最強魔法師の壁内生活

雅鳳飛恋

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入学編

第39話 クラブ(四)

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 ◇ ◇ ◇

   一月二十四日――ジルヴェスター、ステラ、オリヴィア、アレックスの四人は、放課後になると昨日に引き続きクラブ見学に赴いていた。

 四人が最初に訪れたクラブは魔法研究クラブだ。
 今日は文化系のクラブを中心に回る予定である。

 一同はクラブ棟にある魔法研究クラブの部室に到着すると、扉をノックしようとする。
 しかし、その前に横合いから声を掛けられた。

「――ヴェステンヴィルキス君、見学ですか?」

 ジルヴェスターは自身の名を呼ぶ声の方へ顔を向ける。
 すると、そこには一人の女生徒が資料を手に持ちながら立っていた。

「セフォローシャ副会長」

 女生徒の名をジルヴェスターが呟く。

 女生徒は病的なほど白い肌をしている。
 紺色のストレートロングヘアを垂らし、前髪の下にある紺色の瞳でジルヴェスターを見つめていた。
 着痩せするタイプなのか本来の体型の主張は抑えられているが、凹凸の激しい身体を隠しきれていない。

「ええ。見学です」
「そうですか。では、私が案内しますね」
「副会長が?」
「ええ。私が魔法研究クラブの部長なのでちょうど良かったです」
「そうでしたか。では、よろしくお願いします」

 ジルヴェスターとのやり取りを終えたセフォローシャは、ステラたち三人に視線を向ける。

「そちらのお三方は初めましてですね。私は生徒会副会長及び魔法研究クラブの部長を務めている三年のサラ・セフォローシャです」

 セフォローシャ改め――サラが三人に自己紹介をすると、ステラたちも順に自己紹介を行った。

 ちなみにジルヴェスターは入学式の答辞の打合せ時にサラとは何度か顔を合わせており、自己紹介は最初に対面した際に済ませている。

「では、入りましょうか」

 自己紹介を済ませた一同は、サラを先頭に魔法研究クラブの部室に足を踏み入れた。

「ここは前室です。ここに荷物を置いたり、休憩したりしています」

 一同が足を踏み入れた先の部屋には、生徒の鞄と思われる物が棚に収納されていた。中には無造作にテーブルやソファに置かれている鞄もある。

 そしてそのテーブルやソファを中心に、部員たちが団欒できるスペースが確保されていた。

「こちらの部屋が研究室です。そして反対側の部屋が倉庫になっています」

 サラが部室を歩いて行き、左側の扉の前に立って説明する。
 入口の扉から見て左側が研究室の扉で、右側が倉庫へ繋がる扉になっているようだ。

「次は研究室に入りますが、備品には手を触れないようにお願いしますね」

 サラは一同に注意を促すと、取っ手に手を掛ける。

 研究者は資料に触れられるのを嫌う傾向にある。
 一見乱雑に置かれているように見えても、本人はしっかりと場所を把握している。なので、置き場所を少しでも変えられてしまうのは余計な手間になってしまうのだ。

 それとは別に、研究資料や機材には貴重な物がある。素人が軽々しく触っていい代物ではない。
 サラが注意を促すのは当然のことだ。

 扉を潜った先に広がる光景は、正に研究室といった様相を呈していた。
 議論を交わす者や、資料や書物と睨めっこしている者、術式をえがいている者など、様々な姿を確認できる。
 集中していてジルヴェスターたちの存在に気づいていない。

「魔法研究クラブの活動内容は広義に解釈しており、魔法に関わること全般を研究対象にしています。工学クラブもありますが、我が部では魔法工学の分野も取り扱っています」

 ランチェスター学園には工学クラブがある。
 工学クラブは魔法工学や魔法には関係ない一般的な工学について、研究や製作をしているクラブだ。

「工学クラブとは良好な関係にあり、交流も盛んに行われております」

 魔法工学の分野にまで手を出している現状、工学クラブの領分を侵食している形になるが、あくまでも工学クラブは工学に特化しているクラブであり、魔法研究クラブは魔法全般を対象にしている。
 時に魔法研究クラブと工学クラブで共同研究や製作に取り組むことがあり、上手く住み分けや共存ができているので両クラブ間に軋轢あつれきはない。

 その後、一同はサラに先導されながら研究室内を一通り見て回る。
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