私の愛する人【完結】

真凛 桃

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22話 悲劇のクリスマス

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15時前、寿美子は出勤し仕事をする。
20時まで頑張ればテソンに会って、子供のことを話せるので、楽しみで仕方なかった。
テソンの方も事務所で仕事をしているが、プロポーズのことで緊張し、仕事に集中できなかった。
20時になり、仕事を終えた2人はお互いの職場の前の横断歩道で、信号が変わるのを待っている。

(テソン!)

寿美子が手を振ると、テソンはすぐに気づき微笑む。
ここの信号は長いので、寿美子はテソンに電話をした。

「テソン‼︎今日ね…」

「何?」

「重大発表があるから‼︎」

「え?何?」

「後で話す❤︎」

「俺も、スミに今夜言いたいことがあるよ!」

「えー、なんだろう…」

「後でね❤︎…スミ…」

「ん?」

「愛してるよ」

「私も愛してる」

そして信号が青に変わった瞬間、寿美子はテソンに向かって走り出した。

(スミ、あんなに走っちゃって…俺から行くのに)

するとテソンの顔から笑みが消えた。
トラックが猛スピードでこっちに向かってきたのだ。
寿美子は気づいていない。

「スミ‼︎来るなっ‼︎」

「え?」

テソンは慌てて寿美子の元に駆け寄り、寿美子を突き飛ばした。


キーッッ   ドンッッ


寿美子をかばい、テソンはトラックにはねられた。

(え…テソン…嘘で…しょ…)

「テソン⁈テソン‼︎」

寿美子は慌ててテソンに駆け寄る。
テソンは頭から血を流し、意識がない。

病院に運ばれる。


「先生‼︎助けてください‼︎」

「最善を尽くします」

すぐに緊急手術が始まった。

寿美子はその場で泣き崩れ、立ち上がることができなかった。

(私のせいだ、私のせいでテソンは…どうかテソンを助けてください!!!)

知らせを聞いたジョングムとセジュンが駆けつけてきた。

「スミちゃん!テソンは⁈」

「テソン兄は大丈夫なの⁈」

「…わからない…」

泣き崩れる寿美子をジョングムが抱きしめる。

「一体、どうしてこんなことに⁈」

「私のせいなんです。テソンは私をかばってトラックに…」

「…スミちゃん…テソンは大丈夫よ。きっと大丈夫‼︎」

寿美子は涙が止まらなかった。
1時間後、手術室から先生が出てきた。

「テソンは⁈テソンは大丈夫なんですか⁈」

先生は険しい顔でこう言った。

「出血がひどくて、このままでは危険です。輸血が必要です!」

「私、同じO型なのでお願いします!」

「では、急いでこちらに来てください」

「先生‼︎この子妊娠してるんですけど、妊娠中でも輸血して大丈夫なんですか⁈」

「妊娠⁈」

何も知らないセジュンは驚く。

「いえ、妊娠していたら輸血は無理です」

「スミちゃんはダメ。私はB型だし…」

「俺、お願いします!俺もO型なので」

「セジュンさん…」

「セジュン…」
(セジュン、ただでさえ貧血持ちなのに…)

輸血が無事に終わり、2時間後セジュンが戻ってきた。

「セジュン、大丈夫?」

「う、うん」

「…セジュンさん。ありがとうございます」

「テソン兄が助かるなら俺なんだってする。それに寿美子さん…妊娠してるんですね…テソン兄はそのことを知ってるんですか?」

「まだ知りません。今日話すつもりでした…」

「ですよね…昨日は何も言ってなかったし」

すると、テソンの両親とマネージャーが駆けつけてきた。

「テソンは?テソンは大丈夫なの⁈」

「今はまだ手術中です…」

「どうしてこんなことに⁈」

「…すみません。私のせいです」

「全てあなたのせいよ‼︎あなたのせいで‼︎」

母親は泣きながら寿美子を叩く。
寿美子は泣いて謝り続ける。

ジョングムが慌てて母親を止める。

「お母さん!やめてください!」

「どいて!この女のせいよ‼︎」

「この子のお腹の中にはテソンの子供がいるんですよ‼︎だからやめてください!」

「え…う、嘘でし…ょ」

「本当なのか⁈テソンの子供がいるのか⁈」

「そうです!だからこの子1人の体じゃないんです‼︎」

母親は言葉が出ず、その場にしゃがみこんだ。
それから5時間後、手術室の扉が開き、先生たちは慌てた感じでテソンを運ぶ。

「テソン‼︎」

「先生‼︎テソンは…うちの息子は大丈夫なんですか⁈」

「手術は無事に終わりましたが、非常に危険な状態ですので、今からICUに移動します。これ以上は手を尽くせません」

(嘘でしょ…テソン…)

「危険って…先生‼︎お願いです!息子を助けてください!」

「打ち所が悪く、とても危険です。このまま様子を見るしかありません。意識が戻るかどうかも…分からない状態です。今は何とも言えません」

「そんな…」

父親は、泣き崩れる母親を抱きしめる。

寿美子は病室のガラス越しに、テソンをずっと見つめていた。

「彼女さんですか?」

「…はい」

「これ、テソンさんのジャケットのポケットに入ってた物です」

先生は、寿美子にテソンの財布と車の鍵と携帯、それと正方形の小さな箱を渡した。

それを見ていたセジュンが寿美子の元に近づいてきた。

「その箱、寿美子さんのですよ。今日、テソン兄は寿美子さんにプロポーズするって言ってました…」

「…じゃぁこれって…」

「はい。指輪ですよ。寿美子さんとお腹の子を置いて逝ったりしませんよ。テソン兄は。だからもっとしっかりして、テソン兄を信じましょう!」

寿美子は指輪を握り締めた。

(3人で幸せにならなきゃ…お願い‼︎テソン、生きて!)

その後もテソンは意識がまだ戻らず、2日3日と時間だけが過ぎていった。
寿美子はずっとテソンの居るICUの前にいた。そこに、テソンの母親が来た。ずっとテソンの側から離れない寿美子の姿に、母親は心を打たれていた。

「寿美子さん、今日は私がいるから帰って休みなさい」

「いいえ。テソンの意識が戻るかもしれないし、ここにいます」

「ちゃんと食べてるの?こんなにやつれちゃって。あなた1人の体じゃないんでしょ。もっと自分を大事にしなさい」

「…お母さん…」

「今まで…ひどいことをしてごめんなさいね。まさかここまでテソンがあなたのこと想ってたなんて…あなたもそうだけど…あなたたちには負けたわ。どうか許してくれる?」

「…はい」

母親は寿美子を抱きしめた。

そして、この日の夜もマネージャー、セジュン、ジョングムが来て、翌朝まで一緒にいてくれた。寿美子は心強かった。
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