真実【完結】

真凛 桃

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48話 混乱

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チスンが家を出てホテル生活の3日目、ドラマの宣伝の為に共演者と顔を合わせることになった。

宣伝が終わり、久しぶりにみんなと話す。


「チスン、最終日以来だな。打ち上げにも来なかったし」

「そうだね。チスン…何だか元気ないね」

「…そうかな」

「しかし、ジスさんには驚いたよ。見た目と違ってやることスゴいよな」

「ただの安売り女よ。チスンは何も知らなかったのよ」

「その話はやめよう。思い出したくない」

「チスン…」

「そうね。やめましょう」


噂をしているとジスが現れた。


「お久しぶりです」

チスンは顔を逸らし、その場を離れようとした。


「チスンさん‼︎」

そう言って立ち上がったジスの手元から携帯が落ちた。

チスンは立ち止まり、ジスの携帯を拾うと待ち受け画面の写真が目に入った。


ジスは慌てて、チスンの手から携帯を取った。


「え?今のは…」


チスンはジスから携帯を取り上げて、再度画面を見て驚いた。


「え⁈何これ?何で俺が…ここって釜山のホテル?何?どういうこと⁈」

「そっ、それは…その…」

「それに何でジスさんが一緒に寝てるの。しかも2人とも裸じゃないか…」


チスンは頭が混乱し、何度も写真を見返した。


「お、覚えてないんですか?チスンさん酔ってたんですね…」

「全然酔ってないし。それにあの日ジスさんは、俺から追い出されたって言ってたよね?」

「そ、それは…えっと…あの日の夜のことが恥ずかしかったから…それに…それに…」


ジスは次の言葉が出てこなかった。


「俺は何があっても、クミ以外の人には手を出さない‼︎」


ヒョルビとシナは黙って聞いていた。


「ジスさん、俺に何をしたんだ⁈」

「そんな…ひどいです…」

 
ジスはもう何も言えず、走り去って行った。


「チスン!あの女に何かされたの⁈」

「携帯に何が写ってたんだ?2人とも裸って」

「あの女はチスンを狙ってるのよ‼︎そういえばドラマのDVD、ジスさんがチスンのマンションに届けたでしょ?何もなかったの?」

「え?ジスさんが家に届けたの⁈」

「チスン、知らなかったの?久美子さんに会いたいからって、あの女が持って行ったみたいよ」


まさか…


「ごめん。俺、先に帰るわ」


チスンは急いで3日ぶりにマンションに帰った。

玄関を開けるとジスンの泣き声が聞こえ、慌ててリビングに入ると久美子が苦しそうにうずくまっていた。


「パパーッ!ママが、ママがぁ‼︎」

「クミ‼︎どうした⁈」

「お腹が…お腹が痛い…」

「お腹が⁈」


チスンは久美子を抱きかかえ、急いで病院に連れて行った。


「パパ、ママは大丈夫?」

「うん…大丈夫だよ」


チスンとジスンが待合室で待っていると、説明があるからと先生に呼ばれた。

「クミは…クミは大丈夫ですか⁈」

「大丈夫です」

「…お腹の子…は?」

「お腹の子も大丈夫ですよ!」

チスンはホッとした。

「何かありましたか?大きなストレスが原因と思われます。まだ安定期に入っていないので、精神的にも気をつけないと流産しますよ。今日は念の為入院して、明日は帰って大丈夫です」

「…わかりました」 


俺のせいだ…
俺のせいでクミは…

チスンは自分を責めた。


しばらくして、久美子の病室に行った。


「ママーッ」

「ジスン…」

「クミ…大丈夫?」

「私は大丈夫…お腹の子は…?」

「大丈夫だよ」

「よかった!!」


久美子は久しぶりに笑顔を見せた。


「ママ、お腹はもう痛くない?」

「うん、大丈夫よ。心配かけてごめんね」

「よかった!パパも帰って来たから嬉しいな」


ジスン…

チスンはジスンを抱きしめる。

「ジスン…ごめんね」

「パパ…ずっと一緒にいてね」

「うん…」

「ジスン…」


「クミ…まだ俺の顔見たくないよね?」

「、、、、」

「そりゃ見たくないよね。俺のせいで何もかもごめん。帰ったらゆっくり話したい…」

久美子は黙って頷いた。


この日、ジスンは久美子とベッドで眠り、チスンは1人待合室で、釜山での出来事を振り返り思い出していた。









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