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ハーミア・イジーは心踊る衝動を必死に抑えながら家路へと急ぐ。
気を抜くと、自我を忘れて踊りを踊ってしまいそうになる程に心が跳ねている。
さすがに舞踏会ばりの足捌きを公衆の面前であるここグラディナ特殊養成機関の中庭で披露するのは不味い。
いくら有頂天にいようとそれくらいの分別は私にはある。とハーミアは自身に言い聞かせる。
中庭ですれ違う多くの者に会釈をされ、ハーミアも会釈を返す。
白と赤で仕立てられた制服を着用している彼ら彼女らは、ここグラディナ特殊養成機関に席を置く若人達だ。
無論ハーミアも制服を着用している。
才色兼備。知世と美が集約された顔立ちに紫色の大きな瞳が可愛らしく瞬きすると、腰丈まである白銀の髪がさらさらと風に流れていく。瑞々しい肉体を包む制服からは長くしなやかな手足。
すれ違う同姓からは羨望の眼差しを。異性からは好意の視線を浴びながらハーミアは広い中庭を歩く。
ハーミアが通うグラディナ特殊養成機関【通称:グラディナ】は十二歳~十九歳までの将来有望な若者達が集められ。ゆくゆくは国の力になれるように訓練で体を鍛え。座学を教示する場である。
通う者達の目的も様々あり、兵士、騎士、冒険者になる為に訓練を行う者もいれば。学士・兵学、研究者を目指す者もいる。
グラディナに通う若人達は候補生と呼ばれている。
そんな一候補生であるハーミアは学ぶ側の身でありながらグラディナから仕事を任せられた。
これは異例中の異例であり。ハーミア自身も驚いた。
だが裏を返せばそれだけハーミアが優秀だというのが分かる。
考古学を専攻するハーミアに任せられたのは、最古の遺跡と呼ばれるカルディナ遺跡の調査。
ハーミアにとっては願っても無い申し出であった。
幼い頃よりこの世界がどう誕生したのか。その歴史に興味があったハーミア。
調べていくうちにどんどんとのめり込み、気付けば専門学者の道も考える程だ。
カルディナ遺跡までは馬車を利用して約三日かかる。
街道には人を食らう獣や、異界の存在【通称:モンスター】が蔓延っている為。
行くことは叶わなかったが、今回は個人ではなくチームで行くことになる。
加えて必要な経費も、街道の危険も、寝泊まりも食も全てグラディナが保証してくれる。
到着したら夢にまで見たカルディナ遺跡の調査。
遺跡は何の為に作られたのか。
どんな目的があったのか。
いつ作られたのか。
誰が作ったのか。
それらを解明できたらどんなに嬉しいか。
「ふふっ」
思わず声が漏れるほどハーミアは頬の筋肉を緩め、歩調を早め、家路へと急いだ。
気を抜くと、自我を忘れて踊りを踊ってしまいそうになる程に心が跳ねている。
さすがに舞踏会ばりの足捌きを公衆の面前であるここグラディナ特殊養成機関の中庭で披露するのは不味い。
いくら有頂天にいようとそれくらいの分別は私にはある。とハーミアは自身に言い聞かせる。
中庭ですれ違う多くの者に会釈をされ、ハーミアも会釈を返す。
白と赤で仕立てられた制服を着用している彼ら彼女らは、ここグラディナ特殊養成機関に席を置く若人達だ。
無論ハーミアも制服を着用している。
才色兼備。知世と美が集約された顔立ちに紫色の大きな瞳が可愛らしく瞬きすると、腰丈まである白銀の髪がさらさらと風に流れていく。瑞々しい肉体を包む制服からは長くしなやかな手足。
すれ違う同姓からは羨望の眼差しを。異性からは好意の視線を浴びながらハーミアは広い中庭を歩く。
ハーミアが通うグラディナ特殊養成機関【通称:グラディナ】は十二歳~十九歳までの将来有望な若者達が集められ。ゆくゆくは国の力になれるように訓練で体を鍛え。座学を教示する場である。
通う者達の目的も様々あり、兵士、騎士、冒険者になる為に訓練を行う者もいれば。学士・兵学、研究者を目指す者もいる。
グラディナに通う若人達は候補生と呼ばれている。
そんな一候補生であるハーミアは学ぶ側の身でありながらグラディナから仕事を任せられた。
これは異例中の異例であり。ハーミア自身も驚いた。
だが裏を返せばそれだけハーミアが優秀だというのが分かる。
考古学を専攻するハーミアに任せられたのは、最古の遺跡と呼ばれるカルディナ遺跡の調査。
ハーミアにとっては願っても無い申し出であった。
幼い頃よりこの世界がどう誕生したのか。その歴史に興味があったハーミア。
調べていくうちにどんどんとのめり込み、気付けば専門学者の道も考える程だ。
カルディナ遺跡までは馬車を利用して約三日かかる。
街道には人を食らう獣や、異界の存在【通称:モンスター】が蔓延っている為。
行くことは叶わなかったが、今回は個人ではなくチームで行くことになる。
加えて必要な経費も、街道の危険も、寝泊まりも食も全てグラディナが保証してくれる。
到着したら夢にまで見たカルディナ遺跡の調査。
遺跡は何の為に作られたのか。
どんな目的があったのか。
いつ作られたのか。
誰が作ったのか。
それらを解明できたらどんなに嬉しいか。
「ふふっ」
思わず声が漏れるほどハーミアは頬の筋肉を緩め、歩調を早め、家路へと急いだ。
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