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魔境山脈ネイリ、忘却の都と呪いの子編
18.まさかそれが狙いじゃないよな1
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「ふ、ふへ……へへぇ……ツカサくぅん……」
スケベおやじ丸出しの声で、ブラックが俺に擦り寄って来る。
いつもなら「やめんか!」と押し退けているところだが……今は、そんな気力も湧かない。今のこの格好じゃ、腹から声を出す事も出来そうになかった。
なんせ俺は……腰にタオルを巻いただけという情けない姿で、打ち上げられたトドのようにベッドの上で寝転がっているのだから。
「頼むからもう引っ付いてくんなってばぁ……」
「えぇ~? いいじゃないせっかくの二人きりなんだしさ~」
ロクも居るんだってば。いや今は眠ってて静かなんだけどさ。
だけど、これじゃせっかく風呂に入ったのにまた汗をかいてしまう。ただでさえ、今は一張羅のズボンと下着を乾かし中で下半身が素っ裸だってのに……これ以上体を酷使させるようなことは勘弁してくれ。
……だけど、ブラックはそんな俺の都合なんてお構いなしで、うつぶせになった俺の体を横から抱き締めやがる。
「こ、こら……」
「ツカサ君の体をへろへろにしちゃったのは僕だしぃ……だから、僕が解放してあげようかなぁって思って……」
「言ってるそばからケツを揉むな!!」
「ぶー、けちぃ」
ケチじゃないケチじゃ。
さっき散々好き勝手しやがったくせに、この期に及んでなにをしとるか。
力の入らない手でケツを揉むオッサンの手を引き剥がそうとするが、こちらの気力残量がゼロなのを分かっているのか、ブラックは全然退こうとしない。
それどころか、むぅっと頬を膨らませて俺の目の前で見せつけて来る。
「子供じみた顔をするなと言うとるに……」
「だって、ツカサ君がつらいのって、あのクソ眼鏡から貰った薬を律儀に飲んでるからでしょ? 飲まずにセックスすればツカサ君はずーっと元気なままなんだし、こういう時くらいは飲まなくっても良いじゃないか」
「曜気ガンギマリ状態で気も失えない俺の身にもなれ……」
だから尻を撫でるな。片方のケツ肉を揉むなというのに。
いい加減やめろと軽く手を叩くと、ブラックは更に唇を突き出して顔を歪めた。
「それを言うなら、ツカサ君もそろそろセックスに慣れるべきだと思うよ僕は! ずっと愛し合ってるワケだし、ツカサ君だって……僕が一回ツカサ君を犯したじゃ満足できないの知ってるでしょ……?」
子供のような不貞腐れた顔をしていたのに、声が低くなったと思った途端に大人の顔になって、また俺の耳に顔を寄せて来ようとする。
お、俺がそうされるのに弱いのを知っててコンチクショウ……っ。
「し、知ってるけど……っ! でも、そ、それなら俺だって頭がおかしくなるから……」
「おかしくなっていいじゃない。ツカサ君は僕の恋人だし、ツカサ君が淫乱なメス穴で喘ぎまくってるのも変なことじゃないんだよ? むしろ、気持ち良くなって僕のペニスに素直に喜んじゃってるツカサ君はすっごく可愛……」
「ぐあーもうやめろー!!」
とんでもない事を囁くな、耳が色んな意味で死ぬ!!
咄嗟に耳を塞いでガードするが、ブラックは俺の手を剥いで見せつけるように眉間にシワを寄せる。
「ツカサ君が恥ずかしがり屋なのは分かるし、そういうツカサ君を見ると僕のペニスもギンギンになるからソコは嬉しいけどさ」
「なんなのどういう性癖なのお前は」
「でも、僕せめて五回目くらいまではツカサ君と愛し合いながらセックスしたいんだよ。恋人同士で婚約もしてるのに、いっつも僕は気を失ったツカサ君を犯してるんだよ? まあそれはそれでツカサ君を無理矢理犯してるみたいで興奮するけどさ」
ムリヤリ具合は普段と大差ないんじゃないか、とツッコミを入れたくなったが、問題はその前にも沢山ツッコミどころが有る所だ。
いや、待て、ここで一々つっこんでたら余計に話がこじれる。こういう時は冷静に、大人の思考で考えるんだ俺。
…………まあ、ブラックの言い分も分かる。
俺が仮に絶倫で女の子と付き合ってた場合、失神しちゃった恋人をそれ以上ゆさぶるなんて出来ないもんな。それってどう考えても愛し合ってる感じじゃないし。
……ブラックは変態だから失神した俺でもお構いなしだが、それは置いといて。
まあその、なんだ。
ブラックが寂しいと言うのも、理解は出来るワケで。
けど五回は無理だ。っていうか、普通の人間は五回は無理だろ。コイツ平然と俺をガツガツ堀まくってるけど、だいたいアンタと俺じゃ体格が違い過ぎるしそもそもお前のデカブツは規格外なんだからな。入るのがおかしいんだからな!?
それを一回耐え切れる俺の耐久力をまず褒めろよ!!
「アンタ自分がどんな凶器腰につけてるかわかってないだろ……」
「やだなぁ唐突に褒めないでよぉ」
「褒めてねーよ!! 例え失神しなくても三回でもキツいんだからな!?」
「だから、そこは常に練習して鍛えたりしてさぁ」
してさ、じゃねえ。
この野郎、俺が死なないからって最近めっちゃ調子乗ってないかコラ。
いやまあ男としてモヤモヤする気持ちも分かるし、不満も分かるけど。
でも今そんな事を言われましても……っていうか、薬を飲むのをやめたら俺の体にどんな異変が起こるか分からないだろ。アドニスにも怒られそうだし。
しかしブラックが素直に話を聞くとも思えないしなぁ。
そもそも、このオッサンの場合……えっちするのが、一番の……あ、愛情表現、的な所もあるみたいだし……だから拒みにくいっていうか……。
「…………だ、だったら……アンタも、俺が失神しないようにしてよ……」
「えっ? なになになにどゆコト?」
「だっ……だから! あ、アンタなら、そういうやり方、とか……いっぱい、色々知ってたりするんだろ……たぶん……。だから、その……」
……うわ、なんか凄げぇ恥ずかしくなってきた。
なんでこんな声が途切れ途切れで小さくなっていくんだよ。
ああもうこんな格好で何やってんだ俺は。
これじゃブラックも納得しないんじゃ……なんて思っていたら。
「えへ……そっか、そっかそっかぁ! そーだよねえっ、僕は経験豊富だからツカサ君に教えてあげられる事いっぱいあるもんね!」
何故かブラックは急に機嫌が良くなって、俺を抱え上げた。
タオルが滑り落ちるが、股下まで裾の余裕があるシャツがギリギリで股間を隠してくれる。そのことにホッとした俺を正面に座らせて、ブラックはキスをして来る。
思わず体を硬くしてしまったが、今はヤらしい気持ちがないのか、軽くついばむような触れるだけのキスを口や頬に降らせて来る。
どうしたんだろうと見上げると、ブラックは嬉しそうな顔で目を細めた。
「じゃあ、今度のセックスはツカサ君が耐えられるように、僕もがんばるね! だからツカサ君も……僕と一緒に頑張ろうねっ」
「う……うん……。うん……? いやちょっと待て、俺も頑張れってどういう……」
ことだ、と、言葉を続けようとするとノックの音が俺の声を遮った。
誰だろうかと振り返ると、かの【蔵書保管庫】にいた召使いさんが……って俺いま下に何も穿いてないじゃんかっ、うわあっ!!
「夕食の用意が出来ました。どうぞ、食堂においでください」
「ああ、もう? まだ日も落ちてないけど……ずいぶん早いな」
夕方前の食事は意外だ、と言いながらベッドを降りるブラックに、召使いさんが頭を下げたままで答える。いや待て、この格好の俺を置いて行くな。
そういうとこあるよなお前はよお!
「はい。代々この城のしきたりで、お客様は日が落ちると部屋で過ごして頂くようになっておりまして。それゆえ、夕食は今の時刻にと定められております」
「ふーん……? まあ、わかった。用意するから外で待機しててくれ」
「かしこまりました」
ブラックと召使いさんの話を聞きながら、俺も眉を上げる。
お客さんは、夜に出歩いては行けないってしきたりがあるのか。どういう理由でそうなってるのかは分からないけど、それなら仕方ないな。
まあブラックは【蔵書保管庫】の本はあらかた読んだみたいだし、その翻訳作業とかも三日間で出来るっぽいから夜に出歩けなくても心配はないか。
それに、みんなで部屋に籠るんなら安心だよな。
ルードさんが刺客を差し向けて来たとしても、ブラックが一緒に居てくれるなら絶対クロウも安全だろうし……なにより、怪我をしても俺が一緒にいるからな。
ロクだってすっごく頼りになるし強いんだ、これは最強の布陣ってやつだろう。
よし、さっきは変な雰囲気になっちまったが、これからは気合入れないとな。
ああでもズボンとパンツ乾いてるかな……この陽気だからすぐに乾くかと思ったんだけど、どうなんだろう。一張羅のズボンが穿けないと外にも出られないよ。
「ツカサ君、用意しよっか」
「いや、用意もなにも俺のズボン……」
「ああそうだったね! でも残念ながらズボンは乾いてないよ」
「えぇ!? それじゃ外行けないじゃん!」
ホントに乾いてないのかと慌てて見返すと、ブラックは「ツカサ君が目を覚ます直前に風呂場に見に行ったけど、乾いてなかった」と答えた。
なんだか嘘くさいが、しかしこんな時に嘘をついても仕方ないだろう。
けどそうなると困ったな……ホントに部屋に籠ってないといけないかも。
つい顔を歪めてしまったが、そんな俺にブラックは満面の笑みを浮かべた。
「だいじょーぶ! こんなこともあろうかと、新しいズボン用意しておいたから!」
「えっ、そんなの買ったっけ!?」
替えのズボンなんて買った記憶がないんだが、と目を丸くすると、ブラックはすぐに荷物からゴソゴソと何かを取り出して俺の前で広げて見せた。
それは……――――
「ゲッ……お、お前これ、あの【海鳴りの街】の酒場の……!」
そう。そのズボンとやらは……この世界の下着よりも遥かに短くて小さい、セクシーアピールが激しすぎる酒場のメスっ子が着用するズボンだったのだ。
……ってソレがなんでココにあるんだよ!
「えへ、店主から貰ってきちゃった!」
「きちゃった! じゃねえええよ!」
なにとんでもないモン拝借して来てんだと怒鳴るが、ブラックはちゃんと許可を得て持って来たから安心して、なんてトンチンカンな事を言っている。
ちがう、そうじゃない。
だが俺のツッコミなど気にせず、ブラックは上機嫌でパンツより小さいズボンを目の前で広げ見せつけて来る。
「これも獣人の世界ではフツーのズボンなんだから、別に恥ずかしいモノじゃないんだよ? だからさ、今日はコレ穿いとこうよ! どうせ大事なところはシャツで隠れるんだからさ~」
「…………そりゃまあ、確かにそうだけど……」
ブラックが言うように、このシャツは裾が長いので充分隠せはするだろう。
でも、そんな格好で夕食にお呼ばれするのはちょっと……。
「穿かないと、もう何も無いよ?」
「…………」
まさか、コレがやりたいがためにあの場所でえっちしたんじゃなかろうな。
ふとそんな嫌な予想が思い浮かんだが、問いかけたとて待っているのはブラックの変態極まる回答か、俺を小馬鹿にする返答だけだろう。
つーか、どのみちこのままじゃ動けもしないワケで……。
「……わかったよ……」
「わーい、じゃあ僕ロクショウ君を起こすからその間に穿いてね!」
かなりハメられた感じがするが、こうなるともう仕方ない。
マハさんに変態を見るような目で見られるのだけはヤだなぁと思いながらも、俺はしぶしぶブラックからエグいズボンを受け取ったのだった。
→
※ちょと遅れました…(;´Д`)スミマセン
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