レジナレス・ワールド

式村比呂

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1巻

1-1

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   1


「う……ん……」

 はるか地平線が春の陽気にかすんでいる。そこにさわやかな風が渡っていく。
 そよぐ風が美しい新緑の草を揺らし、シュウの頬をくすぐった。
 気持ちよさとむずがゆさに目覚めると、隣から同じような女性の声が聞こえ、田野中修たのなかしゅうの意識は、一気に覚醒する。
 寝ころんだまま横を見ると、そこにはよく見知った可愛い幼なじみの顔があった。

「あれ? サラ?」
「ん……シュウ君?」

 二人は仰向けの姿勢で顔だけを動かしてお互いの姿を確認すると、それぞれむくっと上半身を起こした。
 サラの目が、シュウの顔からすっと下半身の方に流れる。その視線に応じてシュウも、自分の下半身に。

「きゃっ!」

 サラが思わず悲鳴を上げる。それはほんの小さな悲鳴だったが、シュウの頭を一瞬で混乱させるのに充分だった。

「なっ…! えっ! えっ?」

 何一つ身に着けていない生まれたままの姿。目覚めの瞬間の、男性特有のあの状態になっていなかったのは幸か不幸か?
 シュウは飛び起き、いわゆる体育座りで股間を隠して、両手で出来るだけいろんな物を見えないようにガードしてみた。
 そして、固まっているサラを見る。
 顔から、胸、そして……。
 青ざめていたシュウの顔がみるみる赤く染まっていく。その変化でサラが自分の姿に気付く。

「あ……ご、ごめっ」
「いやっ!」

 とっさに左手で胸を隠そうとするサラ。だが、その手がかえってサラの大きな胸の形を複雑に変えることになってしまい、むしろ男にとっては目に毒な事態だった。

『さて』

 そこで突然、ほぼパニック状態と言っていい二人の精神に冷や水を浴びせるほどに冷静な、だが威厳に満ちた男性の声が、二人の正面から発せられる。するとこの、不可解であり得ない状況に変化が生まれた。

『田野中修、サラ・ヨハンセン・富永とみなが。落ち着いたかね?』

 二人の目の前に、青白く光る直径五センチくらいのガラス玉のようなものが浮かんでいる。
 そして、どうやらそれがいるらしい。ある程度年配の男性らしき声の響きだった。

『まず、二人に詫びねばならぬことがある』

 存在するだけで威圧感を与えるその物体を前に、二人はしばし固まっていたが、詫びの言葉がきっかけになって、ようやく硬直から解き放たれる。

『――君たちは、今ここで目覚める直前、何をしていたか覚えているだろうか?』
「……ゲームをしてた、と思います」

 とまどいながらシュウは答えた。目を合わすと、サラは呟くように言う。

「『東の森』に飛んでいるところでした」
『そうだ。二人とも、感覚的にはつい今しがたまで、自分の部屋でゲームをしていたと感じておるであろう?』

 二人は小さくうなずく。

『君たちは、意識を失った瞬間に事故にあった――我々のミスで』

 要を得ない説明だったが、総合すると、シュウとサラはなんらかの理由でこの世界に『存在』することになってしまったようだ。
 その理由も意味も全くわからない。何を聞いてもこの目の前の玉は詫びるばかりで、事に至った過程を語ろうとしない。
 ただ確かに、この世界は二人がプレイしていたゲーム『レジナレス・ワールド』に違いなかった。

「私たちの装備はどうなったんですか?」

 サラが尋ねる。さすがに全く意味もわからないうえ、丸裸にされてこの世界に放り出されれば、一晩で命はないだろう。

『ああ、すまない。君たちの荷物は、概念上の――ステータスと言ったか? その中にすべて収められている』

 二人は、それまでプレイでやっていたように念じて、ステータス画面を開いてみる――あった。
 だが、出てきたのはアイテムガジェットのみで、パラメータや装備画面は見あたらない。

「これ、どうやって装備するんですか?」

 シュウは尋ねてみた。

『取り出して、自分たちで着用してくれ』
「へえ、リアルですねえ」

 シュウはアイテムを選択し、ゲームと同じ要領で取り出してみる。
 すると目の前に、選択した装備――サムライのおりばかまが現れた。
 ふわりと浮かび上がり、手に取った瞬間、ずしりと重さが加わる。なかなか便利なものだ。
 同じように草履、刀と、アクセサリである敏捷性DEX補正のリングを選び、早速着替えてみた。
 何となく、見てはいけないような気がして反らしていた視線をサラに向け、ちらっと盗み見る。
 ほっとするような、そして残念なようなところだが、サラはもう美しい白銀のプレートメイルにブーツを身に着け、二振りのレイピアを腰にいていた。
 シュウと視線が合うと、ちょっと照れたようにはにかんだ。
 それを見て、また真っ赤になってうつむくシュウ。

「ところで、ステータスがきちんと機能していないようですけど……」

 サラが光の玉に尋ねる。

『そうだ。残念ながらこの世界は、厳密にはゲームではない』

 光の玉はとんでもないことを言い出した。

『君たちはこの世界で、今まで過ごしたように生きていけるだろう。だが――』

 そして、さらに衝撃的な事実を伝える。この世界は二人にとって現実そのもの、紛れもない「リアル」であると。

『君たちの死は、文字通り命のしゅうえんだ。君たちが何かの命を奪えば、それらもまた死を迎えるであろう。これはゲームではなく、復活ポイントなどもない』
「そ、そんな!」
『その事実を知っているのは、この世界で君たちのみだ。我々はこの世界を守り、維持するが、手出しはしない』
「冗談じゃない! あんたらのミスだろ。僕たちが何したってんだよ!」
『そうだ、我々のミスだ。そして、我々に出来るのはこれがすべてだ。後は君たちに任せよう』
「お、おいっ!」

 光の玉が徐々に薄れていく。

『時間が来た。君たちの行く末に、幸多からんことを……』

 光の玉が唐突に消えた後、二人はしばし呆然と草原に座り込んでいた。
 全く意味がわからない。
 ほんの数分前までプレイ中だった二人は、目の前が暗くなったと感じた瞬間、すでに全裸でここに横たわっていた。少なくとも、そうとしか言いようがない。
 シュウは再度ゲームシステムの確認をしてみるが、やはり、ステータスにはアイテムガジェットしか存在しない。
 アイテムを確認していくと、なぜだか一番下に、金貨や銀貨が入っている。
 これもあり得なかった。所持金は普通、個人ステータスの上部に表示されているはずだ。
 さらにその個人ステータスそのものが存在しない。

「……システム」

 環境設定やログアウトを管理するガジェットを呼び出そうとした。
 しかし、全く無反応だ。

「サラ、どう?」

 シュウはサラにも同じことをやってもらってみた。
 だがやはり、お互い何をやっても、開くのはアイテムガジェットだけだった。
 後々、このアイテムガジェットとその中身だけでも、この世界では大変な恩恵になると気付くのだが、まだ混乱の真っ只中にいる二人にとっては、それどころではなかった。
 一通りのことを試し終えると、二人は再び草原に並んで腰掛け、呆然と空を眺めていた。


    ◇◆◇


 シュウとサラは同級生で、同じマンションに長年暮らす幼なじみだった。
 急な来日で日本語さえおぼつかなかったサラ。しかし「中学はシュウと同じ学校に通いたい」と頑張り、高競争率を誇る有名私学に帰国子女枠で入学し、晴れて彼の同窓となった。
 それから六年。
 二人は高校三年生になっていた。

「シュウ君」

 サラが、カバンを肩に担いで歩くシュウを後ろから呼び止めた。

「……おう」

 眠そうな目をちらっと後ろに向けて、シュウは気のない返事をする。
 一流モデルとして名の売れている姉と違い、サラの身長はシュウより低いくらいだった。
 やはり姉同様、日本と北欧のハーフの血が織りなす繊細な美しさが人目を奪うが、発育した胸と腰に比べ、身長が伸び悩んでいた。
 本人は相当悩んでいるようだったが、シュウに言わせると――本人には言ったこともないが――「ちょうどいいプロポーション」ということになる。
 サラの姉と歩く時、シュウは周囲の人たちから見て、自分が明らかにゲームで言うモブキャラになっているのがわかる。
 そんな意味でもサラと過ごすのは、彼女には失礼かと思うが等身大で、シュウにとっては心地よいのだった。
 サラは髪の色もブロンドと言うよりは明るい茶色で、瞳も日本人に近い鳶色とびいろだ。
 昔はサラから、よくそんな容姿の愚痴をこぼされたシュウだったが、この頃は聞かなくなった。
 そんな二人が今ハマっているのは、『レジナレス・ワールド』というVR‐MMOだ。
 VR‐MMO――二十一世紀中頃に急速に発展したヴァーチャル・リアリティ技術を応用した体感型仮想現実装置を使って、オンラインでプレイできるロール・プレイング・ゲームの一種。
 神経パルスを模倣することで、ある一定のレベルまで五感をだまし、プレイヤーによりリアルな娯楽を提供するそのゲームは、急速な普及によってコストが下がるとすぐに、かつてない規模の市場を形成していった。
 レジナレス・ワールドではイベント活躍者の報酬として、二つ名が与えられるシステムになっている。サービス開始から一年ほどになるが、まだ二つ名を持っているプレイヤーは二十人ほどしかいない。
 その栄誉あるプレイヤーのうちの二人が、シュウとサラだった。
 シュウの『黒竜殺し』は、名前の通り、黒竜討伐イベントでとどめを刺したプレイヤーの称号だ。
 シュウ個人の技量のみならず、討伐を成功させたチームの力が大きかった。
 サラの称号『舞姫』は、魔族襲来イベントで迎撃最多勝利を獲得した結果で、こちらもサラをカバーしたチームの総合力が背景にある。


「これであと四年は、シュウと付き合うチャンスがあるわね」

 シュウの期末試験の成績がよかったことで、サラはシュウと同じ学部にエスカレータ進学できそうだと盛り上がっていた。
 ある日それを聞きつけたクラスメイトが、一緒にトイレに来て言った。
 サラは微笑んで目を伏せる。

「あんたらを見てるとなかなかくっ付かなくてイライラしちゃうけど、人それぞれだしねえ」
「イライラはひどいな……」

 サラの表情が苦笑に変わる。
 まだ慌てたくない。もっとじっくり。サラは思う。
 十二歳で出会った頃のシュウは、どこか自分に対して、妹を護る兄のような立場にいたことをサラは感じていた。
 でもこの数年で、自分はただ護られる妹のポジションから、同級生の異性へと確実に変化してきたと思う。
 今年の夏休みは、もうちょっとだけ近付きたい。サラは期待している。

「全く、こんないい女が横にいるってのに、シュウはなんで焦りもしないのかしらね」

 ――きっと、家族ぐるみの付き合いが長すぎたせいだ。
 サラはいつもそう答えている。


 シュウとサラの二人は、学校から帰るとすぐに入浴を済ませ、夕食を取ってからVRマシンに潜り込んだ。
 夜七時。ログインを済ませると、すでにギルドメンバーは半分以上集まっていた。

「あれ?」

 シュウと主要メンバーがあいさつから雑談を始めている横で、サラはフードをかぶった見慣れないダークエルフに目を留めた。

「うちにあんな人、いたっけ?」

 横にいるシュウに話しかけ、視線を戻すと、すでにそのダークエルフの姿はなかった。

「誰?」
「……ううん、気のせいみたい」

 サラが首を傾げていると、他のメンバーが話しかけてくる。

「今日はお前らどうすんの?」
「久々だから、腕慣らしに森の方でちょっと狩ってきますよ」
「そうか。俺らは新クエの情報収集に行ってくる。二人で平気か?」
「はい」
「じゃ、また後でな」

 彼らのパーティが転移するのと同時に、シュウたち二人も本拠地である『始まりの街』レオナレルから、テレポートポイントを使って東部にある狩り場へと移動する。
 ギルドメンバーのテレポートが完了したと思った瞬間、強い衝撃が彼らを襲う。

「な……んだ?」

 システムシャットダウン。
 ギルドのメンバーたちはそれぞれの自宅で、VRマシンからイジェクトをされていた。
 数分遅れて、全プレイヤーの緊急イジェクトが行われた。
 オンラインだった全プレイヤーの一斉アクセスによって、公式ページは一時的にダウン。そのため、プレイヤーたちが、今起こったことを把握するのにかなりの時間を要した。
 ギルドメンバーたちは一斉に共有のチャットシステムにアクセスしたが、ついに最後まで、インしていたはずのシュウとサラは現れなかった。


    ◇◆◇


 風がひどく心地いい。
 ふと見上げると、薄い白い雲が、奇妙なほど早く流れていく。

「こんな状況じゃなかったら、本当に最高なんだけどな」

 シュウはそう呟きつつ、ちらっとサラを見る。
 サラは、ついに耐えかねて泣き始めていた。

「うっ……うぅっ、ふっ」

 訳のわからない不安。だがこの感覚は――少なくとも、五感に伝わってくるこの生々しい感触は、二人がここに放り出された事実を何より残酷に肯定している。
 ふとシュウは、先ほどの光の玉のように、サラまですっと消えてしまうような恐怖感と孤独感に襲われて、泣いているサラの頭を抱き寄せた。
 ほんの一瞬、驚いたようにシュウの顔を見上げたサラは、今度は自分の意志でもう一度シュウの胸に顔をうずめ、声を殺し、肩をふるわせて泣いた。


「――取り乱してごめん」

 サラの目はれ上がってひどいものだったが、しばらくするとだいぶ落ち着いたのか、えへっとした表情を作ると、シュウの体から身を離した。

「サラ、ちょっと歩いてみようか?」
「うん。状況もわからないし、出来たら街を探したいよね」

 お互い同じ懸念を抱いていたようで、ほっとする。
 もしここが本当にレジナレスの世界だとしたら、二人っきりでの野宿はどうしても避けたいところだ。
 立ち上がったシュウは、サラに手を伸ばす。
 自然な振る舞いでその手を取って、サラはまたはにかみながら、「シュウ君、気を遣ってくれてありがとう」と礼を言った。
 とりあえず二人はあたりを見渡す。

「シュウ君。ここ、見覚えある?」
「ううん、来たことはない気がする」

 なだらかな斜面になっている草原、太陽の位置から考えると、斜面は北から南に向かって下っていて、反対側には森があった。
 さすがに現状を把握していない段階で森に入るのは避けたいので、とりあえず下ってみようということになり、二人は歩き出す。
 今見えている地平線は、おそらく五キロメートルほど先だろう。あそこまで行くのに一時間くらいかかることになるか。シュウは大まかに計算した。
 どうも移動距離が長くなりそうだ。ならば、移動力補正のある靴を使った方がいいかもしれない。
 移動力が増加する靴はゲームでも人気のアイテムで、シュウもちゃんとアイテムガジェットにストックしているのだ。
 早速履き替えて歩き出す。最初は単に歩きやすくなっただけかと思ったのだが――。

「サラ、『ウィングブーツ』持ってる?」
「あるよ?」
「ちょっと履き替えてみて」

 サラにも履いてもらい、彼女の様子を窺う。

「わっ、これ効果あるね……」

 そうなのだ。どうやら、魔法効果エンチャントの装備品は、はっきりそれと体感できるほど効果があることがわかった。

「かなり楽になったよね」
「そうね。でもそうしたら、ネックレスとかピアスとかリングも、ちゃんと装備した方がよさそう」

 サラはそう漏らした後、ふと憂鬱そうに顔を曇らせる。
 そう遠くない未来に遭遇エンカウントするだろう魔物との戦いを思い、気が重くなっているのかもしれない。

「うん。ちょっと装備を見直そう」

 二人は立ち止まり、アイテムを確認することにした。
 二人の所持品の中で現時点で最適と思われるのは、ステータス異常回避の『魔防のアンクレット』、ゲーム内では防御力+10だった『護りのリング』。魔法抵抗のネックレスなども効果的だろうと思えた。
 シュウにはないがサラはピアス穴があるので、耳に魔力増強のピアスを着けた。腕には敏捷性DEXが上がる腕輪をはめる。
 また、武器防具のたぐいも見直す。
 シュウはクラスが『サムライ』だったためベスト装備だ。
 サラは戦闘時、主に『聖騎士ホーリー・ナイト』の重装備である両手剣を使用するので、レイピアをしまい、現時点で彼女が持つ最強の剣、ドラゴンスレイヤーを左腰にく。
 さらに炎属性のナイフを、右の尻あたりに邪魔にならないように下げた。
 ちなみに、シュウの装備する日本刀はレアアイテムではないが、炎属性+3が付与されている。脇差も風属性+3という贅沢なものだ。
 装備を調ととのえて、二人は改めて南を目指した。
 二時間ほど歩いただろうか、行く手に川が見えてきた。舗装こそされていないが道も発見できた。
 特に根拠はないが、シュウが「川上より川下の方が街の規模も大きそう」と言うと、サラも「なるほど」と妙に納得してうなずく。
 二人は川沿いの道を東へ、川下へ進むことにした。
 疲労はさほどでもないが、さすがに不飲不食のまずくわずで半日近く歩いているので、二人は次第に空腹を感じてくる。

「ポーションでも飲んでみようか?」
「飲む!」

 予想以上にひどい味がした回復薬を飲み干すと、二人してなんとも微妙な表情で顔を見合わせ、しばらく笑った。
 再び荒れた道を連れ立って歩いていると、遠くにぼんやり、人工物らしき姿が見え始めた。
 人の暮らしの気配を感じるというのは、どうしてこうも安心感があるのだろう。
 だが旅というのは、ほっとした頃、なぜだか悪いことが起こりやすい。
 村のほど近く、少し先に馬車が見えた時、その周囲にただごとではない気配を感じて、二人は駆け出した。
 二人の男が馬車の左右に分かれて、黒い何かと戦っている。
 御者らしき男は地面に倒れ、動かない。
 二人がほろをかけられた商人用の馬車から離れようとしないということは、おそらく誰かが乗っているのだろう。

「――ゴブリン!」

 一匹一匹の戦闘力はさほどでもないが、守る二人の男に対し、ゴブリンは四十匹ほどで攻めては引き、また攻める。
 数で押す波状攻撃に男たちは翻弄され、ひどく疲労しているように見えた。
 装備からすると傭兵か、冒険者か。
 一人一人はさほどなまくらには見えないが、とにかく数が多いうえ、御者をやられて逃げるに逃げられないらしい。
 シュウとサラはそれぞれの得物を抜いて斬りかかった。
 ウィングブーツの効果か、通常では考えられないほどあっという間に敵前にたどり着く。

「ハッ!」

 およそ普段の穏やかな物腰とはかけ離れた裂帛れっぱくの気合いを放ちながら、サラは両手大型剣のドラゴンスレイヤーを横薙ぎに一閃する。
 鈍く黒い色に光るそれは、一振りで四、五匹のゴブリンを両断し、激しい血しぶきを周囲に散らしていく。
 シュウも、素早い身のこなしから抜き身の日本刀を縦横に振り抜き、スキル《ファスト・コンビネーション》を発動。あっという間に七匹のゴブリンを斬り伏せる。


 思わぬ援軍に一瞬あっけにとられた警護の男たちも、すぐに状況を理解すると、ゴブリンに打って出た。
 ほんの一瞬で攻守が逆転したのを見て、あっけないほど潔くゴブリンたちは逃走を始めた。
 生まれて初めて体験する血と臓物のひどい悪臭の中、シュウとサラは、こみ上げる吐き気をこらえ真っ青な顔をしながらも、襲われていた男たちの元へ戻った。
 黒いちのシュウはまだしも、白銀のプレートアーマーに白い肌をしたサラは、返り血を浴びてすさまじい外見になっている。
 その様子には、助けられた男たちでさえ言葉を失い、ややもすると怯えているようだった。


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