君の痴態が忘れられないんだ。

雅鳳飛恋

文字の大きさ
52 / 100

第52話 膝枕

しおりを挟む
「それにしても自分で誘導しておいてなんだけど、こんな巨乳美少女メイドに膝枕されているのに少しも緊張しないで堂々と身を任せているのはちょっと自信なくすよ……」

 初心な姿を微塵も見せない実親に紫苑は複雑な気分になっていた。
 自分に魅力がないのかと思ってしまうし、膝枕くらいでは緊張しないほど実親は女性慣れしているということがわかってしまうからだ。

「お前の膝枕は最高だぞ。ずっとこうしていたいくらいだ」

 そう言うと実親は右手を紫苑の太股に伸ばす。

「ふふ、くすぐったいよ」

 太股を撫でられても嫌な顔一つしない紫苑は、慈愛の籠った眼差しで実親のことを見下ろしている。

「ご主人様専用の膝枕だからお望みならいつでもしてあげるよ」
「それならお言葉に甘えさせてもらうとしよう」
「いくらでも甘えて下さいな」

 実親が喜んでくれることが紫苑にとっても嬉しいことだった。なので断る理由など存在しない。恩返しでもあるので尚更だ。寧ろ今みたいに二人で過ごす時間は彼女にとって幸せなひと時であった。

「この手触り癖になるな」
「お? 私の太股の虜になった?」
「ああ」

 すっかり紫苑の太股の魅力に憑りつかれた実親の手は止まる気配がない。
 自分に夢中になっていることが嬉しくて口元が緩んでいる紫苑は、実親の手から伝わる温もりに心地よさを感じていた。

 暫く二人は今の状況を甘受する。
 互いに離れがたい気持ちになってきたところで、風呂が沸いたことを知らせる音が鳴った。

「お風呂沸いたね」
「そうだな」

 しんみりとした雰囲気の中呟いた紫苑の息が実親の耳を撫でる。

「先に入って来て良いよ」
「お前が先で良いぞ」

 互いに一番風呂を譲り合う。

「ううん。ご主人様が先に入って来て」

 しかし、紫苑は世話になっている身なのに一番風呂を頂く訳にはいかないと思い首を左右に振った。
 一方的に恩恵を受けるのは気が引けるし、実親のことを都合良く利用するような女にはなりたくなかったのだ。

 そんな彼女の心情を察した実親は自分が折れることにした。

「そうか。なら遠慮なく先に頂くとする」
「うん。そうして」

 実親は膝枕に名残惜しさを感じつつも、浴室へ向かう為に起き上がる。
 すると起き上がる途中で紫苑の豊満な胸と接触し、ぼよん、と効果音がつきそうな弾力の塊に顔面が包まれた。この世の物とは思えない包容力が顔から全身に伝わっていく。

「いやん」

 と吐息を多分に含んだ声を紫苑は漏らす。

 顔面に衝撃が走る中、実親は理性を極限まで振り絞って離れようとする。
 だが、それを見越していたかのような素早さで紫苑が両腕で実親の頭をホールドした。

「お、おい」

 呼吸をするのも困難なほど顔面が胸に覆われるも、なんとか口を開くスペースを確保した実親は言葉足らずな苦言を漏らす。

「ご主人様の方から私の胸に飛び込んで来たんじゃん。私は迎え入れただけだよ?」

 小悪魔を彷彿とさせる艶笑を浮かべる紫苑は未成年とは思えない色香を放っていた。
 しかし残念ながら実親の両目は彼女の胸に埋もれてしまっているので拝むことは叶わない。

「まさか当たるとは思わなかったんだ……」

 決して狙ってやった訳ではなく、普通に起き上がろうとした結果である。
 紫苑の胸の大きさを見誤っていたが故に接触してしまったのだ。

「私のおっぱいを甘く見た罰だよ。私が満足するまで大人しくしていて下さいねご主人様!」
「いや、折角沸かした風呂が冷めるだろ」
「そうでした……」

 つい先ほど一番風呂を譲り合ったのはなんだったのであろうか?
 そんなにすぐ忘れるか? と実親は心の中で溜息を吐く。

「ついテンションが上がって……」

 紫苑は「あはは」と乾いた笑いを漏らしながら実親の頭から手を離す。
 窒息する前に無事解放された実親は今度こそ起き上がり、「至福のひと時だった」と告げる。

「ご満足頂けたようで何よりです」

 今日一番の笑顔を浮かべる紫苑は非常に輝いて見え、実親は衝動的に彼女の頭を優しく撫でた。

「えへへ」

 緩みきった表情を晒す紫苑の頭から手を離すと、名残惜しそうに見つめてくる。
 そんな彼女のことを無視して実親は鞄から着替えを取り出して浴室へ向かう。
 しかし浴室まで辿り着くも、何故か紫苑が後を追い掛けて来ていた。

「何故ついてくる?」

 当然尋ねずにはいられない。

「ご主人様の背中を流す為」
「……」
「あ、でもこの格好じゃ濡れちゃうか」

 メイド服だったのを失念していた紫苑はスカートの裾を掴んで苦笑すると、振り返って脱衣所に置きっぱなしにしていた自分の鞄のもとへ歩み寄る。
 そして屈んで鞄の中を漁り始めた。

「おい」
「何ー?」
「丸見えだぞ」
「あ」

 今の紫苑はミニスカートである。それも立っているだけで下着が見えてしまいそうなほど短いスカートだ。にも拘《かか》わらず屈んだらどうなるか。それは説明するまでもないだろう。

 紫苑は指摘されて反射的にスカートを両手で抑える。

「お前……Tバック穿いていたのか……」

 Tバックなので布で覆われていない肉付きの良い張りのあるプリっとした尻がはっきりと瞳に映っていた。

「もしもご主人様とになった時の為に勝負下着を履いていました……」

 流石の彼女でも、実は気合を入れていたことがバレてしまったのは恥ずかしかったようだ。
 屈むのをやめて振り返ると、スカートの裾を抑えながらモジモジする。
 赤面している姿が珍しらしくて新鮮味があり、非常にいじらしい。

「それが勝負下着なのか」
「……Tバック好きじゃなかった?」
「大好物だ」
「ご主人様が喜んでくれたのなら恥をかいた甲斐がありました……」
「ああ。眼福だった」
「それは何よりです……」

 実親が真顔で即答して見つめるので紫苑は居た堪れなくなっていく。

「とりあえず俺は一人でゆっくり湯に浸かりたいからお前は大人しくしていろ」
「そうします……」

 ただ本心を口にしただけだが、結果的に紫苑を助けることになっていた。
 この場から逃げる口実が出来たからだ。

 紫苑が脱衣所から出て行くのを見届けた実親は深々と溜息を吐いた後、服を脱いで浴室に足を踏み入れた。
 刺激的な光景を目撃した所為で下半身が元気になっており、暫く湯に浸かって煩悩を振り払うことにしたが、悲しいことに中々収まらない。なので諦めて自分で一発抜いて落ち着くことにした。
 いや、ラブホテルにいるという事実に気持ちが流されてしまうかもしれない。
 万が一があってはいけないので、念の為二発抜いておくことにした。

 一方、実親に対して久々に羞恥心を感じた紫苑はベッドにダイブし、布団に潜り込んで膝を抱えながら身悶えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

処理中です...