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刹那の過去
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「元の世界での話?」
独楽大陸行きの船に乗ると、明日夢が元の世界での話が聞きたいと言ってきた。
「いいけど…余り面白い話じゃないよ…」
そう言うと刹那は元の世界での出来事を話始めた。
「ふぁ…ねむ…」
刹那はあくびをする。
どうやら寝起きのようだ。
学校に行く支度を済ませると、急いで学校へと向かう。
「おはよう」
クラスメイトに声をかけるも無視されてしまった。
どうやらこのクラスで刹那は浮いている存在の様だ。
見境なく他人を傷付けてしまう自分の能力に両親からは気味悪がられ、クラスメイトからは無視されるという扱いだ。
この世界に刹那の居場所はなかった。
強いて言うなら自室くらいだ。
「五ヶ瀬川さん、掃除当番代わってくれる?」
「え、あ、うん…」
刹那はこくり、と頷く。
話しかけられてもパシリ扱いされるだけだ。
「ありがとー!美咲、アイス食べに行こ!」
「じゃあ五ヶ瀬川さん、後はよろしく~!」
掃除当番のはずだった2人は遊びに行ってしまった。
刹那が1人で掃除していると、1人の男子生徒が教室にやってきた。
「五ヶ瀬川、お前今日掃除当番じゃないだろ。」
そう言って掃除を手伝う男子生徒。
「王生君だって掃除当番じゃない筈なのに手伝ってくれるの?」
「まぁな。暇つぶしには丁度いいしな」
王生と呼ばれた男子生徒はそう告げる。
しばらく無言の空間が続いた。
先に口を開いたのは王生の方だ。
「こんなもんで大丈夫だろ」
「手伝ってくれてありがとう…」
「別にお前のためにやったんじゃねぇよ」
仏頂面でそう答える王生。
掃除を終えると、担任に報告を済ませ帰路に着く刹那と王生。
家が近い2人は帰り道はほとんど一緒だった。
「なぁ、五ヶ瀬川」
「何?」
「お前は俺のことどう思ってる?」
「どうって…不器用だけど優しい人、かな…」
「そうか」
それだけ告げると無言で帰り道を歩く2人。
「じゃあまた明日ね」
「あぁ。」
そう言うと互いの家に帰って行った。
「王生君、なんで手伝ってくれたんだろう…」
そんな事を考えながらベッドでゴロゴロする刹那。
「気まぐれで手伝ってくれたのかな」
刹那はそう思う事にした。
一方王生は刹那の答えにモヤモヤしていた。
「明日こそ言え、俺…!」
そう、王生は刹那に好意を抱いているのだ。
その事を伝えられずにモヤモヤしているらしい。
明日言おう言おうと先延ばしにしてしまっているのだ。
「クソ、俺って馬鹿だな…」
ベッドに横になりながらそう呟く王生なのであった。
次の日、学校には刹那の姿は無かった。
風邪でも引いたのだろうか。
王生は少し心配そうにしていたが、明日来るだろうと前向きに考えることにした。
その次の日も刹那は学校を休んでいた。
今まで皆勤賞であった刹那が2日続けて居ないのは珍しかった。
流石に違和感を覚えた王生は刹那の家にやってきた。
インターホンを鳴らしても出てくる気配はない。
「鍵、空いてる…」
お邪魔します、と一声かけてあがる王生。
刹那は一人暮らしをしている為、両親の姿は無い。
「五ヶ瀬川、いるか?」
声をかけても返事は無い。
王生は刹那の部屋に向かう。
軽くノックをすると刹那の部屋に入る。
そこに刹那の姿はなく、もぬけの殻であった。
「どうなってんだよ…!」
あの時、好意を伝えられたなら。
こんな事にはならなかったかもしれないのに。
そう考える王生。
その瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
こうして刹那はこの世界から姿を消した。
もう戻ることは無いだろう世界に。
「…こんなところかな…」
「王生ってやつ可哀想だな…絶対刹那の事好きだっただろうに…」
「好き?王生君が?私を?」
「間違いない。ソイツはお前の事好きだったんだよ」
予想外のことで驚く刹那。
「…刹那は元の世界に戻りたいか?」
そう明日夢が問いかける。
「…別に。未練とか無かったし…」
「そうか…」
気まずい空気が流れる。
刹那の過去がわかったはいいが、恵まれない王生に同情を抱く明日夢なのであった。
独楽大陸から帰ると、刹那は布団に入って元の世界での出来事を思い出していた。
自分を嫌う両親やクラスメイト。
それらにもう会う事はないと思うと気が楽になる刹那なのであった。
独楽大陸行きの船に乗ると、明日夢が元の世界での話が聞きたいと言ってきた。
「いいけど…余り面白い話じゃないよ…」
そう言うと刹那は元の世界での出来事を話始めた。
「ふぁ…ねむ…」
刹那はあくびをする。
どうやら寝起きのようだ。
学校に行く支度を済ませると、急いで学校へと向かう。
「おはよう」
クラスメイトに声をかけるも無視されてしまった。
どうやらこのクラスで刹那は浮いている存在の様だ。
見境なく他人を傷付けてしまう自分の能力に両親からは気味悪がられ、クラスメイトからは無視されるという扱いだ。
この世界に刹那の居場所はなかった。
強いて言うなら自室くらいだ。
「五ヶ瀬川さん、掃除当番代わってくれる?」
「え、あ、うん…」
刹那はこくり、と頷く。
話しかけられてもパシリ扱いされるだけだ。
「ありがとー!美咲、アイス食べに行こ!」
「じゃあ五ヶ瀬川さん、後はよろしく~!」
掃除当番のはずだった2人は遊びに行ってしまった。
刹那が1人で掃除していると、1人の男子生徒が教室にやってきた。
「五ヶ瀬川、お前今日掃除当番じゃないだろ。」
そう言って掃除を手伝う男子生徒。
「王生君だって掃除当番じゃない筈なのに手伝ってくれるの?」
「まぁな。暇つぶしには丁度いいしな」
王生と呼ばれた男子生徒はそう告げる。
しばらく無言の空間が続いた。
先に口を開いたのは王生の方だ。
「こんなもんで大丈夫だろ」
「手伝ってくれてありがとう…」
「別にお前のためにやったんじゃねぇよ」
仏頂面でそう答える王生。
掃除を終えると、担任に報告を済ませ帰路に着く刹那と王生。
家が近い2人は帰り道はほとんど一緒だった。
「なぁ、五ヶ瀬川」
「何?」
「お前は俺のことどう思ってる?」
「どうって…不器用だけど優しい人、かな…」
「そうか」
それだけ告げると無言で帰り道を歩く2人。
「じゃあまた明日ね」
「あぁ。」
そう言うと互いの家に帰って行った。
「王生君、なんで手伝ってくれたんだろう…」
そんな事を考えながらベッドでゴロゴロする刹那。
「気まぐれで手伝ってくれたのかな」
刹那はそう思う事にした。
一方王生は刹那の答えにモヤモヤしていた。
「明日こそ言え、俺…!」
そう、王生は刹那に好意を抱いているのだ。
その事を伝えられずにモヤモヤしているらしい。
明日言おう言おうと先延ばしにしてしまっているのだ。
「クソ、俺って馬鹿だな…」
ベッドに横になりながらそう呟く王生なのであった。
次の日、学校には刹那の姿は無かった。
風邪でも引いたのだろうか。
王生は少し心配そうにしていたが、明日来るだろうと前向きに考えることにした。
その次の日も刹那は学校を休んでいた。
今まで皆勤賞であった刹那が2日続けて居ないのは珍しかった。
流石に違和感を覚えた王生は刹那の家にやってきた。
インターホンを鳴らしても出てくる気配はない。
「鍵、空いてる…」
お邪魔します、と一声かけてあがる王生。
刹那は一人暮らしをしている為、両親の姿は無い。
「五ヶ瀬川、いるか?」
声をかけても返事は無い。
王生は刹那の部屋に向かう。
軽くノックをすると刹那の部屋に入る。
そこに刹那の姿はなく、もぬけの殻であった。
「どうなってんだよ…!」
あの時、好意を伝えられたなら。
こんな事にはならなかったかもしれないのに。
そう考える王生。
その瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
こうして刹那はこの世界から姿を消した。
もう戻ることは無いだろう世界に。
「…こんなところかな…」
「王生ってやつ可哀想だな…絶対刹那の事好きだっただろうに…」
「好き?王生君が?私を?」
「間違いない。ソイツはお前の事好きだったんだよ」
予想外のことで驚く刹那。
「…刹那は元の世界に戻りたいか?」
そう明日夢が問いかける。
「…別に。未練とか無かったし…」
「そうか…」
気まずい空気が流れる。
刹那の過去がわかったはいいが、恵まれない王生に同情を抱く明日夢なのであった。
独楽大陸から帰ると、刹那は布団に入って元の世界での出来事を思い出していた。
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それらにもう会う事はないと思うと気が楽になる刹那なのであった。
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