時間に危ないから降りて見てみたらジスンだったから驚きました。店長さんもどうしてここに?」
「私、そこの店で働いてるんです。クミちゃんも一緒に働いてるんですけど、今クミちゃん出てて…私がジスンを預かってるんです」
「そ、そうでしたか」
店長はジスンを見つけてホッとすると同時にお父さんのことを思い出した。
「あーっ、どうしよう」
「どうしたんですか?」
「父が倒れて病院に運ばれたみたいで…今から行かなくちゃ」
「えっお父さんが⁈では送りますよ!」
「いいんですか⁈あー、でもジスンどうしよう…」
「クミは遅くなるんですか?」
「た、多分…」
「じゃあ僕の家で預かりますよ」
「助かります。本当にいいんですか?」
「はい。だから安心して下さい。早く病院に行きましょう」
「ありがとうございます」
店長を病院に送り届けたチスンは、ジスンをマンションに連れて帰った。
「うわー!お兄ちゃんのお家広ーい!」
「ジスン、お腹空いたでしょ?」
「うん。お腹すいたよー」
「何か作るからちょっと待っててね」
「うん」
チスンはオムライスを作ってあげた。
「ジスン、おいしい?」
「うん。すごくおいしい!」
「よかった」
食べ終わったジスンは、チスンにベッタリくっついて離れない。
チスンはそんなジスンを見て、例えホンユの子でも可愛くて仕方がなかった。
「ジスン、1人でお風呂に入れるのかな?」
「1人じゃ入れない。いつもママと入ってるもん」
「そっかぁ…」
「お兄ちゃんと入りたいっ」
「じゃあ一緒に入ろっか」
「うん‼︎」
その頃…何も知らない久美子とホンユは、食事を終え散歩がてら歩いているとホンユが手を繋いできた。
久美子が離そうとすると、ホンユが立ち止まった。
「俺のこと嫌じゃないなら離さないで」
「ホンユさん…」
「あーっ、もう…この前俺のことゆっくり考えていいからって言ったのに…欲が出ちゃうな~」
「ホンユさんは嫌じゃないんですか?ジスンはチスンとの子供なんですよ」
「うーん…でも久美さんの子供だから」
「ホンユさんはモテるだろうし、わざわざ子持ちの私じゃなくても…」
「久美さんじゃなきゃダメなんだ。だからゆっくりでいいって言ったけど、早く俺のこと男として好きになって欲しい…」
久美子は何も言えなかった。
「誕生日プレゼント…今欲しい。いい?」
「え…何ですか?」
ホンユは久美子を抱きしめた。
「ホ、ホンユさん…?」
「久美さんを抱きしめたかった」
そう言うと力いっぱい久美子を抱きしめる。
「俺のこと前向きに考えて…お願い…」
ホンユの勢いに久美子は思わず頷いた。
お互いの家が逆方向なので、2人は別々のタクシーで帰った。
久美子はジスンを迎えに店長の家に向かった。
家に着き、チャイムを鳴らすが出て来ないので、店長に電話をかける。
「もしもし店長?遅くなりました。今、家の前ですけど」
「あっ、クミちゃんごめん‼︎父が倒れて、私今は病院にいるのよ」
「えっ!お父さんは大丈夫なんですか⁈」
「うん…血圧が急に上がったみたいで。2~3日入院すれば大丈夫みたい」
「そうですか…大変でしたね」
「う、うん…」
「それじゃあ、ジスンを迎えに行きます」
「…それが」
店長は久美子にチスンのことを話した。
「えっ…じゃあジスンは今、チスンの家にいるんですか⁈」
「うん…もっと早く伝えておくべきだったけど、病院に着いたらバタバタで…ごめんね」
「どうしよう」
「そっか…連絡先知らないんだよね」
「私、今からジスン迎えに行って来ます」
「本当にごめんね。とりあえず明後日まで店は閉めるから、ゆっくり休んで」
「わかりました。店長もお父さんについていてあげて下さい」
久美子は再びタクシーに乗り、急いでチスンのマンションに向かった。
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