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第一話 グルメ殺人事件
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車窓の風景が、鬱蒼とした住宅街から…徐々に自然が広がってゆき、停車区間が長くなる頃…向かい合わせの電車の座席には、かすかな香水の匂いを漂わせ…死者の書を、読み耽る銀髪の女性…彼女は、反対側に座る助手の、大人しそうなスーツ姿の青年に、語りかける…
「あら…おかしいわね…降りる駅…過ぎてる…」
「し…しまった、キラサさん…これ…急行ですよ…」
「そ…降りるわよ…」
次の瞬間…ドレス姿の彼女は、窓に脚をかける…
「は…またっすか…」
「アンタも来んのよ…」
バサッ!
(僕の名前は、篠山ユズキ…このカワイイって言ったら殴られるな…美人探偵の西院キラサの助手兼、ボディガードだ…
で今、依頼者のいる駅を通り過ぎちゃったんで…この人は、窓から飛び降りたってわけ…僕も巻き添えくって、下敷きさ…)
ガラガラガラ…ドッシャ~ン!
「おろ…ユズキ…ドコ?」
「下…下…」
(や…柔らかい…)
キラサの尻の下に引かれる、助手の姿があった…
パシンッ!
頬に赤い手形を付けて、不服そうに古都の道を歩かされるユズキ…
「裏路で…良かったわ…」
「イキナリ殴ったのは…アナタでしよ…まったく…状況を、考えずに…」
近所の子供達の噂声が、聞こえる…
「今…鬼がいたぞ…」
「何言ってんだ…そんなもんいるわけねーだろ」
「キラサさん…」
「ゴメンて…」
ふたりを待つ、依頼者が立っていたのは…歴史がありそうな古本屋で、その奥には小洒落たカフェが設置されていた…そのミスフィッツ感に戸惑いながら、長身のモデル体型のキラサと、小柄な青年ユズキは席に座る…
「フフ…足つかないんだ…」
「うるせ…」
少し高い椅子に、足をブラブラさせる彼を、そこにあった本を読みながら…嘲笑する、意地の悪い美女…
「ウチの店主なんですが…」
そう言いながら、やって来た…依頼者の30歳くらいの、落ち着いた感じの女性の話によると…この店の主人は、原因不明の病に侵されており…その前後に、怪事件が続出しているのだそうだ…
「で…そのおかしな事って…なにかしら…フフ…」
半笑いで興味津々のキラサと、不安そうなユズキ…
「出るんですよ…妖怪が…」
「マジマジ…」
「おい…」
前のめりの探偵を、たしなめる助手に…依頼者は続ける…
「この店は、毎晩10時に閉店するんですが…鍵をかけた後…黒い影が現れて…それを見た店員は、皆…」
「透明な糸と八本の脚を…見たって、言うのよね…」
「どうして…それを…」
察しのいいキラサに、相手は戸惑う…
「分かるわよ…ここでさっき読んだ本に、書いてあったもの…」
「頼もしいです…で、報酬の話ですが…」
「えっとね…本を、何冊か頂けるだけでいいわ…この世界の謎を解くカギが…ここには、あるの…」
「確かに…すごい蔵書ですね…まるで図書館だ…」
手の届かない、上の方まで積まれた…古い曰く付きの書物を、見上げるユズキ…
「これなんて…スゴイ…」
一冊の魔導書を手に取り、読み始めるキラサ…
「お気をつけ下さい…本を読む事に集中し過ぎると、現実との境界線が…曖昧になりますよ…フフ…」
意味ありげな事を言う女性…
夕方になり…先程の依頼者の用意した料理を口にする二人…
「変わった…味ですね…いえ、美味しいんですが…」
「ふだんカップ麺ばっか食ってるバカ舌には…分かんないでしょうね…コレ、何の肉かしら…」
(テメーも、知らないんじゃね~か…この高飛車女め…)
と思いつつも、ビビって口に出せないユズキ…
「主人は…とってもグルメでして…この世界の料理では、満足出来ないんですよ…」
「それって…しまった…吐き出しなさい…ユズ…」
キラサが、何かに気づいた時には…女の姿は無く…嗚咽する助手を横目に、厨房へ向かう探偵…
「キラサさん…」
少し時間をおいて、入ってくる助手…
「見ない方がいいわ…」
「こ、コレって…」
「この店の主人…立花源造…だったもの…」
「あら…おかしいわね…降りる駅…過ぎてる…」
「し…しまった、キラサさん…これ…急行ですよ…」
「そ…降りるわよ…」
次の瞬間…ドレス姿の彼女は、窓に脚をかける…
「は…またっすか…」
「アンタも来んのよ…」
バサッ!
(僕の名前は、篠山ユズキ…このカワイイって言ったら殴られるな…美人探偵の西院キラサの助手兼、ボディガードだ…
で今、依頼者のいる駅を通り過ぎちゃったんで…この人は、窓から飛び降りたってわけ…僕も巻き添えくって、下敷きさ…)
ガラガラガラ…ドッシャ~ン!
「おろ…ユズキ…ドコ?」
「下…下…」
(や…柔らかい…)
キラサの尻の下に引かれる、助手の姿があった…
パシンッ!
頬に赤い手形を付けて、不服そうに古都の道を歩かされるユズキ…
「裏路で…良かったわ…」
「イキナリ殴ったのは…アナタでしよ…まったく…状況を、考えずに…」
近所の子供達の噂声が、聞こえる…
「今…鬼がいたぞ…」
「何言ってんだ…そんなもんいるわけねーだろ」
「キラサさん…」
「ゴメンて…」
ふたりを待つ、依頼者が立っていたのは…歴史がありそうな古本屋で、その奥には小洒落たカフェが設置されていた…そのミスフィッツ感に戸惑いながら、長身のモデル体型のキラサと、小柄な青年ユズキは席に座る…
「フフ…足つかないんだ…」
「うるせ…」
少し高い椅子に、足をブラブラさせる彼を、そこにあった本を読みながら…嘲笑する、意地の悪い美女…
「ウチの店主なんですが…」
そう言いながら、やって来た…依頼者の30歳くらいの、落ち着いた感じの女性の話によると…この店の主人は、原因不明の病に侵されており…その前後に、怪事件が続出しているのだそうだ…
「で…そのおかしな事って…なにかしら…フフ…」
半笑いで興味津々のキラサと、不安そうなユズキ…
「出るんですよ…妖怪が…」
「マジマジ…」
「おい…」
前のめりの探偵を、たしなめる助手に…依頼者は続ける…
「この店は、毎晩10時に閉店するんですが…鍵をかけた後…黒い影が現れて…それを見た店員は、皆…」
「透明な糸と八本の脚を…見たって、言うのよね…」
「どうして…それを…」
察しのいいキラサに、相手は戸惑う…
「分かるわよ…ここでさっき読んだ本に、書いてあったもの…」
「頼もしいです…で、報酬の話ですが…」
「えっとね…本を、何冊か頂けるだけでいいわ…この世界の謎を解くカギが…ここには、あるの…」
「確かに…すごい蔵書ですね…まるで図書館だ…」
手の届かない、上の方まで積まれた…古い曰く付きの書物を、見上げるユズキ…
「これなんて…スゴイ…」
一冊の魔導書を手に取り、読み始めるキラサ…
「お気をつけ下さい…本を読む事に集中し過ぎると、現実との境界線が…曖昧になりますよ…フフ…」
意味ありげな事を言う女性…
夕方になり…先程の依頼者の用意した料理を口にする二人…
「変わった…味ですね…いえ、美味しいんですが…」
「ふだんカップ麺ばっか食ってるバカ舌には…分かんないでしょうね…コレ、何の肉かしら…」
(テメーも、知らないんじゃね~か…この高飛車女め…)
と思いつつも、ビビって口に出せないユズキ…
「主人は…とってもグルメでして…この世界の料理では、満足出来ないんですよ…」
「それって…しまった…吐き出しなさい…ユズ…」
キラサが、何かに気づいた時には…女の姿は無く…嗚咽する助手を横目に、厨房へ向かう探偵…
「キラサさん…」
少し時間をおいて、入ってくる助手…
「見ない方がいいわ…」
「こ、コレって…」
「この店の主人…立花源造…だったもの…」
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