異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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酔現嫌夢サプロアリコン、束の間揺蕩う憩いの村編

  入浴2

 
 
「…………」

 ツカサの視線を感じる。
 もちろん、それは珍しい事ではない。

 今まで何度もツカサの前で裸になってきたが、その度にツカサはブラックの裸体をこっそり盗み見て、赤くなったり焦ったりしている。

 本人はバレていないつもりのようだが、気配に敏く視野も広いブラックがツカサの素直な視線に気付かないはずがない。だが、今更それを糾弾しようとは思わなかった。

 いや寧ろ糾弾するよりも……嬉しくて、もっと見せつけてやりたくなるのだ。
 だからブラックは、今回も素知らぬふりをして全裸を曝してやっていた。

(ふふ……ツカサ君たら、恥ずかしがり屋の癖にいっつも僕の体を観察してくるよね)

 ちらちらとブラックの体を見て、顔を赤くし目を泳がせる。

 それほど動揺するなら見なければいいのだが、ツカサにとってブラックの体は見惚れると同時に憎らしいと言う愛憎極まる存在のようで……ともかく視ずにはいられないらしい。
 なんにせよ恋人が熱烈で嬉しいことこの上ないが、まあそこには異世界の「男性」としての意地もあるのだろう。

(胸、腹、股の間……ツカサ君も結構大胆に見てくるよねえ。まあ、それだけ羨ましい部分があるんだろうけど……それにしたって、全身見詰め過ぎだよぉ。可愛い恋人に熱心に見つめられたら悪い気はしないし、勃起しちゃうけどっ)

 そう。羨ましげな瞳で見つめられるのは、何だか嬉しくなってくるのだ。
 何故そう感じるのかと言えば、やはりそれは「ツカサがブラックを愛しているから」だろう。

 ツカサが素面の時にブラックの体を視る場合、それはブラックに欲情しているのではない。ブラックの体に羨望と恋慕の情を寄せて、胸を高鳴らせているのだ。

 男らしい体も、体毛も、この忌まわしい赤い髪ですらも、ツカサにとっては何の含みも無く、ただの「恋人が持つ愛しい形の一部」でしかない。

 そこにはブラックという存在だからこその感情しかなく、ただ部位だけを愛でるような人格を無視した気持ちの悪い“芸術趣味”とは全く違う。むしろ、こちらから曝したくなるような、何か誇らしい気持ちを感じる不思議な視線だった。
 だからブラックは、ツカサの視線に興奮こそすれ厭う気持ちが起こらないのだ。

(…………って、やだな。芸術趣味とか……無意識に気にしてしまってるじゃないか)

 この単語は、悪い記憶の産物だ。
 今まで考えないようにしていたくせに、いつの間にか思い出してしまっていたようだ。

(記憶力が良過ぎるってのも、時々嫌になるな)

 気にしていないと見せた手前、自分の女々しさに恥ずかしくなる。
 結局自分の中の消し去りたい過去を抑える事も出来ず、ツカサに気取られてしまっているのだ。普段は鈍感なツカサがこれほど自分を気遣うのだから、ブラックが自制しているつもりでも、見る者が見れば分かってしまうのだろう。

(……押し込めたつもりだったけど、僕もまだまだだな……)

 だが、そんなことを考えて悩む時間が今はもったいない。
 それに――分かってしまうのは、自分だけを愛してくれる者……ツカサだけだ。

 この小さな少年は、時にブラックの心すらその澄んだ瞳で見透かしてしまう。
 だがそうやって見えた闇を恐れる事も無く、こうして気遣ってくれるのだ。

 ツカサは、ブラックの体だけでなく心も見つめてくれている。
 そう考えれば、情けなさは在りこそすれ嬉しさと下半身の猛りで過去の事はすっかり頭の隅に追いやられてしまった。

(ふ、ふふふ……ツカサ君……ああ、僕の全部を見て愛してくれるのに、僕の裸を見て恥ずかしがって顔を真っ赤にして……。他のオスどもには、そんな顔しないのに……)

 ブラックだけに、そうやって自発的に「オス」を感じてくれる。
 ただ単に性欲と言うだけではない、言い表せない温かい感情がその視線から伝わってくるようで、ブラックの下半身は再び熱を帯びざるを得なかった。

 ――とはいえ、時期尚早だ。
 ブラックは下半身を鎮めつつ、改めてツカサの方を見やった。

「ツカサ君、全部脱いだ?」
「う……お、おう……」

 一応、ブラックの慰労のために頑張ろうと言う気概はあるのか、ツカサは既に下着も取り去っている。だがやはり恥じらいは捨てきれなかったのか、それとも久しぶりの二人きりの風呂に動揺しているのか、要らない布を腰に巻いてしまっていた。

(なっ……なん、だと……!?)

 これは重大な違反だ。
 ブラックを励ましてくれるという目的を持っているくせに、何故ブラックが一番見たい股間と尻と太腿を隠すのだろうか。いや、可愛らしい乳首とヘソを惜しげもなく曝している姿は逆に無防備で美味しいとも感じるが、しかしやはり見られるのなら下半身までしっかりじっくりと観察して癒されたいのだ。なのに、なんという裏切りをかましてくれるのか。

 思わず顔を片手で多い天を仰いでしまったが、そんなブラックにツカサは「どうしたんだよ!?」と、何も悪いと思っていない様子で慌てはじめた。
 可愛いが、しかしブラックをガッカリさせたことは許されない。

 騙されやすい可愛い恋人に、ブラックは殊更ショックを受けたような様子を偽装しながら、ふらふらと揺らめき脱衣所の床に膝をついた。

「うわあっ!? な、なんだよ、気分悪いのか!?」
「そうだよ、もうガッカリだよ……っ。ツカサ君たら僕とお風呂に入るってのに、どーしてその邪魔くさい布を巻いちゃうのさあっ!! 今日はツカサ君が一緒にお風呂に入ってくれるって言うから、僕物凄く嬉しくてワクワクして楽しみにしてたのにぃ!」
「え、えぇえ……!? ちょっ、ま、待て待て泣くなってば……!」

 顔を覆ってふえーんと嘘泣きを繰り返すと、流石にツカサも悪いと思ったのかブラックの肩を柔らかい手で掴んで「泣きやめ」と優しく擦ってくる。
 今回はブラックの心を癒そうとする意図があるので、ツカサも強く出られないようだ。
 しめしめと思いつつ、ブラックは大よそ中年が出す声ではない甘えた声を漏らした。

「じゃあ、その布とってお風呂はいろ?」
「い、いや、別に俺の腰に布が一枚あったっていいのでは……」

 弁解しようとするツカサに、ブラックは更に畳み掛ける。
 こういう時は、相手に冷静さを与えてはいけない。押して押して押しまくるのみだ。

「良くないよ! 僕が全裸だって言うのに、ツカサ君はそんな布で隠して……っ。これってさ、不公平だと思わない!? それに、ツカサ君の可愛いおちんちんを見て僕がどんなに元気になるか分かってて隠すなんて……ううっ、僕を弄ぶなんてツカサ君たらなんて悪女……」
「なんで悪女なんだよ!? 違うったらっ、も、弄んだとかじゃ無くて、いつもなら布を巻いて風呂に入るから……」
「二人きりなのに? 目の前には僕しかいないのに……?」

 そう言いながら、うるうるさせた瞳をツカサに向ける。
 と、ウッという分かりやすい声が相手の口から漏れて、また顔が赤くなった。
 ツカサはブラックの情けない泣き顔に弱いのだ。

「で、でも……」
「僕を元気付けてくれるなら、ツカサ君も全裸になってよ。……ここで」

 上目遣いでツカサを追い詰めながら、膝をついたままその時を待つ。
 客観的に見て、大柄な中年男が全裸で股間の物を丸出しにしながら泣き真似をしている姿というのは、途轍もなく奇怪で悍ましい物だと思うのだが、それでも惚れた弱みという物なのか、ツカサはそんな情けない姿のブラックにはとことん弱い。

 いや、むしろ、顔が良いだけにその情けない姿に気圧されるだけでなく、逆に自分の方が羞恥心を感じてしまうようだ。
 今も、ブラックの顔と股間をちらちらみて、顔を真っ赤にしながら口を歪めていた。

(よーし、あともうひと押し!)

 ツカサの頭の思考限度は、顔の赤さで分かる。
 ブラックはトドメとばかりに自分の方に乗っているツカサの柔らかな手に、自分の手をそっと重ねて小首を傾げてみた。

「…………ダメ?」

 可愛らしい懇願、潤んだ瞳、上目遣い。
 ……これを、無精髭でガタイのいい「オス」である自分が行うことは狂気であると、ブラック自身重々承知している。
 だが、これが効果的なのだ。

「……う……うぅう……」
「ツカサ君……全部見せて……?」

 ブラックの誘うような言葉に、ツカサは顔を真っ赤にして琥珀色の瞳を潤ませながら、少し何かを考えているようだったが……震える手を、恐る恐る布へ持って行った。

(あは……ほ、ホントツカサ君たら……っ。可愛いんだからぁ……っ)

 まだだ、まだニヤけるんじゃない。
 自分を心の中で鼓舞しながら、ブラックは腰布へと凝視……いや、目を向けた。











※ちょっと体調が悪くて短め、そしてスケベまでいけなかったすまぬ…

 そしてツイッターで言っていた通りめちゃ遅れました_| ̄|○
 もう寧ろこれが隔日更新になっちゃってる感ありますが
 どうにか戻したいですね…(;´Д`)

 
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