魔法使い、双子の悪魔を飼う

よんど

文字の大きさ
11 / 99
第一部 魔法使い、双子の悪魔を飼う

11

しおりを挟む
「君達の自由は僕が保証する。こんなに小さい子なんて育てた事ないからどうなるか分からないけれど」
「小さい子って.....俺達は.....」
「セル」

僕が気付いてないって思っているのだろう。
自分達の正体についてさらっと言いそうになったセルを、黙って聞いていたヨルがすかさず制する。治癒を終えた僕は口を噤むセルの頭を撫で、そのままヨルの背後にまわる。

「まぁ、まだ完全には信じられないかもしれないけどさ。幸運とでも思ってお世話されてよ。ご飯も用意するし治癒魔法だって掛け続けてあげる」

ヨルがゆっくりと自分の角に手を伸ばして「痛くない.....」と呟く。どうやらちゃんと効いているみたいだ。ニコッと笑った僕は「僕の魔法は国一番と言われているからね」と胸を自慢げに逸らす。僕が使ったら純魔法でさえ特級レベルに強くなるのだから。

「さぁ、今日はもう遅い。この時間帯は本来もう寝る時間なんだ。君達のベッドはまた用意するから、今日は僕のベッドで寝てくれ」

駄々をこねられる前に寝室へ案内し、彼等をベッドの中に滑り込ませる。ふわふわの柔らかい布団は、僕が趣味で作っている香を炊いているお陰でいい匂いだ。柔らかい匂いに包まれて、気持ち良いのか彼等は何も言わなくなる。

「おやすみ。セル、ヨル」

カチッと電気を消して寝室を後にする。
扉が閉まる直前「.....おやすみ、リュシー」とセルの小さな声が聞こえてきた。なんだかこそばゆい感情が芽生え、僕は背を向けたまま微笑んだ。









*** 

「なぁ、ヨル。お前はまだあいつの事が信じられないか」

開け放たれた窓からは、少し離れた場所の岩の上で月明かりを浴びながら眠るリュシーの姿が見える。隣で目を瞑っていたヨルは寝返りを打ちながら「逆にお前は信じられるのか」と不思議そうに毒を吐く。

「人に優しくされた事がないから気が動転しているんだろう。俺達は誰も信じちゃいけない。信じて裏切られて辛い思いをするのは俺達なんだ」
「.....辛いなんて感情はもうとっくの昔に忘れたよ」

ずっと孤独だった。
気が付いたら角は人間に折られ、奴隷市場に連れて行かれた。抵抗したくても出来ない服従の魔法を掛けられ、俺達の人生はめちゃくちゃになった。ただ、この世に生まれたせいで.....。

「俺は信じたい。あいつからは敵意を何も感じない。ふわふわしていて何を考えているか分からないけれど」
「.....そういう奴程一番危ないって言うけどな。俺はもう寝る」

背を向けて眠りに入るヨルの横で、俺はジッと彼の姿を見つめる。

リュシー。
この国一番と自称する程の力がある魔法使い。あの見た目と口ぶりからして彼はエルフだ。人間ではない者と接したのは.....優しくされたのは初めてで、彼の優しさに素直になるのは難しい。

「.....誰かの優しさに縋りたいと思うのは、駄目な事なのか」

ボソッと呟いた後、何気なく先に眠ったヨルの後頭部を見つめる。返事なんて返ってくる筈もなく、もう一度リュシーを見る。何も言わずに寝たふりを続けていたヨルはグッと唇を噛み締めた後、ようやく目を閉じて堕ちていった。


*** 
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...