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31話 思い出の場所
しおりを挟むその頃、眠そうにしているジスンをベッドに寝かせたチスンは、となりでジスンを見つめていた。
「ママは~?」
「迎えに来るから寝てていいよ」
ジスンは気持ちよさそうに眠った。
本当に可愛い顔してるな…
ホンユには似てないな…
クミに似てるのかな…
23時を回りチスンも眠りにつきそうになった頃、チャイムが鳴った。
玄関のドアを開けると久美子が立っていた。
「ごめんなさい。ジスンを預かってくれてたみたいで…」
「入って」
「う、うん」
リビングにはジスンの姿はない。
「俺の部屋で寝ているよ」
寝室に行くとジスンはぐっすり眠っていた。
「ごめんね。直ぐ連れて帰るから」
久美子がジスンを抱え上げようとすると、チスンが引き止めた。
「気持ちよさそうに寝てるのに可哀想だよ。もうちょっと寝かせてあげよう」
そう言うとチスンは久美子をリビングのソファーに座らせた。
一緒に暮らしていた頃と全然変わってない部屋に、久美子は懐かしさを感じた。
「驚いたでしょ?俺がジスン預かってたから」
「うん…本当にごめん。私がもっと早く帰っていれば…」
「ホンユといたの?」
「…うん」
「そっか…ホンユがちゃんといるのに、なんだかシングルマザーみたいだね」
「それは…そ、それよりチスンは何で美容室の近くにいたの?」
「ちょっとクミに聞きたいことがあったから、家まで行こうと思って店の前を通っただけ。この前送った時に通ったから」
「そうなんだ…」
「ごめん。連絡先も知らないから」
「う、うん。聞きたいことって?」
「もういいよ」
「何それ…」
「ところでジスンって今3歳なんだね」
「うん」
「今年で4歳か…」
「うん」
「俺たちも別れて3年…」
「…そうだね」
うつむく久美子の横顔をチスンはじっと見ていた。
沈黙が続き、部屋の中には重たい空気が流れていた。
「そういえば店長のお父さん大丈夫だったの?」
「血圧が急に上がったみたいで…2~3日入院したら退院出来るみたい」
「そっか。よかった」
ジスンが起きて来た。
「ママー」
「ジスン、起きたのね」
「お兄ちゃん」
ジスンはチスンに寄り添い、手を握る。
「ジスンは俺の手が気に入ったのかな」
「そうみたい…ジスンそろそろ帰ろっか」
「えー、イヤだー。お兄ちゃんといたい!」
「ダメよ。帰るよ、ジスン」
久美子がジスンの手を引くと、ジスンが泣き出した。
「明日の朝送ろうか?今日は俺、ビール飲んだから送れないし。明日仕事は何時から?」
「仕事は一応、明後日まで休みだけど…」
「じゃあ泊まって行きなよ。もう遅いし」
「え…でも」
「客室空いてるから使って」
「ママ、ここに泊まりたい‼︎」
「ジスン、お兄ちゃんの家に泊まって行くか?」
「うんっ!」
ジスンは嬉しくてはしゃぎ出す。
「ありがとう…じ、じゃあ明日の朝…帰ります」
「じゃ俺は部屋に行くから、客室好きに使って」
自分の部屋に行こうとするチスンの後をジスンがついて行く。
「ジスン、私たちはこっちよ!」
「お兄ちゃんのベッドがいい!」
「わがまま言わないの!」
「アハハ。じゃあ俺が客室で寝るから、2人は俺の部屋で寝ていいよ」
「ちがうー!お兄ちゃんとママと一緒に寝るのー!」
「えっっ?」
「な、何言ってるのよ!」
ジスンは久美子とチスンの手を引っ張りながら、チスンの部屋に行く。
「ちょっ、ちょっとジスン‼︎」
「ママー、早くぅー」
「ジスン、ダメだってば」
久美子に言われたジスンは、今にも泣き出しそうになる。
「じ、じゃあ…3人で寝るか」
「わーい!」
3人はジスンを間にし、ベッドに入った。
ジスンは安心したのか、直ぐに寝てしまった。
ジスンを間に2人はお互い向き合っていた。
「懐かしいでしょ、このベッド」
「…うん」
「まさか、またクミと同じベッドで寝るとは思わなかったよ」
「チスン…」
「ん?」
「色々と…ごめんね」
「謝らないで…」
チスン…そんなに優しく言わないで…
「クミ、本当に…」
「え?」
「いや…何でもない…」
チスンは、自分と付き合っている時からホンユとそういう関係だったのか聞こうとしたが、心のどこかで久美子を信じていたので聞けなかった。
そして2人はいつの間にか眠りについた。
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