異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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空中都市ディルム、繋ぐ手は闇の行先編

40.好きも過ぎると

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   ◆



「ツカサ君……ツカサくぅぅん……」

 ……まあ、ブラックには凄く苦しい事だったんだし、久しぶりに号泣するぐらいずっと心の中にわだかまっていた事だったんだし、俺になついて離れないのは解る。
 寂しいと、人恋しくなるもんな。抱き着ける対象が居るんなら抱き着きたいと思うかも知れない。だからまあ、抱き着いて来るのは仕方ない。
 仕方ないんだけど。

「おいっ、こら! なんで服の中に手を入れる必要があるんだよ!!」

 繋いでいた手を離したと思ったら、服の脇から手を入れて胸を触ってきやがって。
 そこにお前の求める膨らみは無いと頭を痛くない程度にチョップすると、ブラックは「いへ」とかいう、痛がってるんだか笑ってるんだか判らない声を漏らした。

「だって、ツカサ君の肌を触ってると安心するんだもん……」
「じゃあ手とか顔とかでいいだろ!」
「ツカサ君のおっぱいは柔らかいし気持ち良いから触るとより安心するんだもん」
「お前は俺がデブったとでも言いたいのか!」

 男の胸が柔らかい、それすなわち肉が付いて来たという事だ。
 それでなくても筋肉が無さげな俺の貧弱な体は格好悪いというのに、これ以上更に理想から遠のいてたまるか。俺はモテマッチョになりたいんだ。女性にもてる系の。

「違うよぉ。僕がいつも揉んでるから、ツカサ君のおっぱいも少し膨らんで来て」
「ッ、ゃ……っ!」
「僕がツカサ君の恋人なんだって実感できるようになったってこと……」

 揉むなっ、てのひらでさするな!!
 つーかそんなバカなことあるか、男の胸が揉むだけで膨らむワケないだろ!
 こっ、恋人とかそういうのは良いけど、それと胸がどうのは関係ねーだろうがっ!

「アホなこと言ってないでっ、んっ、落ち着いた、なら……早く……っ」
「乳首の方も、早く吸い付きやすいように大きくなってくれたら良いのになあ」
「っあぅう! ばっばかアホおたんこなす! こんな所でえっちな事すんな!」

 外にはクロウも居るし、大きな声を出したら外まで聞こえちまうかもしれない。
 それに加えてエーリカさんが居るってのに、変な声なんか出してたまるか。
 もう充分なぐさめただろうがと頭を引き離そうとするが、しかしそれでブラックが剥がれてくれるなら、俺も自分の体力不足をなげいていない訳で。

「んも~、ツカサ君たら本当恥ずかしがりなんだからぁ。デバガメしてる方が悪いんだから、あの女にナニ言われたって大丈夫だよ! むしろ見せつけてやろっ」

 あの女。あの女って、エメロードさん……?
 …………アッ。

 やっやっやべえ、そう言えば真宮はどこにいてもエメロードさんに話を聞かれるんだった……!!

「うわあああ! ダメダメだめだめだったら!」
「いつも熊公にはツカサ君の声聞かれちゃってるじゃないか」
「クロウはもう仕方ないけどその他の人には聞かれたくないんだってば!!」

 必死にオッサンの顔を両手で押しやるが、ブラックは俺の掌に口をぬめぬめと接触させ動かして来て、うへへとか気持ち悪い声で笑いやがる。

「ふへっ、つっ、ツカサ君可愛いなぁあ……! ああっもう僕たまんないよ……ねっ、い、一回だけ、一回だけだから濃厚な恋人セックスしよ? ねっ、ねっ」
「ば、か……っ、だ、めっ、だめ、だったらぁ……ッ!」

 大きな手で胸を円を描くように揉まれ、思わず声が上ずる。少しざらついたてのひらが乳首の辺りをゆっくり擦ると、それだけで腰がじわりとうずいて、股間の辺りが知っている感覚を覚えてしまって。

 エロい物を見たワケでもないのに、股間を揉まれた訳でもないのに、こんな事だけで勃っちまうなんて、恥ずかしい。
 ブラックが至近距離に居て胸を揉んでくるだけで、どうして体がゾクゾクするんだろうか。ブラックにずっとこんな事されてるから? 俺が快楽に弱いからか?
 考えて、恥ずかしくなって、何だか泣きたくなる。

 そうじゃない。違う。解ってるけど、恥ずかしくて確信したくないんだ。
 俺、たぶん……ブラックに、えっちなことをされてるから……バカみたいに簡単に、こんな風に興奮しちまうんだってことを……。

「う……うぅうっ、やだっ、やだやだっもう今はやめろってばあ!!」

 恥ずかしい。だって、俺、そしたらブラックのこと好き過ぎるみたいじゃないか。

 そりゃ、好きだよ。恋人だもん、大事だって思うよ。
 でもそんなの、態度に出してるみたいで恥ずかしいじゃないか。

 違うんだよ、こういうんじゃなくて、こんなえっちな感じじゃなくて、ブラックの事を心の方で好きって言うか、穏やかな大人な感じの奴になりたいんだよ。今さっきみたいに抱き締めてやって、受け止めてやるような、でっかい男になりたいんだよ。

 なのに、触れられてこんな風になるなんて、そんなの違う。情けない。
 こういうのって、女の人がするヤツじゃないか。そんなの、俺と違う。女の人じゃない俺がやっても何かヘンだし絶対違うんだってば。
 だって、俺が「好き過ぎる」なんて、そんなの、そんなの見せるなんて……っ。

「あは……ツカサ君、顔真っ赤にしちゃって可愛い……」

 ブラックの顔がまた近付いて来る。
 それだけで心臓がぎゅううっと痛いくらいに引き絞られるような感じになって、息が止まった。そんな俺の顔に生温い吐息を吹きかけながら、ブラックは目の前でべろりと赤い舌を出して、俺の目尻を舐めた。

「っ……」
「涙が出ちゃうくらい、僕のコト意識しちゃった……? ふっ、ぅふふっ、あはっ、かっ、かわっ、可愛いなぁあツカサ君……! ツカサ君のおっぱい触ってると、いつも以上にドキドキしてるの伝わってくるよ? ツカサ君てホント僕の事大好きなんだね……あっ、あはっ、あははぁっ、ううぅ嬉しいよぉ……!」
「ぁうっ……ぅ、うぅうう……」

 目の前に舌がある。口が開いて、ブラックの白い歯が見える。
 見せつけるように涙袋の所を舌先で辿たどられて、柔らかい肉を濡れた分厚い肉が引っ張るのに驚いてしまい、俺はまた息を飲んで体を震わせてしまった。

 こんなのされて反応するのもどうかしてる。
 だけど、生温い息を吹きかけられても、顔中を舐め回されても、普通なら不快だと思う口の中を見せつけられても……体は、熱くなって、下腹部の奥も股間もじんじんと覚えのある感覚にうずいて来てしまって。

 ここでこんな事をしたらダメだって解ってるのに、やめさせなきゃって思うのに、俺をわざと煽るように首や頬を舐めて来るブラックの興奮して歪んだ顔を見ていると、もうやめろなんて言う声も弱々しくなってしまう。
 服の留め具を外されてるのに、何度もキスされると、突き放すどころかブラックの服を掴んで震えてしまう始末だ。欠片も男らしくない。
 わかってるのに、もうどうしようもなかった。

「はぁ……はっ……は、ぁ…………ブラッ、ク……」
「ツカサ君……好き……大好きだよ……っ。僕は、ツカサ君の、大好きな人……僕の名前は、ツカサ君が大好きな恋人って意味なんだよね……! あ、あぁあ……もう、考えただけで、射精しちゃいそうだよぉ……早くツカサ君の気持ち良いナカにありがとうありがとうって言いながら僕の感謝の子種をぶちこんであげたい……っ」
「ぅ、うぅううう」

 ばか、繰り返すな、何度も言うな、へんなこと言うなあ!!
 ああもうドキドキすんな俺のバカ、なんでドキドキしてんだ、体温あがってんだ!

「大丈夫、僕、ツカサ君のナカなら早漏気味ですぐ射精できるからっ、あっ、でも、長い目で見ると遅漏っていうか、何十発も出したら合算で遅漏だよねっていうか」
「もっ……もう何言ってんのアンタ!?」

 なにこの人、なんか余計変なこと言ってるんだけど!!

 あ、あああ……目がわってる。目をくわっと見開いてるのに、口だけがニタリと異様に笑っていて、顔に陰が掛かっている。どう考えても正気じゃない。
 このままだと本当にここで何十発もお出しされてしまうんじゃないのか。
 そ……そんな事になったら、正気でいられる自信が無い。

 今ですら声が抑えられてなかったのに、そ、そんなの……

「おい、長いぞ。いつまで占領してるつもりだ」

 ガチャ、とブラックの体の向こう側から音がする。
 思わず体ごと振り返ったブラックの向こう側に見えたのは、不機嫌そうに少しだけ顔を歪めつつドアを開けているクロウの姿だった。

 くっ、クロウ、ナイス! ナイスすぎる!

「いつまでって、ツカサ君とセックスするまでだよ」
「一晩中やるつもりか。あと三日の約束があるのに、ツカサを一日潰す気か?」
「ぐ……ぐぬぬ……」

 ぐぬぬじゃないよぐぬぬじゃ。
 そうだよ、俺が寝込んだら貴重な一日が潰れてしまうじゃないか。
 思い出せなかった俺も俺だが、まあ、その、なんだ。とにかくクロウナイス。

「早く射精してスッキリしろ。ツカサは勃起してないか。オレが食ってやるぞ」
「ま、まにあってまあす」
「せっかく濃厚恋人セックス出来ると思ったのに……」

 そのエロ漫画みたいな単語やめてくれませんかねブラックさん。
 ……まあでも……気が昂ぶったらヤッてしまいたくなる気持ちは、分かる。ていうか、お預けを食らうのは男としては辛い。そりゃ抑えられるけど、本気で興奮してた時だと抑えるのにだって苦労するからな。
 ……うーん……。

「…………ブラック、ちょっと、みみ」
「はぇ?」

 服を纏めながら上半身だけ起き上がり、俺はブラックの服を引っ張る。
 まだドキドキして恥ずかしかったけど、でも……今のちょっと変な俺なら言えるかもと思って、俺は近くに寄せられた耳に手を当てて囁いた。

「外出が許されて、真宮以外のとこに行けるなら、その……し……しても……」
「え……」
「あっ、ぶっ、ブラックがしなくて良いなら、しないけど、で、でも」
「するするする絶対するう!! あぁああツカサ君好き大好きぃいいい」
「んぎゃ」

 変な声が出るぐらいに唐突に抱き締められて、俺は強烈な締め付けに思わずうめく。
 い゛、い゛だだだだ、痛いっ、ばかっ、力加減!

 オッサンに強烈な攻撃を喰らいながらも耐える俺に、クロウは無言でじっと視線を向けていたが……。

「ツカサ、ブラックが満足したら今度はオレの番だぞ」

 そう言いながら無表情で舌なめずりをしてみせた。

「あぁああ……」

 外堀が埋められていくってこういう感じなのかなあ……怖いなあ……。













※明日は時間通りに…!(;´Д`)
 
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