私の愛する人【完結】

真凛 桃

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24話 セナの決意

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テソンが亡くなって、何もやる気がなくなった寿美子は、仕事も辞め、毎日テソンのお墓に行っていた。
ある日、いつものようにお墓に行った寿美子はテソンに話しかけていた。

(テソン…私これからどうしたらいいの?テソンがいない人生なんて無理。あの時、私が走ってテソンのとこに行かなければ…テソン…ごめんなさい。テソン…私…テソンのとこに行きたい…)

そんな寿美子をセナは影で見ていた。

(あいつ…何言ってるんだ)

そして寿美子はあてもなく歩いて行く。
ひたすら歩いてビルに入って行った。
自然に…足が勝手に、屋上に向かう。
屋上につくと、靴を脱ぎ、飛び降りようとする。
すると、後から手を引かれ、抱きかかえられた。

「何やってるんだ‼︎」

「セナさん⁈…イヤッ、テソンのところに行きたいんです‼︎行かせてください‼︎」

寿美子は泣き叫ぶ。

「こんなことしてテソンが喜ぶと思うか‼︎いい加減で目を覚ませ!」

「だって…私…もう生きたくない‼︎」

「子供は⁈テソンとの子供がいるんだろ?子供も殺してしまうのかよ‼︎しっかりしろ‼︎」

寿美子はお腹に触れる。

「テソンは、お前と子供を守ってくれたんだよ。身代わりになった。あいつの為にも頑張って生きろよ‼︎」

セナは寿美子を抱きしめた。

「お前の気持ちもわかる。俺だってたった1人の兄弟なくして辛いんだ…頼む…生きてくれ。あいつのことを想うなら…」

(わかってる…わかってるけど…もうテソンは居ないんだ…)

そしてセナは寿美子を連れて帰った。


マンションに着き、リビングに入っても寿美子はずっと黙ったままだ。

「スミコ、ちゃんと食ってるのか?何もないじゃん」

寿美子は何も言わず、テソンの寝室に行った。テソンの匂いが残っているベッドで、毎日寿美子は泣いていた。

(あいつ…どうしたらいいんだ…一体どうやったら…)


テソンは俺と違って優しかった…
テソンは俺と違って思いやりがあった…
テソンは俺と違って、自分より相手優先だった…
あいつは…いつでも真っ直ぐな男だった…


セナは一晩中考えていた。

寿美子はテソンの枕を抱いて眠りにつき、翌朝目が覚めた。

「スミ…」

(誰か私を呼んでいる)

「スミ」

(えっ、テソン?)

寿美子が目を覚ますと、目の前にテソン?がいる…
寿美子は泣きながら飛びついた。

「テソンなのね?テソン‼︎」

テソンそのものだった。

「俺がテソンの代わりになるよ」

「え…セ、ナさん?」

髪型も、服装も、喋り方もテソンだ。
慌てて離れる寿美子を引き止めた。

「俺がスミを守るから。もっとテソンになれるように頑張るから」

「…セナさん…」

セナは寿美子を抱きしめた。

セナは一晩中考えて、テソンになろうと決めた。


1ヵ月後、みるみるうちにセナはテソンにそっくりになっていた。
セナの努力のおかげで、寿美子は精神的にも落ち着き、普通の生活に戻った。

2人は久しぶりにテソンのお墓へ行き、テソンに話しかけた。

「テソン…私、もう大丈夫だから。心配かけてごめんね。テソンが安心出来るように私、前向くから。この子のためにも…」

寿美子はお腹を触りながら言った。

「兄貴、俺、スミを守るから。兄貴みたいになるには、まだまだ程遠いけど努力する。そして兄貴が心から愛した人を俺が幸せにしたい。いいよね?テソン…」

「セナさん…」

そして2人は車に乗る。

「このままどこか行こうか?」

「うん」

「どこに行きたい?」

「んーと… 済州島‼︎済州島に行きたい!」

「済州島?」

「うん。済州島行きたい」

「そっか。わかった。行こう!」



そして、その日の夜、済州島に着いた。

少し歩くと、静かな別荘があった。

「誰かいるかな?」

セナがドアを開ける。鍵はかかっていない。

「誰もいないみたいだね」

「どうする?」

「ここ、泊まろう‼︎」

「そうだね。誰もいないし」

「お庭、いい感じだよ~」

2人は庭にある椅子に座り、買ってきたビールを飲む。

「テソンもきっと見守ってくれてるよ」

「うん」

「俺、少しはテソンに近づいているかな…」

「うん。テソンにしか見えない…」

「ほんと⁈」

「初めて会ったときの派手な格好や、強引さ、俺様な話し方はどこへ行ったんだろうね…」

「それは…努力してるから…」

「…ありがとう」

「スミ、テソンの分まで幸せになろうね」


2人は初めてキスをした。



部屋に戻り、セナが寝た頃、寿美子は眠れず、海が見たくなり、1人歩いて海岸を歩く。荒れている海を見ながら、浜辺に座りテソンとの思い出を振り返っていた。

(テソン、私…テソンの分まで生きるからね…もう泣かない。テソン…永遠に愛してる…)


暗い海の中に、何かが見えた。

「あれ…何?」

よく見ると、何かが波に流されている。
寿美子は慌てて海に向かって走って行った。
子供が溺れていた。
寿美子は海に入り、子供のところに行こうとするが、波に邪魔され、なかなか思い通りに進まない。


必死で子供のところに行った寿美子は、溺れた子供を抱きかかえ、砂浜の近くまで連れて行った。

すると、大きな波が寿美子を襲う。
そして、そのまま寿美子は波にのまれた…



(まだ、死にたくない……テソン……せめて……この子だけは……)


だが、波が引いても寿美子は上がってくる事はなかった…


(でも、これで…テソンの所へ行けるのね…)








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