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第一章 都合のいい女と憧れの女性
第11話 告白
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◆ ◆ ◆
「――ごめん。こんなこと言われても困るよね……」
悠くんが申し訳なさそうに私の耳元で呟く。
その声には覇気がなくて弱々しさがあるけれど、しっかりと気持ちを伝えようとしてくれているのはひしひしと感じる。
正直、今の私は頭が混乱していて思考力を欠いている。悠くんに動揺を悟られないようにするだけで精一杯。息子のように想っている男の子に突然告白されたら誰だって驚くと思う。
普通なら揶揄われていると思うよね?
でも悠くんは冗談でこんなことをする子じゃない。だから本気なのだろう。
それでも揶揄われている可能性を探ってしまうのは、今の状況を受け入れきれていない証拠なのかもしれない。
彼が勇気を振り絞って想いを告げてくれたのだから、私もちゃんと向き合わないといけない。
そのためには、まず確認しておかないといけないことがある。
「その、確認なんだけど……」
「うん」
「悠くんが言う好きっていうのは、恋愛対象としてで合ってる?」
「うん。合ってる」
悠くんは私の質問に頷くと、先程までより強く抱き締めてきた。
男の人にこんなに強く抱きしめられるのが久しぶりすぎて、少しだけドキッとしてしまった。
悠くんにバレていなければいいけど……。
正直言うと、私も女なので男性に好意を寄せられることに悪い気はしない。夫との関係が冷めきっているから尚更。
でも悠くんは私にとって息子同然の男の子だから複雑な心境だ。
息子のように想っている子に好かれているのは素直に嬉しい。だけれど、それはあくまでも親子愛のような好意だったらの話だ。
そもそも彼は親友の息子だし、私とは親子ほど年が離れている。申し訳ないけど彼のことは息子のようにしか思えない。
それに親バカかもしれないけれど、悠くんは見た目がいいし、優しくて気遣いができる子だ。
だから彼ならもっと若くてかわいい女の子を虜にできるはず。
私のようなおばさんが相手だと悠くんは幸せになれないもの。
だって私はもういい年だからすぐに今よりも老けてしまうし、彼よりもだいぶ早く死んでしまう。
第一、親友の息子に手を出すなんて麗子に顔向けできない。
悠くんには幸せになってほしいけれど、私は彼の気持ちに応えてあげることができない。
きっと彼を幸せにしてくれる素敵なお嫁さんが現れてくれるわ。
「今まで自分の気持ちを抑え込んでいたんだけど、舞さんが孝二さんと上手くいってないと知って我慢できなくなってしまったんだ」
「そっか……」
苦しそうに言葉を絞り出す悠くんの様子に、私の胸が締めつけられる。
好きな気持ちを封じ込めることがどれだけ辛いことか。しかも物心ついた頃からずっとだ。
私も夫との関係で押し殺している感情はあるけれど、悠くんほど長い期間ではないし、それなりに人生経験を積んでいる大人だから気持ちに折り合いをつけられる。
今の悠くんと同じような年齢の時にそんな長い期間、自分の気持ちを押し殺したことなんて私には経験がないから彼の心情は想像することしかできない。
好意を寄せる相手と距離があるならともかく、私と悠くんは頻繁に顔を会わせている。もしかしたら悠くんは私と会う度に自分の気持ちを抑え込んでいたのかもしれない。
私が彼のお母さんの親友であることと、既婚者であるという望みのない事実。それが悠くんの心を相当苦しめていたはず。
自分の想いが報われることはないとわかっているのに、好きになってしなった以上はそう簡単に気持ちを捨てられないだろう。
やるせない気持ちを抱えたまま想い人と接し続けなければならなかったことが、どれだけ辛いことかは想像にかたくない。
そこまで考えが行きつくと、私の心は罪悪感に苛まれる。
もし私が悠くんの好意にもっと早く気づいてあげることができていたのなら、彼はこんなに苦しまずに済んだのかもしれない。
「気づいてあげられなくてごめんね」
私が謝ったところで慰めにもならないだろう。
それでも彼の心が少しでも軽くなる可能性があるのなら私はなんだってする。
「舞さんはなにも悪くないよ」
頭上で悠くんが首を左右に振っているのが感触でわかる。
「正直、悠くんみたいな若くてかっこいい子に好きになってもらえたのはとても嬉しい。でもごめんね。悠くんの気持ちには応えてあげられないの……」
「うん……わかってる……」
悠くんの寂しそうな声が鋭利な刃物となって私の胸を突き刺す。
「舞さんが既婚者なのも、俺が息子のようにしか思われていないのも全部わかってる」
絞り出すように言葉を紡ぐ悠くんの様子に物凄く罪悪感が押し寄せてくるけれど、逃げるわけにはいかない。彼とはしっかり向き合わないといけないから。
「だけど、どうしようもないくらい舞さんのことが好きなんだ。この気持ちはどう足掻いても抑えきれない」
「悠くんにそんなに想ってもらえて私は本当に嬉しいよ。ありがとう」
こんなに直球で愛情を向けられるのが久しぶりだからか、年甲斐もなく私の渇いた心が潤されていく。
もし相手が悠くんじゃなくて、もっと年齢が近くて交流のある男性だったら絆されていたかもしれない。
そう思ってしまうほど、私は夫との関係に参っているのかも……。
だからって悠くんに慰めてもらうわけにはいかない。彼の好意につけ込んで甘えるのは間違っている。私は彼にそんな卑怯なことをしたくはないし、そこまで恥知らずでもない。
そもそも結婚している以上、不貞を働く気は毛頭ない。どんなに夫に愛想を尽かしていても、関係が冷めきっていてもだ。
「――ごめん。こんなこと言われても困るよね……」
悠くんが申し訳なさそうに私の耳元で呟く。
その声には覇気がなくて弱々しさがあるけれど、しっかりと気持ちを伝えようとしてくれているのはひしひしと感じる。
正直、今の私は頭が混乱していて思考力を欠いている。悠くんに動揺を悟られないようにするだけで精一杯。息子のように想っている男の子に突然告白されたら誰だって驚くと思う。
普通なら揶揄われていると思うよね?
でも悠くんは冗談でこんなことをする子じゃない。だから本気なのだろう。
それでも揶揄われている可能性を探ってしまうのは、今の状況を受け入れきれていない証拠なのかもしれない。
彼が勇気を振り絞って想いを告げてくれたのだから、私もちゃんと向き合わないといけない。
そのためには、まず確認しておかないといけないことがある。
「その、確認なんだけど……」
「うん」
「悠くんが言う好きっていうのは、恋愛対象としてで合ってる?」
「うん。合ってる」
悠くんは私の質問に頷くと、先程までより強く抱き締めてきた。
男の人にこんなに強く抱きしめられるのが久しぶりすぎて、少しだけドキッとしてしまった。
悠くんにバレていなければいいけど……。
正直言うと、私も女なので男性に好意を寄せられることに悪い気はしない。夫との関係が冷めきっているから尚更。
でも悠くんは私にとって息子同然の男の子だから複雑な心境だ。
息子のように想っている子に好かれているのは素直に嬉しい。だけれど、それはあくまでも親子愛のような好意だったらの話だ。
そもそも彼は親友の息子だし、私とは親子ほど年が離れている。申し訳ないけど彼のことは息子のようにしか思えない。
それに親バカかもしれないけれど、悠くんは見た目がいいし、優しくて気遣いができる子だ。
だから彼ならもっと若くてかわいい女の子を虜にできるはず。
私のようなおばさんが相手だと悠くんは幸せになれないもの。
だって私はもういい年だからすぐに今よりも老けてしまうし、彼よりもだいぶ早く死んでしまう。
第一、親友の息子に手を出すなんて麗子に顔向けできない。
悠くんには幸せになってほしいけれど、私は彼の気持ちに応えてあげることができない。
きっと彼を幸せにしてくれる素敵なお嫁さんが現れてくれるわ。
「今まで自分の気持ちを抑え込んでいたんだけど、舞さんが孝二さんと上手くいってないと知って我慢できなくなってしまったんだ」
「そっか……」
苦しそうに言葉を絞り出す悠くんの様子に、私の胸が締めつけられる。
好きな気持ちを封じ込めることがどれだけ辛いことか。しかも物心ついた頃からずっとだ。
私も夫との関係で押し殺している感情はあるけれど、悠くんほど長い期間ではないし、それなりに人生経験を積んでいる大人だから気持ちに折り合いをつけられる。
今の悠くんと同じような年齢の時にそんな長い期間、自分の気持ちを押し殺したことなんて私には経験がないから彼の心情は想像することしかできない。
好意を寄せる相手と距離があるならともかく、私と悠くんは頻繁に顔を会わせている。もしかしたら悠くんは私と会う度に自分の気持ちを抑え込んでいたのかもしれない。
私が彼のお母さんの親友であることと、既婚者であるという望みのない事実。それが悠くんの心を相当苦しめていたはず。
自分の想いが報われることはないとわかっているのに、好きになってしなった以上はそう簡単に気持ちを捨てられないだろう。
やるせない気持ちを抱えたまま想い人と接し続けなければならなかったことが、どれだけ辛いことかは想像にかたくない。
そこまで考えが行きつくと、私の心は罪悪感に苛まれる。
もし私が悠くんの好意にもっと早く気づいてあげることができていたのなら、彼はこんなに苦しまずに済んだのかもしれない。
「気づいてあげられなくてごめんね」
私が謝ったところで慰めにもならないだろう。
それでも彼の心が少しでも軽くなる可能性があるのなら私はなんだってする。
「舞さんはなにも悪くないよ」
頭上で悠くんが首を左右に振っているのが感触でわかる。
「正直、悠くんみたいな若くてかっこいい子に好きになってもらえたのはとても嬉しい。でもごめんね。悠くんの気持ちには応えてあげられないの……」
「うん……わかってる……」
悠くんの寂しそうな声が鋭利な刃物となって私の胸を突き刺す。
「舞さんが既婚者なのも、俺が息子のようにしか思われていないのも全部わかってる」
絞り出すように言葉を紡ぐ悠くんの様子に物凄く罪悪感が押し寄せてくるけれど、逃げるわけにはいかない。彼とはしっかり向き合わないといけないから。
「だけど、どうしようもないくらい舞さんのことが好きなんだ。この気持ちはどう足掻いても抑えきれない」
「悠くんにそんなに想ってもらえて私は本当に嬉しいよ。ありがとう」
こんなに直球で愛情を向けられるのが久しぶりだからか、年甲斐もなく私の渇いた心が潤されていく。
もし相手が悠くんじゃなくて、もっと年齢が近くて交流のある男性だったら絆されていたかもしれない。
そう思ってしまうほど、私は夫との関係に参っているのかも……。
だからって悠くんに慰めてもらうわけにはいかない。彼の好意につけ込んで甘えるのは間違っている。私は彼にそんな卑怯なことをしたくはないし、そこまで恥知らずでもない。
そもそも結婚している以上、不貞を働く気は毛頭ない。どんなに夫に愛想を尽かしていても、関係が冷めきっていてもだ。
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