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第1章
第10話 歴史の移り変わりを目前で
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「あなたはあの時の……。それと、私は神様じゃないから!」
金髪の名前をシエラと言った彼女は、ムッとした表情を浮かべながら怒声を飛ばしてはいるが、本人の意思とは関係なく美しすぎるが故の愛嬌が感じ取れてしまう。
周りの視線やざわつきが一層大きくなったが、今はそれどころではない────
「…………リオ・ラミリア君」
俺の興奮とは裏腹に、ひどく冷め切った声音でこめかみにシワを浮かび上がらせる女性が一人。
「え、えっと……これは、その……」
冷水を頭からぶっ掛けられたかのように、サーッと引いていく血の気。
金髪の妖精に釘付けだった俺の視線を、恐る恐る声が聞こえた少し横の方へと移動させた。
「ひッ!」
そこには、口元は微笑みながらも目元が全く笑っていないミラさんが、俺に対し真っ直ぐに焦点を合わせているのが確認できる。
「さっき……言ったばかりよね?確かに、あなた方の年齢は『反抗期』っていう時期に入っているのも理解しているつもりだし、成長の過程として当たり前だとは思いますが……時と場合を弁えましょうね?それにそもそも……」
ミラさんは、人差し指をピンッと立ててつらつらと話を始めた。そんなミラさんの話を聞きながらもう一度ゆっくりと座った。
なおも言葉の羅列が止まらないミラさんの頬を指でつまみ、それ以上続けなくさせたファルネスさんは呆れながら、
「ミラの小言を聞いてると日が暮れちゃいそうだから話を進めるけど、私に任された異例の生徒は恐らく皆んなも知っているであろうお方。現妖精の国の王政を動かしているアレサンドル家第二王女、シエラ・アレサンドル・イザベル王女だ。王女、この場で何か特筆して伝えたいことはあるかな?」
「はい。まず、私の教師なのですから王女という呼び方は少々違和感を感じます。なので、シエラとそう呼んでください。立場上は王女ということになっていますが、同じこの学園の生徒として、また、これから高みを目指す同士として関わって頂けたら嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします」
豊かに実った胸を張り、堂々たる言葉を教室内に響き渡らせたシエラに対し周囲の生徒は何かに賞賛を送るように静寂の中、拍手が広がった。
——え?え、え、え、え…………え?
なんで皆普通にこの衝撃的な事実スラーっと受け入れて、拍手してるの!?
周りのとんでもない順応性能に驚愕せざるを得ない。ていうか、昨日ばったり会って会話をしたのが王女だったってこと!?
ふと前の席を見るとユメルでさえ拍手をしている。どうやら俺が圧倒的に無知なだけらしいが、それにしたって一国の王女がこの学園に通うというのは明らかに不自然じゃないか!?
「知っての通り、今までの歴史をなぞっても、エルフの王女が妖精剣志望として、こういった妖精剣士を輩出するのを目的とした学園に通ったことはなかった」
俺が俯瞰的に抱いていた疑問を、じりじりとすり合わせてくれるファルネスさん。
「つまり、歴史が変わりつつあるということだ。もちろん、王族の中にもこの新たな試みに否定的な方々はいる。そんな中、この学園——そして、私のクラスへと足を踏み入れてくれたシエラさんにまず感謝の意を」
ファルネスさんは自身の右手を心臓の部分にかざしお辞儀する。そして、生徒達の方へと向きを変え、顔をあげる。その面持ちは真剣そのものであり威圧感すら感じた。
「この場に居合わせている各々に私は問おう。救いを求めれば形の見えない誰かが助けてくれるのか?行動を起こさずとも勝手にこの世界が変わっていくのか?……私は、そう思わない。自らの未来を決定するのは誰でもない自分であり、選択した結果の責任も後悔も背負うのはいつだって自分だ」
この場にいる誰もが、彼の美しく澄んだ瞳から目が離せない。話している内容が、なんの抵抗も摩擦もなく頭に浸透し、意識は語り手へと引き寄せられる。
「悲劇と後悔、苦しみの時代を終わらせよう。長々と喋ったけど、総括すると君達全員が英雄となる資格を持ち合わせているという自覚を持って学園生活に臨むように、とういうことだ」
俺とユメルが見てきた、ミラさんと騒いで悪態を突き合ってるところからは想像もできない、真剣で覚悟が全面的に表れているファルネスさんの口調。心の底から、この人は紛れもなく魔族を滅ぼさんとする妖精剣士《シェダハ》なんだと痛感した。
しんみりとした空気になった教室を眺めたファルネスさんは、俺が知っている陽気な笑顔に戻り、
「色々と大変だと思うけど、私とミラ含めたこの学園の教師は君達の味方だから遠慮なく頼るように!あーあと、とりあえず明日はちょっとした事情で授業がないから、各々好きな休日を過ごす!解散!」
ファルネスさんが意気揚々と教室を出て行こうとした時、ミラさんは慌てて襟の部分を掴み引き戻す。
「ちょっと、ファルネス!あなた、一番大事なこと伝え忘れてるわよ?」
「一番大事なこと……?あー!あれか!」
何やら耳打ちで要件を伝え、それを聞いたファルネスさんは感嘆の声を漏らしながら頭を小刻みに上下に振った。
「ごめんごめん、一つ伝え忘れてた。このことって外部に漏洩するの禁止だから、皆は初めて知るだろうけど……」
ファルネスさんは声音一つ変えず、いつも通りのサッパリとした表情で悠々と告げる。
「一ヶ月以内にヒューマンとエルフで契約になれなかった生徒は、全員平等に退学だから!そのつもりで!」
金髪の名前をシエラと言った彼女は、ムッとした表情を浮かべながら怒声を飛ばしてはいるが、本人の意思とは関係なく美しすぎるが故の愛嬌が感じ取れてしまう。
周りの視線やざわつきが一層大きくなったが、今はそれどころではない────
「…………リオ・ラミリア君」
俺の興奮とは裏腹に、ひどく冷め切った声音でこめかみにシワを浮かび上がらせる女性が一人。
「え、えっと……これは、その……」
冷水を頭からぶっ掛けられたかのように、サーッと引いていく血の気。
金髪の妖精に釘付けだった俺の視線を、恐る恐る声が聞こえた少し横の方へと移動させた。
「ひッ!」
そこには、口元は微笑みながらも目元が全く笑っていないミラさんが、俺に対し真っ直ぐに焦点を合わせているのが確認できる。
「さっき……言ったばかりよね?確かに、あなた方の年齢は『反抗期』っていう時期に入っているのも理解しているつもりだし、成長の過程として当たり前だとは思いますが……時と場合を弁えましょうね?それにそもそも……」
ミラさんは、人差し指をピンッと立ててつらつらと話を始めた。そんなミラさんの話を聞きながらもう一度ゆっくりと座った。
なおも言葉の羅列が止まらないミラさんの頬を指でつまみ、それ以上続けなくさせたファルネスさんは呆れながら、
「ミラの小言を聞いてると日が暮れちゃいそうだから話を進めるけど、私に任された異例の生徒は恐らく皆んなも知っているであろうお方。現妖精の国の王政を動かしているアレサンドル家第二王女、シエラ・アレサンドル・イザベル王女だ。王女、この場で何か特筆して伝えたいことはあるかな?」
「はい。まず、私の教師なのですから王女という呼び方は少々違和感を感じます。なので、シエラとそう呼んでください。立場上は王女ということになっていますが、同じこの学園の生徒として、また、これから高みを目指す同士として関わって頂けたら嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします」
豊かに実った胸を張り、堂々たる言葉を教室内に響き渡らせたシエラに対し周囲の生徒は何かに賞賛を送るように静寂の中、拍手が広がった。
——え?え、え、え、え…………え?
なんで皆普通にこの衝撃的な事実スラーっと受け入れて、拍手してるの!?
周りのとんでもない順応性能に驚愕せざるを得ない。ていうか、昨日ばったり会って会話をしたのが王女だったってこと!?
ふと前の席を見るとユメルでさえ拍手をしている。どうやら俺が圧倒的に無知なだけらしいが、それにしたって一国の王女がこの学園に通うというのは明らかに不自然じゃないか!?
「知っての通り、今までの歴史をなぞっても、エルフの王女が妖精剣志望として、こういった妖精剣士を輩出するのを目的とした学園に通ったことはなかった」
俺が俯瞰的に抱いていた疑問を、じりじりとすり合わせてくれるファルネスさん。
「つまり、歴史が変わりつつあるということだ。もちろん、王族の中にもこの新たな試みに否定的な方々はいる。そんな中、この学園——そして、私のクラスへと足を踏み入れてくれたシエラさんにまず感謝の意を」
ファルネスさんは自身の右手を心臓の部分にかざしお辞儀する。そして、生徒達の方へと向きを変え、顔をあげる。その面持ちは真剣そのものであり威圧感すら感じた。
「この場に居合わせている各々に私は問おう。救いを求めれば形の見えない誰かが助けてくれるのか?行動を起こさずとも勝手にこの世界が変わっていくのか?……私は、そう思わない。自らの未来を決定するのは誰でもない自分であり、選択した結果の責任も後悔も背負うのはいつだって自分だ」
この場にいる誰もが、彼の美しく澄んだ瞳から目が離せない。話している内容が、なんの抵抗も摩擦もなく頭に浸透し、意識は語り手へと引き寄せられる。
「悲劇と後悔、苦しみの時代を終わらせよう。長々と喋ったけど、総括すると君達全員が英雄となる資格を持ち合わせているという自覚を持って学園生活に臨むように、とういうことだ」
俺とユメルが見てきた、ミラさんと騒いで悪態を突き合ってるところからは想像もできない、真剣で覚悟が全面的に表れているファルネスさんの口調。心の底から、この人は紛れもなく魔族を滅ぼさんとする妖精剣士《シェダハ》なんだと痛感した。
しんみりとした空気になった教室を眺めたファルネスさんは、俺が知っている陽気な笑顔に戻り、
「色々と大変だと思うけど、私とミラ含めたこの学園の教師は君達の味方だから遠慮なく頼るように!あーあと、とりあえず明日はちょっとした事情で授業がないから、各々好きな休日を過ごす!解散!」
ファルネスさんが意気揚々と教室を出て行こうとした時、ミラさんは慌てて襟の部分を掴み引き戻す。
「ちょっと、ファルネス!あなた、一番大事なこと伝え忘れてるわよ?」
「一番大事なこと……?あー!あれか!」
何やら耳打ちで要件を伝え、それを聞いたファルネスさんは感嘆の声を漏らしながら頭を小刻みに上下に振った。
「ごめんごめん、一つ伝え忘れてた。このことって外部に漏洩するの禁止だから、皆は初めて知るだろうけど……」
ファルネスさんは声音一つ変えず、いつも通りのサッパリとした表情で悠々と告げる。
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