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64話 声だけでも
しおりを挟む久美子はチスンに電話をかけても繋がらないので、ホンユに電話をかけた。
「ホンユさん?チスンから何も連絡ないんですか⁈」
「久美さん…」
「携帯、何度かけても繋がらないんです」
「…それは…」
「何か知ってるなら言ってください‼︎知らないならチスンのマネージャーさんの番号を教えて下さい!」
「番号は…知らない」
「じゃあ、どうすれば…」
「ちょっと待ってて。そっちに行くから」
ホンユは急いでマンションに行った。
「久美さん」
「ホンユさん…何か知ってるんですね?」
「チスンは…アメリカに行ったよ」
「え…アメリカに⁈」
「マネージャーも一緒だから」
「どっ、どうして…」
「久美さん…チスンは久美さんとジスンを悲しませたくないんだと思う。理由は分かるよね?1番のチスンの願いは、久美さんとジスンが元気でいることだから。チスンの気持ちも分かってやって。」
「で…でも」
「辛いのは分かる…でもチスンはもっと辛いんだよ」
その言葉が久美子に突き刺さった。
その日の夜、久美子はジスンとお腹の子、そしてチスンの為に気持ちを切り替えようと決めた。
チスンは必ず生きて戻ってくる…
そう信じればやっていけると思った。
それから久美子は毎日教会に行き、チスンのことを祈った。
そして、チスンが出て行って5ヶ月経ち、久美子は安定期に入った。
その頃、アメリカにいるチスンは食欲もなくなり症状が悪化していた。
そんな中、マネージャーは諦めずに必死で手術してくれる医者を探していた。
「マネージャー…これ受け取って」
「なっ、何ですか?」
見ると、結構な金額の小切手だった。
「これは…?」
「マネージャーには本当お世話になったから」
「何言ってるんですか⁈受け取れません‼︎」
「俺はもう長くなさそうだし、先に渡しておくから受け取って。これから必要でしょ」
「すみません…受け取れません!」
そう言うと、マネージャーは自分の部屋に戻って行った。
その日の夜、チスンは寝つけなかった。
もう自分で長くないと感じたチスンは、急に久美子の声が聞きたくなり、携帯を手に取った。
携帯を変えたが、久美子の番号を覚えていたチスンは何度もかけようとして手を止めた。
向こうは今、早朝だから寝てるかも知れない…
でも…やっぱり声だけでも最後に聞きたい…
そして、思い切って電話をかけた。
「…もしもし?」
ク…クミ…
「もしもし?どちら様ですか?」
チスンは声が出なかった。
「…チ、チスンなの?」
え…
「チスンなのね⁈」
「クミ!!」
「チスン!!元気にしてるの⁈」
「…うん。クミは?」
「うん…」
チスンは久美子が泣いているのが分かった。
「クミ…ごめんね」
「ううん…チスンが元気ならよかった」
「もう安定期だよね?体調は大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ…それよりチスンは?自分の体はどうなの?」
「大丈夫ならよかった…俺も大丈夫だから…」
「本当に?ちゃんとご飯食べてる?ちゃんと病院には行ってるの?」
「…うん。ジスンは元気にしてる?」
「うん。ジスンは強くなったみたい…」
「そっか」
「…会いたいよ」
クミ…
俺も会いたい…
会って抱きしめたい…
チスンは気持ちを押し殺した。
「チスン?」
「えっ?」
「チスンは会いたくないの?」
「…ごめん。ちょっと声聞きたかっただけだから…もう切るよ」
「ちょっ、ちょっと待って!!」
「えっ?」
「非通知でかけてきたでしょ?携帯変えたなら番号教えて!」
「…ごめん。クミ…」
「チスン!」
「元気で…」
「チスン‼︎チスン‼︎切らないでっ!!」
そのままチスンは電話を切った。
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