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囚われの親子編
第3話 会遇(三)
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◇ ◇ ◇
放課後――ジルヴェスターの姿は壁外にあった。
ウェスペルシュタイン国から南東の方向へ深層に踏み入った先にある、とある城の跡地へと赴いていた。
壁外には、ウェスペルシュタイン国の政府が魔法協会の意見をもとに定めた階層が存在する。
壁外から約十キロほどの距離は浅層に定められている。
浅層にいる魔物は脅威度の低い魔物だ。壁外に近い場所ほど魔法師が頻繁に間引きを行っている。故に壁外でも比較的安全地帯だ。
浅層の先には下層に定められている階層がある。浅層よりも圧倒的に広い。
下層も比較的安全地帯ではあるが、安易に踏み入っていい場所ではない。当然浅層とは比べ物にならない危険を伴う地帯だ。
そして下層の先には中層、上層と続いていく。
上層まではウェスペルシュタイン国にとって既知の世界だ。だが、上層より先にも世界は広がっている。
それは――深層と呼称されている領域だ。
深層は限られた者しか足を踏み入れることができない世界である。
未踏の地とまでは言わないが、未踏の地と言っても差し障りがないほど未知の世界だ。人類が到達できる限界地として『人類の限界領域』とも言われている。
深層から先には途方もなく世界が広がっている。なので、当然深層が最も広い領域だ。
奥の階層ほど強力な魔物が跋扈しており、浅層<下層<中層<上層<深層という順に危険度が上がり、領域も広くなる。
そんな中、ジルヴェスターは散歩でもするかのような気軽さで深層へと足を踏み入れていた。
彼は深層へ足を踏み入ることのできる限られた者であった。
「これは……」
城の跡地を探索していたジルヴェスターは気になる物を発見した。
この城は魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、生活圏を追われることとなった際に取り残された文明の名残だと思われる。
城自体が貴重な遺構であり、考古学的な価値が高い。
「……肖像画か?」
ジルヴェスターが手にしたのは、高貴な女性だと思われる人物の肖像画であった。埃を被ってはいるが、人の輪郭と思われる部分が透けて見えていた。
彼は肖像画を覆っている埃を優しく払う。
肖像画は貴重な遺物だ。丁重に扱わなくてはならない。
埃を払い落とすと、はっきりと肖像画を見ることができた。
「金髪碧眼の女性……明らかに高額な物と推測できる宝飾品とドレス。ここはこの一帯を治める貴族が居を構えていた城か?」
改めて城の周囲の風景を思い出す。
城の周囲には住居と思われる残骸が残っていた。
城に近いほど富裕層が住んでいたと思われる屋敷の残骸があり、逆に城から離れている建物ほど庶民的な建造物に思えた。
富裕層が住んでいたと思われる屋敷の方が頑丈に建てられていたのか、比較的原型を留めている。――それでも建物によって差があるが。
庶民的な建物はほとんど原型を留めておらず、見る影もない状態だった。
ジルヴェスターの考察が正しければ、今現在探索している場所は当時この一帯を治めていた領主が居を構えていた領都ということになる。そして城はその貴族の居城だろう。
「……」
ジルヴェスターは肖像画に思い至る点があり目を凝らす。
「気の所為か……? 見覚えがある気がするが……」
肖像画に描かれている女性と似た人物がいたような気がすると思考を巡らす。
(……まあ、今はいいか。持ち帰ってから考えよう)
彼が今現在いる場所は深層だ。
落ち落ち考えている余裕などない。いつ危険が迫るかわからないのだ。
今は偶然にも周辺に魔物の気配は感じられないが、油断していい理由にはならない。――もっとも、魔物がいたところでジルヴェスターにとって危険なのかは別問題だが。
ジルヴェスターは肖像画を『異空間収納』に収納すると、探索を再開した。
放課後――ジルヴェスターの姿は壁外にあった。
ウェスペルシュタイン国から南東の方向へ深層に踏み入った先にある、とある城の跡地へと赴いていた。
壁外には、ウェスペルシュタイン国の政府が魔法協会の意見をもとに定めた階層が存在する。
壁外から約十キロほどの距離は浅層に定められている。
浅層にいる魔物は脅威度の低い魔物だ。壁外に近い場所ほど魔法師が頻繁に間引きを行っている。故に壁外でも比較的安全地帯だ。
浅層の先には下層に定められている階層がある。浅層よりも圧倒的に広い。
下層も比較的安全地帯ではあるが、安易に踏み入っていい場所ではない。当然浅層とは比べ物にならない危険を伴う地帯だ。
そして下層の先には中層、上層と続いていく。
上層まではウェスペルシュタイン国にとって既知の世界だ。だが、上層より先にも世界は広がっている。
それは――深層と呼称されている領域だ。
深層は限られた者しか足を踏み入れることができない世界である。
未踏の地とまでは言わないが、未踏の地と言っても差し障りがないほど未知の世界だ。人類が到達できる限界地として『人類の限界領域』とも言われている。
深層から先には途方もなく世界が広がっている。なので、当然深層が最も広い領域だ。
奥の階層ほど強力な魔物が跋扈しており、浅層<下層<中層<上層<深層という順に危険度が上がり、領域も広くなる。
そんな中、ジルヴェスターは散歩でもするかのような気軽さで深層へと足を踏み入れていた。
彼は深層へ足を踏み入ることのできる限られた者であった。
「これは……」
城の跡地を探索していたジルヴェスターは気になる物を発見した。
この城は魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、生活圏を追われることとなった際に取り残された文明の名残だと思われる。
城自体が貴重な遺構であり、考古学的な価値が高い。
「……肖像画か?」
ジルヴェスターが手にしたのは、高貴な女性だと思われる人物の肖像画であった。埃を被ってはいるが、人の輪郭と思われる部分が透けて見えていた。
彼は肖像画を覆っている埃を優しく払う。
肖像画は貴重な遺物だ。丁重に扱わなくてはならない。
埃を払い落とすと、はっきりと肖像画を見ることができた。
「金髪碧眼の女性……明らかに高額な物と推測できる宝飾品とドレス。ここはこの一帯を治める貴族が居を構えていた城か?」
改めて城の周囲の風景を思い出す。
城の周囲には住居と思われる残骸が残っていた。
城に近いほど富裕層が住んでいたと思われる屋敷の残骸があり、逆に城から離れている建物ほど庶民的な建造物に思えた。
富裕層が住んでいたと思われる屋敷の方が頑丈に建てられていたのか、比較的原型を留めている。――それでも建物によって差があるが。
庶民的な建物はほとんど原型を留めておらず、見る影もない状態だった。
ジルヴェスターの考察が正しければ、今現在探索している場所は当時この一帯を治めていた領主が居を構えていた領都ということになる。そして城はその貴族の居城だろう。
「……」
ジルヴェスターは肖像画に思い至る点があり目を凝らす。
「気の所為か……? 見覚えがある気がするが……」
肖像画に描かれている女性と似た人物がいたような気がすると思考を巡らす。
(……まあ、今はいいか。持ち帰ってから考えよう)
彼が今現在いる場所は深層だ。
落ち落ち考えている余裕などない。いつ危険が迫るかわからないのだ。
今は偶然にも周辺に魔物の気配は感じられないが、油断していい理由にはならない。――もっとも、魔物がいたところでジルヴェスターにとって危険なのかは別問題だが。
ジルヴェスターは肖像画を『異空間収納』に収納すると、探索を再開した。
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