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イスタ火山、絶弦を成すは王の牙編
38.イスタ火山―予兆―
しおりを挟むとにかく、蓋が空かないか試してみよう。
ギリギリまで梯子を登り、内側から開けられないかと押してみるが、蓋はビクともしない。片手ではどうしても開けられなくて戸惑っていると、梯子が揺れて、視界の端にある梯子を掴んでいた俺の片手の上に、大きな手が飛びついて来た。
「っ……!」
背後に熱を感じる。そう思ったと同時に、クロウの大きな体が俺を覆った。
「両手で梯子を掴んでいろ」
「う、うん……」
背中に、クロウの体がひっつく。筋肉の起伏が分かるくらいに密着して、思わず体がビクリと震えたが、俺はぐっと堪えて両手で梯子を掴んだ。
それを見てか、クロウは体を伸ばして天井の蓋に掌を当てる。
ぅ……後ろに、ぴったりとクロウの背中が当たってるのが気になる……。
腹が動いてる。硬くて、だけど適度に筋肉の柔らかさが有って、背中を押してる。
鍛えられた胸筋が僅かに動く感覚すらも感じてしまって、どうにも据わりが悪い。それに、その……か、下半身が、くっついてるっていうか……。
「ム……」
クロウが唸って、ぐっと力を入れる。
体が動き、背中で擦れて、なんでかそれが異様にぞくぞくする。
尻に、そ、その……あの……当たって、て、力が入ったら、筋肉とは違う膨らんだ所が、クロウが一気にぐっと動いた途端にぎゅっと押し付けられて……。
「ひ、ぅ……っ!」
声が出た瞬間に、蓋が開いてギギギギと凄い音がする。
その音のお蔭で変な声は掻き消えたみたいだけど、でも、俺の体は押し付けられた物に足が鳥肌を立ててしまい、酷く震えてしまっていた。
……ふ、副作用怖い……なんでこんな事くらいで体が疼くんだよ……。
いまそんな場合じゃないのに、我慢してたはずなのに……っ。
「開いたぞ、ツカサ」
「あっ、あ、ぅ……大丈夫……っ」
「なんだ、梯子に登って疲れたのか? 仕方がないな」
そう言うと、クロウは足が震えている俺の体を抱えて強引に梯子を登り出した。
片腕で抱えられているだけなのに、俺の体はガッチリと固定されていて、落ちる心配は欠片も無い。でも、その、クロウに触れられてると体がざわざわして、凄く……困る事態になってしまいそうで……。
ち、ちくしょう、本当に副作用なのか?
今までこんな風になった事なんて一度も無かったのに、どうして今になって急に変な風になって来ちまったんだろう。俺、何かしたのかな。
炎の曜気のせいで体が火照るのを体が勘違いしてるとか?
それとも、薬とか術の重ね掛けで俺だけ興奮状態になったとか……。
ああ、色んな可能性が有るけどどれもイマイチ信用出来ない。
この世界じゃなんでもアリだってのに、どうしても納得出来なかった。
「ツカサ、大丈夫か」
「ふぇっ!? あっ、あ、ありがとクロウ」
ぐるぐる考えている間にクロウは梯子を登ってしまったのか、俺を固い地面に優しく降ろしてくれた。地面……ということは、ここは確実にどこかの空間だ。どこかの部屋か何かに到着したんだ、やったー!
「ここはどうやら……何かの支度室のようだな」
「したくしつ?」
そりゃどんな部屋だと周囲をよく見渡してみると、部屋の左右にはロッカーのような棚がいくつか見えた。俺達が出て来た場所は井戸みたいになっていて、部屋の中央にあるが、それ以外は何もない。良く考えたら部屋もなんか質素だな。
いや、質素って言うか、俺の世界の学校の一室みたいな……。まあ、飾り気のない場所だとそうもなるか。とにかく何の支度室なのか確認しよう。
ロッカーを開けてみると、そこにはボロボロになった服が掛かっていた。
これは……なんかの防護服みたいだな。……ん、待てよ。ここに防護服が有って、すぐ近くにマグマの部屋が有るって事は……もしかしてあそこって、マグマが流れる道だったりとか……する……?
「なんだその服のようなものは」
「ハッ。え、えーと……たぶん、下の道に降りるために必要な服じゃないかな」
あくまでも推測だと前置きして、俺はクロウに妄想を披露した。あの道は、恐らくマグマが流れるための道で、この服は古代人……と言うか、俺の先代の黒曜の使者が用意していたマグマに耐えられる服ではないかと。
しかしそんな証拠はどこにもない。あくまで推測だから、否定されても仕方がないと思っていたのだが、クロウはその予想を笑う事なく「なるほど」と頷いてくれた。
「とすると……ここはまだダンジョンの中なのか」
「多分……でも、ここまで俺の世界の建物に近い造りってことは……もしかしたら、あの源泉の装置を治す手立ても有るかも知れないぜ!」
「探していたのは本来の目的の場所ではないのか?」
どこか納得がいかないような声を出すクロウに、俺はまあ待てと掌を見せた。
「もしかしたらそれも分かるかもよ。あんな装置が造れるってことは、周囲の事も把握していたかもしれないし」
「フム……その可能性はあるが……」
「とりあえず探ってみようぜ。なっ」
侵入の仕方が正攻法じゃ無かったが、しかしここがイスタ火山のダンジョンと何か関係が有る場所ってのは間違いないだろう。
となれば、あれよりも詳しい説明書がどこかにあるかもしれない。
それに、もしここがキュウマが残した施設だとすれば、アイツのことだから多分、次にここに来るだろう異世界人にも使えるような説明書を作ってるはずだ。
なんかマメだったもんなアイツ。
よし、虱潰しにこの中を探索してみよう。上手くすれば火山のダンジョンに戻る術も見つかるかも知れない。そう思い、俺はクロウと探索を開始した。
――しかし、これがまた探索と言っても非常に時間が掛かった。
何故に時間が掛かったかと言うと……この施設は俺の世界のビルやなんかの構造と良く似ているくせして、スライムや変な球体の光のモンスターが出て来るのだ。
スライムは以前戦った事が有ったから、何とか切り抜けられたが……球体型の光るモンスター、こいつが厄介だった。ウィルオーウィスプでもないし、生物なのかどうかすら分からない。調べるにしても、俺もクロウも名前を知らないから、百科事典で探す事もできない。その存在そのものが謎だ。
しかもそいつ、ビームまで打って来るもんだから、俺達は一々隠れて壊してという作業をしなければならなくなり、探索が非常に難しくなっていた。
クロウが土の曜術で破壊してくれたり、俺も俺なりに曜術を使って遠隔攻撃をしているのだが、それでも数が多すぎる。
それでも、探索した部屋に何か手がかりが有れば良かったんだが、残念な事に何も収穫が無かった。支度室以外の部屋は何もなく殺風景で、まるでテナントが全部引っ越した廃墟ビルみたいな有様だった。もしかしたら何かが残っていたのかも知れないが、あの防護服みたいに劣化して消滅してしまったんだろうな。
だから、部屋に入った瞬間にあの光る球体がいると探索もままならなくて、俺達は戻る事も進む事も難しくなってしまっていた。
それに……その……。
何でか、よく分からないんだが、本当に非常に困っているんだが……戦いを続ける内に、体が熱で変になって来たのか、どうしてか体がおかしいことになってて……。
敵が増えて行くたび、逃げ回るたびに汗が噴き出して、堪えているのに股間が情けない事になりそうになって。もう、正直訳が解らなくてどうにかなりそうだった。
だって、戦闘中の時にまで体がビリビリしてくんだぞ!?
なんだこれ、マジでなんだこれ!
もうなんかクロウの事までぼやけて見えて来るし、目が敵が出る事に混乱しているのかさっきからチラチラ土の曜気の光が見えてくるし、もうなんていうか、今ここにトイレが有るならいっそ一発抜いて頭を冷静に戻したいくらい、頭がぼーっとして、集中する事すらままならないっていうか……!
ああもうっ、なんで、どうしてこんな時にこうなっちまうんだよ!
クロウの事アシストしなきゃいけないのに、俺も戦わなきゃいなのに!
「ツカサ、大丈夫か」
戻るに戻れずどんどん奥へ進んでしまい、敵をやり過ごしながら逃げ込んだ部屋。
ここは「アタリ」の部屋だったみたいで、敵は出て来なかった。
それに、奥の方の部屋になると、朽ちた棚などの“人の痕跡”が現れ始めた。もしかしたら、あの場所の方が最奥で、こっちが入口に近かったのかも。
なんにせよ、ここで休憩が出来たのは大きい。
俺の物も大きくなる前になんとかして治めなければ……。
なんてことを考えながら、俺はクロウに頷いて深呼吸を繰り返した。
「大丈夫、少し休めばたぶん平気だから。でも、逃げ回ったり戦ったりしてたせいで、支度室から随分と離れちまったな……これじゃ戻るのにも骨が折れそうだ」
「道は覚えているが、あの光る球体も何体いるか分からんしな……もし無限に湧いて出てくるのだとしたら、普通のダンジョン以上に厄介だ」
「だよなぁ……。ここは火山のダンジョンよりも通路が狭いし、それに部屋が沢山あって曲がり角も多いから、見通しも悪い……。その上、スライムはともかく球体はクロウがニオイで察知するのも無理だから不意打ちされる……」
「まったく、厄介な球体だ……」
俺が【索敵】でも出来れば良かったんだけど、勉強してないから無理だしなあ。
ブラックだったら……おっと、いかんいかん。今は考えないようにしなければ。
許してくれたとは言え、クロウだってまだ気にしているかもしれないんだから、ゆっくり話す機会が訪れるまでは刺激するような事はしないようにしよう。
などと密かに決心していると、クロウは部屋を見渡しながら呟いた。
「しかし、部屋に生活感が出て来ているのは確かだ。もう少し行けば、何か見つかるかも知れんな。きついかもしれないが、頑張れるか。ツカサ」
「うん。戻れないならどっちにしろ進むしかないもんな」
足手纏いにならないように頑張るよと小さくガッツポーズをとると、クロウは少し顔を緩めて笑ってくれた。いつもの笑顔だ。
やっぱり、クロウはいつものクロウがいい。
今まで何だかずっと違和感を覚えてたけど、あれは気のせいだったのかも。
そうだよな。クロウは真面目で真っ直ぐなんだ。ちょっと変な所もあるけど、絶対に悪い事なんてしない。そういう奴だから、俺も信頼してるんだ。
だったら、あんな不安になるような違和感なんてありえないか。
喧嘩しちまったから過敏になって被害妄想でもしてたんだな、きっと。
あ、じゃあもしかしたら、俺のこの興奮も過敏症になってたからかもしれない。
きっとそうだよな、うん。
「行くぞツカサ」
「うん」
少し休んだら、体の方もちょっと楽になった。
俺の為に休憩を入れてくれたクロウに感謝しつつ、俺達は再び廊下へと出た。戻る事が出来ない以上、どうにかしてここを調べて脱出しないとな。
ブラック達には心配をかけてしまうけど、仕方がない。とにかく前進だ。
そんなこんなでしばらく敵をやり過ごしながら先へと進んでいると、今までの通路とは明らかに違う、広い通路が伸びる場所を見つけた。
この通路だけは妙に綺麗で、しかも今まで歩いてきた通路よりも明るい。
何か有ると見込んだ俺とクロウは、その通路を進んでみる事にした。すると、前方にいかにも「重要なものが向こうにあります」と言わんばかりの両開きの扉が見えて来て……いやちょっとまて、これ明らかにSFチックな扉じゃないか。
取っ手もないし、多分これセンサーとかで開く自動扉だよな。
「ム……この扉はなんだ。壊すか?」
「待って待って、壊したらあの球体が集まって来るかもよ。えーと……こう言う場合は、どっかに入力装置とかが有ると思うんだけど……」
そう言いながら、扉に何の気なしに手を触れると。
『認証しました』
「え?」
明らかに俺達の物ではない女性の声が聞こえたかと思った、刹那。
扉が勝手に動き出してしまった。
「えっ、え、なにっ、なに!?」
「ツカサが触れた事で開いたのか……?」
驚く俺達に、謎の女性の声は言葉を続ける。
『認証によりセキュリティを解除します。再度起動させるには再設定してください』
「セキュリティって……」
そんな横文字、たぶんこの世界にはないよな?
ってことはやっぱりここ、異世界人が関わってる施設で間違いなさそうだな。
扉が開いたのも、俺が異世界人だって判断したからなんだろうか。それにしても、初対面の俺にベラベラと喋ってくれるなんて……やっぱここキュウマが造ったのでは……?
そんな事を考えている間に、扉が開ききった。
中からは何も出てこない。むしろ俺達を歓迎するかのように、明かりが灯った。
「……行くか、ツカサ」
「う、うん……」
先程とは違う意味で、心臓がドキドキしてくる。
願わくばこの先に俺達が喜ぶ物が舞っていてくれればいいのだが……。
なんにせよ、油断は禁物だ。
充分に警戒しながら、俺達は扉の中へと足を踏み入れた。
→
※戦闘シーン入れたかったんですけど長くなるのでカットしました…
遅れてしまいすみません…(;´Д`)
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