ほしとうつひと

五月四日。

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 アジア大陸の北部でも同様のことが起こった。カナダほど多くの人は住んでいなかったが、針葉樹を燃やす山火事は、カナダで起こったそれよりも大きく、甚大な被害をもたらし、多くの動植物が焼け死に、焦げ果てていった。平均気温の大きな上昇によりすでに雪はなくなっていたが、緑豊かだった大地には灰と煤のみが残され、それはいくつかの国家を合わせたよりもさらに広い、ただ何もない陸地だけが拡がる荒れた大地となっていった。そしてその30年後の2095年、最初の星が地球に落ちた。太平洋に落ちたその巨大な星は、幸い人の住んでいる土地を外れ、海中へと沈んでいった。その轟音と振動から、衝撃はすさまじいものだったであろうと考えられたが、人の住む土地から遠く離れていたため、それを体験として語れる者はいなかった。この星の落下により、周囲数千キロとも言われるエリアがその影響をうけ、水温の急激な上昇とともに、数千種類の魚の数百、数千万という数の死骸が一時海面を覆った。ひと月も経たずに、この星の落下直後、世界各地のさまざまなメディアがこのニュースを取り上げ、海面を埋める夥しい数の魚の死骸がテレビ画面やインターネット上に数多く映し出されていたが、海面がそれまでの状態を取り戻すにつれ、ニュースは霧散し、流れ消えていった。もちろん、この星の落下について、専門家からはその原因を突き止めるべきだという声が聞かれ、研究と称し、実際に現地へ赴く専門家も現れたが、具体的な手掛かりを得ることはできず、その理由を突き止めるに至るものはいなかった。
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