<本編完結>転生巫女は腹黒宰相と狂い咲く

汐瀬うに

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不穏な風と巫女

53.そんな顔もできるのね

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 ハイデルは、マリに付き合いながら少しずつ情報を整理し、同時に今後の展開をいくつか考えた。

「マリ。君は、魔法を学びたいかい?」

 まずは彼女の意思が最優先だ。彼女が今後きちんと魔力について学び、改めて展開と解除の方法を覚えるなら、この結界が国の情勢をとても優位にすることは、ほとんど間違いない。

「えぇ、この国でこの能力を役立てることができるなら、ぜひ学びたいです。」

 エカードからの放火の話が本当ならば、今すぐにでも赴いて大規模火災を食い止めることだって、彼女にならできるかもしれないし、長く展開できるならば、しばらくエカードからの追撃をさせないことすらも可能だろう。

「そこまでの道のりが、困難だったり…危険だったり、するとしても?」

 ノイブラの街へ彼女を連れて行けば、移動中に落石や連れ去りの危険があるし、最悪現地についてからも、何者かの手によってエカードへ攫われてしまうことだって、想像できなくは無い。この神殿にいることが一番安全なのは、誰が見たって明らかだ。

「えぇ。きっと、ハイド様は私のこと、危険にさらしたり、見殺しにしたり…出来るわけありませんから。」

 彼女の表情に迷いなどなかった。僕が彼女に聞いたことすら間違いだったのかと思うほどに、曇りなき眼でこちらを見つめ、信頼していますからと微笑む。

「そうか。

 ……実は今、ここから少し離れた街で火災が起きていて…純粋な水の力だけでは、もう取り返しのつかないところまできているんだ。

 大臣達に緊急招集をかけて、僕の使える魔法で最大限の水の壁を作る案を検討していた矢先に、君のこの結界が展開されたのは、何か意味があるんじゃないかと、僕は思うことにした。」

 もちろん、僕にだって彼女を傷付けさせる可能性のあるものなど、できる限り排除するし、近付けないという決意はあるが、こうもまっすぐと生きられる、彼女の芯の強さには驚かされる。

 普段の彼女の活発な性格、自分や皇帝の兄上ですら恐れない態度、平民や貴族といった身分を一切気にせずに動ける姿を思えば、自分も彼女のその力に賭けてみようという気持ちにさせられた。

「だから……僕のズューゼ。しっかりと聞いて。

 君にはまだ、よくわからないかもしれないけれど、結界というのはとても貴重で、どの国においても重宝されるものだ。広範囲で展開するなんて、僕にだって使えない。
 今の状況を整理すると、おそらく君は…記憶の中にある場所であれば、かなりの広範囲でも、結界を展開できるのだと思う。

 結界が神殿で展開されたことを考えると、もしかすると神殿でしか結界は展開できないのかもしれない。けれど、今はその可能性ですらもありがたい状況にあって、事態は一刻を争う。

 君のことは、もちろん僕が、命をかけて守る。
 絶対に、誰にも傷付けさせない。

 ……だからどうか、僕と一緒に、東の街ノイブラへ行ってはくれないか。」


 ハイデルの両手は、マリの右手を守るようにぎゅうっと握られている。真一文字に結んだ唇と真っ直ぐと自分を見つめる瞳は、真剣そのものだ。

「はい、もちろん。今すぐにでも行きましょう!」

 即答のYESだった。マリの心はもうとっくに決まっていた。どんなことであれ、今自分が求められているのなら、断る理由なんてない。ましてやそれがハイデルの希望なら、断るわけがないし、無茶だったとしても行く。

 そんなの言わなくても、わかってましたよね?と聞くと、そうでもないさと答えるハイデルは少しばつが悪そうで、なんだかとても可愛くみえてしまった。

 ノイブラは、冒険者のようにギリギリの睡眠時間で歩いて行けば丸1日、宿に泊まって明るい時間だけに限って歩くならば2日半ほどの道のりだ。これからマリの外出の用意をし、馬車を手配してから向かうのでは、到着したころには既に市街地が丸焦げになっていてもおかしくはない。

 必要なものはある程度ノイブラの市場で買い込むことに決め、マリをカタリナと同じ使用人の服へ着替えさせるように命じ、自分も私室へ服を替えに戻った。

 マリの秘密の鍵は、馬に乗っている間に怪我をするといけないので、カタリナの居なくなった隙を狙って外され、ハイデルのポケットの中へとしまわれた。
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