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22話 複雑な気持ち
しおりを挟む翌朝、家を出たスミは頭を抱え秘書の車に乗り込んた。
「おはようございますっ」
「おはよ…」
「二日酔いですね?」
「…うん。かなり…」
「あんなに飲むから」
「途中から記憶がないんだけど…昨日どうやって帰った?支払いはちゃんとした?」
「タクシーで送りましたよ。支払いは僕が済ませました」
「本当?ごめん。いくらだった?返すから」
「いいですよっ」
「でも高かったでしょ?ダメよ。返すから」
「ワイン4本だけでも結構な金額でしたね~」
「4本も飲んだの⁈」
スミは立て替えてもらったお金を返そうと財布を開けてみたが、あいにく財布の中はカードだけで現金を持ち合わせていなかった。
「後でお金渡すね」
「お金なら銀行に行かないといけないでしょ?返してくれなくていいですよ。その代わり…」
「何?」
「今月の30日、何か奢って下さい」
「どうして30日?」
「その日、僕の誕生日なんです」
「そうなの?じゃあその日はご馳走するね。昨日のお詫びもあるし何かプレゼントするよ。何か欲しい物ある?」
「…考えときます‼︎」
会社に着くと秘書は専務に呼び出された。
「地曽田社長に聞いてみたよ」
「で…どうでしたか?」
「連れて来ていいって」
「本当ですかっ?やったー!」
「会社の社員って言ってるから。社長の秘書なんか連れて行ったら変だからね」
「わかりましたっ」
そしてその日がやって来た。
土曜日20時過ぎ、専務は秘書を連れてシュンの待つ料亭へ行った。
「社長、お疲れ様です!」
「お疲れ。社員の子は?」
すると秘書は専務の後ろから顔を出して挨拶をした。
「初めまして。中田と言います」
「え…」
この子は…確かパーティーの日にスミと居た…
秘書じゃなかったのか…
「初めまして。地曽田と言います。どうぞ2人とも座って」
専務と秘書はシュンの向かいに座った。
秘書はテーブルの上に並んだ料理に目が釘付けになっていた。
「今日はせっかく専務に連れて来てもらったんだからたくさん食べて」
「はっ、はいっ」
「中田君だっけ?お酒は飲めるの?」
「はい…少しなら」
「了解!」
シュンがメニューを見て注文していると、秘書はシュンのことをじっと見つめていた。
すごいオーラがある人だ…
しかもイケメン…
こんなにイケメンだと性格悪いのかな…
だから社長と…
「中田?」
「えっ?何か言いました?」
「初めはビールでいいのかって」
「あっ、はいっ」
お酒が運ばれ3人で乾杯した。
「中田君って専務から可愛がられてるんだね。専務が部下を連れて来るなんて初めてだよ」
「はい。可愛がられてます」
「そっ…そうですね…」
「専務、よかったね。素直でいい部下がいて」
「は…はい…」
「俺、次は日本酒頼むけど専務は?」
「じゃ…私も同じで…」
「中田君は?もう入ってないけど」
「僕は…レモン酎ハイを薄めで…」
「薄め?…了解っ」
「あの…ちょっとお手洗いに行って来ます」
トイレに行くのを我慢していた秘書は席を立った。
「何かすみません。緊張感がないですよね…」
「いいんじゃない?俺は気にしないよ」
「根はいい子なんですよ」
「見ててわかるよ。それより俺、中田君をパーティーで見かけたんだけど…スミと一緒だったよ」
「えっ」
「秘書だと思ってたけど…スミは社員を連れて行ってたんだね」
「あ…」
「相変わらずスミと秘書はいい感じなの?」
「それは…」
すると秘書が戻って来た。
「早かったね」
「はいっ」
「酎ハイきたからどうぞ。薄めの酎ハイ」
「あっ…いただきますっ」
専務はシュンに対して申し訳なさそうにしていた。
「地曽田社長はご結婚されてるんですか?」
「おいっ!そんな事聞くんじゃない」
「いいよ、別に。以前はしてたよ。バツイチ」
「そっ…そうなんですか…えっ、じゃあ彼女はいるんですよね?」
「…いないよ」
まさか…社長の元夫…?
「どっ…どうして別れたんですかっ?」
「それは…」
「中田っ‼︎」
「中田君は彼女いるの?」
「えっ…いませんけど、好きな人ならいます」
専務の顔色が変わった。
「そっか。上手くいくといいね」
「はい。上手くいかせます」
「いいね!前向きで。俺が離婚したのは…」
「社長っ…答えなくても…」
「いいんだ。前の妻は大企業の娘で会社の為に結婚したんだ。結局愛せなかった」
大企業の娘って事は社長じゃない…
じゃ…社長の元夫じゃなくてやっぱり元彼か…
「すみませんっ。失礼なこと聞いて…」
「中田君の好きな人はどんな人なの?いい感じ?」
専務はヒヤヒヤしながら聞いていた。
「すごく綺麗な人です。年上なんですが子供っぽいところもあって可愛いし」
「へぇー。年上と合いそうだよね…2~3歳上くらい?」
「いえ」
「中田っ‼︎」
突然の専務の大きな声に2人は驚いた。
「びっくりしたぁ。どうした?専務」
「どうしたんですかっ⁈」
「あっ、いや…その…あの件はどうなった?」
「あの件って…?」
「あの件はあの件だよ。あー、もういい」
「はっ…はい…」
「専務、変だよ。どうした?もう酔ったの?」
「あっ…いえ…」
それから3時間程経った。
「そろそろ出ようか」
「はいっ」
「ごちそうさまでした」
「あっ、俺の名刺渡しとくよ」
「ありがとうございますっ」
「何か困った時はいつでも連絡して」
「はい‼︎じゃ僕も渡しときます」
秘書がシュンに名刺を渡そうとすると、専務が慌てて秘書の手を止めた。
「何?」
「あっ…いや…その…」
専務は秘書に目で訴えると、気付いた秘書は名刺を自分のポケットに直した。
怪しいと思ったシュンは秘書のポケットから名刺を抜き取った。
専務は頭を抱えるしかなかった。
「…ったく何だよ‼︎」
シュンは秘書の名刺を見た。
「え…秘書…?」
「あのっ…社長…実は…」
「すみませんっ。僕…秘書なんです。嘘ついてすみません…」
じゃあ…この子がスミの…
「社長…?」
「専務は悪くありません。僕が連れて行って下さいって頼んだんです。秘書を連れて行くのはおかしいからって社員のフリして来ました」
「そ…そう」
「社長、すみませんでした」
「…わかった。ただ嘘はついて欲しくなかったな」
「すみません…」
「すみませんでした…」
「じゃ、帰るから。2人とも気を付けて帰って」
シュンは複雑な気持ちで帰って行った。
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