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第一部 魔法使い、双子の悪魔を飼う
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「君達の自由は僕が保証する。こんなに小さい子なんて育てた事ないからどうなるか分からないけれど」
「小さい子って.....俺達は.....」
「セル」
僕が気付いてないって思っているのだろう。
自分達の正体についてさらっと言いそうになったセルを、黙って聞いていたヨルがすかさず制する。治癒を終えた僕は口を噤むセルの頭を撫で、そのままヨルの背後にまわる。
「まぁ、まだ完全には信じられないかもしれないけどさ。幸運とでも思ってお世話されてよ。ご飯も用意するし治癒魔法だって掛け続けてあげる」
ヨルがゆっくりと自分の角に手を伸ばして「痛くない.....」と呟く。どうやらちゃんと効いているみたいだ。ニコッと笑った僕は「僕の魔法は国一番と言われているからね」と胸を自慢げに逸らす。僕が使ったら純魔法でさえ特級レベルに強くなるのだから。
「さぁ、今日はもう遅い。この時間帯は本来もう寝る時間なんだ。君達のベッドはまた用意するから、今日は僕のベッドで寝てくれ」
駄々をこねられる前に寝室へ案内し、彼等をベッドの中に滑り込ませる。ふわふわの柔らかい布団は、僕が趣味で作っている香を炊いているお陰でいい匂いだ。柔らかい匂いに包まれて、気持ち良いのか彼等は何も言わなくなる。
「おやすみ。セル、ヨル」
カチッと電気を消して寝室を後にする。
扉が閉まる直前「.....おやすみ、リュシー」とセルの小さな声が聞こえてきた。なんだかこそばゆい感情が芽生え、僕は背を向けたまま微笑んだ。
***
「なぁ、ヨル。お前はまだあいつの事が信じられないか」
開け放たれた窓からは、少し離れた場所の岩の上で月明かりを浴びながら眠るリュシーの姿が見える。隣で目を瞑っていたヨルは寝返りを打ちながら「逆にお前は信じられるのか」と不思議そうに毒を吐く。
「人に優しくされた事がないから気が動転しているんだろう。俺達は誰も信じちゃいけない。信じて裏切られて辛い思いをするのは俺達なんだ」
「.....辛いなんて感情はもうとっくの昔に忘れたよ」
ずっと孤独だった。
気が付いたら角は人間に折られ、奴隷市場に連れて行かれた。抵抗したくても出来ない服従の魔法を掛けられ、俺達の人生はめちゃくちゃになった。ただ、この世に生まれたせいで.....。
「俺は信じたい。あいつからは敵意を何も感じない。ふわふわしていて何を考えているか分からないけれど」
「.....そういう奴程一番危ないって言うけどな。俺はもう寝る」
背を向けて眠りに入るヨルの横で、俺はジッと彼の姿を見つめる。
リュシー。
この国一番と自称する程の力がある魔法使い。あの見た目と口ぶりからして彼はエルフだ。人間ではない者と接したのは.....優しくされたのは初めてで、彼の優しさに素直になるのは難しい。
「.....誰かの優しさに縋りたいと思うのは、駄目な事なのか」
ボソッと呟いた後、何気なく先に眠ったヨルの後頭部を見つめる。返事なんて返ってくる筈もなく、もう一度リュシーを見る。何も言わずに寝たふりを続けていたヨルはグッと唇を噛み締めた後、ようやく目を閉じて堕ちていった。
***
「小さい子って.....俺達は.....」
「セル」
僕が気付いてないって思っているのだろう。
自分達の正体についてさらっと言いそうになったセルを、黙って聞いていたヨルがすかさず制する。治癒を終えた僕は口を噤むセルの頭を撫で、そのままヨルの背後にまわる。
「まぁ、まだ完全には信じられないかもしれないけどさ。幸運とでも思ってお世話されてよ。ご飯も用意するし治癒魔法だって掛け続けてあげる」
ヨルがゆっくりと自分の角に手を伸ばして「痛くない.....」と呟く。どうやらちゃんと効いているみたいだ。ニコッと笑った僕は「僕の魔法は国一番と言われているからね」と胸を自慢げに逸らす。僕が使ったら純魔法でさえ特級レベルに強くなるのだから。
「さぁ、今日はもう遅い。この時間帯は本来もう寝る時間なんだ。君達のベッドはまた用意するから、今日は僕のベッドで寝てくれ」
駄々をこねられる前に寝室へ案内し、彼等をベッドの中に滑り込ませる。ふわふわの柔らかい布団は、僕が趣味で作っている香を炊いているお陰でいい匂いだ。柔らかい匂いに包まれて、気持ち良いのか彼等は何も言わなくなる。
「おやすみ。セル、ヨル」
カチッと電気を消して寝室を後にする。
扉が閉まる直前「.....おやすみ、リュシー」とセルの小さな声が聞こえてきた。なんだかこそばゆい感情が芽生え、僕は背を向けたまま微笑んだ。
***
「なぁ、ヨル。お前はまだあいつの事が信じられないか」
開け放たれた窓からは、少し離れた場所の岩の上で月明かりを浴びながら眠るリュシーの姿が見える。隣で目を瞑っていたヨルは寝返りを打ちながら「逆にお前は信じられるのか」と不思議そうに毒を吐く。
「人に優しくされた事がないから気が動転しているんだろう。俺達は誰も信じちゃいけない。信じて裏切られて辛い思いをするのは俺達なんだ」
「.....辛いなんて感情はもうとっくの昔に忘れたよ」
ずっと孤独だった。
気が付いたら角は人間に折られ、奴隷市場に連れて行かれた。抵抗したくても出来ない服従の魔法を掛けられ、俺達の人生はめちゃくちゃになった。ただ、この世に生まれたせいで.....。
「俺は信じたい。あいつからは敵意を何も感じない。ふわふわしていて何を考えているか分からないけれど」
「.....そういう奴程一番危ないって言うけどな。俺はもう寝る」
背を向けて眠りに入るヨルの横で、俺はジッと彼の姿を見つめる。
リュシー。
この国一番と自称する程の力がある魔法使い。あの見た目と口ぶりからして彼はエルフだ。人間ではない者と接したのは.....優しくされたのは初めてで、彼の優しさに素直になるのは難しい。
「.....誰かの優しさに縋りたいと思うのは、駄目な事なのか」
ボソッと呟いた後、何気なく先に眠ったヨルの後頭部を見つめる。返事なんて返ってくる筈もなく、もう一度リュシーを見る。何も言わずに寝たふりを続けていたヨルはグッと唇を噛み締めた後、ようやく目を閉じて堕ちていった。
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