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第2章
59話 約束
しおりを挟む専務を除いて全てを取り戻した地曽田グループは順調に回復し完全に立ち直った。
「柳本グループの取引先も奪ったし、後は会社を買い取るだけですね」
「うん。破産するのも時間の問題だろう」
「そうですね。どこも融資してくれないだろうし。それより明日は日曜ですけど、さすがに休んで下さい。ずっと休んでないですよね」
「うん。そうする」
その頃、裕二は専務を怒鳴り散らかしていた。
「おい!何で取引先がなくなったんだよ‼︎どう考えたっておかしいだろ‼︎」
「社長自ら聞きに行ってみてはどうですか?」
「言われなくてもそうする‼︎お前には任せられん‼︎」
そう言うと裕二は長年の取引先だったM社へ行った。
「柳本社長っ…お久しぶりです」
「今日、私が来た理由わかりますよね?」
「…はい」
「どうして急に取引き止めたんですか⁈」
「それは…ちょっと別の事業をする事になって…すみません」
「別の事業?」
地曽田グループと取引きを始めた事を柳本グループには知られないよう、シュンから口止めされていたのだ。
「詳しくは言えませんが…すみません」
裕二はその後も取引先だった会社に行ってみたが、全社とも断りの理由はバラバラだった。
会社に戻った裕二は社員を全員集めた。
「今から全員、会社回りして来い‼︎取引先を作って来るんだ‼︎今日中に1件も見つけられなかった奴は減給だ‼︎いいな‼︎」
「はっ、はい‼︎」
社員は全員慌てて出て行った。
「減給だなんて…酷くないですか⁈」
「クビよりマシだろ‼︎何やってる、お前も行くんだよ」
「え…私もですか?」
「当たり前だろ、バーカ」
専務は今すぐにでも辞めたかったが何か掴むまでは我慢するしかなかった。
翌朝、2階のバルコニーでスミが洗濯物を干しているとシュンが手伝いに来た。
「いいよ。せっかくの休みなんだからゆっくり寝てて」
「えー、手伝わせてよ」
「洗濯物なんて干したことないでしょ」
「…うん。お手伝いさんが全部やってた」
「でしょうね。シワにならないように伸ばしてね」
「えっと…こうやって?」
「違うー。貸してっ」
「はいっ。ところで洗濯終わったらどこか出掛ける?天気も良いし」
「どこにも行かない。お酒飲んだりしてゆっくりしようよ」
「それでいいの?」
「うん」
スミは洗濯物を干し終わると今度はベッドのシーツを干しに庭へ行った。
シュンは2階のバルコニーからスミを見ていた。
いつまでもここに居られないな…
スミを早くあいつから解放させてやらなきゃ…
そしてスミとずっと一緒に居る為にも、俺もちゃんとしないと…
このままダラダラできない…
夕方になり2人は、テーブルに料理を並べワインを注いだ。
「お酒飲むのも久しぶりだなぁ~」
「そうだね。コンビニの外で飲んだのが最後だったね」
「うん。あの時はシュンとこんなふうになるなんて思いもしなかったな」
「…うん」
「シュン、私の為にここまでしてくれたけど後悔してない?」
「してないよ。俺がどうのこうのする以前に早く別れた方がいい。ご主人に未練はないんでしょ?」
「もちろん。だけど…」
「何?」
「…ううん。何でもない」
「ご主人と別れる時、慰謝料求めたい?」
「ううん、別れられるなら何もいらない」
「その方がいいと思う」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「ただ聞いてみただけ。俺が居るからお金の心配はいらないからね」
「…うん…」
「ご主人が仕事失ってもスミには関係ないね」
「え…」
「もしもの話だよ」
「…う…うん」
「俺は今月中にもうひと仕事したら家に行く。何としてでも別れるから」
「大丈夫なの?」
「その為に会社が危機の時も父と妻には頼らなかった。ここにもずっと居るわけにはいかないし…これからどうするか考えていかないとね」
「うん…私、主人より先に母と話した方がいいかも知れない」
「スミのお母さんに?」
「ちょっと色々あるから」
「そっか、じゃあ行く時は連れて行くよ」
「うん」
「スミ、ずっと一緒に居ようね」
「うん!」
「約束!」
2人は小指を絡ませ指切りをした。
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