氷結使いは召使い?

岩影 セツナ

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過去 始まり。

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「こんばんわ。響魔。えっと…私がその…新しいお母さんよ。」
顔を合わせたことの無い女性に突如、自宅のリビングでそう告げられた。
頭が真っ白になり、思考回路が停止する。「あぁ、はい。」
俺は、そう答えた。何も考えずに。いや、何も考えられずに。
敬語を使っていることや、その表情で、納得していないのは気づかれたらしく、
"自称"母が苦笑いをしてみせる。
続けざまに父親が、俺の右肩をトントンとたたく。
やっと戻ってきた思考回路を無意識にはたらかせ、挨拶をする。
「えっと、白利 響魔です。よろしくお願いします。」
無意識に発したそれは、つい先週の中学校でのクラス替え直後にした、自己紹介の内容と全く同じだった。


これからこの3人で暮らしていくのか。


と、ぼーっとしていると。
いた。もう1人。
それは、"自称"母の影に隠れる小さな女の子。小6くらいだろうか。その小さな顔は、異常なまでに整っており、真っ黒な空の魔界に、彼女が行くだけで、朝日が訪れ、争いが全て終わってしまう。そんな感じの女の子。
真っ白な肌、真っ白な髪は透き通っており、美少女と言っても足りないくらいの、そんな女の子。
説明が下手すぎて分かってもらえないだろうが。
この場全員の視線を集めた少女は、
『私?』と言わんばかりに、あたりをきょろきょろと見渡す。そして、数秒が経過して、やっと言葉を発した。
「………よろしく。……兄ちゃん。」

兄ちゃん?誰だそれ。3秒ほど考え、
『あぁ、俺か。』と、心の中で自問自答。
そのわずかな時間と沈黙で悲しくなったのか、自分の放ったセリフに恥ずかしさを覚えたのか、その両方か、目の前で小さな女の子が、その大きな眼球から涙をこぼす。
やめてくれよ。なんかいじめてるみたいじゃねぇか。
焦った俺はおもわず、
「あ、あぁ!!よろしくな!妹…」
自らが発した『妹』という言葉に、えげつない違和感を覚えた。
だってしょうがないじゃん。名前知らないんだもの。
名前も知らない美少女を妹と呼ぶのもどうなのかと考えていると。
『妹』という言葉に今更反応したのか、真っ白だった頬がすこし赤らむ。


そんな出来事があってから、1ヶ月がすぎた。

両親は、再婚してから、「新婚旅行に行くの!」と、まるで初めて恋愛をした中学生のように、トキメキながら、ニコニコしながら言ってきた。
『馬鹿じゃねぇの。』と思ってしまった自分の性格の荒れように驚きつつ。
愛想笑いで見送った。
気まずかった。
妹と、2人で。
何も話さず、頷くか、首を振るか。顔を赤くするか。
ここ最近の妹の行動は、この3つで成立するだろう。
時間が長く感じた。
不覚にも"自称"母に。親父に。早く帰ってきて欲しいと思ってしまった。
親父から、『明日の朝には帰るぞー!』
というメールが届いてから、少し、いや、
かなり喜んでしまった自分が情けない。

だから驚いた。声も出なかった。
親の帰りの飛行機が、墜落した。
被害者162人。そのうち84人は、死亡者だそうだ。
うちの両親は、その84人の中に入る。

亡くなったのだ。親が、これで3回目。

それから色々あった。
だが、慣れていた。過去に一回経験しただけなのに。
なぜだろう、涙も流さなかった。

結局、"自称"母から、自称が取れることは無かった。
少しだけ、期待してたんだけどな。

事が落ち着き、静まり返った家に帰り、初めて考えた。
「俺、あいつと二人暮しすんの?」
いやいや!!ムリだろ!!!
コミュニュケーションすら取れねぇよ!!!
鍵を開け、家に入ると、いつも通り妹がいた。
ただ、一つだけ、いつもと違うことがあった。
妹が、あの美少女が、俺に話しかけてきたのだ。 小さな声で。
「で?これからどうするの?兄ちゃん。」
この小さな声を聞き取れた俺に、拍手のひとつでもあっていいんじゃないのか。
そう考えながら、自分の置かれているピンチに気づく。

一つ  金

二つ  妹

3つ  学校

主にはこの3つだ。
とにかく、今は考えたくない。
寝ようか。
そう思い、妹に一声、「明日でもいいか」
と、声を掛け、俺は自分の部屋に行くことにした。
部屋に行こうとすると、空き部屋だった隣の部屋が、隣の部屋に、何だか、花のような香りがする。
もしかしてと思い、恐る恐る開けてみた。
あった。
そこには、女の子の部屋が。
あー、そうか。あいつ、ここを部屋にしたのか。
家は何気広いからな。
いや、そうでも無いか。
ここ以外に空き部屋なんて、ひとつしかない。
いや、空き部屋なのかは分からないのだが。
そう、俺は親父に秘密にされていたことが一つだけある。
2階の俺の部屋の向かいに、絶対開けるなと言われ続けてきた部屋がある。
何度も開けようと試みたが、未だ成功していない。
なんせ鍵がないのだ。どこにも。
親父の遺品の中に、あるかな。
俺は親父の遺品を、初めて探った。
見事にあったのだ。鍵が。
俺は勇気を持って、鍵を開けた。
その中は、がらんとしていた。
ただ一つ、見たことの無いくらい大きな鏡と、ダンボールの山。
なんだ?この鏡。
鏡のくせに、異様なふいんきを漂わせてやがる。
鏡をにらみつけていると、
「兄ちゃん?」
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」←俺。
ビックリした。
とにかくビックリした。
「なんだよ!」
俺は思わず怒鳴った。
びっくりしたからである。
そうすると妹は、泣きそうになりながら、
「だって兄さん、遺品からなんか盗んで2階に逃げていくんだもの。そりゃあ跡をつけるでしょ?」
そんなふうに写ってたのか、俺。
そしてその、兄さんってのはなんだ?
完全に距離を置かれたな。
まぁ、そんなことは今はいい。
それよりこの鏡を、この鏡の謎を改名したい。
普通ではない。それだけは胸を張って言える。
「おい暖香、この鏡、触ってみてくれ。」
この、"暖香(はるか)"というのが、妹の名前だ。
それを聞いた妹は、
「ふざけないで!!男でしょ?兄さんが触ってよ!」
名前に合わず、冷たいなこの子。
そう思って、鏡に俺を押し付けてきた。
こいつ!
俺も負けじと、暖香を鏡に押し付ける。
兄妹っぽいことをしたのは、これが初めてだ。
そして、それの背中は鏡に触れ、そのまま吸い込まれた。
「はい?」
暖香は、1人なのに、そう言った。
気のせいだろうと、暖香も同じことをやって見る。
案の定、吸い込まれた。
もしかしたら、こいつはとんでもないアホなのかもしれない。
吸い込まれた先に待っていたのは、

別世界。

豚の鼻をしている男性 オークや
その他諸々、現実には存在しないような生き物が、植物が、当たり前のようにある世界。
ここは異世界だ。
「「えぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
俺たち兄妹の叫び声が、異世界中に響き渡った。
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