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日高博士の育児AI研究日誌 乳児・幼年期編
22話 星まつりの夜に
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施設名:日高人工知能技術研究所
記録担当:助手・栗田玲司
2031年8月30日
屋外気温34℃(晴天) 午後7時30分
身長93cm 体重13.4kg
父さんが講師をしている星まつりに参加することにした。
いろんなものを見て触れさせるのは情操教育にいいと聞く。
話せる言葉の種類は増えて、自分の名前、家族の名前をきちんと理解している。
たどたどしいが、会話ができる。
一人で歩き回ることもできる。
これからの成長が楽しみだ。
━━━━━━━━━━━━━━━
日高と千花はハルをつれて県内の天体観測イベント、「胎内星まつり」に来た。
玲司も面白そうだからと、一家で参加している。
夏の夜空には満天の星が広がっていた。
日が落ちてもまだ熱気が残っていて、ときおり吹く風が心地いい。
「ハル、すっごいな! 空全部が星だ!」
「うん。おほししゃま、きれい」
タケルがハルの手を引いて空を指差す。
ハルは小さなスニーカーで芝の上をちょこちょこと歩く。
ハルは少しずつ言葉も増えて、タケルとの会話も日に日に増えていた。話し相手がいるとより脳も働くのだろう。
「タケルー、あんまり走るなよ! 暗いから足元がよく見えないだろ!」
「はーーーい! あ、ジュースほしいジュース! お父さん! あれ買ってーー!」
「まったくもう。はしゃぎすぎだ」
玲司は夜でも元気いっぱいの息子に、苦笑いする。
宗一は観測会のテント付近にいた。
白衣を着た青年と最後の打ち合わせをしていたようで、日高たちに気づくと破顔した。
「おお、みんな来てくれたか。よく来たなぁー、ハル。嬉しいよ」
千花がハルの頭をなでて「ハル。ほら。おじいちゃんにあいさつしよう」と促す。
「ん! じーちゃん、だっこ!」
ハルはトコトコ歩いて宗一の足にしがみついた。
宗一はデレデレになってハルを抱き上げる。
宗一と話していた職員が、ふわりと笑う。
「日高先生のお孫さんですか? かわいいですね」
「そうなんだよ。この子はハル。三歳になった。こっちが息子の雪雄と、雪雄の奥さんの千花さん。青井先生のところの娘さんは、もう少し年上だったかな?」
「ええ。娘は来年小学生になるので、先月まで妻と二人で「ランドセル黄色がいいー」ってずっとカタログとにらめっこしていました。いまあそこで星を見ていますよ。夏美、ミラ。ちょっと来て」
青井は望遠鏡を覗いていた若い女性と、女の子を呼ぶ。二人がそれに気づいてこちらに来た。
「ソラ。話はもういいの?」
「ああ。打ち合わせは終わったよ」
「パパー! くじら座見えたよー!」
「ふふふ。今日は去年より天気がいいから、くっきり見えただろう?」
ボブヘアの女性と、ショートヘアの女の子。女の子は青井によく似た、穏やかそうな顔立ちをしている。
「先生のご子息とお会いするのは初めてでしたね。僕は青井ソラ。日高先生と同じ天文学者をしています。こちらは妻の夏美と、娘のミラです」
「はじめまして。青井夏美です」
「青井ミラです」
ミラは宗一に抱っこされているハルに声をかける。
「日高先生のおまごさん? かわいいねぇ。お名前言える?」
「ハル」
「ハルくんね。わたし、青井ミラ。ミラはくじら座の星の名前なんだってパパが教えてくれたの」
ミラはとても人懐っこい子のようで、初めて会うハルにも明るく笑う。
「オレはハルのお兄ちゃんだ。まずはおれにあいさつしてもらおうか」
ジュースを飲んでいたタケルが、ポジションを取られまいとお兄ちゃんアピールをはじめた。
「あなたの名前は?」
「栗田タケルだ。将来は父さんを超えるちょーすっごいロボット工学者になるんだぞ!」
「へー。わたし、ロボット見たことないんだよね。テレビに出てるような、空をさつえいできるの?」
「ドローンなんて誰でも作ってるじゃないか。オレが作りたいのはもっとちょーすごいやつだ!」
息子の大口を聞いて、玲司とサホが笑いをこらえるのに必死になっている。
タケル本人は真剣だから、笑うのも悪いと思って後ろを向き、肩を震わせた。
「タケルにーちゃん、ちょーちょなの?」
「ちょうちょじゃない。ちょうすごいロボットだ!」
「わたし、よくわからないけど……たぶんすごいんだね!」
微妙に噛み合わないやり取りで、みんな笑ってしまった。
乳児・幼年期編 END
*胎内星まつり
新潟県胎内市で八月末ころに行われる天体観測イベントです。
記録担当:助手・栗田玲司
2031年8月30日
屋外気温34℃(晴天) 午後7時30分
身長93cm 体重13.4kg
父さんが講師をしている星まつりに参加することにした。
いろんなものを見て触れさせるのは情操教育にいいと聞く。
話せる言葉の種類は増えて、自分の名前、家族の名前をきちんと理解している。
たどたどしいが、会話ができる。
一人で歩き回ることもできる。
これからの成長が楽しみだ。
━━━━━━━━━━━━━━━
日高と千花はハルをつれて県内の天体観測イベント、「胎内星まつり」に来た。
玲司も面白そうだからと、一家で参加している。
夏の夜空には満天の星が広がっていた。
日が落ちてもまだ熱気が残っていて、ときおり吹く風が心地いい。
「ハル、すっごいな! 空全部が星だ!」
「うん。おほししゃま、きれい」
タケルがハルの手を引いて空を指差す。
ハルは小さなスニーカーで芝の上をちょこちょこと歩く。
ハルは少しずつ言葉も増えて、タケルとの会話も日に日に増えていた。話し相手がいるとより脳も働くのだろう。
「タケルー、あんまり走るなよ! 暗いから足元がよく見えないだろ!」
「はーーーい! あ、ジュースほしいジュース! お父さん! あれ買ってーー!」
「まったくもう。はしゃぎすぎだ」
玲司は夜でも元気いっぱいの息子に、苦笑いする。
宗一は観測会のテント付近にいた。
白衣を着た青年と最後の打ち合わせをしていたようで、日高たちに気づくと破顔した。
「おお、みんな来てくれたか。よく来たなぁー、ハル。嬉しいよ」
千花がハルの頭をなでて「ハル。ほら。おじいちゃんにあいさつしよう」と促す。
「ん! じーちゃん、だっこ!」
ハルはトコトコ歩いて宗一の足にしがみついた。
宗一はデレデレになってハルを抱き上げる。
宗一と話していた職員が、ふわりと笑う。
「日高先生のお孫さんですか? かわいいですね」
「そうなんだよ。この子はハル。三歳になった。こっちが息子の雪雄と、雪雄の奥さんの千花さん。青井先生のところの娘さんは、もう少し年上だったかな?」
「ええ。娘は来年小学生になるので、先月まで妻と二人で「ランドセル黄色がいいー」ってずっとカタログとにらめっこしていました。いまあそこで星を見ていますよ。夏美、ミラ。ちょっと来て」
青井は望遠鏡を覗いていた若い女性と、女の子を呼ぶ。二人がそれに気づいてこちらに来た。
「ソラ。話はもういいの?」
「ああ。打ち合わせは終わったよ」
「パパー! くじら座見えたよー!」
「ふふふ。今日は去年より天気がいいから、くっきり見えただろう?」
ボブヘアの女性と、ショートヘアの女の子。女の子は青井によく似た、穏やかそうな顔立ちをしている。
「先生のご子息とお会いするのは初めてでしたね。僕は青井ソラ。日高先生と同じ天文学者をしています。こちらは妻の夏美と、娘のミラです」
「はじめまして。青井夏美です」
「青井ミラです」
ミラは宗一に抱っこされているハルに声をかける。
「日高先生のおまごさん? かわいいねぇ。お名前言える?」
「ハル」
「ハルくんね。わたし、青井ミラ。ミラはくじら座の星の名前なんだってパパが教えてくれたの」
ミラはとても人懐っこい子のようで、初めて会うハルにも明るく笑う。
「オレはハルのお兄ちゃんだ。まずはおれにあいさつしてもらおうか」
ジュースを飲んでいたタケルが、ポジションを取られまいとお兄ちゃんアピールをはじめた。
「あなたの名前は?」
「栗田タケルだ。将来は父さんを超えるちょーすっごいロボット工学者になるんだぞ!」
「へー。わたし、ロボット見たことないんだよね。テレビに出てるような、空をさつえいできるの?」
「ドローンなんて誰でも作ってるじゃないか。オレが作りたいのはもっとちょーすごいやつだ!」
息子の大口を聞いて、玲司とサホが笑いをこらえるのに必死になっている。
タケル本人は真剣だから、笑うのも悪いと思って後ろを向き、肩を震わせた。
「タケルにーちゃん、ちょーちょなの?」
「ちょうちょじゃない。ちょうすごいロボットだ!」
「わたし、よくわからないけど……たぶんすごいんだね!」
微妙に噛み合わないやり取りで、みんな笑ってしまった。
乳児・幼年期編 END
*胎内星まつり
新潟県胎内市で八月末ころに行われる天体観測イベントです。
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