佐世保黒猫アンダーグラウンド―人外ジャズ喫茶でバイト始めました―

御結頂戴

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ジャズの面影とたこ焼き屋

 伝え聞くものは2

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「この【異界】の噂は……その……学校で、不意に……」
「そうじゃなく【時限門】の事は誰から聞いたと言っているんだ」

 有無を言わさず言葉を突っぱねる丈牙に、思わず神奈は言葉を失う。
 明らかに尋常ではない様子である事は解るが、さすがに客に対してその態度はいけないと思い、和祁は丈牙の服の袖をカウンターの下で軽く引っ張る。

 すると丈牙は和祁のたしなめようとするような表情に気付いたのか、苦々しげに顔を歪めると深い溜息を吐いた。

「……威嚇した事は謝ろう。だが、これはこっちにとっても重大な問題なんだ。あの門は少々特殊なものでね、他に情報が漏れてたら困るんだよ」

 場合によっては……などと呟きながら眼鏡越しに金眼を細める丈牙に、宗源火そうげんびが忙しなく黒い炎を揺らめかせながら答えた。

「た、多分……としか言いようがないが、この事を知る者は限られた物しかいないと思われる。私達がこの【異界】の門を知ることが出来たのは、ある文献を読んだからなのだ。それに、私達もここに“ある”という事しか知らない。それ以上の事は文献には書かれていなかったからな……」

 宗源火のその言葉に、和祁は少し引っ掛かりを覚えた。
 見た所、この【佐世保地下商店街】は、昭和の雰囲気を元にして作られている。つまり、他の場所に有る【異界】よりも新しい場所のはずなのである。

 なのに何故「噂」ではなく「文献」なのだろうか。
 それほど真新しい場所であれば、普通は些細な噂くらい流れるはずだろう。なのに、丈牙は【時限門】に関しての噂がどこかから漏らされたと思っている。
 まさかこの男がそんな事を知らない訳でもあるまいし、知っていたのならばこんな風に神奈達を詰問する事などあるまい。新しい場所なのに、古い「文献」で知っているだなんて、妙な話だ。

 そこがどうしても解らなくて、和祁は丈牙の顔を見上げた。

「あの門って、そんなにヤバい物だった……んですか?」

 そう言うと、丈牙は一瞬何かを考えるように目を逸らしたが、和祁に対しては妙に軽い態度で笑うと、大事ないと肩を竦めた。

「まあ、その話は後だ。……文献ということは、お前らの“一族”のものか」
「え、ええ……悪用はされてないと思います……」

 確信が無さげだがとりあえず答えた神奈に、丈牙は一応の結論を得たかのように頷いて、話を切り替えた。

「……わかった。とりあえずはその話を信じよう。それで……お前達が【時限門】を使って行いたい事って言うのはなんだ。その祖母とやらをタイムスリップさせろってことかい? そんな事したら、お迎えが来る前に昇天するぞ」
「あ、い、いえ……その……入るのは私達で、出来れば……件のたこ焼き屋台を見つけて、味を教えて貰えるように……」
「なるほど……っていうか、タイムスリップって、そんなの出来るんですか?」

 和祁はこの【異界】に滞在する時に、色々とあって帰りが一日二日ずれこんだら【時限門】を使って入った時の日にちに戻して貰っている。

 ただ、門にも色々と制約がある。入った時と同じ時間に戻すことは出来ず、必ず時間が一時間から数時間ほど進んだ時点に戻ってしまうのだ。
 丈牙は何か難しい理屈を言っていたが、そんな事は高校に入ったばかりの和祁には覚えられなかった。とにかく、そんな風に誤差を生み出す門なのだから、更に前の時間に戻るとなるとかなり危険に違いない。
 不安な顔になる和祁に、丈牙はまたもや難しい顔をしながら小さく頷いた。

「出来なくはない。だが……普通の人間には難しいだろうね。肉体が邪魔をして、ヘタをするとこの異界にすら戻って来れなくなる可能性がある」
「じゃあ……無理、なんですか……?」

 神奈の顔が歪む。丈牙はその顔を見て、和祁の「何とかならないだろうか」と言わんばかりの困ったような顔をみやると――――深く、溜息を吐いた。

「ハァ……まあ、方法はある。……面倒だが……和祁が持ってきた話だ、仕方なく付き合ってやろう」
「付き合うって、なにをするんだ」

 問いかけた速来に、丈牙は厭味ったらしい程の笑顔で笑うと……神奈と和祁の頭を額からぐっと鷲掴んだ。

「んええ!?」
「ちょっ、なっ、なに!?」
「肉体があるから、移動が面倒になるんだ。だったら……魂だけになれば、移動は簡単ってことだよ。なっ、和祁」
「あ……ああ……」

 と言う事は、またあれか。強制的に霊体にされるのか。
 協力してくれる気になったのは良いが、またこうやって乱暴に魂を引き抜かれると言うのはあまり良い気分ではない。

(だ、だけど……困ってるんだし……俺も、頑張って手伝わないと……)

 神奈達が必死になって頼み込んできて、自分はその頼みを受けてしまったのだから、最後まできちんと付き合ってやるべきだ。
 だがさすがにタイムスリップまで付き合わなくてもいいのではないかと思ったが――そう考えている内に、和祁と神奈は霊体を引っ張り出されてしまっていた。











※次も木曜日更新です(諸事情で…すみません…(;´Д`)

※キャラ文芸で奨励賞を頂く事が出来ました!
 これも読んで下さっている方々のお蔭です、ありがとうございます(*´∀`)
 相変わらずののんびり更新ですが、これからもお暇な時に見てやって
 くださるととても嬉しいです!!
 
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