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囚われの親子編
第2話 会遇(二)
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「――あれ? レアルくんじゃん」
みんなと笑っていたレベッカは、ふと視線を向けた先に見知った人物を発見した。
その言葉に釣られるように一同はレベッカの視線を辿って顔を向ける。
固まって食事をしているレベッカたちからは少し離れた場所に件の人物がいた。
「――レアルくん! 何してるの?」
レアルと呼ばれた人物は昼食を載せたトレイを持ったまま立ち尽くし、困った表情を浮かべていた。その表情に疑問を抱いたレベッカが呼び掛ける。
名前を呼ばれた少年が振り向く。
そして自分の名を呼んだレベッカを発見し、歩み寄る。
「やあ、ヴァンブリートさん。シノノメさんもこんにちは」
少年はトレイを持ったままレベッカとシズカに挨拶をする。
「やっほー」
「こんにちは」
レベッカは手をひらひらと振って挨拶をし、シズカは綺麗な姿勢を崩さずに会釈する。
「それでレアルくんはどうしたの? トレイを持ったまま立ち尽くしていたけど」
レベッカが再度尋ねる。
「いや、あまり席が空いていないくて、どうしたものかと思っていたんだ」
その言葉にレベッカは改めて周囲を見渡す。
「少しは空いてるよ?」
「いや、まあ、そうなんだけどね……」
周囲を見渡したレベッカは所々に空席を見つけた。
しかし、レアルは歯切れ悪そうに言葉を濁す。
「……空席の周りは上級生ばかりだし、顔見知りもいないから座りづらくてね」
「確かに」
レアルの指摘を受けてレベッカは空席の周囲に目を向ける。
すると、確かに空席の周囲は上級生ばかりだった。
「なら私たちと一緒にどう?」
「え、いいのかい? 迷惑じゃないかな?」
「うん。いいよ。みんなもいいよね?」
見かねたレベッカが相席を提案するが、レアルは部外者の自分が邪魔していいものかと逡巡する。
彼の遠慮など知ったものかというようにレベッカは話を進めて一同に確認を取る。
もちろん断る理由はないので、一同は了承した。
「ありがとう。助かるよ」
「ほら、席詰めて!」
「お、おう」
歓迎されたレアルが礼を述べると、レベッカはアレックスに席を詰めるように促す。
そのアレックスは気圧されながらも素直に席を詰める。
「失礼するよ」
一人分のスペースを確保したのでレアルが着席する。アレックスの隣だ。
「――改めて、僕はレアル・イングルス。ヴァンブリートさんとシノノメさんと同じB組なんだ。よろしくね」
席に着いたレアルが自己紹介をする。
レベッカはクラスメイトだからレアルのことを知っていたのである。
レアル・イングルスは金髪碧眼の美男子だ。
綺麗な白い肌に輝くような金髪と、前髪の下から覗く碧眼は彼の端正な顔立ちを彩るかのようだ。
どこかの国の王子様と言われても疑う者がいないほどの眉目秀麗ぶりで、貴公子然とした立ち振る舞いと雰囲気をしている。間違いなく女性から人気があることだろう。
レベッカとシズカ以外の面々も順に自己紹介をする。
「ああ。ヴェステンヴィルキス君のことは知っているよ。入学式の答辞でね」
「ジルくんのことは一年のみんなが知ってるでしょ」
最後に自己紹介したジルヴェスターのことを知っていると言うレアルが理由を述べると、レベッカが口を挟んだ。
その言葉にレアルは「確かに」と微笑みながら頷いた。
「俺もイングルスのことは知っていた」
「え、僕を?」
「ああ。入学式で見掛けたからな」
「そうだったんだ」
ジルヴェスターもレアルのことを知っていたと言うと、彼は驚いて目を瞬いた。
レアルは名家の出ではないし、顔が広いわけでもない。そのことを自覚しているので自分のことを知っていることが不思議だったのだ。
だが理由は単純だった。入学式には全ての新入生が出席している。中には見覚えのある者もいるだろう。
「ああ。あの時の」
「ジルが気にしていた人」
オリヴィアが思い出したように呟くと、ステアも気付いたようだ。
「? 気にしていた?」
その言葉に疑問を抱いたレアルは首を傾げる。
「ジルくんが通り掛かったイングルスくんを見て、「中々できる奴だ」って言っていたのよ」
「そんなこと通り掛かっただけでわかるのかい?」
説明を聞いてレアルは一層疑問を深めた。
「ジルだから」
「ジルくんだから」
ステラとオリヴィアは決まり文句のように同時に言う。
全く説明になっていないが、レアル以外の面々も「うんうん」と頷いている。
どうやら三か月ほどの付き合いでジルヴェスターのことをだいぶ理解してきているようだ。
「そ、そっか」
一同の反応を見てレアルは無理やり自分を納得させた。何故か気にしたら負けだと思ったのだ。
「――そうだ。せっかくだし僕のことはレアルでいいよ」
少しだけ居心地が悪くなったレアルは、苗字ではなく、個人名で呼んでくれと提案することで話を逸らした。
「そうか。なら俺のことももっと気軽に呼んでくれ」
「うん。わかった」
ジルヴェスターとレアルが頷き合う。
「――それより、レアルくん最近顔色悪いけど大丈夫?」
「私も気になっていたわ」
話が一段落したところでレベッカがレアルに尋ねると、シズカも同調した。
「そんなに顔色悪かったかな?」
尋ねられたレアルは苦笑しながら逆に質問する。
「うん。悪かったよ。今日は比較的マシそうだけど」
「ええ……そんなに悪かったのか。なんか恥ずかしいな」
レアルは頬を掻くような仕草をして気恥ずかしそうにする。
「ここ最近少し忙しくて寝不足気味なんだ」
疲れを吐き出すかのように小さく溜息を吐く。
「そうなんだ。ちゃんと休んだ方がいいよ」
「うん。気をつけるよ」
レベッカが休養を促す。
「レアルくんは春季休暇の予定は決まってる?」
先程まで話題にしていた内容をレベッカがレアルにも尋ねる。
レアルはレベッカとシズカ以外とは初対面だ。
なので、レアルがみんなと打ち解けられるように取り計らっているのかもしれない。
彼女のコミュニケーション能力の高さと器量の良さが窺える。
「僕は色々とやることがあるから、それを消化していたら休暇期間が終わってしまいそうだよ」
「休暇期間くらいしっかり休みなよ」
「うん。そうしたいのは山々なんだけどね。状況が許してくれないんだ」
どうやらレアルは春季休暇も忙しないようだ。
既に忙しい毎日を送っているようだが、それは春季休暇にまで影響しているのだろうか。
「もし時間ができたら、私と一緒にレアルくんもシズカの実家に遊びにくるといいよ」
「お前がそれを決めるのかよ」
多忙なレアルを見かね、レベッカが息抜きを兼ねてシズカの実家に遊びに行くことを勧める。しかもシズカに確認を取らずにだ。そのことをアレックスが指摘する。
「私は大丈夫よ」
勝手に話を進められたシズカは苦笑しながら了承した。
「どうだろ。多分、厳しいと思う」
「そっか~」
「でも、もし都合がついたら検討するよ。ありがとうね」
レアルは少し悩んだが、やはり忙しくて都合が合わないようだ。
誘ってくれたことは素直に嬉しかったみたいで笑みを浮かべている。
その後も昼食の合間に会話を挟みつつ過ごす一同であった。
みんなと笑っていたレベッカは、ふと視線を向けた先に見知った人物を発見した。
その言葉に釣られるように一同はレベッカの視線を辿って顔を向ける。
固まって食事をしているレベッカたちからは少し離れた場所に件の人物がいた。
「――レアルくん! 何してるの?」
レアルと呼ばれた人物は昼食を載せたトレイを持ったまま立ち尽くし、困った表情を浮かべていた。その表情に疑問を抱いたレベッカが呼び掛ける。
名前を呼ばれた少年が振り向く。
そして自分の名を呼んだレベッカを発見し、歩み寄る。
「やあ、ヴァンブリートさん。シノノメさんもこんにちは」
少年はトレイを持ったままレベッカとシズカに挨拶をする。
「やっほー」
「こんにちは」
レベッカは手をひらひらと振って挨拶をし、シズカは綺麗な姿勢を崩さずに会釈する。
「それでレアルくんはどうしたの? トレイを持ったまま立ち尽くしていたけど」
レベッカが再度尋ねる。
「いや、あまり席が空いていないくて、どうしたものかと思っていたんだ」
その言葉にレベッカは改めて周囲を見渡す。
「少しは空いてるよ?」
「いや、まあ、そうなんだけどね……」
周囲を見渡したレベッカは所々に空席を見つけた。
しかし、レアルは歯切れ悪そうに言葉を濁す。
「……空席の周りは上級生ばかりだし、顔見知りもいないから座りづらくてね」
「確かに」
レアルの指摘を受けてレベッカは空席の周囲に目を向ける。
すると、確かに空席の周囲は上級生ばかりだった。
「なら私たちと一緒にどう?」
「え、いいのかい? 迷惑じゃないかな?」
「うん。いいよ。みんなもいいよね?」
見かねたレベッカが相席を提案するが、レアルは部外者の自分が邪魔していいものかと逡巡する。
彼の遠慮など知ったものかというようにレベッカは話を進めて一同に確認を取る。
もちろん断る理由はないので、一同は了承した。
「ありがとう。助かるよ」
「ほら、席詰めて!」
「お、おう」
歓迎されたレアルが礼を述べると、レベッカはアレックスに席を詰めるように促す。
そのアレックスは気圧されながらも素直に席を詰める。
「失礼するよ」
一人分のスペースを確保したのでレアルが着席する。アレックスの隣だ。
「――改めて、僕はレアル・イングルス。ヴァンブリートさんとシノノメさんと同じB組なんだ。よろしくね」
席に着いたレアルが自己紹介をする。
レベッカはクラスメイトだからレアルのことを知っていたのである。
レアル・イングルスは金髪碧眼の美男子だ。
綺麗な白い肌に輝くような金髪と、前髪の下から覗く碧眼は彼の端正な顔立ちを彩るかのようだ。
どこかの国の王子様と言われても疑う者がいないほどの眉目秀麗ぶりで、貴公子然とした立ち振る舞いと雰囲気をしている。間違いなく女性から人気があることだろう。
レベッカとシズカ以外の面々も順に自己紹介をする。
「ああ。ヴェステンヴィルキス君のことは知っているよ。入学式の答辞でね」
「ジルくんのことは一年のみんなが知ってるでしょ」
最後に自己紹介したジルヴェスターのことを知っていると言うレアルが理由を述べると、レベッカが口を挟んだ。
その言葉にレアルは「確かに」と微笑みながら頷いた。
「俺もイングルスのことは知っていた」
「え、僕を?」
「ああ。入学式で見掛けたからな」
「そうだったんだ」
ジルヴェスターもレアルのことを知っていたと言うと、彼は驚いて目を瞬いた。
レアルは名家の出ではないし、顔が広いわけでもない。そのことを自覚しているので自分のことを知っていることが不思議だったのだ。
だが理由は単純だった。入学式には全ての新入生が出席している。中には見覚えのある者もいるだろう。
「ああ。あの時の」
「ジルが気にしていた人」
オリヴィアが思い出したように呟くと、ステアも気付いたようだ。
「? 気にしていた?」
その言葉に疑問を抱いたレアルは首を傾げる。
「ジルくんが通り掛かったイングルスくんを見て、「中々できる奴だ」って言っていたのよ」
「そんなこと通り掛かっただけでわかるのかい?」
説明を聞いてレアルは一層疑問を深めた。
「ジルだから」
「ジルくんだから」
ステラとオリヴィアは決まり文句のように同時に言う。
全く説明になっていないが、レアル以外の面々も「うんうん」と頷いている。
どうやら三か月ほどの付き合いでジルヴェスターのことをだいぶ理解してきているようだ。
「そ、そっか」
一同の反応を見てレアルは無理やり自分を納得させた。何故か気にしたら負けだと思ったのだ。
「――そうだ。せっかくだし僕のことはレアルでいいよ」
少しだけ居心地が悪くなったレアルは、苗字ではなく、個人名で呼んでくれと提案することで話を逸らした。
「そうか。なら俺のことももっと気軽に呼んでくれ」
「うん。わかった」
ジルヴェスターとレアルが頷き合う。
「――それより、レアルくん最近顔色悪いけど大丈夫?」
「私も気になっていたわ」
話が一段落したところでレベッカがレアルに尋ねると、シズカも同調した。
「そんなに顔色悪かったかな?」
尋ねられたレアルは苦笑しながら逆に質問する。
「うん。悪かったよ。今日は比較的マシそうだけど」
「ええ……そんなに悪かったのか。なんか恥ずかしいな」
レアルは頬を掻くような仕草をして気恥ずかしそうにする。
「ここ最近少し忙しくて寝不足気味なんだ」
疲れを吐き出すかのように小さく溜息を吐く。
「そうなんだ。ちゃんと休んだ方がいいよ」
「うん。気をつけるよ」
レベッカが休養を促す。
「レアルくんは春季休暇の予定は決まってる?」
先程まで話題にしていた内容をレベッカがレアルにも尋ねる。
レアルはレベッカとシズカ以外とは初対面だ。
なので、レアルがみんなと打ち解けられるように取り計らっているのかもしれない。
彼女のコミュニケーション能力の高さと器量の良さが窺える。
「僕は色々とやることがあるから、それを消化していたら休暇期間が終わってしまいそうだよ」
「休暇期間くらいしっかり休みなよ」
「うん。そうしたいのは山々なんだけどね。状況が許してくれないんだ」
どうやらレアルは春季休暇も忙しないようだ。
既に忙しい毎日を送っているようだが、それは春季休暇にまで影響しているのだろうか。
「もし時間ができたら、私と一緒にレアルくんもシズカの実家に遊びにくるといいよ」
「お前がそれを決めるのかよ」
多忙なレアルを見かね、レベッカが息抜きを兼ねてシズカの実家に遊びに行くことを勧める。しかもシズカに確認を取らずにだ。そのことをアレックスが指摘する。
「私は大丈夫よ」
勝手に話を進められたシズカは苦笑しながら了承した。
「どうだろ。多分、厳しいと思う」
「そっか~」
「でも、もし都合がついたら検討するよ。ありがとうね」
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