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対抗戦編
第13話 懇親会
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◇ ◇ ◇
七月下旬。
遂に対抗戦の日がやってきた。
出場選手は期待と不安を胸に抱えている。
作戦スタッフは可能な限りのサポートを行った。後は作戦会議を行ったら見守るだけだ。
技術スタッフはMACの調整を完璧に行ったが、対抗戦開始直前まで担当している魔法師と二人三脚で調整を確認する。
その他の対抗戦に関われない生徒は応援に駆けつけたり、夏季休暇を謳歌したりするはずだ。
そしてキュース区のサントロローデに場面を移す。
サントロローデにあるホテルに各校の生徒が集結していた。
これから懇親会が開かれるからだ。
ちなみに学校毎に宿泊先として提供されるホテルは異なる。
サントロローデは観光地としても人気なのでホテルの数が多い。なので、十二校毎に別々のホテルを用意できる。
とはいえホテルによってグレードが異なる。高級ホテルもあれば、良心的な価格のホテルもある。
前回の対抗戦の順位が上だった学校からグレードの高いホテルを提供してもらえる仕組みだ。
その為、今回はランチェスター学園が最も高級なホテルを利用させてもらうことになっている。
そして各校の出場選手、作戦スタッフ、技術スタッフは、各々が泊まるホテルの部屋に荷物を置いた後、ランチェスター学園の生徒が利用するホテルに足を運んでいた。
懇親会が行われるホテルは、協力してもらっているホテルの中で最もグレードの高いホテルで行うことになっているからだ。
前回の優勝校はわざわざ別のホテルに足を運ばなくてもいい。優勝校の特権だ。
ジルヴェスターが会場に足を踏み入れると、既にほとんどの生徒が集合していた。
ランチェスター学園以外の制服に身を包んだ者が多くいるので不思議な感覚だ。
ジルヴェスターは入り口近くの壁に背中を預ける。
懇親会は立食形式のパーティーだ。
各々自由に軽食や飲み物を手に取って舌鼓を打っていた。
少し離れた場所ではアレックスがプリム女学院の生徒をナンパしている。
オリヴィアは甲斐甲斐しくステラのお世話をしているようだ。
レアルは他校の女子に囲まれて困り果てており、助けを求めるような視線を周囲に向けている。
イザベラとリリアナはデザートに夢中だ。
料理が趣味のレベッカは興味津々に味を研究している。ビアンカとシズカは付き合わされているようだ。
その他の面々も思い思いのひと時を過ごしていた。
みんなが飲食や談笑に興じている姿を眺めていると、前方から両手に一つずつグラスを持ったクラウディアが歩み寄ってくる。
足音一つ立てない足取りは優雅であり淑女然としていて美しい。
「楽しんでいますか?」
そう言うと、クラウディアは右手に持ったグラスを手渡す。
グラスを受け取ったジルヴェスターは中身を一口啜る。
中身は白葡萄のジュースだった。
味は甘味が強く、後味がさっぱりしている。
渋みが少ないので甘い葡萄ジュースを好む人や子供などにおすすめだ。
クラウディアも同じものを飲んでいる。
「正直こういう場はあまり好きではないんだが……」
「ふふ、そうでしたね」
ジルヴェスターは賑やかな場所を好まない。
静かな場所で一人黙々と研究や開発、読書などをしていたいタイプだ。
だからこそ輪に加わらずに隅で静観していた。
「お前はこんなところにいてもいいのか?」
クラウディアは生徒会長としても、ジェニングス家の令嬢としても、交誼を結んで親交を育む必要があるはずだ。
そういった政治的側面を抜きにしても、純粋に懇親会を楽しんだっていい。
「俺に付き合わなくてもいいんだぞ」
もしかしたら一人でいる自分に気を利かせてくれているのだろうか? とジルヴェスターは思った。
「いえ、少々嫌気が差していたところでしたので……」
クラウディアは苦笑しながらさりげなく数ヶ所に視線を向ける。
その視線の先を追うと、こちらを窺うように見ている他校の男子生徒が複数人いた。
いや、正確に言うとクラウディアのことを見ている。
「なるほど。お前も大変だな」
クラウディアは誰が見てもまごうことなき美女だ。
彫刻のような整った顔立ちに、凹凸のはっきりとした身体つきをしている。手足が長くてスタイル抜群だ。
お淑やかで品位があり、落ち着いた雰囲気をしている淑女の代表のような立ち振る舞いに誰もが視線を奪われる。
魔法師としての実力も同世代の中で随一だ。
正に容姿端麗と文武両道を体現している才媛である。
しかも魔法師界の名門であるジェニングス家の令嬢というおまけ付きだ。
そんな彼女のことを放っておく男の方が少ないだろう。
男が夢中になるのもわかる。振り向かせたいと思うのは道理だ。
色恋の話だけに限らない。家同士の繋がりを構築したいと目論む者もいるはずだ。
ちなみにランチェスター学園の男子生徒がクラウディアを口説くことはない。
畏れ多いのもあるが、彼女がジルヴェスター至上主義なのを知っているからだ。
崇拝している相手がジルヴェスターだとは知らなくても、慕ってやまない相手がいることは周知の事実である。
クラウディアは他校の男子に囲まれ、粗相のないように愛想笑いをしていた。だがあまりにも人数が多く、その上しつこかった。
それに辟易してしまい、ジルヴェスターのもとに避難して来たのである。――男と楽しそうに話しているところに割って入れる勇気のある者がいないとも限らないが。
諸々の事情を察したジルヴェスターは、クラウディアに同情の眼差しを向けた。
七月下旬。
遂に対抗戦の日がやってきた。
出場選手は期待と不安を胸に抱えている。
作戦スタッフは可能な限りのサポートを行った。後は作戦会議を行ったら見守るだけだ。
技術スタッフはMACの調整を完璧に行ったが、対抗戦開始直前まで担当している魔法師と二人三脚で調整を確認する。
その他の対抗戦に関われない生徒は応援に駆けつけたり、夏季休暇を謳歌したりするはずだ。
そしてキュース区のサントロローデに場面を移す。
サントロローデにあるホテルに各校の生徒が集結していた。
これから懇親会が開かれるからだ。
ちなみに学校毎に宿泊先として提供されるホテルは異なる。
サントロローデは観光地としても人気なのでホテルの数が多い。なので、十二校毎に別々のホテルを用意できる。
とはいえホテルによってグレードが異なる。高級ホテルもあれば、良心的な価格のホテルもある。
前回の対抗戦の順位が上だった学校からグレードの高いホテルを提供してもらえる仕組みだ。
その為、今回はランチェスター学園が最も高級なホテルを利用させてもらうことになっている。
そして各校の出場選手、作戦スタッフ、技術スタッフは、各々が泊まるホテルの部屋に荷物を置いた後、ランチェスター学園の生徒が利用するホテルに足を運んでいた。
懇親会が行われるホテルは、協力してもらっているホテルの中で最もグレードの高いホテルで行うことになっているからだ。
前回の優勝校はわざわざ別のホテルに足を運ばなくてもいい。優勝校の特権だ。
ジルヴェスターが会場に足を踏み入れると、既にほとんどの生徒が集合していた。
ランチェスター学園以外の制服に身を包んだ者が多くいるので不思議な感覚だ。
ジルヴェスターは入り口近くの壁に背中を預ける。
懇親会は立食形式のパーティーだ。
各々自由に軽食や飲み物を手に取って舌鼓を打っていた。
少し離れた場所ではアレックスがプリム女学院の生徒をナンパしている。
オリヴィアは甲斐甲斐しくステラのお世話をしているようだ。
レアルは他校の女子に囲まれて困り果てており、助けを求めるような視線を周囲に向けている。
イザベラとリリアナはデザートに夢中だ。
料理が趣味のレベッカは興味津々に味を研究している。ビアンカとシズカは付き合わされているようだ。
その他の面々も思い思いのひと時を過ごしていた。
みんなが飲食や談笑に興じている姿を眺めていると、前方から両手に一つずつグラスを持ったクラウディアが歩み寄ってくる。
足音一つ立てない足取りは優雅であり淑女然としていて美しい。
「楽しんでいますか?」
そう言うと、クラウディアは右手に持ったグラスを手渡す。
グラスを受け取ったジルヴェスターは中身を一口啜る。
中身は白葡萄のジュースだった。
味は甘味が強く、後味がさっぱりしている。
渋みが少ないので甘い葡萄ジュースを好む人や子供などにおすすめだ。
クラウディアも同じものを飲んでいる。
「正直こういう場はあまり好きではないんだが……」
「ふふ、そうでしたね」
ジルヴェスターは賑やかな場所を好まない。
静かな場所で一人黙々と研究や開発、読書などをしていたいタイプだ。
だからこそ輪に加わらずに隅で静観していた。
「お前はこんなところにいてもいいのか?」
クラウディアは生徒会長としても、ジェニングス家の令嬢としても、交誼を結んで親交を育む必要があるはずだ。
そういった政治的側面を抜きにしても、純粋に懇親会を楽しんだっていい。
「俺に付き合わなくてもいいんだぞ」
もしかしたら一人でいる自分に気を利かせてくれているのだろうか? とジルヴェスターは思った。
「いえ、少々嫌気が差していたところでしたので……」
クラウディアは苦笑しながらさりげなく数ヶ所に視線を向ける。
その視線の先を追うと、こちらを窺うように見ている他校の男子生徒が複数人いた。
いや、正確に言うとクラウディアのことを見ている。
「なるほど。お前も大変だな」
クラウディアは誰が見てもまごうことなき美女だ。
彫刻のような整った顔立ちに、凹凸のはっきりとした身体つきをしている。手足が長くてスタイル抜群だ。
お淑やかで品位があり、落ち着いた雰囲気をしている淑女の代表のような立ち振る舞いに誰もが視線を奪われる。
魔法師としての実力も同世代の中で随一だ。
正に容姿端麗と文武両道を体現している才媛である。
しかも魔法師界の名門であるジェニングス家の令嬢というおまけ付きだ。
そんな彼女のことを放っておく男の方が少ないだろう。
男が夢中になるのもわかる。振り向かせたいと思うのは道理だ。
色恋の話だけに限らない。家同士の繋がりを構築したいと目論む者もいるはずだ。
ちなみにランチェスター学園の男子生徒がクラウディアを口説くことはない。
畏れ多いのもあるが、彼女がジルヴェスター至上主義なのを知っているからだ。
崇拝している相手がジルヴェスターだとは知らなくても、慕ってやまない相手がいることは周知の事実である。
クラウディアは他校の男子に囲まれ、粗相のないように愛想笑いをしていた。だがあまりにも人数が多く、その上しつこかった。
それに辟易してしまい、ジルヴェスターのもとに避難して来たのである。――男と楽しそうに話しているところに割って入れる勇気のある者がいないとも限らないが。
諸々の事情を察したジルヴェスターは、クラウディアに同情の眼差しを向けた。
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