最強魔法師の壁内生活

雅鳳飛恋

文字の大きさ
75 / 141
囚われの親子編

第12話 不審死(三)

しおりを挟む
 ◇ ◇ ◇

 翌日の三月二十三日――ジルヴェスターの姿はランチェスター学園にあった。

 ランチェスター学園内にある桜並木を歩いて通学していると、突然背後から声を掛けられた。

「おはよう、ジル」
「ああ、おはよう」

 声の主はレアルであった。
 レアルはジルヴェスターの横に並んで歩みを共にする。

 ちなみにジルヴェスターは突然声を掛けられても全く動じなかった。
 レアルが近付いてきているのは気配で感じ取っていたからだ。

「体調はどうだ?」
「快調とはいかないけど、少しゆっくりできそうだから大丈夫だよ」
「そうか」
「ジルには本当に世話になったね。ありがとう」

 レアルは心の底から感謝していた。
 一歩間違えば命が無かったのだから、いくら感謝してもしきれないだろう。

「体調が万全でない時は壁外には出向かないことだな」
「はは……耳が痛いよ」

 魔法師にとって体調管理は怠れない要素だ。義務と言ってもいい。
 体調次第で生死を分けることが多々ある。少しでも身体に違和感がある場合は素直に休むのが賢明な判断だ。

 事情が事情だったとはいえ、体調管理を怠った自覚があるレアルは苦笑するしかなかった。

「――ところでジルは壁外で何をしていたんだい? 答えられないなら言わなくてもいいけど」

 レアルは気になっていたことを率直に尋ねる。

 魔法師には極秘の任務があるので、その場合は答えられない。
 極秘ではなくても答えたくない場合もあるだろう。
 それに魔法師は自分の手の内を明かすのを忌避する傾向にある。故に、探られるのを嫌い自分の活動内容を口外しないことは良くあることだ。

「別に大したことではないぞ。ただ知的探求心を満たしに行っただけだ」
「そんな散歩にでも行くかのような気軽さで壁外に行くのは君くらいだよ……」
「そんなことはないだろ」
「そんなことあるよ」

 盛大に呆れるレアル。

(特級はみんなそんなものだと思うが……)

 ジルヴェスターは他の特級魔法師のことを脳裏に思い浮かべる。
 特級魔法師を基準に物事を考えては確実に齟齬そごが生じるのだが、そのことについて指摘できる者はこの場には不在であった。

(特級……?)

 特級魔法師のことを一人一人順に思い浮かべていると、記憶にあるとあることが引っ掛かった。

(深層で見つけた肖像画……あれはもしかすると――)

 思考に耽って黙り込んでしまった友人の姿に疑問を抱いたレアルが声を掛ける。

「ジル? どうかした?」
「――あ、いや、すまん。なんでもない。少し考え事をしていた」
「何か光明を見出したような表情だね」

 レアルはジルヴェスターの些細な表情の変化を読み取った。

「ああ。お陰様でな」
「そっか。それは良かったね」

 記憶の片隅で引っ掛かっていた疑問の真相に近付くことができ、胸のつかえが下りる気分だった。

(都合がついたら確認しに行ってみるか)

 ジルヴェスターは脳内で予定を確認する。

「今日を含めて後二日で春季休暇だね」
「そうだな」

 今日は二十三日だ。二十六日から春季休暇を迎える。

「とりあえず僕は寝まくるよ」
「ああ、それがいい。今度は壁外で倒れることがないようにな」
「はは、本当にね」

 ジルヴェスターの揶揄からかいにレアルは笑みを返す。
 彼の春季休暇の予定は、とにかく時間が許す限り寝ることだった。仕事を命じられるかもしれないが、それまでは惰眠を貪る気満々である。
 レベッカにシズカの実家に遊びに行かないかと誘われているが、満足するまで寝てから決めるつもりでいた。

 そうして並木道を通り抜けた二人は校舎に入っていく。

「僕はちょっと職員室に寄って行くからここで失礼するよ」
「そうか」
「改めて先生に謝罪してくる」
「真面目だな」

 レアルは、二十一日は欠席し、二十二日は遅刻している。
 欠席と遅刻をしたこともだが、担任に心配を掛けてしまった。遅刻した時に謝罪しているが簡易だったので、今から改めて話をしに行くつもりだった。真面目な彼らしい誠実さだ。

「それじゃまたね」
「ああ」

 別れの言葉を告げるとレアルは職員室を目指して歩みを再開する。対してジルヴェスターは自分の在籍するクラスの教室へ向けて歩を進めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...