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7. 朱色⑦
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どれくらいの時間を二人で過ごしていたのか。
ダンスを踊り、会場から抜け出して、二人で語らい、そしてまた会場に戻ってダンスをした。
国民の大多数が平民なのだから、平民の心を掴むような政治をしなくてはならない。
穀物の値段が上がっているのに、税は変わらないから、税を収入に応じて変動してはどうか、そんなことを話したら、王子は興味深そうにシンデレラを見つめ、頷くので、シンデレラは気持ち良くなって、また熱弁してしまう。
二人がホールに戻ってダンスをしていると、ボーンと、鐘が鳴り、シンデレラは何かに怯えるように、肩をビクっと震わせた。
「あ」
小さな声が漏れ出て、重ねていた王子の手を祓うと、シンデレラはすぐに走ってホールを出ていく。
走り去る彼女を先刻まで、早くいなくなれ、と願っていた令嬢たちは実際に立ち去る彼女を見た時、その奇妙な行動にただ、口を開けて固まっていた。
王子は走り去るシンデレラの後ろ姿を追いかけようとしたが、護衛の兵士に腕を掴まれ、逃げていく思いびとから、自身の腕を掴んだ屈強な男の顔を睨みつける。
「他の令嬢とはご挨拶が済んでいるのか?」
低く周囲を凍り付かせるようなその一声に王子は、ハッとして、自身の置かれている立場が好ましくない、ということを悟り、場を取り繕った。
「まだパーティーは始まったばかり。これから、ご挨拶をします」
「始まったばかり……か」
王子はにこりと微笑んだ。
「はい。まだ1日目ですから」
その日、パーティーがお開きになっ後で、側近が王子の元に近寄るので、王子は自室へ続く廊下を歩きながら、従者に近寄るよう目配せをした。
「どうした?」
「先程退席されたご令嬢ですが、こちらを落とされました」
従者がうやうやしく王子に手渡した箱を受け取ると中にはガラスの靴が片方だけ、納められていた。
「これは?」
「かなりお急ぎだったようで、脱げたことも気にも留めず、去っていかれました」
「ありがとう」
王子はニヤリと笑うと自室の扉を閉めた。
ガラスの靴、紛れもなく彼女しか履くことができない。ガラスは革と異なり伸び縮みすることはない。足の幅、長さ、指の形まで一致しなければ、履くことはできない。
まして、あれだけダンスをしているのだ。寸分の狂いなく、作られなければ、履くことなど不可能だ。
幸い、1日目は貴族と王都に暮らす領民しか招待をしていない。
他国の賓客がいると捜索などできないから、そこはありがたい。
気になるのがあの豪華な服装だ。領民があれだけの服を纏えるのか?
いや、不可能だろう。貴族か、かなり裕福な豪商の娘か……。
礼節を重んじる高位貴族の令嬢の顔は見知っているから、それを除くと、裕福な領民か、歴史はあるが没落した貴族、他国の貴族と親類にある領民だろう。
ならば、彼女を探すことなど、さほど苦労しないだろう。
王子はガラスの靴が入った箱を自身の机の引き出しにそっとしまうと、満足気に浴室へと赴く。
やることは決まった。
あとは残りの2日を陛下と妃殿下が満足いくように振る舞えば、自由だ。
その言葉通り、王子は卒なく、残りの2日考えて、令嬢たちをエスコートし、談笑した。完璧なまでの所作、立ち居振る舞いで、その場にいた者全てを魅了した。
そして、パーティーが終了した翌日、彼は従者にガラスの靴がピタリと合致する女性を探すよう命じるのだった。
ダンスを踊り、会場から抜け出して、二人で語らい、そしてまた会場に戻ってダンスをした。
国民の大多数が平民なのだから、平民の心を掴むような政治をしなくてはならない。
穀物の値段が上がっているのに、税は変わらないから、税を収入に応じて変動してはどうか、そんなことを話したら、王子は興味深そうにシンデレラを見つめ、頷くので、シンデレラは気持ち良くなって、また熱弁してしまう。
二人がホールに戻ってダンスをしていると、ボーンと、鐘が鳴り、シンデレラは何かに怯えるように、肩をビクっと震わせた。
「あ」
小さな声が漏れ出て、重ねていた王子の手を祓うと、シンデレラはすぐに走ってホールを出ていく。
走り去る彼女を先刻まで、早くいなくなれ、と願っていた令嬢たちは実際に立ち去る彼女を見た時、その奇妙な行動にただ、口を開けて固まっていた。
王子は走り去るシンデレラの後ろ姿を追いかけようとしたが、護衛の兵士に腕を掴まれ、逃げていく思いびとから、自身の腕を掴んだ屈強な男の顔を睨みつける。
「他の令嬢とはご挨拶が済んでいるのか?」
低く周囲を凍り付かせるようなその一声に王子は、ハッとして、自身の置かれている立場が好ましくない、ということを悟り、場を取り繕った。
「まだパーティーは始まったばかり。これから、ご挨拶をします」
「始まったばかり……か」
王子はにこりと微笑んだ。
「はい。まだ1日目ですから」
その日、パーティーがお開きになっ後で、側近が王子の元に近寄るので、王子は自室へ続く廊下を歩きながら、従者に近寄るよう目配せをした。
「どうした?」
「先程退席されたご令嬢ですが、こちらを落とされました」
従者がうやうやしく王子に手渡した箱を受け取ると中にはガラスの靴が片方だけ、納められていた。
「これは?」
「かなりお急ぎだったようで、脱げたことも気にも留めず、去っていかれました」
「ありがとう」
王子はニヤリと笑うと自室の扉を閉めた。
ガラスの靴、紛れもなく彼女しか履くことができない。ガラスは革と異なり伸び縮みすることはない。足の幅、長さ、指の形まで一致しなければ、履くことはできない。
まして、あれだけダンスをしているのだ。寸分の狂いなく、作られなければ、履くことなど不可能だ。
幸い、1日目は貴族と王都に暮らす領民しか招待をしていない。
他国の賓客がいると捜索などできないから、そこはありがたい。
気になるのがあの豪華な服装だ。領民があれだけの服を纏えるのか?
いや、不可能だろう。貴族か、かなり裕福な豪商の娘か……。
礼節を重んじる高位貴族の令嬢の顔は見知っているから、それを除くと、裕福な領民か、歴史はあるが没落した貴族、他国の貴族と親類にある領民だろう。
ならば、彼女を探すことなど、さほど苦労しないだろう。
王子はガラスの靴が入った箱を自身の机の引き出しにそっとしまうと、満足気に浴室へと赴く。
やることは決まった。
あとは残りの2日を陛下と妃殿下が満足いくように振る舞えば、自由だ。
その言葉通り、王子は卒なく、残りの2日考えて、令嬢たちをエスコートし、談笑した。完璧なまでの所作、立ち居振る舞いで、その場にいた者全てを魅了した。
そして、パーティーが終了した翌日、彼は従者にガラスの靴がピタリと合致する女性を探すよう命じるのだった。
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