AI(あい)のゆりかご ー日高博士の育児AI研究日誌ー

ちはやれいめい

文字の大きさ
22 / 44
日高博士の育児AI研究日誌 乳児・幼年期編

22話 星まつりの夜に

しおりを挟む
 施設名:日高人工知能技術研究所
 記録担当:助手・栗田玲司くりたれいじ
 2031年8月30日
 屋外気温34℃(晴天) 午後7時30分

 身長93cm 体重13.4kg
 父さんが講師をしている星まつりに参加することにした。
 いろんなものを見て触れさせるのは情操教育にいいと聞く。
 話せる言葉の種類は増えて、自分の名前、家族の名前をきちんと理解している。
 たどたどしいが、会話ができる。
 一人で歩き回ることもできる。
 これからの成長が楽しみだ。


━━━━━━━━━━━━━━━ 



 日高と千花はハルをつれて県内の天体観測イベント、「胎内星まつり」に来た。
 玲司も面白そうだからと、一家で参加している。

 夏の夜空には満天の星が広がっていた。
 日が落ちてもまだ熱気が残っていて、ときおり吹く風が心地いい。

「ハル、すっごいな! 空全部が星だ!」
「うん。おほししゃま、きれい」

 タケルがハルの手を引いて空を指差す。
 ハルは小さなスニーカーで芝の上をちょこちょこと歩く。
 ハルは少しずつ言葉も増えて、タケルとの会話も日に日に増えていた。話し相手がいるとより脳も働くのだろう。

「タケルー、あんまり走るなよ! 暗いから足元がよく見えないだろ!」
「はーーーい! あ、ジュースほしいジュース! お父さん! あれ買ってーー!」
「まったくもう。はしゃぎすぎだ」

 玲司は夜でも元気いっぱいの息子に、苦笑いする。


 宗一は観測会のテント付近にいた。
 白衣を着た青年と最後の打ち合わせをしていたようで、日高たちに気づくと破顔した。

「おお、みんな来てくれたか。よく来たなぁー、ハル。嬉しいよ」

 千花がハルの頭をなでて「ハル。ほら。おじいちゃんにあいさつしよう」と促す。

「ん! じーちゃん、だっこ!」

 ハルはトコトコ歩いて宗一の足にしがみついた。
 宗一はデレデレになってハルを抱き上げる。
 宗一と話していた職員が、ふわりと笑う。

「日高先生のお孫さんですか? かわいいですね」
「そうなんだよ。この子はハル。三歳になった。こっちが息子の雪雄と、雪雄の奥さんの千花さん。青井あおい先生のところの娘さんは、もう少し年上だったかな?」

「ええ。娘は来年小学生になるので、先月まで妻と二人で「ランドセル黄色がいいー」ってずっとカタログとにらめっこしていました。いまあそこで星を見ていますよ。夏美、ミラ。ちょっと来て」

 青井は望遠鏡を覗いていた若い女性と、女の子を呼ぶ。二人がそれに気づいてこちらに来た。

「ソラ。話はもういいの?」
「ああ。打ち合わせは終わったよ」
「パパー! くじら座見えたよー!」
「ふふふ。今日は去年より天気がいいから、くっきり見えただろう?」

 ボブヘアの女性と、ショートヘアの女の子。女の子は青井によく似た、穏やかそうな顔立ちをしている。

「先生のご子息とお会いするのは初めてでしたね。僕は青井ソラ。日高先生と同じ天文学者をしています。こちらは妻の夏美と、娘のミラです」
「はじめまして。青井夏美です」
「青井ミラです」

 ミラは宗一に抱っこされているハルに声をかける。

「日高先生のおまごさん? かわいいねぇ。お名前言える?」
「ハル」
「ハルくんね。わたし、青井ミラ。ミラはくじら座の星の名前なんだってパパが教えてくれたの」

 ミラはとても人懐っこい子のようで、初めて会うハルにも明るく笑う。

「オレはハルのお兄ちゃんだ。まずはおれにあいさつしてもらおうか」

 ジュースを飲んでいたタケルが、ポジションを取られまいとお兄ちゃんアピールをはじめた。

「あなたの名前は?」
「栗田タケルだ。将来は父さんを超えるちょーすっごいロボット工学者になるんだぞ!」
「へー。わたし、ロボット見たことないんだよね。テレビに出てるような、空をさつえいできるの?」
「ドローンなんて誰でも作ってるじゃないか。オレが作りたいのはもっとちょーすごいやつだ!」

 息子の大口を聞いて、玲司とサホが笑いをこらえるのに必死になっている。
 タケル本人は真剣だから、笑うのも悪いと思って後ろを向き、肩を震わせた。

「タケルにーちゃん、ちょーちょなの?」
「ちょうちょじゃない。ちょうすごいロボットだ!」
「わたし、よくわからないけど……たぶんすごいんだね!」

 微妙に噛み合わないやり取りで、みんな笑ってしまった。


 



 乳児・幼年期編 END


*胎内星まつり
新潟県胎内市で八月末ころに行われる天体観測イベントです。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー! 愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は? ―――――――― ※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...