Pure love 〜純粋な恋愛〜【完結】

真凛 桃

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6 気持ちの変化

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陸はそのままA社に向かった。
A社に着くと陸はシートベルトを外した。


「どうしてA社に…」

「お前は車にいろ。そう言えば昨日ちゃんと運んでくれたんだよな?」

「…はい」

「あ…ありがとう。誰かに手伝ってもらったよな?」

「、、、、」

「じゃ行って来る」


陸はA社に入り社長室に行った。


「佐田くん、体調は大丈夫なのか?」

「えっ…はい。どうしてそれを」

「昨日、大村くんから聞いたよ」

「あ…そうですか。申し訳ございません。昨日は自分も運ぶつもりだったんですが」

「それはいいが、大村くん大変だったぞ。君の会社は手伝ってくれる人もいないのか?あんな量を1人で運ばせて…」

「えっ、1人で運んだんですか⁈」

「ああ。知らなかったのか?」

「はい…じゃ時間がかかりましたよね…」

「佐田くん…タグのことも聞いてないのか?」

「タグ?」

「大村くん、何も言ってないんだな」

「どういうことです…か?」


その時、陸はタグを付け忘れていたことを思い出した。


えっ…まさか…


「すっ…すみませんっ。タグ付けてませんでした」


陸は慌てて床に膝を付いた。


「顔を上げなさい」

「いいえ。何とお詫びしたらいいか…全て私の責任です」

「その責任を大村くんが取って果たしてくれたよ」

「…え?」

「朝までタグ付けしてたよ。おかげでギリギリ間に合ったよ」

「おっ…大村が…1人で…ですか?」

「ああ。あれだけの量を1人でやってしまうとは…さすがに心打たれたよ」


だから…朝も…アイツ…


「一睡もせずに慌てて会社に行ってたから大村くんも疲れてるだろう。今日は早く帰してあげなさい」

「…はい」

「いい部下を持ったな。うちが引き抜きたいくらいだよ。大村くんを大事にしろよ」

「…はい」


そんなことがあったとは何も知らずに和のことを冷たくあしらった自分に対して陸は恥ずかしく腹が立った。


陸が車に戻ると助手席に座っている和は眠っていた。
陸は静かに運転席に座ると大村の頭を撫でた。


オレのせいで…
大村…キツく言ってごめんな…
ありがとう…


陸は和を起さずに取引先2件を1人で回り、この日の仕事は終わった。

そのままマンションに着くと陸はしばらく和の寝顔を見ていた。
すると和が目を覚ました。


「ん…」

「起きたか」

「えっ…僕いつの間に…今何時ですかっ」

「18時だよ」

「えーっ…C社とD社は…」

「行って来たよ」

「すっ…すみませんっ」


和は何度も謝った。


「いいから。ほら、マンション着いたぞ」

「あっ…はい…」

「オレは行くとこあるから」

「わかりました。本当にすみませんでしたっ」

「あっ…大村くんって何号室だっけ?」

「…602です」

「あっ…そうだったね。じゃ…」


和を降ろすと陸はそのまま車でスーパーへ行った。


40分後、スーパーの袋を持った陸は602号室のチャイムを鳴らした。

玄関のドアが開くと濡れた髪の和が出て来た。


「えっ、先輩っ」

「あっ…風呂入ってた?」

「あっ…はい。今上がったとこです。どうしたんですか⁈」

「晩メシ食べた?」

「いいえ…まだですけど」

「鍋しない?材料買って来たから」

「えっ」

「何か鍋が食べたくなってさー。1人では寂しいから。イヤ?」

「いいえっ。僕も鍋食べたいですっ」

「よかった。鍋とカセットコンロある?」

「ありますっ。どうぞ上がって下さい」

「お邪魔しまーす」

「汚い部屋ですが」


リビングに入るときちんと片付いていて、いい匂いがした。


「オレの部屋と同じ造りだよね…何だこの違いは…」

「僕も手伝いますっ」

「いいよ。切るだけだから。勝手にキッチン使わせてもらうよ。大村くんは髪を乾かしておいで」

「そっか。濡れたままだった…わかりましたっ。土鍋は…ここに置いておきますねっ」


しばらくして出来上がった鍋を2人で囲んだ。


「うわー!美味しそう」

「食べよう」

「はいっ。いただきまーす」


昨夜から何も食べていなかった和は慌てて口に運んだ。


「熱っ」

「ゆっくり食べろよ。火傷するよ」

「はい…あっ、先輩…ビールでいいですかっ?」

「あ…やめとく。これ食べたらすぐ帰るから」

「え…どうしてですか?」

「それは…大村くん疲れてそうだし」

「あ…すみませんでした。仕事中に眠ってしまって…遅刻もするし社会人として失格ですよね…」


どうして話さないんだ…
オレに気を使ってるのか…?


「僕は疲れてませんのでビール飲みましょう」


和は冷蔵庫からビールを2本取り出した。


「先輩っ、どうぞ」


和はビールをグラスに注ぎ、陸に渡した。


「あ…ありがとう」

「先輩…もう2度と遅刻なんかしないし仕事中に眠ったりなんかしません。だから先輩…僕を見捨てたりしないで下さい」

「…見捨てるなんて…」

「僕…先輩の下で頑張りたいんです…」


聞いてられなくなった陸は我慢の限界だった。


「どうして話さないんだ?昨日のこと」

「え?」

「A社の社長から聞いたよ。今日の朝までタグ付けしてたんだよな?オレが付け忘れたせいで…」

「そっ…それは…」

「なのにオレは…何も知らずに…本当ごめんな」

「先輩っ、大丈夫ですから。意外とタグ付け楽しかったですよっ」

「そんな訳ないだろ。あんな量を1人でやるなんて。どうして誰にも言わなかった?」

「それは…」

「部長に話せば人を寄越してくれたはずだ。どうして部長にも話さなかった?」

「それは…話したら先輩が酷く叱られるから黙ってろって…」

「誰が言ったんだ?」

「、、、、」

「もしかして…広川か?」

「…はい」


アイツ…自分が手伝いたくないからワザと…


「怒ってます?広川先輩は先輩のこと心配して黙ってるように言ったと思います」

「アイツはそんなヤツじゃないよ。今後はアイツの言うこと聞かなくていいから」

「…はい」

「1つ聞いていい?」

「何ですか?」

「どうしてそこまでした?あの量を間に合わせたなんて…休まず手を動かしてたんだろ?オレに連絡すればよかったのに」

「…それは…」

「でも、ありがとう」

「はっ…はい」

「あ、もう煮えてるよ。食べよう」

「そうですねっ」


和は箸で掴もうとすると手首に痛みが走りうっかり箸を落としてしまった。


「あっ」

「どうした?」

「いいえ、何でもないですっ。滑っちゃって」

「ちょっと手首見せて」

「えっ」


陸は和の手首を掴んだ。


「痛っ」

「これって…ずっと作業してたからだろ⁈」

「ち…違いますよー。先輩が強く掴むからっ」

「強く掴んでないけど…」


タグ付けのせいで和は手首を痛めたと陸は確信した。
陸は和を抱きしめたくなったが我慢した。


大村が女だったら抱きしめたいくらいだ…


〆に雑炊を作り、和は左手でスプーンを使って完食した。


「じゃ…そろそろ帰るよ」

「すみません。後片付けまでしてもらって…ご馳走さまでした。美味しかったです」

「うん。じゃ…ゆっくり休めよ」

「はい。あっ…先輩っ…」

「何?」

「さっき、どうしてそこまでしたんだって僕に聞きましたよね」

「…うん」

「先輩の為です」

「え」

「先輩の為だからあそこまで出来たんです」


大村…


「だから今回のことは部長にも黙ってます。先輩も黙ってて下さい」

「…どうして」

「先輩が怒られてるとこ見たくないから。誰にでも失敗はあるでしょ?それにもう解決したんだからいいでしょ」


和の可愛い笑顔を見て陸は変な気持ちになった。


「じゃ、おやすみなさい」

「大村っ…」

「えっ…大村…?」


初めて陸に呼び捨てされて和は嬉しかった。


「あのっ…明日オレの車で会社に行こう。いや…その次の日も…これからは一緒に出勤しよう」

「えっ…いいんですかっ⁈」

「あ…ほらっ…どうせ同じマンションだし。交通費も浮くだろっ?」

「先輩っ…ありがとうございますっ‼︎」


和は嬉しさのあまり陸の手を握った。


「じ…じゃ、また明日なっ」

「はいっ、また明日っ」


陸は和の手を離し足早に帰って行った。


なっ…何でオレは…一緒に出勤しようなんて言ったんだ…
それに…何だ…この胸の高鳴りは…
顔もなぜか熱いぞ…
風邪がぶり返してるのか…?
今日は早めに寝よう…


陸はこの時の変な気分が何なのか気付いていなかった。








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