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第一部 魔法使い、双子の悪魔を飼う
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双子のセルとヨル。
悪魔族。
元奴隷。
それくらいしか情報がない彼等との生活は正直不安でしか無かったけれど、僕と彼等は今日も何とか共に過ごしていた。
「セル!ヨル!パンに使うジャムを作りたいから木の実を取りに行ってくれないか」
二階にいる二人に向かってキッチンから声を上げる。暫くして眠たそうに目を擦りながら降りてくるセルとヨル。「魔法を使って回収すればいいのに」と悪態をつくヨルの口に、代わりに手元の焼き立てのパンの切れ端を含ませる。
「自分の手で出来る事は自分でやった方が楽しいんだよ。こういうちまちました作業も僕は好きなんだ」
「ふーん.....」
心底興味無さそうにもぐもぐパンを頬張るヨルの横で「早く行ってしまおうぜ」とセルがバスケットを手に先に扉へと向かう。二人が扉の向こうに消えたタイミングで、パン作りの続きを再開する。
あれから十日程経った。
文句や不満はありそうだったが、なんだかんだで二人ともこの生活に馴染み始めていた。成長してオーラを調整出来る様になる迄、街には行かないという条件を僕からは出し、結界の向こうに行ける程の力が戻ったら家を出るという話を彼等から言われた。
僕達人外の成長は早く、きっとあっという間だ。恐らく治ったら直ぐに出て行くだろうから、ちょっとした刺激だと思ってこの時間を謳歌しよう。
「それにしても二人共遅いなぁ。裏の木だから直ぐ帰ってくると思ったんだけれど.....」
***
何故、こんな所に魔物がいるのか。
ひっくり返ったバスケットの中の木の実が辺りに散らばっている。肩から胸に掛けて血が流れたセルが倒れ込む様に地面に伏せている。ふぅ.....と一息吐いて、倒れたまま動かないセルを背に視線の先の魔物から距離を取る。
(この家の周りには結界が張ってある。それも結構強力の.....まさか打ち破られるなんて)
木の実を収穫して戻ろうとしていたら、パリィン.....と結界が割れる音が響いたと同時に真横のセルが狙われた。バリッと裂ける様な音が響き、苦しそうにセルが倒れた。攻撃が飛んでくる直前ギリギリで防御出来たが──。
(だいぶ回復したといっても、まだ魔力を上手く扱えない.....セルだけでも守らないと)
掌を魔物にかざし、ありったけの魔力を放出する。少しずつ意識がボヤけ、頭がくらくらし始める。今.....家の中のあいつを呼べば、どうなるんだろうか。助けてくれるのだろうか。
(──いや。頼らない。俺は何も信じない)
あんな辛い思いをするのは嫌だ。
セルの泣き顔を側で見るだけで、その思いは充分味わってきた。セルは俺が──
「ちょっと!何があった?!」
──焦った様な声がした瞬間、バァンッと魔物が一気に弾けた音がその場に鳴り響く。気が付いたら、自分はあいつの腕の中で支えられる様な形で倒れ込んでいた。魔物の血の雨が降る中「何で.....」と思わずこぼすと、呆れた様に「一人で何をしようとしてるんだ」と彼は言ってセルに治癒魔法を掛ける。
***
悪魔族。
元奴隷。
それくらいしか情報がない彼等との生活は正直不安でしか無かったけれど、僕と彼等は今日も何とか共に過ごしていた。
「セル!ヨル!パンに使うジャムを作りたいから木の実を取りに行ってくれないか」
二階にいる二人に向かってキッチンから声を上げる。暫くして眠たそうに目を擦りながら降りてくるセルとヨル。「魔法を使って回収すればいいのに」と悪態をつくヨルの口に、代わりに手元の焼き立てのパンの切れ端を含ませる。
「自分の手で出来る事は自分でやった方が楽しいんだよ。こういうちまちました作業も僕は好きなんだ」
「ふーん.....」
心底興味無さそうにもぐもぐパンを頬張るヨルの横で「早く行ってしまおうぜ」とセルがバスケットを手に先に扉へと向かう。二人が扉の向こうに消えたタイミングで、パン作りの続きを再開する。
あれから十日程経った。
文句や不満はありそうだったが、なんだかんだで二人ともこの生活に馴染み始めていた。成長してオーラを調整出来る様になる迄、街には行かないという条件を僕からは出し、結界の向こうに行ける程の力が戻ったら家を出るという話を彼等から言われた。
僕達人外の成長は早く、きっとあっという間だ。恐らく治ったら直ぐに出て行くだろうから、ちょっとした刺激だと思ってこの時間を謳歌しよう。
「それにしても二人共遅いなぁ。裏の木だから直ぐ帰ってくると思ったんだけれど.....」
***
何故、こんな所に魔物がいるのか。
ひっくり返ったバスケットの中の木の実が辺りに散らばっている。肩から胸に掛けて血が流れたセルが倒れ込む様に地面に伏せている。ふぅ.....と一息吐いて、倒れたまま動かないセルを背に視線の先の魔物から距離を取る。
(この家の周りには結界が張ってある。それも結構強力の.....まさか打ち破られるなんて)
木の実を収穫して戻ろうとしていたら、パリィン.....と結界が割れる音が響いたと同時に真横のセルが狙われた。バリッと裂ける様な音が響き、苦しそうにセルが倒れた。攻撃が飛んでくる直前ギリギリで防御出来たが──。
(だいぶ回復したといっても、まだ魔力を上手く扱えない.....セルだけでも守らないと)
掌を魔物にかざし、ありったけの魔力を放出する。少しずつ意識がボヤけ、頭がくらくらし始める。今.....家の中のあいつを呼べば、どうなるんだろうか。助けてくれるのだろうか。
(──いや。頼らない。俺は何も信じない)
あんな辛い思いをするのは嫌だ。
セルの泣き顔を側で見るだけで、その思いは充分味わってきた。セルは俺が──
「ちょっと!何があった?!」
──焦った様な声がした瞬間、バァンッと魔物が一気に弾けた音がその場に鳴り響く。気が付いたら、自分はあいつの腕の中で支えられる様な形で倒れ込んでいた。魔物の血の雨が降る中「何で.....」と思わずこぼすと、呆れた様に「一人で何をしようとしてるんだ」と彼は言ってセルに治癒魔法を掛ける。
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