幼い頃から憧れている女性は母の親友

雅鳳飛恋

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第二章 条件彼女

第5話 デート

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◇ ◇ ◇

 カラオケを後にした俺と有坂は、隣の駅の近くにあるショッピングモールに訪れていた。

 このショッピングモールは俺たちが通う高校の最寄り駅から一駅しか離れていないので、放課後に足を運ぶ生徒が多い。友達と遊んだり、学校帰りのついでに買い物をしたりなど用件は様々だが、非常に重宝されている。

 そして俺たちは今、衣服やアクセサリー、キャラクター商品やリラクゼーション用品などの雑貨を取り扱う店にいた。

「これとこれ、どっちがいいと思う?」

 二種類のイヤリングを手に持つ有坂がそう尋ねてくる。
 右手にあるのはシンプルなリングのイヤリングで、左手にあるのは花柄をモチーフした物だ。

「そうだな……」

 そう呟いた俺は花柄のイヤリングを手に取ると、有坂の艶がある綺麗な髪を優しく掻き分けて左耳にあてがう。

 直感で有坂には花柄のイヤリングのほうが似合うと思ったが、やはり俺の見立てに間違いはなかった。

 リングよりも花柄のイヤリングのほうがより一層、清楚でお淑やか印象がある彼女の魅力を引き立てている。リングのイヤリングを耳にあてがって確かめてみる必要がないほど、明らかだった。制服姿でも似合っているが、私服だったらもっと映えていただろう。

 もちろん彼女ならリングも似合うので、あくまでもどちらかと言えばの話だ。

「こっちじゃないか?」
「ならそれにしよ」

 俺の手から花柄のイヤリングを受け取った有坂は、笑みを零しながらレジへ足を向けた。

 もしかしたら、彼女は花柄のイヤリングのほうが気に入っていたのかもしれない。だが、リングのほうも気になっていたから、俺に意見を求めたのだと思う。

 自分で言うのは烏滸おこがましいかもしれないが、好きな男に選んでもらった物なら迷わず買えるということなのだろう。

 というか、有坂には世話になっているし、迷惑もかけているから、イヤリングくらいなら俺が買っても良かったんだけどな……。――まあ、本人は間違いなく遠慮するだろうし、押し問答する羽目になるのが目に見えているから無理強いするつもりはないが。

 いずれにしろ、有坂が満足しているならとやかく言うつもりはない。今日は一日、彼女に付き合うつもりだからな。

 それに有坂が喜んでいる姿を見るのは俺も純粋に嬉しい。
 美少女が喜ぶ姿を見てネガティブな気持ちになる男など存在しないだろうが、それとは別に彼女に特別な情が湧いている身としては感慨深いものがある。

 なんて一人で物思いに耽っていると、会計を済ませた有坂が戻ってきた。

「お待たせ」

 満足そうに頬を緩めている有坂の様子に釣られて、俺も自然と口元の筋肉が柔らかくなる。

「次はどうする?」
「う~ん」

 有坂は小首を傾げながら考え込むが――

「適当に見て回るかな」

 と数秒後には答えを出した。

「そうするか」
「うん」

 まあ、そもそもなにか目的があってショッピングモールに来たわけではないから、気軽にウィンドウショッピングするくらいがちょうどいいのかもしれない。

 むしろ普通のデートっぽくないか?
 俺は舞さんに対する想いを拗らせてしまったのが原因で、今まで誰とも付き合ったことがない。なので、恋人同士がする一般的なデートがいったいどのようなものなのか良くわかっていない。

 マンガやアニメ、ラノベやドラマなどでたまに目にするから、それを参考になんとなく想像することはできる。だが、マンガとかはあくまでもフィクションだから鵜呑みにはできない。

 有坂はもちろん、他のセフレや女友達とも今みたいに買い物をしたり、遊びに行ったりもするので、デートらしいことは普段からしている。

 とはいえ、果たしてそれは世間一般的な価値観に照らし合わせると、普通のデートになるのだろうか……?

 デートの形や意味は人それぞれだから気にする必要はないのかもしれないが、女友達やセフレ以外とまともにデートらしいことをした経験がなく、恋愛を拗らせていろいろと感覚が麻痺してしまっている俺には、なにが普通で、なにがいびつなのか全く判断がつかない。

 いくら考えても答えは出ないけど、とりあえず有坂が楽しそうにしているならそれで充分だろう。今日は彼女のために時間を使うと決めているから、むしろこれが正解ではないだろうか?

 有坂が楽しそうにしていると悪い気はしないし、いくら見ても飽きることがない光景だ。
 俺も彼女といると楽しいから時間を忘れてしまうことが度々ある。

 だから、これが普通のデートというやつなのではないだろうか?
 仮に違ったとしても、俺たちのデートの形としては正解だと思う。

 気を紛らわすという俺の本来の目的を果たせているし、有坂にとっても好きな男と過ごせる貴重な時間のはずだ。――都合良く利用している立場の俺が言うのは本当に烏滸おこがましいが。

「どうかしたの?」

 思考の海に潜っていると、有坂が不思議そうに俺の顔を下から覗き込んできた。

 絹のような艶がある黒い瞳が俺の目に突き刺さる。
 見慣れているはずなのに思わず見惚れてしまうのは、それだけ俺が彼女の魅力にりつかれている証拠なのかもしれない――と思いつつも、そんなことはおくびにも出さずに質問に答える。

「いや、少し考えごとをしていただけだ」
「ふうん。もう解決した?」
「ああ。ちょうど今さっきな」
「そっか」

 気にした素振りを見せない有坂は深く追及せずに歩き出し――

「なら行こっか」

 と含みのない軽やかな声色で微笑みながら口にする。

 思いのほか興味を示さなかったことに、俺は少しだけ呆気に取られてしまい、後を追うのが一拍ほど遅れてしまった。
 なぜなら、いつもの有坂ならどんなに些細なことでも、俺に関することは大なり小なり興味を示すからだ。

 だが、ついさっきの反応はいつもの彼女とは違った。
 どうしていつもと違う態度になったのかはわからないが、俺は心なしか寂しさを感じてしまった。
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