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第18話 カップ
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「苦手な科目は重点的に勉強しているからな」
「……真面目なんだね」
「真面目というか、大学行くつもりだから勉強しているだけだ」
「ふーん」
実親は大学に進学する予定なので、日頃から勉学を怠っていなかった。
既に小説家として生計を立てられているが、今後も安泰とは限らない。
将来の選択肢が多いに越したことはないだろう。
それに大学で勉強したいこともあった。
小説家として活動する上で大学生活を送ることも糧になる。
大学を舞台にした話を書こうと思った際に、大学生活を送った経験があるのとないのとでは文章の説得力が違う。
そういった意味でも大学に進学するのは利点となる。
「お前は大学行かないのか?」
実親は試験にも大学にもあまり関心を示さない紫苑の態度が気になった。
「私は行かないよ。と言うか行けないし」
紫苑は諦念の籠った声音で呟く。
「母はお金出してくれないし、私のバイト代だけで賄うのも限度があるしね」
彼女の母は娘にお金を使う気がないので、当然学費を払う気もない。
紫苑が中学生の頃までは食料や日用品を買ってくれていた。だが高校に進学してからはそれらも一切無くなっている。なので紫苑は必要な物は全て自分のバイト代で賄っていた。
母曰く、高校生になって働けるようになったのだから必要な物は自分の稼ぎで賄え、と言うことらしい。
「父さんに言えばお金は出してくれると思うけど、これ以上負担を掛けたくないし」
父なら紫苑のことを全力で支援してくれるだろう。だが父には新しい家庭があるので迷惑を掛けたくなかった。
「父さんが毎月仕送りしてくれているお金も将来的には返したいと思ってるから使わないで残してるし、進学のことは考えられないかな」
事故や病気などで突然大金が必要になる場面はいくらでも考えられる。
なので今は万が一のことがあった場合のことを考慮して返さずに大事に貯めているが、高校を卒業して就職し、その後生活が安定したら父に全額返すつもりでいた。
「まあ、やりたいことも勉強したいことも特にないし、奨学金を借りてまで進学したいとも思わないから別に構わないけどね」
紫苑は肩を竦める。
やりたいことはないと言っているが、今は将来について考える余裕がないと言った方が正しいだろう。
彼女も普通の高校生と同じ生活を送れていれば将来の夢があってもおかしくない。
将来やりたいことがないのでとりあえず大学に行くという者もいる。
そうすれば、いざやりたいことが出来た際に潰しが利くので大卒という肩書は侮れない。何より選択肢が広がる。だが紫苑にはその道を選ぶことも出来ないのが現実だった。
彼女が諦念に達してしまうのは仕方がないだろう。
「お前の母親を悪く言うのは申し訳ないが、本当にどうしようもないな」
他人の身内を悪く言うのは憚られるが、こればかりは苦言を呈したくもなる。
「全然良いよ。クズなのは事実だし、母親失格以前に人間失格だよ」
しかし紫苑自身が最も辛辣であった。だが彼女には毒づく権利がある。
親としての務めを果たしていないのだから、娘に愛想を尽かされても文句は言えまい。
「まあ、まだ時間はあるから焦って決めることもないだろ」
「うん。そうだね」
まだ高校一年の六月だ。じっくりと考える時間的猶予はある。
母親には相談出来なくても、父親や教師に相談することは可能だ。
「とは言え、いざという時の為にも最低限勉強はしておかないとな」
もし今後進学を決断した際に成績が伴っていなければ諦めるしかない。その為にも試験を疎かにしてはいけない。
そもそもあまりにも成績が悪いと留年してしまう。卒業すら出来ないのだ。
「せめて赤点くらいは回避しとけよ」
「私も留年はしたくないし、気を付けるよ」
赤点を取ったら補習を受けなくてはならない。それはなんとしても避けたかった。
貴重な放課後と休日を奪われるし、何よりもバイトの時間も減ってしまうので紫苑にとっては命に係わる。食い扶持を稼がなくてはならないのだから。
「という訳で、勉強教えて?」
「……」
紫苑は実親の右腕を自分の両腕で抱え込み、上目遣いで懇願する。
再三言うが、身長差があるので必然的に上目遣いになっているだけであり、決して狙ってやっている訳ではない。
実親の右腕は紫苑の豊満な胸の谷間に挟まれている。
なんとも形容し難い至福な感触に包まれた。
「時間がある時なら構わないが」
「ありがと」
決して胸の誘惑に負けた訳ではない。
実親としても勉強を教えるのは復習になるので、都合さえ合えば断る理由がないからだ。
紫苑は心なしか嬉しそうにしている。
勉強を教えてもらえるのが嬉しいのか、実親と一緒にいられることが嬉しいのかは本人にもわかっていなかった。
「とりあえず俺はシャワー浴びて来る。何か食べるなら好きに食って良いぞ」
「はーい」
実親は珈琲を飲み干すと立ち上がった。
そろそろ学校に行く支度をしなくてはならない。
まずはシャワーを浴びて寝汗を流すことにする。
実親は朝食を摂らないが、紫苑も同じとは限らない。
家にある物ならなんでも好きに食べて良いと告げてから浴室へ向かう。
間延びした返事を返した紫苑はまだ残っている珈琲を啜っていた。
◇ ◇ ◇
実親がシャワーを浴びた後は紫苑もシャワーを浴び、それぞれ支度を済ませた。
制服姿の二人は玄関で靴を履く。
実親はいつも通り制服を気崩していた。ワイシャツのボタンは第三ボタンまで開けており、袖を捲くって七分丈にし、裾は後ろだけ出したままで前側はスラックスに入れている。
髪はハーフアップにしており、両耳につけている複数のピアスが煌めく。夏は暑さ対策で髪を結ぶことが多い。
「泊めてくれてありがとね」
先に靴を履いていた紫苑が振り返った。
紫苑もワイシャツの胸元をはだけさせているので、豊満な胸の谷間が顔を覗かせている。
スカートは短くてオーバーニーソックスを履いているので絶対領域が出来上がっていた。
「気にするな」
靴を履き終わった実親が目線を上げてから言葉を返す。
「やっぱりお礼におっぱい揉んどく?」
肩に鞄を掛けて両腕で胸を挟み込んで強調し、前屈みになって玄関に座っている実親の目の前に差し出して尋ねる。
実親はありがたく差し出された胸をガン見しておく。
「遠慮しておく」
魅力的な提案だが鋼の意志で断る。
いくら本人が提案していることとはいえ、弱みに付け込む趣味はない。
しかも紫苑の場合は事情が事情だ。母の所為で男に襲われそうになって嫌な思いをしている。なので配慮を欠かしてはならない。
代わりにガン見して目に焼き付けておく。
紫苑が動く度に揺れる弾力のあるお胸様は正に眼福であった。
「そっか」
紫苑は答えがわかっていたかのように呆気なく背を向けた。
既に二回断っているので、今回も断ると思っていたのだろう。
紫苑は扉の鍵を開錠すると、取っ手に手を掛けて扉を開く。
「ちなみにお前は何カップなんだ?」
実親は無意識に尋ねていた。
紫苑の胸に誘惑されたのか、純粋に興味本位だったのかは本人にもわからない。
自分が口にした言葉に「しまった」と少しだけ思ったが、実際気にはなるので撤回はしなかった。セクハラと言われても仕方がない問いなのだが。
紫苑は扉を半分開けた状態で顔だけ実親に向けて答える。
「Iだよ」
紫苑の表情が妙に艶っぽかった。
扉の先から日差しが室内へ入り込んで紫苑を照らし、神々しさすら感じて幻想的な雰囲気になっている。
実親は自然と心の中でAから順にアルファベットを数え、Iが何番目なのかを確認していた。予想以上に大きな胸だったことに驚いて平静を欠いていたのだ。
今は呆気に取られたままIカップの胸が脳内で何度も映し出されている。
体感時間にして数分経っている気がしたが、実際は数秒しか経っていない。
なんとか平静を取り戻すと後悔が襲って来た。
素直に揉んでおけば良かった、と。
そんな中、紫苑は中々お目にかかれないIカップを揉みしだく機会を逸して呆然としている実親を放置して、先に家を出て行った。
「……真面目なんだね」
「真面目というか、大学行くつもりだから勉強しているだけだ」
「ふーん」
実親は大学に進学する予定なので、日頃から勉学を怠っていなかった。
既に小説家として生計を立てられているが、今後も安泰とは限らない。
将来の選択肢が多いに越したことはないだろう。
それに大学で勉強したいこともあった。
小説家として活動する上で大学生活を送ることも糧になる。
大学を舞台にした話を書こうと思った際に、大学生活を送った経験があるのとないのとでは文章の説得力が違う。
そういった意味でも大学に進学するのは利点となる。
「お前は大学行かないのか?」
実親は試験にも大学にもあまり関心を示さない紫苑の態度が気になった。
「私は行かないよ。と言うか行けないし」
紫苑は諦念の籠った声音で呟く。
「母はお金出してくれないし、私のバイト代だけで賄うのも限度があるしね」
彼女の母は娘にお金を使う気がないので、当然学費を払う気もない。
紫苑が中学生の頃までは食料や日用品を買ってくれていた。だが高校に進学してからはそれらも一切無くなっている。なので紫苑は必要な物は全て自分のバイト代で賄っていた。
母曰く、高校生になって働けるようになったのだから必要な物は自分の稼ぎで賄え、と言うことらしい。
「父さんに言えばお金は出してくれると思うけど、これ以上負担を掛けたくないし」
父なら紫苑のことを全力で支援してくれるだろう。だが父には新しい家庭があるので迷惑を掛けたくなかった。
「父さんが毎月仕送りしてくれているお金も将来的には返したいと思ってるから使わないで残してるし、進学のことは考えられないかな」
事故や病気などで突然大金が必要になる場面はいくらでも考えられる。
なので今は万が一のことがあった場合のことを考慮して返さずに大事に貯めているが、高校を卒業して就職し、その後生活が安定したら父に全額返すつもりでいた。
「まあ、やりたいことも勉強したいことも特にないし、奨学金を借りてまで進学したいとも思わないから別に構わないけどね」
紫苑は肩を竦める。
やりたいことはないと言っているが、今は将来について考える余裕がないと言った方が正しいだろう。
彼女も普通の高校生と同じ生活を送れていれば将来の夢があってもおかしくない。
将来やりたいことがないのでとりあえず大学に行くという者もいる。
そうすれば、いざやりたいことが出来た際に潰しが利くので大卒という肩書は侮れない。何より選択肢が広がる。だが紫苑にはその道を選ぶことも出来ないのが現実だった。
彼女が諦念に達してしまうのは仕方がないだろう。
「お前の母親を悪く言うのは申し訳ないが、本当にどうしようもないな」
他人の身内を悪く言うのは憚られるが、こればかりは苦言を呈したくもなる。
「全然良いよ。クズなのは事実だし、母親失格以前に人間失格だよ」
しかし紫苑自身が最も辛辣であった。だが彼女には毒づく権利がある。
親としての務めを果たしていないのだから、娘に愛想を尽かされても文句は言えまい。
「まあ、まだ時間はあるから焦って決めることもないだろ」
「うん。そうだね」
まだ高校一年の六月だ。じっくりと考える時間的猶予はある。
母親には相談出来なくても、父親や教師に相談することは可能だ。
「とは言え、いざという時の為にも最低限勉強はしておかないとな」
もし今後進学を決断した際に成績が伴っていなければ諦めるしかない。その為にも試験を疎かにしてはいけない。
そもそもあまりにも成績が悪いと留年してしまう。卒業すら出来ないのだ。
「せめて赤点くらいは回避しとけよ」
「私も留年はしたくないし、気を付けるよ」
赤点を取ったら補習を受けなくてはならない。それはなんとしても避けたかった。
貴重な放課後と休日を奪われるし、何よりもバイトの時間も減ってしまうので紫苑にとっては命に係わる。食い扶持を稼がなくてはならないのだから。
「という訳で、勉強教えて?」
「……」
紫苑は実親の右腕を自分の両腕で抱え込み、上目遣いで懇願する。
再三言うが、身長差があるので必然的に上目遣いになっているだけであり、決して狙ってやっている訳ではない。
実親の右腕は紫苑の豊満な胸の谷間に挟まれている。
なんとも形容し難い至福な感触に包まれた。
「時間がある時なら構わないが」
「ありがと」
決して胸の誘惑に負けた訳ではない。
実親としても勉強を教えるのは復習になるので、都合さえ合えば断る理由がないからだ。
紫苑は心なしか嬉しそうにしている。
勉強を教えてもらえるのが嬉しいのか、実親と一緒にいられることが嬉しいのかは本人にもわかっていなかった。
「とりあえず俺はシャワー浴びて来る。何か食べるなら好きに食って良いぞ」
「はーい」
実親は珈琲を飲み干すと立ち上がった。
そろそろ学校に行く支度をしなくてはならない。
まずはシャワーを浴びて寝汗を流すことにする。
実親は朝食を摂らないが、紫苑も同じとは限らない。
家にある物ならなんでも好きに食べて良いと告げてから浴室へ向かう。
間延びした返事を返した紫苑はまだ残っている珈琲を啜っていた。
◇ ◇ ◇
実親がシャワーを浴びた後は紫苑もシャワーを浴び、それぞれ支度を済ませた。
制服姿の二人は玄関で靴を履く。
実親はいつも通り制服を気崩していた。ワイシャツのボタンは第三ボタンまで開けており、袖を捲くって七分丈にし、裾は後ろだけ出したままで前側はスラックスに入れている。
髪はハーフアップにしており、両耳につけている複数のピアスが煌めく。夏は暑さ対策で髪を結ぶことが多い。
「泊めてくれてありがとね」
先に靴を履いていた紫苑が振り返った。
紫苑もワイシャツの胸元をはだけさせているので、豊満な胸の谷間が顔を覗かせている。
スカートは短くてオーバーニーソックスを履いているので絶対領域が出来上がっていた。
「気にするな」
靴を履き終わった実親が目線を上げてから言葉を返す。
「やっぱりお礼におっぱい揉んどく?」
肩に鞄を掛けて両腕で胸を挟み込んで強調し、前屈みになって玄関に座っている実親の目の前に差し出して尋ねる。
実親はありがたく差し出された胸をガン見しておく。
「遠慮しておく」
魅力的な提案だが鋼の意志で断る。
いくら本人が提案していることとはいえ、弱みに付け込む趣味はない。
しかも紫苑の場合は事情が事情だ。母の所為で男に襲われそうになって嫌な思いをしている。なので配慮を欠かしてはならない。
代わりにガン見して目に焼き付けておく。
紫苑が動く度に揺れる弾力のあるお胸様は正に眼福であった。
「そっか」
紫苑は答えがわかっていたかのように呆気なく背を向けた。
既に二回断っているので、今回も断ると思っていたのだろう。
紫苑は扉の鍵を開錠すると、取っ手に手を掛けて扉を開く。
「ちなみにお前は何カップなんだ?」
実親は無意識に尋ねていた。
紫苑の胸に誘惑されたのか、純粋に興味本位だったのかは本人にもわからない。
自分が口にした言葉に「しまった」と少しだけ思ったが、実際気にはなるので撤回はしなかった。セクハラと言われても仕方がない問いなのだが。
紫苑は扉を半分開けた状態で顔だけ実親に向けて答える。
「Iだよ」
紫苑の表情が妙に艶っぽかった。
扉の先から日差しが室内へ入り込んで紫苑を照らし、神々しさすら感じて幻想的な雰囲気になっている。
実親は自然と心の中でAから順にアルファベットを数え、Iが何番目なのかを確認していた。予想以上に大きな胸だったことに驚いて平静を欠いていたのだ。
今は呆気に取られたままIカップの胸が脳内で何度も映し出されている。
体感時間にして数分経っている気がしたが、実際は数秒しか経っていない。
なんとか平静を取り戻すと後悔が襲って来た。
素直に揉んでおけば良かった、と。
そんな中、紫苑は中々お目にかかれないIカップを揉みしだく機会を逸して呆然としている実親を放置して、先に家を出て行った。
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