53 / 141
入学編
第52話 守護神
しおりを挟む
◇ ◇ ◇
風紀委員らが西門で攻防を繰り広げていた頃、ジルヴェスターの姿は学園の東門を出て一、二分のところにあった。
冷気を孕んだ夜風がジルヴェスターの頬を撫でる。
「ここか……」
目的の場所を発見したジルヴェスターは建物に視線を向けて小声で呟く。
建物は住居にも事務所にも使えるタイプの少し古めのアパートだ。
(外に二人、中には三十人といったところか)
ジルヴェスターは魔法を行使して建物を探っていた。
使用した魔法は――『音響感知』。
この魔法は音属性の第四位階魔法であり、超音波を放って周囲の様子を探ることができる探知魔法だ。術者の技量や用いる魔力量により探知範囲や精密性が左右される。
左手首に装着している腕輪型の汎用型MACを用いた。
(西門の方が大人数だったな)
西門から襲撃を仕掛けてきた者たちは大所帯であった。
それに比べるとこちらの方が人数は少ない。
(まあ、人数の差など然したるものではないが)
彼には有象無象の集団など警戒に値すらしない。仮に油断していても些事だ。
(しかし、奴らは本当に何がしたいんだ?)
ジルヴェスターの中では未だに拭えない疑問があった。
(反魔法主義団体過激派組織ヴァルタンとしては魔法師を敵視するのも、強硬な手段に出ることも理解はできる)
反魔法主義を掲げている以上、魔法師を敵視するのも排斥を謳うのも理解できることだ。
(だが、国立魔法教育高等学校に手を出すのは自殺行為に等しい。レティのいるランチェスター学園なら尚更だ)
魔法師の卵が主とはいえ、非魔法師で構成されている反魔法主義団体が、多くの魔法師を抱えている国立魔法教育高等学校に襲撃を仕掛けるなど正気の沙汰ではない。
しかも元特級魔法師第六席であり、現準特級魔法師である『残響』――レティ・アンティッチを敵に回すことになる。
正常な判断を下せる者ならば冒すことではないだろう。
(まあ、狂信者の考えなど理解できなくて当然か)
ジルヴェスターは考えても仕方ないことだと切り捨てる。
狂信者の考えを理解できるのは同じ狂信者に限るだろう。
理解しようとするのは無駄な労力でしかない。
(いずれにしろ俺の平穏を脅かす者は容赦しない)
ジルヴェスターは今の生活を気に入っている。
幼少期から壁内壁外問わず戦場を闊歩していた彼は、現在の友人たちと過ごす平穏な学生生活は、とても新鮮で居心地が良く代えがたいものになっていた。
故に、今の日常を脅かすモノには容赦するつもりなど微塵もなかった。
(さっさと終わらせてしまおう)
思考を切り替えたジルヴェスターは、右手の中指に嵌めている指輪型MACに魔力を送り込んで魔法を行使する。用いているMACは単一型だ。
すると、彼は建物の外で周囲の警戒に当たっている一人の背後に突如として現れた。
彼が用いた魔法――『影移動』は、影属性の第八位階魔法であり、影を介して自由に行き来できる移動魔法だ。
第八位階魔法を片手間に行使してしまうジルヴェスターの実力が一目で垣間見える。
標的の背後に移動したジルヴェスターは、左手首に装着している腕輪型MACを用いて別の魔法を行使する。こちらのMACは汎用型だ。
すると標的にされた相手は自分が何をされたのかもわからぬまま、その姿を消した。
もう一人の標的にも影移動で瞬時に接近すると、先程と同じ魔法を行使する。
そして後に残ったのはジルヴェスターの姿だけであり、標的にされた二人の痕跡は何一つとして残らなかった。
対象の存在を消し去った魔法は――『次元封鎖』だ。
次元封鎖は無属性の第八位階魔法であり、対象を異次元の空間に閉じ込める拘束魔法である。
物陰から移動して一瞬の出来事だった。
ジルヴェスターは流れ作業のように行ったが、やっていることは高次元のレベルだ。そんな簡単に第八位階の魔法を何度も使えたら誰も苦労しない。
建物内の人間に気取られることのないように隠密行動を心掛けているのかと思ったが、見張りの二人を消したジルヴェスターはなんの躊躇もなく建物に侵入した。
堂々と正面から建物に入ったジルヴェスターはすかさず魔法を行使する。用いたのは左耳の耳朶に装着している耳飾り型の単一型MACだ。
すると、彼を囲むように無数の人影が出現した。
しかし、その人影からは生気が感じられず、とても人間とは思えない様相を呈している。
「――行け」
そうジルヴェスターが一言呟くと、無数の人影が動き出す。
彼が行使した魔法――『死者の軍勢』は、闇属性の第八位階魔法であり、死者の軍勢を召喚する支援魔法だ。召喚する軍勢の数は術者が用いた魔力量に依存する。
召喚した死者の軍勢が建物内を我が物顔で闊歩する。
「――誰だ!?」
その姿を発見した敵が声を上げた。
「人じゃない!? ぐわっ!」
驚きで動きを止めた一瞬の間に、死者の軍勢の一体に心臓を刳り抜かれてしまった。胸元から血を吹き出し、口からも血を吐き出した末に全身の力が抜けて地に伏す。
「――くそっ! 侵入者だ!!」
誰何する声を耳にして様子を窺いに来た者が先程の惨状を目にし、侵入者の存在を伝える為に大声を上げる。
その者に対し、死者の軍勢の一体が上段から剣を振り下ろす。
「くっ」
相手はなんとか対応し、警戒を兼ねて携えていた剣で受け止めるも――
「ぐわぁあああ!!!」
残念ながら受け止めきれずに吹き飛ばされ、後方の壁にめり込んでしまった。
――『死者の軍勢』はその名の通り死者の軍勢だ。
つまり生きている人間とは違い身体的な制限がなく、リミッターが解除されている。
生きている人間が普段全力で発揮できる力は、身体が負荷に耐えられるように七十~八十パーセントくらいにセーブされているのに対し、自我のない死者の軍勢はリミッターが解除されているので百パーセント、百二十パーセントと人外の力を常時発揮できる。
とても人間が太刀打ちできるものではない。
その上、感情がないので容赦がなく、文字通り死兵となる。
非常に厄介な魔法――それが『死者の軍勢』だ。
吹き飛ばされた者は衝撃に耐えられず、両手があらぬ方向に曲って骨があらわになっており、あまりの痛みに意識が飛んでいる。
同じように各所では死者の軍勢による蹂躙が行われていた。
「――これは!? まさか『死者の軍勢』か!?」
すると、辺りに響く声で魔法の正体を言い当てた者がいた。
その者はどうやら魔法師だったようで、魔法で対抗している。
「このような高等魔法がいったい何故――」
だが、虚しくも言い終わる前に死者の軍勢に捻りつぶされてしまった。
各所で行われている蹂躙には目もくれず、ジルヴェスターは建物の中を悠然と闊歩していた。
相手の生死を気にも留めない冷酷な一面が窺える。事実、彼は相手の生死には微塵も興味や関心がなかった。眉一つ動かさない表情は彼の心情や覚悟を如実に物語っている。
その後も一方的な虐殺――もとい戦闘が繰り広げられていく。
風紀委員らが西門で攻防を繰り広げていた頃、ジルヴェスターの姿は学園の東門を出て一、二分のところにあった。
冷気を孕んだ夜風がジルヴェスターの頬を撫でる。
「ここか……」
目的の場所を発見したジルヴェスターは建物に視線を向けて小声で呟く。
建物は住居にも事務所にも使えるタイプの少し古めのアパートだ。
(外に二人、中には三十人といったところか)
ジルヴェスターは魔法を行使して建物を探っていた。
使用した魔法は――『音響感知』。
この魔法は音属性の第四位階魔法であり、超音波を放って周囲の様子を探ることができる探知魔法だ。術者の技量や用いる魔力量により探知範囲や精密性が左右される。
左手首に装着している腕輪型の汎用型MACを用いた。
(西門の方が大人数だったな)
西門から襲撃を仕掛けてきた者たちは大所帯であった。
それに比べるとこちらの方が人数は少ない。
(まあ、人数の差など然したるものではないが)
彼には有象無象の集団など警戒に値すらしない。仮に油断していても些事だ。
(しかし、奴らは本当に何がしたいんだ?)
ジルヴェスターの中では未だに拭えない疑問があった。
(反魔法主義団体過激派組織ヴァルタンとしては魔法師を敵視するのも、強硬な手段に出ることも理解はできる)
反魔法主義を掲げている以上、魔法師を敵視するのも排斥を謳うのも理解できることだ。
(だが、国立魔法教育高等学校に手を出すのは自殺行為に等しい。レティのいるランチェスター学園なら尚更だ)
魔法師の卵が主とはいえ、非魔法師で構成されている反魔法主義団体が、多くの魔法師を抱えている国立魔法教育高等学校に襲撃を仕掛けるなど正気の沙汰ではない。
しかも元特級魔法師第六席であり、現準特級魔法師である『残響』――レティ・アンティッチを敵に回すことになる。
正常な判断を下せる者ならば冒すことではないだろう。
(まあ、狂信者の考えなど理解できなくて当然か)
ジルヴェスターは考えても仕方ないことだと切り捨てる。
狂信者の考えを理解できるのは同じ狂信者に限るだろう。
理解しようとするのは無駄な労力でしかない。
(いずれにしろ俺の平穏を脅かす者は容赦しない)
ジルヴェスターは今の生活を気に入っている。
幼少期から壁内壁外問わず戦場を闊歩していた彼は、現在の友人たちと過ごす平穏な学生生活は、とても新鮮で居心地が良く代えがたいものになっていた。
故に、今の日常を脅かすモノには容赦するつもりなど微塵もなかった。
(さっさと終わらせてしまおう)
思考を切り替えたジルヴェスターは、右手の中指に嵌めている指輪型MACに魔力を送り込んで魔法を行使する。用いているMACは単一型だ。
すると、彼は建物の外で周囲の警戒に当たっている一人の背後に突如として現れた。
彼が用いた魔法――『影移動』は、影属性の第八位階魔法であり、影を介して自由に行き来できる移動魔法だ。
第八位階魔法を片手間に行使してしまうジルヴェスターの実力が一目で垣間見える。
標的の背後に移動したジルヴェスターは、左手首に装着している腕輪型MACを用いて別の魔法を行使する。こちらのMACは汎用型だ。
すると標的にされた相手は自分が何をされたのかもわからぬまま、その姿を消した。
もう一人の標的にも影移動で瞬時に接近すると、先程と同じ魔法を行使する。
そして後に残ったのはジルヴェスターの姿だけであり、標的にされた二人の痕跡は何一つとして残らなかった。
対象の存在を消し去った魔法は――『次元封鎖』だ。
次元封鎖は無属性の第八位階魔法であり、対象を異次元の空間に閉じ込める拘束魔法である。
物陰から移動して一瞬の出来事だった。
ジルヴェスターは流れ作業のように行ったが、やっていることは高次元のレベルだ。そんな簡単に第八位階の魔法を何度も使えたら誰も苦労しない。
建物内の人間に気取られることのないように隠密行動を心掛けているのかと思ったが、見張りの二人を消したジルヴェスターはなんの躊躇もなく建物に侵入した。
堂々と正面から建物に入ったジルヴェスターはすかさず魔法を行使する。用いたのは左耳の耳朶に装着している耳飾り型の単一型MACだ。
すると、彼を囲むように無数の人影が出現した。
しかし、その人影からは生気が感じられず、とても人間とは思えない様相を呈している。
「――行け」
そうジルヴェスターが一言呟くと、無数の人影が動き出す。
彼が行使した魔法――『死者の軍勢』は、闇属性の第八位階魔法であり、死者の軍勢を召喚する支援魔法だ。召喚する軍勢の数は術者が用いた魔力量に依存する。
召喚した死者の軍勢が建物内を我が物顔で闊歩する。
「――誰だ!?」
その姿を発見した敵が声を上げた。
「人じゃない!? ぐわっ!」
驚きで動きを止めた一瞬の間に、死者の軍勢の一体に心臓を刳り抜かれてしまった。胸元から血を吹き出し、口からも血を吐き出した末に全身の力が抜けて地に伏す。
「――くそっ! 侵入者だ!!」
誰何する声を耳にして様子を窺いに来た者が先程の惨状を目にし、侵入者の存在を伝える為に大声を上げる。
その者に対し、死者の軍勢の一体が上段から剣を振り下ろす。
「くっ」
相手はなんとか対応し、警戒を兼ねて携えていた剣で受け止めるも――
「ぐわぁあああ!!!」
残念ながら受け止めきれずに吹き飛ばされ、後方の壁にめり込んでしまった。
――『死者の軍勢』はその名の通り死者の軍勢だ。
つまり生きている人間とは違い身体的な制限がなく、リミッターが解除されている。
生きている人間が普段全力で発揮できる力は、身体が負荷に耐えられるように七十~八十パーセントくらいにセーブされているのに対し、自我のない死者の軍勢はリミッターが解除されているので百パーセント、百二十パーセントと人外の力を常時発揮できる。
とても人間が太刀打ちできるものではない。
その上、感情がないので容赦がなく、文字通り死兵となる。
非常に厄介な魔法――それが『死者の軍勢』だ。
吹き飛ばされた者は衝撃に耐えられず、両手があらぬ方向に曲って骨があらわになっており、あまりの痛みに意識が飛んでいる。
同じように各所では死者の軍勢による蹂躙が行われていた。
「――これは!? まさか『死者の軍勢』か!?」
すると、辺りに響く声で魔法の正体を言い当てた者がいた。
その者はどうやら魔法師だったようで、魔法で対抗している。
「このような高等魔法がいったい何故――」
だが、虚しくも言い終わる前に死者の軍勢に捻りつぶされてしまった。
各所で行われている蹂躙には目もくれず、ジルヴェスターは建物の中を悠然と闊歩していた。
相手の生死を気にも留めない冷酷な一面が窺える。事実、彼は相手の生死には微塵も興味や関心がなかった。眉一つ動かさない表情は彼の心情や覚悟を如実に物語っている。
その後も一方的な虐殺――もとい戦闘が繰り広げられていく。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる