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過去の記憶
もらい風邪
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次の日の朝、グウェンは朝からフレンチトーストを焼いてくれた。その日はビリーがお昼ご飯を食べてから出勤するっていうから、サンドイッチは作らなかった。久しぶりに誰かに作ってもらう朝食。昔はこれが当たり前だったんだ、って思うと、不思議な感覚に襲われた。母は私が大学生の時は「朝食を用意してくれる人がいるって、とても幸せな事なのよ。」って言っていたけど、本当に今になってそれを実感してる。
「今日は帰りはどうするの、ビリー?」私は聞いた。
「どうしようかな。今日が一番困る。テッドとジェイは当直だし、アダムが来ても多分まだ乗せてくれないと思うからーー思い切ってライルにでも頼んでもらおうかな?リアムに頼もうと思ったら今日は休みだって言ってて。使えない。ライルはどんな勤務時間なんだろう?」ビリーは言った。
「あー、聞いた事ないから分からないな。でも、割と自由が効きそうな感じだよ。午後もゆっくりお茶したりもしてるし、まあ、あれも仕事なんだろうけど。あとで電話してまた知らせるね。どうせ今日、翻訳も提出しようと思ってたから。」私はビリーに言った。
私はビリーとグウェンを残していつも通り学校に行って、その日は金曜日に予定されているプレゼンの資料作りのために少し学校に残ってその後に帰宅した。グウェンはもう帰った後で、キッチンには帰る前に焼いていったミートパイが置いてあった。ビリーが大好きなグウェンのミートパイ。そう思うと急にちょっと胸が締め付けられてーーしばらくその場に立ち尽くした。
それからライルに電話をかけた。最初は出てくれなかったけどすぐにかけ直してくれた。
「ごめん、カエ、運転中だった。」
「ううん、いいの。あのーー今日は何時まで仕事?夜は何か予定ある?」
「ーーなんで?」
「ビリーが8時まで仕事なんだけど、帰りに乗せてくれる人がいなくて。アダムの風邪が思ったより酷くて、今週は別々に出勤してるから。」
「いいよ。俺が行く。仕事は5時までだけど、ちょっと残業しようかなって思ってたし。」
「そう?無理はしなくていいよ。最悪トラム使うとか言ってたしーー」
「大丈夫だよ。やらせて。むしろ、頼ってもらって嬉しい。ビリーにも会いたかったし。」
「うん、じゃあお願いしようかな。病院の入口付近で待ってるって。あ、あと今日中に翻訳メールしておくから。」
「了解。」
私はその後ビリーに知らせて、翻訳の仕事をした。終わったのは7時過ぎでーーそれからふと思い立って母に電話した。
「ママ!元気?」
「元気よ。楓とビリーは?」
「私は元気だけど、ビリーはちょっといろいろあってケガしてて毎日バタバタしてた。」
「あら!大変ね。大丈夫なの?」
「うんーー足首なんだけど結構重傷みたいで。かわいそうになっちゃう。」
「本当に。ママが行ってお世話してあげたいわ。」母はそう言って笑った。
「パパも元気?」
「うん。先月インフルエンザになったよ!」
「あーやだ、大丈夫だったの?」
「年寄りだからすぐに弱って何日かヨロヨロしてたけど本当に情けないわ。」
「でも分かるよ。ビリーでさえ、まあちょっと10日くらい入院もしてたんだけど、足腰が弱ってる感じだったし。だいぶ元通りになったけどね。」
「優しくしてあげるのよ?病気の時はみんな心が弱っているんだから。」母は言った。
「分かってる。」
「そういえば蓮がメルボルンが最高だったって喜んでたって。ビリーとその後お友達と楓と飲みに行ったんですって?」
「ああ、うん。喜んでもらえてよかった。私達も楽しかったよ。」私は言った。
「楓がいいお友達がいて幸せそうだった、って言ってたって聞いて嬉しくなっちゃった。元気にやってるのは本当なんだと思って。」
「本当だよ。良い人達に囲まれて、みんなが助けてくれてーー本当に幸せだなって感謝してる。」
「楓の人柄のおかげね。」母は更に何か言いたそうだったけど「あー、そろそろお風呂入れようかな。」って言った。
「うん、私も夕食の用意しなきゃ。またね。」
ビリーは8時半前に帰ってきて、この時もライルが玄関ドアを抑えててくれて、私が玄関に行くと二人は楽しそうに話をしていた。
「ライル、本当に、本当にありがとう!」私は言った。
「全然構わないよ。あ、翻訳もありがとう。退社する前にチラッと見た。明日確認するよ。」
「アダムと違って乗り降りも急かさないし手伝ってくれて本当に助かった。まだすぐに立てないからトラムに乗る自信がなくて。段差もキツイし。」ビリーは笑った。
「ねえ、ライル、夕食食べた?ミートパイがあるんだけど。食べて行かない?」私は言った。
「いいの?」ライルはビリーに聞いた。
「いいよ。入って。」ビリーは言った。
「美味しい。ーー懐かしい味だね。」ライルはミートパイを食べながら言った。
「ビリーのお母さんが昨日来て今日作って言ってくれたんだよ。」私は言った。
「ああ、なんかスーパーで材料買ってるなとは思ったけど、やっぱりそうだったんだ?」ビリーは言った。
「うん。帰ってきたら置いてあって、母の愛だよね、本当に。」みんなが頷いた。
「ライルのお母さんはどんな人?」ビリーは聞いた。
「銀行に勤めてる。昔から。まあ、継父もなんだけど。母はいかにも銀行員って感じかな。」そう言ってちょっと笑って「固い感じっていうか、真面目で、お金に厳しくて。割と神経質で。まあ、悪いことではないんだけど。ビリーのお母さんは?」
「シドニータワーの近くでブティックをやってる。しっかりしてて、頑張り屋で、心配症でーーそんな感じ。」
「ビリーは頑張り屋なところを受け継いだんだね。」私がそう言ったらビリーは笑った。
「明日は?」ライルがビリーに聞いた。
「明日は整形外科にいる友達が送り迎えしてくれるって言うから、大丈夫。ありがとう。」
「カエは免許の切り替えしてないの?」ライルが聞いた。
「うん。しようとは思ってたけど。ビザの方がほぼ落ち着いたから、ビリーのケガが治ったら、かな。」
「運転出来るのか謎だけどね。日本で運転したことある?」ビリーは聞いた。
「ほぼない。電車で足りてたし、必要がなかったっていうか。」私は言った。
「怖そうで誰も乗りたくないよね。」ビリーが言ったらライルが笑った。
「まあね。自動車学校でも、ウインカー逆に出したりして笑われたし、あまり得意ではないかも。」私は言った。
「俺はーー高校の時に父と練習した。「ビリー、運転は人の命がかかってるんだから、いつもそれを頭の片隅に入れて車に乗るんだよ。横断歩道を渡っている人も、前の車を運転している人も、みんな誰かの大切な愛する人だっていうことを忘れるな」って。普段は忘れがちだけど、時々それを思い出すようにしてる。カエも無理しなくていいよ。ゆっくり覚えていけばいいと思う。」ビリーは言った。
「俺も継父に教えてもらった。関係が悪かったから必要以上の会話はなかったけど、それでもーー今思えば、「練習に行くか?」って向こうから誘ってくれることもあったし継父なりに関係を改善したいっていうサインを出していたような気がする。車の中で「学校はどうだ?」とか聞いてくれたり、ボンダイビーチに海を見に行こうって誘われたこともあった。懐かしいな。たった10年くらい前の話なのに。」ライルが言った。
「うんーー時間が経つのはあっという間で、毎日の時間の過ぎ方に怖くなることがない?」ビリーはライルに聞いた。
「うん、分かる。まだあれもやってないのに、これもやっていないのにって毎日何かに追われていて、時々焦る。」二人は頷いて、目を見合わせて笑った。「ーーそろそろ帰る。長居しすぎた、ごめん。」
ビリーはテーブルに手をついてゆっくり立ち上がりながら「そんなことない。本当に、今日はありがとう。また、今度。クラリッサに会えるのも楽しみにしてる。」って言った。
ライルが帰ったあと、私は「で、アダムは?今日は出勤した?」って聞いた。
「うん。でも、まだすごい鼻声だしゲホゲホ言ってて直接はあまり話してない。離れた所に座って、「ワッツアップ」で話してた。」ビリーが言った。
「あはは!そこまでして話したいんだ?想像すると笑っちゃう。」私は笑った。
「まあね。金曜日からはまた乗せるって言ってたから明日だけリアムに乗せて貰う。一応、看護師との飲み会は来週の金曜日ってことにしてたから、予定いれておいて。」ビリーは言った。
「うん。分かった。」
「そういえば昨日スティーブンに聞いたら、やっぱりアンナが言ってた「ネイサン・クラーク」って人がお兄さんなんだって。世間が狭すぎてビックリしたけど。」ビリーが言った。
「え!!そうなんだ?すごい偶然じゃない?パイロットなんて腐るほどいるのに・・・。」
「そうそう。だから、驚いたけど、案外意外な所で人間って繋がりがあったりするから。」
「まあね。ーーシャワー浴びてこようかな。翻訳の仕事も終わったし今日は早めに寝る。」私は言った。
シャワーを浴びながら、この前の入院から、前よりもビリーを愛おしく感じていてる自分に気が付いた。「頼れる」とか「優しい」とか「かっこいい」じゃなくて、愛おしくてたまらないって思い始めたのは最近だから。メルボルンでの生活も2年を過ぎて、私にもだいぶ心の余裕ができてきたんだな、って思った。もっとビリーに目を向ける余裕が。周りの人を気遣う余裕が。そして、ビリーとの将来に本気になって目を向ける余裕も。
寝室に戻るとビリーは珍しく上半身裸でベッドに座っていた。
「やだ!なんで裸でそんなところに・・・」って私が言ったらビリーはちょっと赤くなって笑いかけた。
「脱がせる手間が省けるかと思って。カエ、おいで。」
私はビリーの胸に飛び込んだ。
アダムの風邪はビリーにうつらなくてよかった、てちょっと安心しかけていたのに、この安心しかけていたっていうのが実は厄介で、実際はそうじゃなかった。多分、ビリー自身もホッとしかけていたはずで、私たちはまた週末に想定外の事態に見舞われた。そんなに酷くならなかったのが唯一の救いだけど。
「今日は帰りはどうするの、ビリー?」私は聞いた。
「どうしようかな。今日が一番困る。テッドとジェイは当直だし、アダムが来ても多分まだ乗せてくれないと思うからーー思い切ってライルにでも頼んでもらおうかな?リアムに頼もうと思ったら今日は休みだって言ってて。使えない。ライルはどんな勤務時間なんだろう?」ビリーは言った。
「あー、聞いた事ないから分からないな。でも、割と自由が効きそうな感じだよ。午後もゆっくりお茶したりもしてるし、まあ、あれも仕事なんだろうけど。あとで電話してまた知らせるね。どうせ今日、翻訳も提出しようと思ってたから。」私はビリーに言った。
私はビリーとグウェンを残していつも通り学校に行って、その日は金曜日に予定されているプレゼンの資料作りのために少し学校に残ってその後に帰宅した。グウェンはもう帰った後で、キッチンには帰る前に焼いていったミートパイが置いてあった。ビリーが大好きなグウェンのミートパイ。そう思うと急にちょっと胸が締め付けられてーーしばらくその場に立ち尽くした。
それからライルに電話をかけた。最初は出てくれなかったけどすぐにかけ直してくれた。
「ごめん、カエ、運転中だった。」
「ううん、いいの。あのーー今日は何時まで仕事?夜は何か予定ある?」
「ーーなんで?」
「ビリーが8時まで仕事なんだけど、帰りに乗せてくれる人がいなくて。アダムの風邪が思ったより酷くて、今週は別々に出勤してるから。」
「いいよ。俺が行く。仕事は5時までだけど、ちょっと残業しようかなって思ってたし。」
「そう?無理はしなくていいよ。最悪トラム使うとか言ってたしーー」
「大丈夫だよ。やらせて。むしろ、頼ってもらって嬉しい。ビリーにも会いたかったし。」
「うん、じゃあお願いしようかな。病院の入口付近で待ってるって。あ、あと今日中に翻訳メールしておくから。」
「了解。」
私はその後ビリーに知らせて、翻訳の仕事をした。終わったのは7時過ぎでーーそれからふと思い立って母に電話した。
「ママ!元気?」
「元気よ。楓とビリーは?」
「私は元気だけど、ビリーはちょっといろいろあってケガしてて毎日バタバタしてた。」
「あら!大変ね。大丈夫なの?」
「うんーー足首なんだけど結構重傷みたいで。かわいそうになっちゃう。」
「本当に。ママが行ってお世話してあげたいわ。」母はそう言って笑った。
「パパも元気?」
「うん。先月インフルエンザになったよ!」
「あーやだ、大丈夫だったの?」
「年寄りだからすぐに弱って何日かヨロヨロしてたけど本当に情けないわ。」
「でも分かるよ。ビリーでさえ、まあちょっと10日くらい入院もしてたんだけど、足腰が弱ってる感じだったし。だいぶ元通りになったけどね。」
「優しくしてあげるのよ?病気の時はみんな心が弱っているんだから。」母は言った。
「分かってる。」
「そういえば蓮がメルボルンが最高だったって喜んでたって。ビリーとその後お友達と楓と飲みに行ったんですって?」
「ああ、うん。喜んでもらえてよかった。私達も楽しかったよ。」私は言った。
「楓がいいお友達がいて幸せそうだった、って言ってたって聞いて嬉しくなっちゃった。元気にやってるのは本当なんだと思って。」
「本当だよ。良い人達に囲まれて、みんなが助けてくれてーー本当に幸せだなって感謝してる。」
「楓の人柄のおかげね。」母は更に何か言いたそうだったけど「あー、そろそろお風呂入れようかな。」って言った。
「うん、私も夕食の用意しなきゃ。またね。」
ビリーは8時半前に帰ってきて、この時もライルが玄関ドアを抑えててくれて、私が玄関に行くと二人は楽しそうに話をしていた。
「ライル、本当に、本当にありがとう!」私は言った。
「全然構わないよ。あ、翻訳もありがとう。退社する前にチラッと見た。明日確認するよ。」
「アダムと違って乗り降りも急かさないし手伝ってくれて本当に助かった。まだすぐに立てないからトラムに乗る自信がなくて。段差もキツイし。」ビリーは笑った。
「ねえ、ライル、夕食食べた?ミートパイがあるんだけど。食べて行かない?」私は言った。
「いいの?」ライルはビリーに聞いた。
「いいよ。入って。」ビリーは言った。
「美味しい。ーー懐かしい味だね。」ライルはミートパイを食べながら言った。
「ビリーのお母さんが昨日来て今日作って言ってくれたんだよ。」私は言った。
「ああ、なんかスーパーで材料買ってるなとは思ったけど、やっぱりそうだったんだ?」ビリーは言った。
「うん。帰ってきたら置いてあって、母の愛だよね、本当に。」みんなが頷いた。
「ライルのお母さんはどんな人?」ビリーは聞いた。
「銀行に勤めてる。昔から。まあ、継父もなんだけど。母はいかにも銀行員って感じかな。」そう言ってちょっと笑って「固い感じっていうか、真面目で、お金に厳しくて。割と神経質で。まあ、悪いことではないんだけど。ビリーのお母さんは?」
「シドニータワーの近くでブティックをやってる。しっかりしてて、頑張り屋で、心配症でーーそんな感じ。」
「ビリーは頑張り屋なところを受け継いだんだね。」私がそう言ったらビリーは笑った。
「明日は?」ライルがビリーに聞いた。
「明日は整形外科にいる友達が送り迎えしてくれるって言うから、大丈夫。ありがとう。」
「カエは免許の切り替えしてないの?」ライルが聞いた。
「うん。しようとは思ってたけど。ビザの方がほぼ落ち着いたから、ビリーのケガが治ったら、かな。」
「運転出来るのか謎だけどね。日本で運転したことある?」ビリーは聞いた。
「ほぼない。電車で足りてたし、必要がなかったっていうか。」私は言った。
「怖そうで誰も乗りたくないよね。」ビリーが言ったらライルが笑った。
「まあね。自動車学校でも、ウインカー逆に出したりして笑われたし、あまり得意ではないかも。」私は言った。
「俺はーー高校の時に父と練習した。「ビリー、運転は人の命がかかってるんだから、いつもそれを頭の片隅に入れて車に乗るんだよ。横断歩道を渡っている人も、前の車を運転している人も、みんな誰かの大切な愛する人だっていうことを忘れるな」って。普段は忘れがちだけど、時々それを思い出すようにしてる。カエも無理しなくていいよ。ゆっくり覚えていけばいいと思う。」ビリーは言った。
「俺も継父に教えてもらった。関係が悪かったから必要以上の会話はなかったけど、それでもーー今思えば、「練習に行くか?」って向こうから誘ってくれることもあったし継父なりに関係を改善したいっていうサインを出していたような気がする。車の中で「学校はどうだ?」とか聞いてくれたり、ボンダイビーチに海を見に行こうって誘われたこともあった。懐かしいな。たった10年くらい前の話なのに。」ライルが言った。
「うんーー時間が経つのはあっという間で、毎日の時間の過ぎ方に怖くなることがない?」ビリーはライルに聞いた。
「うん、分かる。まだあれもやってないのに、これもやっていないのにって毎日何かに追われていて、時々焦る。」二人は頷いて、目を見合わせて笑った。「ーーそろそろ帰る。長居しすぎた、ごめん。」
ビリーはテーブルに手をついてゆっくり立ち上がりながら「そんなことない。本当に、今日はありがとう。また、今度。クラリッサに会えるのも楽しみにしてる。」って言った。
ライルが帰ったあと、私は「で、アダムは?今日は出勤した?」って聞いた。
「うん。でも、まだすごい鼻声だしゲホゲホ言ってて直接はあまり話してない。離れた所に座って、「ワッツアップ」で話してた。」ビリーが言った。
「あはは!そこまでして話したいんだ?想像すると笑っちゃう。」私は笑った。
「まあね。金曜日からはまた乗せるって言ってたから明日だけリアムに乗せて貰う。一応、看護師との飲み会は来週の金曜日ってことにしてたから、予定いれておいて。」ビリーは言った。
「うん。分かった。」
「そういえば昨日スティーブンに聞いたら、やっぱりアンナが言ってた「ネイサン・クラーク」って人がお兄さんなんだって。世間が狭すぎてビックリしたけど。」ビリーが言った。
「え!!そうなんだ?すごい偶然じゃない?パイロットなんて腐るほどいるのに・・・。」
「そうそう。だから、驚いたけど、案外意外な所で人間って繋がりがあったりするから。」
「まあね。ーーシャワー浴びてこようかな。翻訳の仕事も終わったし今日は早めに寝る。」私は言った。
シャワーを浴びながら、この前の入院から、前よりもビリーを愛おしく感じていてる自分に気が付いた。「頼れる」とか「優しい」とか「かっこいい」じゃなくて、愛おしくてたまらないって思い始めたのは最近だから。メルボルンでの生活も2年を過ぎて、私にもだいぶ心の余裕ができてきたんだな、って思った。もっとビリーに目を向ける余裕が。周りの人を気遣う余裕が。そして、ビリーとの将来に本気になって目を向ける余裕も。
寝室に戻るとビリーは珍しく上半身裸でベッドに座っていた。
「やだ!なんで裸でそんなところに・・・」って私が言ったらビリーはちょっと赤くなって笑いかけた。
「脱がせる手間が省けるかと思って。カエ、おいで。」
私はビリーの胸に飛び込んだ。
アダムの風邪はビリーにうつらなくてよかった、てちょっと安心しかけていたのに、この安心しかけていたっていうのが実は厄介で、実際はそうじゃなかった。多分、ビリー自身もホッとしかけていたはずで、私たちはまた週末に想定外の事態に見舞われた。そんなに酷くならなかったのが唯一の救いだけど。
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