異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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緑望惑堂ハイギエネ、霊蛇が隠すは真理の儀仗編

5.これからよろしくお願いします1

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   ◆

 アドニスとイスヤ学院長の怪しい取引が成立した後、俺達は「まずは出入り可能な施設を知って下さい」と、外様とざまの俺達が入れる場所を案内して貰った。

 施設は主に靴、つえはい、瞳の四つのとうで構成されているが、そのどれもが「学士の権限が有ればフリーパス」というワケでもない。
 例えば、実験をおこなう「はいとう」で言えば、学士達の研究室は秘密保持のために学士が許可した者でないと入れないし、その学士の研究室にしか通すことが出来ない。

 もちろん「瞳のとう」も、俺達が学院長の提案を達成するまでは【修学館しゅうがくかん】に入る事は出来ない。ついでに言えば、学校である「つえとう」も、特殊な毒草を育てている薬草園には許可なく出入り禁止だ。

 とはいえ、俺達は講師……と、弟子とお付きの御一行様だ。

 その代わりに、講師としてある程度ていどの地位の権限は与えられることになった。

 図書館も入り放題だし、ラスコーさんの研究を手伝う名目であれば薬草園の植物を許可なく採取してもいい。
 講師をする時間と研究を手伝う時間以外は、食堂や風呂に食べ放題入り放題だ。

 俺達は授業をする立場ではないので、そこのところは気が楽だよな。

 この世界の学食ってのも食べてみたいし、案外あんがい良い取引だったかもしれない。
 アドニスに色々迷惑をかけてしまう事になるが、だからといって萎縮いしゅくしてたんじゃ、俺達は何なんだって怪しまれかねないからな。

 というワケで、俺とブラックとアドニスは、職員寮の使われていない部屋を使わせて貰う事になった。ロサードは取引を済ませたら、商館へとんぼ返りだそうだ。
 一緒に居られないのは残念だったが、採取に関して不都合があるかも知れないとのことで、商館には待機してくれる事になった。

 くぅ~、やっぱ持つべきものは頼りになる仲間だよな!

 迷惑をかけてしまって申し訳ないと思う反面、快く俺達に協力してくれるアドニスとロサードに、俺はなんだか嬉しくなってしまった。
 いやまあ巻き込んでる俺が感動するのも何なんだが、それはともかく。

 今日は顔見せだけ、ということで、俺達は学院で学ぶ学士達をすべて集めた講堂に呼ばれることになった。

 講堂って……アレだよな。
 なんか、大学の教室とコンサートホールを合わせたみたいな感じのところだ。

 俺の学校も古いからそういう場所が有るけど、生徒はあんまり使わないから集会の時に「講堂に集まって下さい」って言われるとソワソワしちゃうんだよな。
 集会って言うと基本的に体育館だし……。

「……っていうかちょっと待てよ。このままだと俺、この半ズボン姿を披露するハメになるんじゃないか……」
「今気付いても遅いよツカサ君……もうここ舞台袖ぶたいそでだよ……」

 う、うるさいブラック。
 講堂に圧倒されてたんだから仕方ないじゃないか。

 そんな可哀相な物を見るような目で俺を見るな。あとちょっとヒくのやめろ。
 まあ学校見学の余韻よいんひたっている俺も悪かったが、それにしたって弟子役である俺も一緒に紹介されるのは何か違うような気がするんだが。

 何故俺もアドニスと一緒に壇上にあがらないといけないのだろうか。

「なあアドニス、やっぱりお前ひとりで良いんじゃないか?」
「何を言ってるんですか。君には助手として一緒に講義に出席して貰うんですから、顔を見せておいた方がいいに決まってます」
「なんでアンタそんなやる気なんだよ!」
「ツカサ君殴って良いよ。コイツ、ツカサ君が学士達に半ズボン姿を見られて恥ずかしがる姿を見たいだけだよツカサ君」

 アンタもアンタで何言ってんの!?
 俺が恥ずかしがってる姿を見ても一円の得にもならない、っていうか同情かあわれみはくだろうけど、別に見たいもんじゃないだろ俺のそういう姿は!

 アドニス、お前も流石さすがにこれは言い返していいだろう。
 そう思って横に居る仮の師匠の顔を見上げた、のだが。

「…………」
「なんか喋って!? 恐いんですけど!!」

 肯定も否定もしなで微笑んでるのが一番怖いんだってば。
 特にアンタは笑顔が雄弁すぎるんだよ!

「まあまあ、その半ズボン姿でも、君なら充分じゅうぶん可愛らしい弟子で通りますし……それに、ツカサ君はメスなんですから、たまにはそれ相応そうおうの服を着ないと」
「何もかもが何か違う気がしてならない……」
「違わないでしょう。君はそこの暑苦しい中年に犯されまくってみずからをメスだと認めたじゃないですか。だったら、こういう服にも慣れた方が良いですよ? 服装規定のある夜会だと、メスは露出度の高い過激な服を着せられることもありますからね」
「っ!?」

 え、何その情報、なにそのじょうほう!!
 なんか聞きたくないヤバい爆弾情報をさらっと吹き込まれたんですけど!?

 なにそれ、メスだと男でもセクシーな服着なきゃいけないってのか。
 おいやめろ、俺は見せられる出っ張りなんて何一つない男だぞ、そりゃブラックにはメスだって認めたけど、さすがにそんな、周囲にメスだって認識される服装になるのはちょっと……!

「まあ、ここでは夜会なんてもよおされないと思いますが……だとしても、君がこういう服装をしているということは、メスとして認識されるに等しいという事です。珍しいメスの薬師だから、私の弟子をしている……と、周囲に認めさせ、君が失敗をしてもある程度ていど『メスの弟子だから』と許してもらうためには必要なんですよ」
「う、うん……? うん……」

 分かるような分からないような……。
 メスだと俺がぺーぺーの素人でも失敗しても甘く見て貰えるってことなのか。
 確かに、俺だって頑張ってる女性が失敗しても、「次がんば!」としか思わないし、その優しさが俺にも適用して貰えるならありがたいけど……今のアドニスの発言は何だか含んだものがあるようでモヤモヤする。

 ……ま、まさか、まだ愛人だのなんだのって話が続いてるわけじゃないよな。
 いや、相手はアドニスなんだし、あくまでも俺が過ごしやすいように「メスとして姿をいつわりなさい」と言っているだけだろう。
 そうに違いない。そう思わせてくれ。

 この変に太腿ふとももに食い込む半ズボンとサイハイブーツを着用しているのは、言わずとも俺をメスであると認識させるものなのだろう。
 けど……そう思うと、何だか余計に恥ずかしくなってくる。

 そもそも俺、メスじゃないんだよ。
 普通に男だし、ブラックとの関係にケジメを付けたかったから認めただけで、対外的にメスだと思われたいワケじゃなかったのに。

 なのに、この服を着て壇上にあがったら……見知らぬ沢山の人にメスだと思われることになるのか。
 …………いや、あの……今更なんだけど、それってものすごくヤバいような……。

「おや、緊張していますか? 心配は無用ですよ。学士達の席は壇上から少し離れていますし、君の姿もそこまで刺激的ではないはずです」
「そ……そう……?」

 あんまり認識されないってことかな。
 だったら、まあ……恥ずかしいけど、なんとか耐えられるかも……。

「けれど」
「ん……?」

 不意に、アドニスが手を伸ばしてくる。
 肩をつかんだからどうしたのかと思って相手を再度見上げると、アドニスは向こう側の壇上を照らす照明を背中に浴びて、表情に影を作りながら俺を引き寄せた。

 どん、と体にぶつかって、思わず心臓がきゅっとなる。
 けどそれだけでなく、もう片方のアドニスの手が伸びてきて。

「恥ずかしさでここをふくらませていたら、いくら君がオスの子のように見えても一発でメスだと気付かれてしまうので、気を付けてくださいね?」

 そう言いながら、唐突に俺の股間に手を滑らせてソコを撫でて来たではないか。

「ひぐっ!? やっ、あ、アドニスなんでそこっ……!」
「この肌を締め付けるズボンだと、君の陰茎が未熟な大きさでも、すぐに勃起した事がバレてしまいますからねえ……。もう軽くふくらんでいますが、これは勃起では無いですよね?」
「ばっ、バカばかばかっ、アドニスばか! やめろってっやっ、ぁっぅ、うぅ……!」

 してないっ、してないけどそんな風に触られたら分かんないってば!

 それに、こんな風に直接触ってきた事もなかったアドニスにエッチなことをされるのなんて想定外で、いつも以上に恥ずかしさとたまれなさがこみ上げてくる。
 ブラックともクロウとも違う、大きいけど滑らかに動く感触がこわい。

 ぎゅっと太腿ふとももめているのに、逃げようともがくのに、細く見えるはずのアドニスの手からのがれられない。
 線の細い美形に見えるけど、やっぱりアドニスも男でありオスなんだ。
 上背もあって、体格も細いなりにしっかりしている。俺とは大違いの大人。

 でも、それを今更いまさら思い知っても遅い。

太腿ふとももが震えてますよ。ふふっ……ツカサ君は本当にオスを無意味にあおりますね」
「違っぅ、ってば……っ! もっ、アドニスやめろっ、変なとこ撫でないで……っ」
「変な所ではないでしょう。人体の部位の名称はきちんと言わないと」

 だーもーこんな所で変に学者みたいなこと言うんじゃねーよ!
 ダメだ、アドニスが何かおかしい。
 い、今までこんな風に直接何かしてきた事なんてないのに。なのに、どうして急にブラックみたいなセクハラをしてきたんだよ。もうワケが分からない。

 こ、これから壇上にあがらないといけないのに。
 色んな人が見てる前で、変な状態になるのは勘弁して……っ!

「やっ、ぁ! う、ぅううっ……! ぶ、ブラック、ちょっ、たすけて……っ!」

 さすがにコレはヤバい。視覚的な意味でも、非常事態的な意味でも。
 ゆるやかな刺激とありえない事態に驚きつつも、俺は助けを求めて必死にブラックの方を向く。だが、当のブラックはと言うと。

「んもう、ツカサ君たら他のオスにそんな顔見せて! 後でお仕置きだからね!」
「っうぅ゛!?」

 そう言うなり、俺の背後に回ると――いきなり、両手で俺の尻をつかみ、上へあげるかのようにはじめたではないか。

臀部でんぶも既に性感帯のようですね。随分ずいぶんとメス化したようで」
「そうだよねえ、ツカサ君。僕とセックスしまくってるから、もうお尻のお肉も僕がこうしてんであげるだけで気持ち良くなっちゃうんだもんねえ」

 ま、前と後ろ同時に……っ!

 やだ、やめて。なんで急にそんなっ、ていうか、アンタは止める立場だろ、なんでアドニスに協力するようにケツんでるんだよ!?

「やめっ、ぇっ、っ、あ……! や、だ……こういうのっ、やだってぇ……!」

 二つの異なる手に、前と後ろを触られている。
 しかも一つは、こんなことをするなんて思いもよらなかったなめらかな手で……。

 ああもうっ、なんだよこれ、一体アンタらどうしちまったんだよ!
 っていうかもうすぐ壇上に行かなきゃいけないのに、こんなことすんなよばかー!











 
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