真実【完結】

真凛 桃

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41話 ジスの接近

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5日後、チスンのドラマ撮影の初日。
現場で台本を読んでいると、不倫相手役の新人女優ジスがチスンの元に来た。

「チスンさん、おはようございます」

「おはよう」

「私、ドラマ初めてなので、足を引っ張らないように頑張ります」

「うん」

「チスンさん、今日の撮影が終わったら飲みに行きませんか?」

「ごめん。2人だけではちょっと…」

「あ…チスンさん、ガード固いって聞いたことあります」

「彼女いるから。だから飲みに行かない」


え…彼女がいる…?

「そ、そうなんですねっ。2人きりではダメなんですね。分かりました」


撮影の時間になり、2人のシーンが始まった。


『このままどこか遠くへ行きたい…』

『へウォン…』

『私…もう全部捨てていい…貴方さえいてくれたら』

『僕も同じ気持ちだよ…愛してる…』

『私も…』

2人は抱き合いキスをする。


え…

ジスは濃厚なキスをしてきた。
チスンは口を閉じようとするが、ジスが抵抗する。
チスンは我慢し、ようやく長いキスが終わった。

「カーット‼︎いいねー‼︎よかったよ‼︎」


「監督、今のシーン編集して短く出来ませんか?」

「何言ってるんだ!今ので行くぞ」


不満を感じたチスンは、お手洗いにうがいをしに行った。

休憩時間になるとチスンはジスの控え室へ行った。

「ジスさんさっきのシーンだけど、あそこまでしなくていいから。今後は俺に任せて」

「は、はい…わかりましたっ」



19時を回り撮影が終わると、共演者のヒョルビがチスンの元へやって来た。

「チスン!飲みに行くぞ!」

「今から?」

「ジスさんが皆んなで飲みに行きましょうって。初めてのドラマだから色々聞きたいこともあるんだろ」


2人では行かないって言ったからか…

「シナも行くから…4人で行くぞ!」

「わかった…」

チスンは久美子に遅くなることをメールで伝え、ヒョルビと女優のシナ、相手役のジスの4人で飲みに行った。

店に入ると、ジスはチスンの隣に座って来た。

「今日のチスンとジスさんのキスシーンすごかったんだけど」

「私も思った!台本はあんな濃厚なキスじゃなかったよね?」

「すみません。私のせいです。気をつけます」

「チスンに彼女いないからいいけど…」

「そうだよな」

「俺、彼女いるよ」

「えーっ!彼女いるの⁈」
 
「今回の撮影が全て終わったら結婚する」

「えーっ!そうなのー⁈」

「いつからいるんだよ⁈」

「元カノだよ…」

「私、それも知らなかった…」

「やっぱりチスンはスゲーわ。よくバレずにいたな。でも自分で言っちゃっていいの?」

「構わないよ」

「へ~、チスンが結婚かぁ~」

「今度彼女に会わせろよ」

「私も会ってみたい!」

「私も…お会いしたいです…」

「…そのうちね…」

「ところで、ジスさんは何でこのドラマのオーデション受けたの?」

「そ、それは…チスンさんのファンだからです♡」

「え…」

「それで…受けたの?」

「よかったじゃん!相手役になれて」

「はい♡」


「ところでヒョルビの奥さんは、ヒョルビのラブシーン観ても平気?」

「え?俺の奥さん?そうだな、今はもう慣れたみたいだけど…結婚当初は口聞いてくれない時もあったな」

「そ、そうか…」

「彼女のことだろ?そりゃーお前のラブシーン観たら嫌だろうな」

「そうだよな。だから観ないとは言ってたけど…」

「そういえば疑問だったんですけど、ヒョルビさんとシナさんにはベッドシーンがあるのに、私とチスンさんには何でないんですか?」

「それは監督に聞かないとわからない」

「俺が…ベッドシーンがない条件でこの仕事を引き受けたからだよ」

「私は全然よかったのに…」

「ジスさんがよくてもチスンがダメなの‼︎」

「…は…はい」

「シナ、落ち着けって。そういえば来週休みあるよね?どう?チスンの彼女呼んで飲み会しないか?」

「いいね~」

「それなら、家来る?」

「彼女呼んでくれるのか?」

「一緒に住んでるから」

「一緒に住んでるの⁈」

「何だよ、じゃあチスンのマンションに行くよ!」

「うん、行こう行こう!」

「ジスさんも行く?」

「…はい」

「彼女の前ではドラマの話はナシでね!」

「わかってるよ」

「もちろん。ジスさんもわかってるよね?」

「…わかりました」


4人は店を出て、それぞれ家に帰った。


「ただいまー、クミ!」

「おかえり。あんまり飲んでなさそうだね」

「うん。今からクミと飲み直す!」

「やったー」

チスンはジスンの寝顔を見に行き、リビングに戻ってきた。


「あのさ、来週月曜なんだけど。共演者がクミに会いたいって言うから家に呼んだよ」  

「そうなんだ?私の知ってる人?」

「2人は知ってると思う。ヒョルビとシナ」

「ヒョルビとシナ⁈えっ⁈共演してるの⁈えー!すごい!緊張しちゃうけど楽しみだなー!」

「よかった。もう1人は新人だから知らないと思う」

「じゃ、3人来るのね。私のこと話したんだね」

「うん。言っちゃダメだったかな?」

「ううん。嬉しい‼︎あ、でも…ジスンはどうしよう。さすがにジスンのことは言ってないでしょ?」

「言ってない…ジスンも紹介しよう」

「いや、ジスンは店長に預かってもらおうかな。結婚するまでジスンのことは話さないようにしよ」
 
「う、うん…クミがそうしたいなら」    

「それから、今日お客さんにコレもらった」

「何これ?」

「すごいみたいよ!」

「せ、精力剤⁈え…飲め…ってこと?」

「飲んでみて♡」


無理矢理飲まされたチスンは、この日朝まで寝付けなかった。





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