兄妹の話。

少女××

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【結】ずっと一緒。

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朝起きたら兄のご飯を作って、
学校の日は兄と一緒に登校して、
昼休みは兄と一緒にお弁当を食べて、
放課後は兄と一緒に帰って、
夕飯を食べて、たまに(週5くらい)兄と一緒に寝る。
休日は兄と出かけたり一緒に駄弁ったり。

、、、これって兄妹として普通ですよね?

え、恋人とかじゃないよ?
だって血の繋がった兄妹だし。

兄のことは愛してますよ?
あくまで家族として、です。

多少仲のいい兄妹なら休日は一緒に出かけるし、
同じ学校なら一緒に登校するし、
同じ家なんだからたまに一緒に寝る、、
でしょ、、??

ただ私は気づいた。

私は一生兄離れが出来ない、と。

いや、
別に心理的に離れるとかじゃなくて
兄といる時間が長すぎて、私は兄の人生の
邪魔をしているのではないかと思うのだ。

と、いうわけで。

「今日は一緒に寝ない。」

「なん、でぇ、、?」

うぅ、そんな可愛い顔で見ないで。
決意が揺らぐ。

「睡眠、大事。邪魔するのよくない。」

「俺、妹の睡眠の、邪魔してた?」

は?兄が邪魔だったこととか
生きてきて一度もないが??

むしろ常にこの世にあり続けるべき存在であり
むしろ兄以外が全て邪魔。
この世に兄だけでいいわ別に。

「私、今日は部屋で寝るから。
おやすみ。」

兄の邪魔になりたくないんですぅ!

昔兄に買ってもらった
おっきいバクのぬいぐるみを抱えて
兄の部屋を出ようとした。

「待ってよ。」

寝る前の、少し体温の高い兄の手が、
優しく、けれどしっかりと私の手首を握る。

痛みを感じさせないのに振り解けない。

こう言うところまで完璧だ。素敵。

と思っていたらそのまま手を引かれて
よろめいた隙にベッドの上で
背後から抱き込まれた。

「寂しい、、。
どうしてもだめ?
嫌なところ、ちゃんと治すよ。
だから一緒に寝よう、、?」

あーー。首元に感じる吐息がえろすぎる。

これは妹の私だからいいものを!
他の人にやったら襲われるぞ!!

「お兄、首、くすぐったい。」

はぁ、、、神の吐息を首に受けてるんだけど
これ、私の首ぽろっと取れたりしないよね?
なんでこんな神なの?
あーー、
神の隣で寝るとかここは教会?神殿?天国?

悶えてたら首をぺろっと舐められた。

「ぴゃあっ、」

変な声出た。
いやいやなんで舐めたんですか!?
神の思考回路わからん!!
崇高すぎて私程度では推し量れんわいや!

「ねぇ、お願い。」

見せつけるようにちろちろと舌を這わせる兄のせいで
まともな思考回路が働かない。

「し、したっ、したかなっ、、
しかたなぃなぁ、、、。」

妹、陥落。

今日は兄と一緒に寝ます。
兄離れは明日からです、おやすみなさい。

「ここまでしたんだから
もう少し危機感を持って欲しいんだけどな?」

兄の言葉が聞こえない、、。
首元に暖かい感覚と鋭い痛みを感じつつ
起きる気力もなくて布団に沈んだ。

すやぁ。

             ∞


おはようございます。
目の前に美しすぎる御尊顔があって
朝から目がブッ潰れそうな妹です。

痛い、目と心臓が痛い。
あと心なしか首元がチリッとする。

あー、素敵。これずっと見てられるわ。
一日、、いや、数年はここにいたい。


おっと、、今日は兄離れするんだった!!

そそくさとベッドから降りようとすると
後ろからぎゅうっと抱きしめられた。

めちゃくちゃいい匂いするんだけど?
あれ、そういえば私汗臭くない、、?
兄からはフローラルの香りするのに
私は汗臭いとか死んだほうがマシでは?
急いで腕をくんくんしたけど
ギリギリセーフだと思う。多分。

「ぷくくくくっ、、、。」

「お兄、起きたの?おはよう。」

匂い嗅いでたの気づかれた、、(恥死

「おはよう俺の妹。
今日も可愛いね?
そんなに気にしなくても妹はいつでもいい匂いだよ。
俺の好きな匂いだ。」

後ろからぎゅうぎゅうしながら頭のてっぺんを
鼻先でぐりぐりされる。

あぁ、兄の高い鼻が私の頭に、、。
え、鼻骨びこつから鼻頭はながしらまでのライン
こんなに完璧な人いる??

はぁ、、造形完璧。

「嗅がないで、もう起きる。」

「もう少し、もう少しだけ。」

ぎゅーの力が少し強まった。

えー、それでも私が振り解ける強さなの推せる、、。
嫌なら自分で抜け出せってことなの!?
嫌じゃないから全然このままでいいんですが??

はっ、兄離れ兄離れ!!!

「朝ごはんするから。」

ごめんなさいごめんなさい神が如き兄の腕から
許可なく抜けることをお許しください。

「そっか、、。」

こいぬぅぅぅ!!
おもちゃを取られて項垂れる仔犬が如し!
可愛いがすぎる!
寝起きなのに!朝なのに!!この美しさ!!!

好き!!!!!!!

「下で待ってるからお兄も降りてきなよ。」

「わかった。」

はぁぁぁぁああああ。
朝から心臓に悪い。
いやむしろ兄は癒しだから心臓にいいのか??

とりあえず朝食は兄のために全力を出そう。

といっても昨日の夕飯前に仕込んでおいたんだ。
温めて机に置いて、、

手始めに一人で登校してみようと思う!

ふふん、部屋で制服に着替えて
昨日のうちにまとめておいた鞄を持った。

これは完璧ですわキタコレ。

意気揚々と玄関を飛び出、「どこ行くの?」せませんでしたお疲れ様でした。

あれ、兄、さっきまで寝てたやん?
え、制服着てるやん、鞄持ってるやん、超絶イケメンやん、完璧やん?

首傾げる角度まで仕上がってる。
きっちり結んだネクタイ素敵。
着込んだブレザーめちゃくちゃ羨ましい、
ブレザーそこ変われ。

え、もしかして寝起きなのに
制服着ただけでそんなイケメンなの?

「お兄、ご飯は?」

「ん、おいしかったよ。ご馳走様。
朝から美味しいものをありがとう。」

ふぁーー。
感謝を忘れない気持ち好き。
あぁ、、好き。

「それで。」

あ、余韻にも浸らせてもらえない。

「俺の可愛い妹はそんな愛らしい制服を着て
一人でどこに行くのかな?」

愛らしい制服って、、、。
兄の方が五千億万倍愛らしいしかっこいいし素晴らしいが??

「学校だけど。」

「俺を置いて、一人で、学校に?」

「私、別に一人でも学校に行ける。
お兄も友人とかと学校行ったら?」

兄にはまぁ、、信頼とまではいかないが
それなりの付き合いならできる程度の友人が
25人ほどいるはず、、。
その中でも一緒に登校しても問題なく、
その上ある程度親しくしている人が
2人はいるはずだから
別に私と登校する必要はないんだよね。

「妹を1人にして俺が友達と登校、、?
なんで、、?」

本当に意味がわからないみたいな顔してる。

え、これもしかして長い間私といるせいで
私が兄を無意識に洗脳してしまったの!?

やばいやばい、もうやばいとこまできてる、、。

「まさか、妹は、、
俺の他に一緒に登校したい人がいるの?」

「ふぇ?」

「俺じゃない人と学校に行くの?
俺を置いて?」

「ちょっとま、」

「その人の方が俺より大事?」

「は?今なんて?」

ちょっと待て。兄より大事??
は?何言ってんの。

「お兄より大事な人がいるわけないでしょ。」

何それ、私に兄より大事な人がいるとか
あり得ないでしょ。
ふざけないで欲しい。
いくら兄でもそれは私への侮辱行為だ。
許さぬ。

「そっか。」

嬉しそうにニコニコする兄が可愛くて
世界万物全てを許した。
兄を創り出してくれてありがとう世界。

「じゃあ私行くから。」

歩き出すと兄もついてくる。

「、、、なんでついてくんの?」

「ん?俺も学校行くんだよ?
同じ学校なんだから同じ道通るのは当然じゃない?」

ん?確かに、、?当然か、、??

「同じ通学路を通って同じ学校に着くなら
一緒に行くほうがお得じゃない?」

んん??もしかして、行き先も同じだし
別に一緒に行かない理由がない、、?

あれ、そもそもなんで別々に登校しようとしたんだっけ?

あ、兄離れ兄離れ。
危なかった、忘れてたわ。

とりあえず今日は一緒に学校行くか。

「ん、お得。一緒に学校いこ。」

「うん、一緒だ。」

兄が爽やかに笑って手を握ってくる。
ぎゅうっと痛いくらいに掴まれて
ビクッとしたけど兄はニコニコとこちらを見ている。

「ずっと一緒だよ?」

握っていない方の手で髪を掬って持ち上げる仕草まで
神がかり的に完璧、なのに。

他者の介入を許さないほどの
強い瞳に吸い込まれて他のことなど何も見えない。

「おに、ぃ、、。」

「これからもずっと。
ずぅっと一緒、ね?」

「ずっと、一緒。」

「そう、ずっと一緒。
俺の可愛くて大切な、愛おしい妹。」

兄の手から零れ落ちた髪が肩にかかる。
さらりと揺れた毛先に視線を落とした刹那、
降りてきた兄の唇が首筋に触れる。
肩口に頭を寄せて首筋に軽く歯を立てた兄は
顔を上げた途端に妖艶に笑った。

「俺から逃げないで。」

兄から、、。

「逃げない。
お兄とずっと一緒なのは、変わらない未来。」

これは熱に浮かされることのない私の意思。

「変わらない未来、、。
いいね、それ。
未来永劫、変わらずずっと一緒だよ?」

兄は満足気に微笑んで歩き出した。
握った手を離さず学校に向かう。

「まぁ、逃したりしないけど。
生まれてから死ぬまで、、
俺たちはずっと一緒に生きていくんだから。」

ん?なんてー?

鼻歌交じりに歩く兄が可愛すぎて
神に感謝してたから兄の話聞いてなかった。

今日も安定の素晴らしさを誇る兄の前には
妹はあまりに無力。

今日は兄離れは諦めてまた明日にします。

まぁまだ時間はある、
どうせ長い人生で兄が家族であることが
変わる日なんて来ないんだから。


              
ーーー兄が私の家族であり、
その上でだと強制的に認識させられたのは、そのしばらく後で。


まぁそれはまた、別の機会に。
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