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93話 2人に負けた母
しおりを挟む翌日、シュンの会社にスミの母親が来た。
「突然ごめんなさいね」
「いいえ。コーヒーでいいですか?」
「大丈夫よ。すぐ失礼するから」
「あ…はい」
「スミのことだけど…正直あなたには今まで散々迷惑かけた上に助けてもらってばっかりで、あなたと会う度に申し訳ない気持ちが強くて…かえって辛かったの」
「そんな…」
「だから快くスミとヨリ戻す事が受け入れられなかった…もうあの女がいる訳じゃないから関係ないのにね」
「お母さん…何度も言うようですが僕は迷惑かけられたなんて思ってないですし、助けるって言っても僕が勝手にやってるだけです」
「スミの為にでしょ?」
「そうです」
「そんなにスミのこと好きなのね」
「好きです」
「あの子も同じ気持ちよ」
「、、、、」
「あなたたちには負けたわ」
「え…」
「ヨリ戻してまた付き合いなさい」
「ほっ…本当にいいんですかっ⁈」
「えぇ。だから私の前でもうコソコソしなくていいから」
「お母さんっ‼︎ありがとうございますっ‼︎」
シュンは嬉しさのあまりスミの母親の手を両手で握った。
「まぁ…こんなに喜んじゃって。あら…このブレスレット…」
「これですか?」
「スミも着けてたわ。お揃いなのね?」
「はいっ」
スミの母親は笑顔で帰って行った。
シュンはスミに一刻も早く伝えたくて柳本グループに行った。
「社長っ⁈お疲れ様です。どうされました?」
「お疲れ。ちょっとスミ借りるよ」
「はっ…はい」
シュンはスミがいる部屋に行き、スミを連れて近くの喫茶店に入った。
「どうしたの?何かあった?」
「スミのお母さんがさっきうちの会社に来てたんだ」
「え?何で?」
「スミ!俺たちの付き合い、認めてくれたよっ」
「ほっ…本当⁈」
「うん。本当っ‼︎」
「そっかー‼︎よかった‼︎!じゃあこれからはお母さんに嘘つかなくていいのねっ」
「うん。堂々と会えるね」
「じゃあ、早速今日はシュンの家に泊まろうかな」
「本当に?じゃあ迎えに来るよ。家に行けばいい?」
「うん」
「了解っ!」
「そういえば斉藤くん…もう出発したかな」
「うん。もう着いてる頃じゃない?」
「あゆみちゃんと久しぶりに会えるのね。よかったよ」
「そうだね」
18時過ぎ、会社を出たシュンはスミの家に向かった。
すると斉藤くんが働く予定の岡山の会社の社長から電話が入った。
「もしもし?」
「地曽田社長、今大丈夫ですか?」
「はい。どうしました?」
「斉藤くんって今日来られる予定なんですよね?」
「はい。え?まだ来てないんですか?」
「はい。もう会社閉めますので明日来るように連絡していただけますか?」
「わかりました。連絡しておきます。すみませんでした」
電話を切った後、シュンは斉藤に何度も電話したが繋がらなかった。
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