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囚われの親子編
第11話 不審死(二)
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◇ ◇ ◇
母と談笑していたレアルは、家主が帰宅したので執務室に出向いていた。
執務室には一目で富をつぎ込んだとわかる装飾品が設置されており、絵画やオブジェなどが一際存在感を放っている。
「遅かったな」
「申し訳ありません」
執務室のデスクに腰掛けている壮年の男性が冷めた目で出迎えると、対面にいるレアルは頭を下げたまま微動だにしない。
壮年の男は特筆すべき特徴のない男であった。大勢の中にいると埋没してしまいそうな印象を受ける。
「それで成果はどうだ?」
「ご満足頂けるかと。倉庫に運んでおきましたので後程ご確認ください」
「そうか」
レアルの帰還が遅れた理由には然程も興味がないようだ。自分が命じていた件の成果にしか興味を示していない。
(あれで足りないと言われたらさすがに文句の一つでも言ってやる)
レアルは能面を貼り付けたかのような、全く感情の籠っていない表情で頭を下げたまま悪態をつく。
(こっちは死にかけたんだ……)
レアルは対面に座す男の命で魔晶石を集めていた。
壁外に赴き魔物を討伐して魔晶石を回収する。最も効率良く一般的な手段で掻き集めた。
その際に疲労と寝不足が原因で意識を失うという失態を犯し、運良くジルヴェスターが近くを通らなければ今頃魔物の胃の中にいたはずだ。
集めさせた魔晶石をどうするのかは知らないが、おそらく金儲けにでも使うのだろうとレアルは勝手に思っていた。
(来る日も来る日もこき使われて……いい加減にしてくれ……)
連日休む間がないほど働かされているレアルは疲労困憊だった。
「お前にはまたやってもらうことがある」
だが、そんなレアルの状態など微塵も気に掛けていない男が次の仕事を命じようとしている。
(嘘でしょ……)
レアルは顔だけ上げて男の方を向いたが、内心は愕然としていた。少しは労われよと。
「詳細が決まり次第動いてもらう。それまでは好きに過ごしていろ」
「……承知致しました」
予想外の言葉に返事が一拍遅れてしまった。
(良かった……少しは休める時間あるかな)
レアルは心底安堵した。
まさか次の仕事までの空いた時間を自由に過ごさせてもらえるとは思っていなかったからだ。
ここ最近は信じられない量の仕事を命じられて多忙な日々を送っていたが、普段はこんな毎日のようにこき使われているわけではない。
連日の多忙さに感覚が麻痺しているが、今まではちゃんと休める日があった。なので、今回自由な時間を与えられたのは特別珍しいことではない。たまたま最近が異常だっただけだ。
「下がっていいぞ」
「畏まりました」
男に退室を促されたレアルは振り返って扉へ歩を進めた。
「失礼致します」
扉に辿り着くと、一度男の方へ向き直り礼をしてから退室する。
そして丁寧に扉を閉めたレアルは、盛大に溜息を吐いた。
「はぁ~。よし、寝よう。眠れなくなるまで寝よう。絶対に」
確固たる意志の宿った眼差しで惰眠を貪る決意をする。
(寮に戻ろう。今すぐ戻ろう)
この屋敷では安眠などできない。彼が心から安眠できるのは寮の自室だけだ。なので、惰眠を貪る為に大急ぎで寮へ戻る。その前に母に会いに行くのを忘れない辺りはしっかりしていた。
母と談笑していたレアルは、家主が帰宅したので執務室に出向いていた。
執務室には一目で富をつぎ込んだとわかる装飾品が設置されており、絵画やオブジェなどが一際存在感を放っている。
「遅かったな」
「申し訳ありません」
執務室のデスクに腰掛けている壮年の男性が冷めた目で出迎えると、対面にいるレアルは頭を下げたまま微動だにしない。
壮年の男は特筆すべき特徴のない男であった。大勢の中にいると埋没してしまいそうな印象を受ける。
「それで成果はどうだ?」
「ご満足頂けるかと。倉庫に運んでおきましたので後程ご確認ください」
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レアルの帰還が遅れた理由には然程も興味がないようだ。自分が命じていた件の成果にしか興味を示していない。
(あれで足りないと言われたらさすがに文句の一つでも言ってやる)
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(こっちは死にかけたんだ……)
レアルは対面に座す男の命で魔晶石を集めていた。
壁外に赴き魔物を討伐して魔晶石を回収する。最も効率良く一般的な手段で掻き集めた。
その際に疲労と寝不足が原因で意識を失うという失態を犯し、運良くジルヴェスターが近くを通らなければ今頃魔物の胃の中にいたはずだ。
集めさせた魔晶石をどうするのかは知らないが、おそらく金儲けにでも使うのだろうとレアルは勝手に思っていた。
(来る日も来る日もこき使われて……いい加減にしてくれ……)
連日休む間がないほど働かされているレアルは疲労困憊だった。
「お前にはまたやってもらうことがある」
だが、そんなレアルの状態など微塵も気に掛けていない男が次の仕事を命じようとしている。
(嘘でしょ……)
レアルは顔だけ上げて男の方を向いたが、内心は愕然としていた。少しは労われよと。
「詳細が決まり次第動いてもらう。それまでは好きに過ごしていろ」
「……承知致しました」
予想外の言葉に返事が一拍遅れてしまった。
(良かった……少しは休める時間あるかな)
レアルは心底安堵した。
まさか次の仕事までの空いた時間を自由に過ごさせてもらえるとは思っていなかったからだ。
ここ最近は信じられない量の仕事を命じられて多忙な日々を送っていたが、普段はこんな毎日のようにこき使われているわけではない。
連日の多忙さに感覚が麻痺しているが、今まではちゃんと休める日があった。なので、今回自由な時間を与えられたのは特別珍しいことではない。たまたま最近が異常だっただけだ。
「下がっていいぞ」
「畏まりました」
男に退室を促されたレアルは振り返って扉へ歩を進めた。
「失礼致します」
扉に辿り着くと、一度男の方へ向き直り礼をしてから退室する。
そして丁寧に扉を閉めたレアルは、盛大に溜息を吐いた。
「はぁ~。よし、寝よう。眠れなくなるまで寝よう。絶対に」
確固たる意志の宿った眼差しで惰眠を貪る決意をする。
(寮に戻ろう。今すぐ戻ろう)
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