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73話 お金が必要だった理由
しおりを挟むスミは斉藤の目の前まで行った。
こっ…この女…どうして…
斉藤は慌てて顔を背けた。
スミはいざ目の前にすると殴られた事が甦り冷静では居られなかったが、必死で心を落ち着かせた。
「スミさん…大丈夫ですか?」
「…は…はい」
「こいつで間違いないですか?」
「…はい」
「おいっ、ちゃんとこっち見ろよ」
「お前!自分が何したかわかってるのか⁈」
「私がっ…私が話します」
スミは斉藤に近づき腰を下ろした。
斉藤は岸田秘書から殴られた場所を押さえていた。
「大丈夫?」
「…え」
「まだ若いでしょ。いくつ?」
「、、、、」
「20歳くらい?」
「…18」
「18っ⁈」
「そんな若くして何やってるんだ⁈」
「ちょっと黙ってて下さいっ」
「あっ…すみません」
こんな若い子を使う裕二のことがスミは許せなかった。
「ご家族は?」
「、、、、」
「一緒に居ないの?」
「妹しか居ねーよ」
「え…」
「、、、、」
「そっ…そうなの…どうしてこんな事してるの?大金まで受け取って」
「、、、、」
「たった1人の妹さんでしょ。悲しむよ」
「妹は…病気なんだ」
「…病気?」
「…だから金がいる」
「病気って…?」
「白血病で…ずっと病院に居る」
「…白血病…」
岸田秘書と専務は黙って聞いていた。
「治療費や入院費で金がいるんだよ‼︎普通にまともな仕事しても全然足りねーし。どうせ高校も行ってないから仕事もないけど」
「…でも…あなたのやってる事、妹さん知ったらどう思うかな?」
「…仕方ないだろっ」
「…私が払うから岡田とはもう関わらないで」
「え」
「えっ⁈」
「私はあの男から酷いこと沢山されてきたわ…私の愛する人まで巻き込んで…あんな男と関わっちゃダメよ‼︎」
「…酷いことって?」
「、、、、」
「岡田はこの人の元夫なんだよ」
「えっ…」
「あいつは浮気しておきながら何度もスミさんを監禁して暴力を振るっていた。それに放火までして」
「…嘘だろ」
「そして今、俺たちの社長が岡田のせいで何もやってないのに刑務所に入ってる」
「その人が私の大切な人よ…」
「…え」
「お前がこの人を殴っただろ。その顔を見て社長は岡田の所へ行ったんだ‼︎そしたら…」
「そんな…」
「あいつが刑務所に入ってるなら納得いくけど、どうして社長がっ!」
「タイミングよく警察呼びやがって‼︎全て岡田の計画的な行動なんだよ‼︎」
え…
斉藤は裕二から着信があれば警察を呼ぶように命令されて通報した事を思い出した。
「それで…岡田社長は何を…?」
「岡田はナイフで自分を刺しておきながら社長が刺したように仕向けたんだ」
「え…」
「わざと軽く刺しやがって」
「本当にとんでもない野郎だ‼︎」
「だから証拠を見つけたいんだ。お前があいつに指示されたこと警察に話してくれたら警察もあいつを調べて、あの日の事も何かわかるかも知れない」
「とにかく早く社長を釈放させてあげたいんだ」
「、、、、」
「スミさんっ、こいつを警察に連れて行きましょう」
「、、、、」
「スミさん!いくら指示されたからってスミさんはこいつに酷く殴られたんですよ。こいつに白状させて、こいつも罪償わさせないと」
すると今まで黙っていたスミが口を開いた。
「妹さんには…この人しか居ないんです」
「えっ?」
「スミさん?」
「妹さんの為にやったんでしょ?」
「、、、、」
「仕方なく…やったんだよね?」
斉藤は小さく頷いた。
「この人を警察に連れて行ったら妹さんはどうなるんですか?」
「…それは」
「スミさんっ、何言ってるんですかっ」
「シュンの無罪は私が警察署に何度でも足を運んで訴えます」
「無理ですよ。証拠がないと‼︎」
「私が何とかします。この人のことも許すのでもう自由にさせて下さい」
「そんなっ」
「それに…シュンが私と同じ立場でも同じ事してたと思います」
それを聞くと岸田秘書と専務は何も言えなかった。
「その代わりもう岡田とは関わらないって約束してくれる?妹さんの病院代は私が何とかするから」
斉藤は胸が痛かった。
「そしてちゃんと働いて。妹さんの為にも」
すると斉藤は涙を流しながら頷いた。
「本当にこれでいいんですかっ⁈」
「…はい」
「さすが…社長が好きになった人ですね…」
そして連絡が取れるように電話番号を交換し、斉藤を解放した。
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