碧に溶かして

よんど

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碧に溶かして 本編

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ヨウと生活を共にする様になって月日が流れ、俺は奨学金を借りて大学生になった。お金を貯める為に大学の合間にバイトをする毎日だが、ヨウとの日々は充実していた。

「ヨウ」と声を上げながらパタパタと彼の居るソファへ向かう。きっちりした格好で寝ていたヨウは俺の声を合図に欠伸をしながら立ち上がる。月日の流れとはあっという間だ。彼は俺に懐いてくれる様になった。
一回り大きくなり、仔犬では無くなった彼の毛並みは更に伸びたが相変わらずサラサラのツヤツヤで、いつ触っても気持ちの良い手触りだ。オッドアイの美しさも健在である。

一年経った今、俺自身も随分変わった。
小手毬 夕。現役大学生。講義やゼミ以外の時はバイトか家に居る引き篭もりに近い生活を送っていた。ご飯の準備をしている際、不意に『人間と獣人の溝はいつになったら埋まるのでしょうか』と男の声が耳に入ってくる。ピタッと動きを止めて顔を上げると、獣人のニュースキャスターが難しい顔をしながら続けた。


『難点はやはり差別化ですね。最近人間が声を上げる活動が幾つかの箇所で行われている模様です。獣人と人間、違う点は多々有りますが、それを受け入れて共に生活出来る、そんな共生社会を望んでいます』


よく言うよ。
そんな事を言っていて、はなから解決する気なんて無いのに。溜息を呟きながら、コポポ…とコップに水を注いでいく。そもそもこの一年で何かしらの解決策を示すべきだったんだ。時間だけが無駄に過ぎていき、根本的な事は全く解決していない。人間だからと差別される俺は、ただでさえΩで生活が苦しいのに付け耳迄付けて獣人のフリをして大学で過ごす始末なんだぞ。
伸ばしっぱなしの髪の毛を雑に束ねながらダイニングに着く。
ふと、机の下のヨウに視線を向けて異変に気付く。気の所為か、どこか苦しそうに見える。ギュッと目と目との間に皺をつくりながらプルプル震えている。トイレかと思ったがどうやら違うらしい。


「ヨウ、具合悪いのか?」


椅子から降りてしゃがみ、ヨウの背中を優しく撫でてやる。
低く唸るのを聞き、心配になった俺は急遽動物病院に行く事に決めた。立ち上がり、ヨウをソファに寝かすと「待ってろ、直ぐ戻って来るから」と撫でて家を後にする。取り敢えず症状を伝えて何かしら対処しなければ。そんな事を思っている俺の気持ちとはよそに、俺が不在の間、ヨウにはとんでもない変化が訪れていた。

__________
____


「ただいまっ」


数十分開けた後に、急いで玄関の扉を開けて家に入る。
急な過呼吸に対応した薬を貰った俺は白い袋に手に、バタバタとリビングに向かって駆けて行く。「ヨウ、もう大丈夫だぞ」と勢いよく扉を開いて唖然とする。ソファの上で眠っていた栗色の毛並みを持つ可愛らしい犬の姿は無く、代わりに全裸の男が眠っていた。ドサッと手にしていた荷物を床に落とす。その音で目を覚ました男はピクッと反応すると、「ん~…」と唸りながらゆっくり身体を起こした。突然の事態に俺は停止したまま動けないでいた。
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