12 / 17
第1章
第11話 理解者であり好敵手。故に親友
しおりを挟む
名門フィレニア学園の華々しい入学式から一夜明け朝日が昇った今日。ミラさんからお詫びにと貰った不気味な人形しか置いていない質素な一人部屋の自室にいる俺は、床に座り腕を組みながら横揺れしていた。
「はぁ……」
ここ何日かで溜息をつく量が格段に増えた気がする。
加えて今はずっと独り言のオンパレード。
「一ヶ月でエルフと契約って……俺生まれてからここに来るまでの間、一度だって話したことなかったのに……」
昨日突如として宣言された『一ヶ月以内に人間と妖精で契約になれなければ退学』という事実に、どうしても動揺の色が出てしまう。
そもそも、妖精剣士という役職自体が人間と妖精が手を取り合ってこそ成り立つものだというのは周知の事実だが、そこに至るまでには契約による魔術的契約が必須となる。ユメルから聞いた話だが、その魔術的契約はとても神聖なもので契約を交わした二人は生きるも死ぬも契約が続いている以上は共にすることとなるため、とても敷居が高いものだとかなんとか。
妖精騎士を育成・輩出することを目的としている学園であるがために、そもそものカリキュラムが契約になっている前提というのに理解はできるが、そんな重大な決断をたったの一ヶ月は中々に酷であり普通にきつい。
でもユメルのやつ、『そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ!契約を交わしていない妖精紋には性格的、能力的に相性の良い人間と妖精が近くに位置している時、相互で反応が起きるっていう科学的には証明できない神秘の力が働くらしいから!運悪くその巡り合わせから外れて全く見つけられない人もいるらしいけど……まぁ、大丈夫っしょ!』て言ってたけども……。
「その巡り合わせっていう枠組みから自分が外れてるかもしれない心配は、あいつには無いのか……?」
こういう時あいつのタフさというか、能天気さはちょっと羨ましい。
ただ、ファルネスさんから衝撃の事実を伝えられた時生徒の間でもそこまで震撼していなかったというか、特に気に留めていなかったように見受けられたし、俺が心配しすぎているだけなのだろうか。
誰へともなく一人で唸りながらボソボソ呟いていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。
「はーい」
腰を上げ部屋に訪ねてきた人物を確認すべく、扉を開ける。
そこには、朝の掃除から戻ったばかりのユメルが立っていた。
「あ!すまん!ゴミ捨て手伝いに行くって言ったの、考え事してたら夢中になって完全にスッポカしてた……」
「あーいや、それは別に良いんだけど、唸り声と独り言が聞こえて。顔色も悪いし大丈夫?」
「外の通路に聞こえる声量でブツブツ言ってたのか俺……大丈夫だよ、本当にちょっとした考え事してただけだから」
「本当にちょっとした考え事で、そんなに顔色悪くしながら独り言呟くかな?」
「うっ……いや、たった今俺が心配性という結論に至ったからっていう意味の大丈夫であって……」
「あー、何となく察した。まぁ気にするのも分かるけどさ、せっかくの休日なんだからそういうことばっかり考えてたら気が滅入っちゃうよ?」
「ごもっともで……」
「僕は用事があるから外出するけど、リオもここで引きこもってないでどっか出かけた方が良いと思うよ?」
「出かけるって言ったてさ、来たばっかでこの都市について全然知らないし……学園の校舎は出入り禁止だし……」
「うーん、そうだなぁ……」
ユメルは顎に人差し指を置き唸りながら熟考し始めた。そんなユメルを見て、改めて気の遣える優しい友人だなと、そう感じさせられる。
こいつは昔からこういうやつなのだ。他人のことなのに必死になって、まるで自身の問題事のように親身になる。本人はお節介がすぎると言うが、実際俺はそんな所に何度も救われた経験があるし大きな長所だと思う。
「あ!そういえば、リオ温泉に入るの好きだったよね?」
心がほっこりとしながら物思いに耽っていると、勢い良く顔を上げたユメル。
「うん、温泉入るの好きだけど……それがどうかした?」
「寮母さんから聞いたんだけど、イリグウェナから馬車で北に行くと、山中にネディアっていう小さい街があるんだって。そこには知る人ぞ知る名湯、女神の湯っていうのがあるらしくて、何でも入ったら身体的な疲労はもちろん、心の病も治ったとか」
「それは正直めちゃくちゃ興味あるけど……一つ。俺は心の病ではない」
「まぁまぁ、それは例えの話だって。せっかくだし行ってみなよ!そんで気持ち良かったら次は僕も連れてって!」
「確かにその温泉気にはなるな。よし!その提案にのって、ネディアってとこの女神の湯を堪能して来ることにしよう!」
「久々にゆっくりしてくると良いよー」
そうと決まれば早速支度して出かけよう。確かに、孤児院にいた頃は良く近くの湧き温泉に浸かりに行ってたが、この学園に入学すると決まってからバタバタしすぎて全く入っていなかった。
「ユメル……その、ありがとうな。それと……心配かけてごめん」
ユメルははにかみながら笑みを浮かべ、
「何だよリオ。柄にもなくしおらしくなっちゃて。その代わり、学園始まって可愛いエルフと仲良くなったら僕にちゃんと紹介してね!」
「分かった分かった。うん……俺がエルフと話せたら……ね」
「だぁーもう!ほら早く行った行った!」
「はぁ……」
ここ何日かで溜息をつく量が格段に増えた気がする。
加えて今はずっと独り言のオンパレード。
「一ヶ月でエルフと契約って……俺生まれてからここに来るまでの間、一度だって話したことなかったのに……」
昨日突如として宣言された『一ヶ月以内に人間と妖精で契約になれなければ退学』という事実に、どうしても動揺の色が出てしまう。
そもそも、妖精剣士という役職自体が人間と妖精が手を取り合ってこそ成り立つものだというのは周知の事実だが、そこに至るまでには契約による魔術的契約が必須となる。ユメルから聞いた話だが、その魔術的契約はとても神聖なもので契約を交わした二人は生きるも死ぬも契約が続いている以上は共にすることとなるため、とても敷居が高いものだとかなんとか。
妖精騎士を育成・輩出することを目的としている学園であるがために、そもそものカリキュラムが契約になっている前提というのに理解はできるが、そんな重大な決断をたったの一ヶ月は中々に酷であり普通にきつい。
でもユメルのやつ、『そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ!契約を交わしていない妖精紋には性格的、能力的に相性の良い人間と妖精が近くに位置している時、相互で反応が起きるっていう科学的には証明できない神秘の力が働くらしいから!運悪くその巡り合わせから外れて全く見つけられない人もいるらしいけど……まぁ、大丈夫っしょ!』て言ってたけども……。
「その巡り合わせっていう枠組みから自分が外れてるかもしれない心配は、あいつには無いのか……?」
こういう時あいつのタフさというか、能天気さはちょっと羨ましい。
ただ、ファルネスさんから衝撃の事実を伝えられた時生徒の間でもそこまで震撼していなかったというか、特に気に留めていなかったように見受けられたし、俺が心配しすぎているだけなのだろうか。
誰へともなく一人で唸りながらボソボソ呟いていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。
「はーい」
腰を上げ部屋に訪ねてきた人物を確認すべく、扉を開ける。
そこには、朝の掃除から戻ったばかりのユメルが立っていた。
「あ!すまん!ゴミ捨て手伝いに行くって言ったの、考え事してたら夢中になって完全にスッポカしてた……」
「あーいや、それは別に良いんだけど、唸り声と独り言が聞こえて。顔色も悪いし大丈夫?」
「外の通路に聞こえる声量でブツブツ言ってたのか俺……大丈夫だよ、本当にちょっとした考え事してただけだから」
「本当にちょっとした考え事で、そんなに顔色悪くしながら独り言呟くかな?」
「うっ……いや、たった今俺が心配性という結論に至ったからっていう意味の大丈夫であって……」
「あー、何となく察した。まぁ気にするのも分かるけどさ、せっかくの休日なんだからそういうことばっかり考えてたら気が滅入っちゃうよ?」
「ごもっともで……」
「僕は用事があるから外出するけど、リオもここで引きこもってないでどっか出かけた方が良いと思うよ?」
「出かけるって言ったてさ、来たばっかでこの都市について全然知らないし……学園の校舎は出入り禁止だし……」
「うーん、そうだなぁ……」
ユメルは顎に人差し指を置き唸りながら熟考し始めた。そんなユメルを見て、改めて気の遣える優しい友人だなと、そう感じさせられる。
こいつは昔からこういうやつなのだ。他人のことなのに必死になって、まるで自身の問題事のように親身になる。本人はお節介がすぎると言うが、実際俺はそんな所に何度も救われた経験があるし大きな長所だと思う。
「あ!そういえば、リオ温泉に入るの好きだったよね?」
心がほっこりとしながら物思いに耽っていると、勢い良く顔を上げたユメル。
「うん、温泉入るの好きだけど……それがどうかした?」
「寮母さんから聞いたんだけど、イリグウェナから馬車で北に行くと、山中にネディアっていう小さい街があるんだって。そこには知る人ぞ知る名湯、女神の湯っていうのがあるらしくて、何でも入ったら身体的な疲労はもちろん、心の病も治ったとか」
「それは正直めちゃくちゃ興味あるけど……一つ。俺は心の病ではない」
「まぁまぁ、それは例えの話だって。せっかくだし行ってみなよ!そんで気持ち良かったら次は僕も連れてって!」
「確かにその温泉気にはなるな。よし!その提案にのって、ネディアってとこの女神の湯を堪能して来ることにしよう!」
「久々にゆっくりしてくると良いよー」
そうと決まれば早速支度して出かけよう。確かに、孤児院にいた頃は良く近くの湧き温泉に浸かりに行ってたが、この学園に入学すると決まってからバタバタしすぎて全く入っていなかった。
「ユメル……その、ありがとうな。それと……心配かけてごめん」
ユメルははにかみながら笑みを浮かべ、
「何だよリオ。柄にもなくしおらしくなっちゃて。その代わり、学園始まって可愛いエルフと仲良くなったら僕にちゃんと紹介してね!」
「分かった分かった。うん……俺がエルフと話せたら……ね」
「だぁーもう!ほら早く行った行った!」
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
異世界に転生!? だけどお気楽に暮らします。
辰巳 蓮
ファンタジー
「転生して好きに暮らしてください。ただ、不便なところをちょっとだけ、改善していってください」
とゆうことで、多少の便宜を図ってもらった「ナッキート」が転生したのは、剣と魔法の世界でした。
すいません。年表書いてたら分かりにくいところがあったので、ちょっと加えたところがあります。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる
初
ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。
レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。
これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ゲーム転生『魔女♡勇者』〜12人の魔女が世界を統べるファンタジーゲーム世界に転生し、ゲーム知識と最強職『勇者』で魔女ハーレムを目指す〜
空色凪
ファンタジー
ゲームでは攻略対象は一人。現実の今ならハーレム目指せるのでは?
◇
その17歳の少年は2050年の夏休みに、ゲームのし過ぎで食べるのを忘れて餓死した。否、それは釈迦の苦行そのものだった。真理を悟った彼は世界を創った。とある理由で12個も買って、その全てをクリアした程に大好きなファンタジーゲーム『魔女♡勇者』の世界を創ったのだ。彼はその世界にただ一人『勇者』の天職を有して転生する。
『魔女♡勇者』の世界には12人の魔女(理)と呼ばれる存在がいて、世界を統治している。ゲームでは、仕様で一人しか攻略することができない。
だが、ここは現実世界。機械の中ではない。
その17歳の少年アデルはこう考えた。
「なら、12人の魔女全クリルート目指すしかないだろ」
こうしてゲーム知識で無双しつつ、アデルは魔女ハーレムを作る旅に出る。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる