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幻実混処ユーダイモ、かつて祈りを唱えし者編
その手で感じさせてくれ2
しおりを挟む「どこからでも触っていいよ」
「ど、どこからでもって言われても……」
いざそんなことを言われると、妙にドギマギしてしまう。
……仮に相手が可愛い女の子だったら、俺もガツガツしていたのかも知れないが、目の前にあるのは男いや漢としか言いようのない体なのだ。
いわば同性の体を触れと言われても、どこに手を置けばいいのか分からない。
というか……なんか、変な所に触れたらブラックにからかわれるんじゃないかって思ってしまって、手が出せないというか。
……いや、こうして迷っているのも危ないのだ。
なら、無難な所……えっと……だ、だったら……腹! 腹筋だ!
そう思って、俺は起伏が見えるヘソの上あたりに手を置いてみた。
「あん。ツカサ君たら焦らし上手なんだからぁ」
「へ、変な声だすなよ! アンタが触れろって言うからだろ……!」
「ふふ……ね、どう? 僕のお腹、どんな感じ?」
わざとらしい喘ぎ声を出されてついツッコミを入れてしまったが、軽く流され感想をせがまれる。えぇ……どんな感じって……。
「筋肉ついてんなって……」
「それだけ? 軽く押しても良いから、もっと触ってみてよ」
「う、うぅ……」
うん、とも言い切れない情けない返事をしてしまったが、これは仕方がない。
邪な気配は感じざるを得ないが、しかし今回ばかりはブラックの「生の実感」とやらを明確にしてやらねばならんのだ。
自分が感じていることを言うのは恥ずかしいが……こ、これもブラックの為だ。
軽口を叩かれてはいるけど、ブラックだって不安なんだからこんな事を言い出したワケだし。だったら俺は、恋、人……として! 不安を取り除いてやるべきだろう。
メス扱いされているけど、俺だって男だ。
恥ずかしくて、面と向かっては言えないけど……ブラックの事を守りたいと思っている気持ちは、誰よりもあるとうぬぼれている。
だったらここはビシッと、安心できるようにしてやらないとな!
なので……俺は、覚悟を決めて正直に答える事にした。
「どんな感じ?」
「……なんか、硬いけど……分厚い肉っていうか……」
「はは、そりゃ筋肉だけ付けたって仕方ないからね。まあ、駄熊みたいな腕力任せのケダモノなら仕方ないけど、僕は剣士だし。脂肪も有り過ぎたら問題だけど、皮膚と肉の防御力って案外バカに出来ないんだよ」
「ふーん? そういうもんなのか……」
確かに、軽く押してみると筋肉の硬さと肉の柔さが丁度良い気がする。
そういえば……脂肪がちゃんとついてると、筋肉や内臓まで刃が届きにくくなるんだとか漫画で言ってたな。実戦向きの引き締まった体って、こういうものなのか。
いやまあ、感触とか見た目自体は、既に知ってるんだけど……でも、改めて触ると何だか関心が強くなってしまう。
そういえば、えっちなコトをする以外でブラックの腹筋を真剣に観察するなんて、数えるほどしかなかった気がするな。
ま……マッサージした時も、だいぶ頭が茹っちまってたし……。
ゴホン。ともかく、戦う人の体って案外バランスが取れてるってことだな。
もう考えるのはやめておこう。何か変なことまで思い出しそうだし。
そんな風に自分を律しつつ、俺は少しだけ相手の腹筋に押し込んだ指を緩めた。
……にしても、毎度のことながら中年とは思えないゴツい体だなぁ。
なんでこう、俺と違うんだろう……。
俺だってこっちで荷車を引いたりするし、体育の授業も頑張ってるんだけどな。
やっぱり運動音痴が悪いんだろうか。それとも、三食おやつ付きをたらふく食っているからなのか。この世界だと二食だし、そこが違いなのか?
なんだか色々考えてしまったが、そんな俺の手首をまたブラックが掴んできた。
「んもう、また余計なこと考えてるでしょツカサ君たら。ほら、いっぱい触ってよ」
「え、あっ……」
掴まれた手を、ブラックの胸の真ん中に置かれる。
独特な感触だ。硬い胸ってのはそうなんだが、あからさまな男っけが手に伝わってきて、やっぱり俺はオッサンの体にベタベタ触ってるんだなと実感してしまう。
俺とは全く違う、分厚くて男らしい胸。
――――悔しいが、やっぱりちょっと嫉妬してしまう。
俺だっていつかは男らしい、モテモテの男になれるはずだけど……こんな風に俺のような奴ですらドキドキさせる格好いい体を見せられたら、負けた気になるんだよ。
今の俺じゃ、こんな体を手に入れたって似合わない。
それくらいは自覚してるし……そんな理想の姿であるブラックを、心の中では素直に格好いいと思ってしまう自分にも、とっくの昔に気付いてしまっている。
だから、余計にムカっとなっちゃうんだよ。
…………なんか……俺ばっかり、アンタのこと全部気にしてるみたいで……。
「僕の胸、どう?」
問われたけど、なんと答えたらいいのか分からなくて少し俯く。
別に、悪く言いたいんじゃないんだよ。変に憎まれ口を叩くつもりもない。ただ、ブラックが安心できるように、適切な言葉ってやつを答えてやりたかった。
でも、真面目な答えを言おうと思っても、ドキドキして言葉が出なくて。
「…………」
手に、ブラックの体の動きが全部伝わってくる。
それが……今は、ひどくつらい。
ちょっと体に触れるだけで、アンタに本気で嫉妬したりドキドキしたりしてる自分が、恥ずかしい。誰かの裸を見てこんなに強く何かを思う事なんてなかったのに。
なのに、今の俺は……色んな事を考えて、勝手に頭の中で暴れている。
「どう?」なんて言われても、何かを言おうものなら俺が変に意識していることを悟られてしまうんじゃないかと怖くて、言葉が出てこなかった。
頬が、熱くなっている気がする。それが煩わしい。
掌から汗が出てるのではと心配になるほど、手も熱くなっている気がした。
今は、そんなんじゃないのに。
ブラックだって、えっちな気持ちになってるかもしれないけど……問いかけ自体は、本当に俺に何か言ってほしいだけだろうに。
なのに、意識している自分が恥ずかしい。
ああもう、どうして俺ってヤツはこんな風になっちまうんだよ。
落ち着け、落ち着くんだ俺。
気取られないように音も無く息を吸い込んで、どうにか落ち着こうとする。
そんな俺を知ってか知らずか、相手の視線はずっと俺に注がれていた。
…………見られていると、また心臓が痛いくらいに忙しなく動いてしまう。
今集中すべきは、俺自身の心音じゃないのに。
心の中で何度も頭を振ると、俺はギュッと目を閉じてどうにか言葉を絞り出した。
今俺が感じ取っている、重大な感覚への感想を。
「……心臓……ちゃんと、動いてる……」
そう。動いている。
掌から伝わってくる、呼吸の動きと鼓動の微かな振動。
生々しいその感覚は、俺を今も動揺させているけど……でも、動いているんだ。
…………べ、別に、気を逸らしたくてこんな事を言ったんじゃないぞ。
最初にそう思ってホッとしたから――――つい、口から出ちまったんだ。
それに……一番、気にしている事でもあるから。
……この鼓動は、俺がこんなにもドキドキしている理由の一つで、ずっと落ち着けない理由の一つ。
アンタが俺に妙な事をさせているせいで、こんなに意識してしまうモノだ。
掌で触れるアンタの体は、生きて、動いている。
俺の手や動きに、微かに反応している。
だから俺は余計に……居た堪れなくなっちまうんだよ。
お互いに意識し合っているって、分かっちまうから。
…………でもそれって、生きているからだよな?
アンタも俺も、生きて、肉体を持っている。
だから、こんなにもドキドキして逃げられなくて目をそらしてしまうんだ。
――――答えに、なってるかな。
ブラックが言う「生の実感」を、これで感じられるだろうか。
……なんだか、心配になってきた。
恐る恐る顔を上げてブラックを見やると……――――相手は、ずっと俺の顔が上を向くのを待っていたようで。
微笑んだ表情を更に嬉しそうに綻ばせると、ゆっくり顔を近付けて来た。
「っ……」
静か過ぎて、耳が痛くなる。
だけど耳の内側がどくどく音を鳴らしていて、掌には音も無く伝わってくる鼓動が在って、もう煩いくらいで。
「ツカサ君……」
その音の中で唯一、はっきりと耳に届いて染みこんできた低い声に、体がビクリと反応して――――目の前が暗くなった。
「っ、ん……」
顔に掛かる吐息と口を塞ぐいつもの感覚に、目が反射的に閉じる。
そんな俺をブラックは優しく抱きしめて、逃れられないように後頭部を抑えた。
さっきより少し強く押しつけられた唇に、お腹の奥が熱くなって覚えのある感覚がじんわり広がり、俺は両足をギュッと閉じる。
けれど、角度を変えてまたキスをされ、今度は下唇を唇だけで柔く食まれて、腰が甘く痺れてどうしようもなくなってきて。
「はぁっ……は……」
ブラックがただ吐き出す息ですら、耳に悪い。
何度も、何度も何度も唇に触れるだけのキスをされて、体が更に熱くなる。
激しいキスじゃなく、唇を柔く食まれたり時折舌先で撫でられているだけなのに、俺の体は堪え性が無いのか、どんどんおかしくなっていって。
もう頭がぼやけて、何度目か分からないくらいになる頃には……俺の股間は、緩く反応してしまっていた。
……う、ぅ……キスだけなのに……俺、なんでこんな簡単に……っ。
「あは……ツカサ君、甘勃起しちゃったの……? 嬉し……ね、僕もツカサ君に体を触られたら、こんなんなっちゃった……」
軽く息を乱しながら、ブラックは俺に跨って見下ろしながら腰を突き出してくる。
その中心には……俺のモノなんて比べ物にならないほどズボンを突き上げた、甘いどころの話しじゃないモノが、あって……。
ちょ……ま、待て、見せてくるんじゃないってば……っ!
「ぶ、ブラック……っ」
「ツカサ君……もっと、僕に実感させて……?」
見せつけるように留め具を解いて、ブラックは下着ごと一気にズボンをずらす。
と、まるで解放されたがっていたかのように、中身が勢いよくそそり立った。
「~~~ッ……!!」
「ツカサ君……僕のペニス……慰めてくれるよね……?」
俺に跨ったまま、ブラックは近付いてくる。
その度に、ぶるんぶるんと震えるデカブツが余計に大きく……っ。
い、いやこんなの寝転んで待ってられるかよ!
思わず体を軽く起こすが、そうすると一気にブラックのモノが迫ってきて。
「ひっ」
「つ、ツカサ君の方から近寄って来てくれるなんて積極的だなぁ~っ!」
僕嬉しい、とキャピるオッサンに俺は一瞬真顔になってしまったが、目の前どころか鼻の先にソレを突き付けられて、思わず息を飲んでしまった。
う……こんだけ近かったら、その……ぶ、ブラックの……においが……。
「あ……僕のペニスの匂いで、ツカサ君のメス穴がキュンとしちゃった?」
「しっ、してねーよ!!」
つーかそんなヤバいこと言うなよバカ!
何でそうアンタはエロマンガみたいな事をペラペラと言えるんだよ。
エロザル呼ばわりされてた俺だって、そんなの素面じゃ言えそうにないのに……。
「えぇ~? してないのぉ? またまたそんな嘘ついてぇ」
「う、嘘じゃ」
「だったら、ツカサ君は発情せずに、僕のペニスを鎮めてくれるよねえ? なにせ、僕にセイの実感をさせてくれるって言ったんだから……コッチでも、感じさせてくれないと……」
お、俺はそんな意味で言ったんじゃないのに。
でも正直、ブラックが最初からヤる気だったのは、理解していたワケで……。
「僕のペニスにも、触れてくれるよね。ツカサ君」
「~~~……」
結局こうなるのか。
そう思ってしまったが……「ならない」なんて事も考えていなかった気がする。
……うう……結局俺も……そういうのを想定してたから、変な感じになったような気がするわけで……。
ああもうチクショウ、なんで俺ってヤツはこうも流されやすいんだよ。
でも、今回はブラックも大変だったから、そう思うと逃げられなくてぇ……。
――――なんて思っていたら、ブラックがトドメの一言を嬉しそうに放ってきた。
「手と口で、い~っぱい気持ち良くしてねっ」
また語尾にハートマークが散ってやがる。
っていうか、ブラックの言葉はおおよそまともな大人の言葉ではない。
それを強調するかのように眼前でぴくぴくと動いている規格外の存在を見て、俺は堪えきれずについ顎を引いてしまった。
…………嫌悪とかじゃなくて、恥ずかしさに耐え切れずに。
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