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亡国古都アルカドア、黒き守護者の動乱編
27.もしものことを考えて
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時間にしてものの数十分だったらしいが、それでも俺には数時間以上もある爛れた行動タイムにしか思えなくて、なんかもうドッと疲れてしまった。
……いや、正直体は疲れるどころかちょっと元気になってしまったんだが、それでも精神がね、精神が疲れたんだよ。だってこんな場所で、あ、あんなことをするなんて、そりゃ疲れたって仕方ないよな!?
だってのにこのオッサンはツヤツヤしやがってぇえ……。
「ふぃー、やっぱりツカサ君の体は最高だぁ」
「なんでお前は俺より元気なんですかね?!」
そして何故あれだけハデに汚れた水を【フレイム】でジュッと蒸発させてしまえるんですかねえ! 後始末が楽で助かるけど、そういうことを出来るんなら、俺に鍛錬だとか言わずに普通に「水を使った後は僕が片付けてあげるよ!」って後始末を買って出て欲しかった……。
お前、絶対さっきのスケベ行為をしたいがために俺に鍛錬をさせただろ……まあ、俺には思いつかない事だったし、助かったのは事実だけどさ。
……でもこの状況で素股すんなっての!!
あとドサクサに紛れてフェラしろだのなんだの言いやがって……怒りんぼ殿下の事が一段落ついて別行動になったからってはしゃいでやがる。
そりゃ、まあ、殿下の試練が順調に二つクリア出来て、暗殺計画もチャラになったし殿下もクロウの味方になってくれたっぽいから、まあ今のところはルードルドーナにも手を出されないだろうとは思うけど。
でも、そんなあからさまに喜ばれるとちょっと待てと言いたくなってしまうな。
大人として、そんな「邪魔者が消えたぁ」的な態度を素直に出していいのだろうか。というかお前、クロウは仲間であり友人だって思ってるくせに、なんでそうちょいちょい丸出しの敵意を向けるのか。いや友人だから向けてるのか?
クロウなら強いし死なないからって、俺にやるみたいに素直な敵意(というのも何か変だが)を向けてるって事なのか……?
考えてみれば、ブラックは素直じゃない性格だもんな。
相手の好き嫌いはハッキリしてるけど、でもブラックがアレコレ深く考えるような相手となると、シアンさんやクロウくらいしか思いつかないし……。
毎度毎度クロウが居なくなるとはしゃぐのは、やっぱりそれだけクロウの事を意識したり、ブラックなりに「気に留めておく相手」だと考えているからなのかも。
そういう事なら、まあ、気兼ねなくはしゃぐのも仕方ないか。
だって普段から意識してるライバルみたいな友達なんだもんな!
それに、最近は相手の親とか兄弟とかもずっと一緒にいたし、そら緊張するわ。俺だって尾井川の家に遊びに行って、相手の家族に会うと背筋が伸びちゃうし。
そうか、今までブラックがヤケに大人な対応してたのはそのせいだったんだな。
なるほど、意地を張っていてもそう言う所は俺達と同じ感覚なのか。
しかしホント分かりにくいよなぁ。
まったく……ブラックってば本当友情に関してもこじれてるんだから……。
「ツカサ君なんか勘違いしてない? してるよね?」
「え? なにが?」
「僕はツカサ君と二人きりの方が良いんだからね? 駄熊とか脳筋兄弟とかお呼びじゃないんだからねホントに!!」
だから俺の心の声を読むなっつーに!
なんでそうアンタは容易に俺の心の声を透視して来るんだよ。やっぱそういう能力が有るだろ、隠してるだけであるだろお前!
「ぐぬぬ……」
「いやツカサ君が分かりやすいだけだってば……まあいいか。それより、これから先の話なんだけどさ」
「いやお前が始めた話だろ」
「良いから良いから。ほらほら、体も鎧も洗ったしさっさと着て着て」
なんとも理不尽だったが、まあ仕方が無い。
ケシスさんは未だに戻って来ていないみたいだけど、いつ鍵が開く音が聞こえるか分からないもんな。ブラックの言う通り、アッチは俺達を忘れているかも知れないけど、それでも正体がバレる可能性は消しておきたい。
言われるがままに鎧をえっちらおっちら装備し始めると、鎧装備に慣れてない俺を見かねてか、ブラックが脛当てなどをつけるのを手伝ってくれた。
情けないけど、まあ俺は鎧を装備しない曜術師だしな……し、仕方ない。
大人しく着付けられていると、それに何故か機嫌を良くしたらしいブラックは先程言った話を進め始めた。
「これから先……多分、そう簡単に休ませて貰えるとは思えないんだよね」
「ん? どういうこと?」
「つまり、城の中を探る暇がないかもってことだよ。……ツカサ君もしっかり見たと思うけど、ここの冒険者たちのほとんどが傭兵達と同じ感じだったよね?」
「う、うん……っていうか、傭兵達より重症だったような気がする……」
俺達が捕えた傭兵達は、判断力が著しく低下している妙な状態だったけど、アルカドアを包囲している冒険者達は判断すら出来ないような有様だった。
本来反目しあっているはずの傭兵に対して、ボーッとした状態のままで問われた事をベラベラと喋るなんて……いくら雇われた者同士とはいえ、何だかおかしい。
って言うか、そもそも分かりやすく「操られてま~す」みたいな状態になっているのが異常なんだってば。あれやっぱり操られてるよな!?
どういう状況なのか今は判断がつかないけど、とにかく【黒い犬】と【大柄なローブの男】に「何かをされた」のは確実だろう。
意図も理由も探る前だが、これだけは間違いないはずだ。
俺が理解していると見てか、ブラックも同意の頷きを返す。
そうして俺の上半身を再び鎧で覆いながら、深刻そうに続けた。
「……アレの原因が術か薬かってのは不明だけど、かなりの人数が同じような症状になっている所から見ても、かなり強力なモノのはずだ。大量に使っているところから見ても、恐らく予備のモノか予備の力ぐらいは蓄えているはず」
「ってことは……俺達もかけられちゃうかも……ってこと?」
結論を先に言うと、鎧を着せ終ったブラックは目を細めて笑った。
「そうなるだろうね。……あの場所で待機するように命じられていた傭兵が、自分達の判断で戻って来たんだ。支配が不完全な状態だって分かれば、再び支配しようと『なにか』してくるだろう。今までソレで従わせていたんだから、例外は無いはず」
確かに、ただのコマが勝手に動き始めたら困るだろうし、支配が不完全でも生き残って帰って来たなら再利用しようって考えるよな。そういう相手なら、俺達みたいな者なんて信用ならないだろうし、確実に不安要素は潰すはず。
でもソレってヤバくないか。
そんな事をされたら、さすがに俺達でも危ないのでは。
「雇った奴のほとんどを変な状態にしてるし、まあそりゃそうだよな……。けど、逃れる方法が無いんじゃ、このままここに居ると終わりなのでは……?」
「うーん……まあ、術に関しては心配ないよ。術が使われているとすれば【付加術】の中の一つ【幻惑術】の応用か進化したモノかだろうし……それなら【紫月のグリモア】で支配し返すことができる。僕の力は【幻術】だからね」
「あっ、そうか……! 相変わらず色々強いなお前は」
体力も曜術も限定解除級なのに、精神支配もレジスト出来るとか凄まじい。
もしブラックがゲームのキャラクターなら万能の魔法戦士ってとこだよな。もしくは、強すぎてプレイヤーが発狂するラスボスか……。
なんにせよ、味方ならここまで心強い存在もおるまい。
本当にブラックが【幻術】を使えてよかったよ。っていうか、【幻術】を使うグリモアがブラックみたいな奴で心底良かったというか……良く考えたら他の幻術を無効化する効果もある『質量をもつ幻術を出現させる』術って、デタラメな威力のチート技以外の何物でもないもんな……す、すえおそろしい……。
「ふふ……ツカサ君たらホント……」
「えっ、な、なに?」
「ううん、何でもない。好きだなぁって思っただけ」
「ハァッ!? な、ななななに急に」
急に変なこと言うんじゃないよもう!
それよりさっさと話を進めんかいっ。
また顔が熱くなったような気がしたので、気取られたくなくて慌てて兜を装着すると、ブラックは満面の笑みで笑いながら自分も鎧を装着した。
「まあとにかく、術の場合は気にしなくて良いよ。問題は薬の場合だね。僕達は傭兵として潜入した以上、雇い主に命令されたら逆らわず飲まなきゃいけない。……先に目的を達成出来たら、逃げる手段は色々あるけど……でも、そんな簡単にコトが運ぶなんて考えは愚考だ。未知の毒を盛られた場合、僕も抵抗できない可能性がある。ツカサ君は、時間をかければ【黒曜の使者】の能力で元に戻ると思うけど……その時に僕が居なければ、事態が悪化するかもしれない」
……そう言えば、ブラックはほとんどの毒に耐性があるんだっけ。
睡眠薬とかはモノによってはウッカリ効いちゃうみたいだけど、でも危険な毒なんかは全く効果が無い。……どういう経緯でそんな事になったのかを考えると、ブラックの過去を考えて胸が苦しくなってしまうけど……でも、聞けないことだ。
ともかく、今はその能力によって、ブラックは毒を退けている。
でも、俺の世界でも「未知の毒」というのは未だに発見され続けてるんだし、こっちの世界でも「未知の毒」が使われる可能性はゼロじゃないよな。
現に、鳥人族が使った「ポヤポヤ」という薬だって、ブラック達には効いたんだ。
だからブラックもかなり慎重になってるんだろう。
……もし、雇われた者達に未知の毒薬を使っているとしたら、ブラックも……。
「毒か……。それって、俺の血とかでどうにかなるかな……」
「ツカサ君の血なら大概は大丈夫じゃないかなぁ。問題は、僕が飲める状態かって所だけど……なんにせよ、そんな事態になったら別行動も考えなきゃ行けない」
「うーん……結局相手に会うまではどうしようもないってことか……。ロクショウと合流出来たら良いんだけど、今どこに居るのかわかんないしな……」
俺の可愛いロクは、きっと今も頑張ってこのお城で情報収集してくれているだろう。
頭が良くて頑張り屋さんだから、絶対に敵には見つかって無いだろうし、俺達が来たことも察知してくれるはずだ。しかし、合流するタイミングは難しいだろうな。
この部屋には通気口なんてないし、恐らく城の中の部屋はほとんどそうだ。
砂が入り込まないように、かなりガッチリした造りになっているはず。
どうにかして合流出来れば、仮にブラックが支配されて離れ離れになったとしても、俺の血を持って行って貰えるんだが……。
「ロクショウ君の状態が分からないから、期待し過ぎない方が良いかもね。……もし最悪の事態になったら……ツカサ君の方から指輪で僕を探してくれないかな。その指輪には、お互いの位置が把握できる機能もつけてるから」
「あっ、そ、そうか! そういう手が有ったな……」
そう言えば、俺の首から下げている指輪は、ブラックが頑張って作ってくれただけあって凄い機能が搭載されているのだ。
お互いの場所を指し示す光も出せるし、俺の方は何か知らんが危険な目に遭った時に守ってくれる機能が有るっぽい。お守り機能は有限らしいが、仮にブラックと離れ離れになった時は、指輪を意識して動けばいいかも知れない。
「重要なのは、情報を得ることだ。術か薬かどちらかは不明だけど、もし離れ離れになったとしても、お互いに合流できるまでは何でもいいから情報を探そう」
「わ、分かった……」
今は、それしかない。
ブラックの結論に頷くけど、それでもやっぱり……不安は抑えられなかった。
…………ブラックが薬を飲まされたら、どうしよう。本当に大丈夫なんだろうか。
俺がブラックの心配をするのはおこがましいのかも知れないけど、毒薬を盛られる可能性が有るなら、やっぱり心配だ。
本当は自分の心配をするべきなんだろうけど、例え俺がチート能力を使えなくてもきっと俺はブラックの事を心配しただろう。
大事なヤツが薬を盛られたり術を掛けられたりするのは、自分がどんな立場だろうがイヤだ。自分が変わってやれたらと思うのが、人情と言うものなのである。
……そう思うと、別の事も考えてしまって気が重くなってくる。
あの傭兵達にも、家族がいるんだよな。
彼らも、ケシスさん達冒険者も、ただ生活の為に雇われただけなんだ。それなのに、薬や術で意識を奪われてあんな風に意識を奪われているだなんて……彼らの家族が知ったら、俺以上に心配するだろう。
そのことを考えると、知らない人達の悲しみが流れ込んでくるようで、重い気持ちにならずにはいられなかった。
でも、こんな風に考えて体まで重くしちゃいけないんだよな。
…………ブラックやロクが心配だけど、今は情報を得ることが最優先だ。
傭兵達のためにも、せめて「何が原因でああなって、どうしたら治るのか」という事を知りたい。マハさん達の無事も確認しなければいけないし、やることが多いな。
何一つ漏らす事が無いよう、しっかりと覚えておかなきゃ。
そう思っていると――――
「おーい、ちったぁ休めたか? 【黒い犬】の大将が報告を聞くってよ」
ガチャンと錠が外される音がして、ケシスさんが入ってくる。
既に兜を装着し終えていた俺達は、頷きながら立ち上がった。
「報告した後は、休ませて貰えるとありがたいんだが」
「おう、それはオレサマも言ってやるから安心とけ。大将は得体が知れねえが、そういうコトは聞いてくれる雇い主だからな」
無骨な傭兵を装うブラックの言葉に、ケシスさんはニカッと笑って胸を叩く。
だけど、その笑った表情はどこか影が有る。セブケットさんが隣に居ないことが、彼にも辛いのだろうか。
もし俺が、ケシスさん達みたいに、ブラックと離れ離れにされたら……。
そう思うと胸が嫌な動悸で早鐘を打ったが、俺は兜の中で軽く頭を振って嫌な予想を振り切り、ブラックと一緒に部屋を出たのだった。
→
※またもや遅れてもうしわけないです…_| ̄|○ ゴメンネ
疲れの期間か…
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