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8.朱色⑧
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王子の従者がシンデレラの家に来たのは、王子のパーティーから1年が過ぎようとした頃だった。
王子がすぐに見つかると思っていた目星は外れ、国全体におふれを出し、女性全員に靴を履かせるようになっていた。
シンデレラの家は王都の外れにあるさびれた男爵邸で、曲がりなりにも貴族ということで、10ヶ月前に従者は訪れていた。
だが、その時、シンデレラは令嬢ではなく、侍女として扱われたので靴を試すことはなかったのだ。
誰もが靴と合わず、報告を受けた王子が『国中の女性』に履かせるように従者に命じたのだ。
国王陛下夫妻は息子の暴挙に辟易したが、それも1年という期限を設け、息子が納得の上、諦めがつくのであればと許容していた。
そして、ついにシンデレラも従者の持つガラスの靴を履く機会が訪れた。
義理の母は正当な男爵の後継者であるシンデレラを冷遇している罪に問われることを恐れ、従者の訪問を拒否しようとしたが、従者に、王太子命令に背くとは反逆罪に問われる覚悟があるのか、と言われ、渋々許諾した。
従者がシンデレラの屋敷に訪れ、靴をシンデレラの前に差し出す。
「名を名乗れよ」
シンデレラは従者に礼をする。
「ヨハン・レッド・ボナパルスの娘エラ・レッド・ボナパルスです」
従者は目をぱちくりさせる。
「レッド男爵のお嬢様ですか?」
シンデレラは首を縦に振る。
「はい。5年前に急逝したレッド男爵の娘エラです。そこの二人からはシンデレラ(灰かぶり)と呼ばれていますが」
従者はシンデレラことエラの服装を見て、そして義母と義姉の姿を見た。
彼らがエラしてきたことを即座に悟り、この国の法律から随分と外れた行為であることが、従者にもわかり、呆れたため息を放った。
「なるほど……。なかなかお会いできなかった理由がわかりました。レディ・エラ、試していただけますか?」
エラは目の前に置かれたガラスの靴に目を落とした。
これを再び見るとは。なんとも懐かしい。
「畏まりました」
エラの足がピタリとガラスの靴に納まり、従者は息を呑んだ。
「貴方が、あの時のご令嬢なのですね」
「………」
「嘘よ! たまたまだわ。シンデレラはパーティーに行けるような服は持っていないもの!」
エラが答えるより先に下の義理の姉が従者に言い放ったので、従者が義理の姉を睨んだ。
「あなた方は正当な継承権のあるエラ様を迫害していた者たちだろう」
「そうだ。今の発言が真実とは限らない。現に一年近く、エラ様の面会を拒んでいた。その理由はなんだ?」
「それは……」
先程までの威勢は形をひそめ、義理の姉は口を閉ざした。
「弁明は認めない。この国の法に基づき、裁きを受けよ」
従者たちは手際よく義理の母、姉たちを縛り上げ、屋敷の外へ連れ出した。
鮮やかな手捌きで、エラを長年苦しめてきた存在はいとも簡単に、呆気なく消え失せた。
「貴方を王子陛下の元お連れしたいのですが、よろしいですか?」
エラは目を白黒させて首を縦に振った。
「はい。お願いします」
従者が馬車と服を用意するので、街の宿屋に移動すると言ったので、ひとまず、街まで従者の馬にエラも乗りながら、流れゆく景色をぼーと眺めていた。
そこに、いつか見た虹色に輝くステンドグラスを携えた一軒の古書店をエラは見つけた。
王子がすぐに見つかると思っていた目星は外れ、国全体におふれを出し、女性全員に靴を履かせるようになっていた。
シンデレラの家は王都の外れにあるさびれた男爵邸で、曲がりなりにも貴族ということで、10ヶ月前に従者は訪れていた。
だが、その時、シンデレラは令嬢ではなく、侍女として扱われたので靴を試すことはなかったのだ。
誰もが靴と合わず、報告を受けた王子が『国中の女性』に履かせるように従者に命じたのだ。
国王陛下夫妻は息子の暴挙に辟易したが、それも1年という期限を設け、息子が納得の上、諦めがつくのであればと許容していた。
そして、ついにシンデレラも従者の持つガラスの靴を履く機会が訪れた。
義理の母は正当な男爵の後継者であるシンデレラを冷遇している罪に問われることを恐れ、従者の訪問を拒否しようとしたが、従者に、王太子命令に背くとは反逆罪に問われる覚悟があるのか、と言われ、渋々許諾した。
従者がシンデレラの屋敷に訪れ、靴をシンデレラの前に差し出す。
「名を名乗れよ」
シンデレラは従者に礼をする。
「ヨハン・レッド・ボナパルスの娘エラ・レッド・ボナパルスです」
従者は目をぱちくりさせる。
「レッド男爵のお嬢様ですか?」
シンデレラは首を縦に振る。
「はい。5年前に急逝したレッド男爵の娘エラです。そこの二人からはシンデレラ(灰かぶり)と呼ばれていますが」
従者はシンデレラことエラの服装を見て、そして義母と義姉の姿を見た。
彼らがエラしてきたことを即座に悟り、この国の法律から随分と外れた行為であることが、従者にもわかり、呆れたため息を放った。
「なるほど……。なかなかお会いできなかった理由がわかりました。レディ・エラ、試していただけますか?」
エラは目の前に置かれたガラスの靴に目を落とした。
これを再び見るとは。なんとも懐かしい。
「畏まりました」
エラの足がピタリとガラスの靴に納まり、従者は息を呑んだ。
「貴方が、あの時のご令嬢なのですね」
「………」
「嘘よ! たまたまだわ。シンデレラはパーティーに行けるような服は持っていないもの!」
エラが答えるより先に下の義理の姉が従者に言い放ったので、従者が義理の姉を睨んだ。
「あなた方は正当な継承権のあるエラ様を迫害していた者たちだろう」
「そうだ。今の発言が真実とは限らない。現に一年近く、エラ様の面会を拒んでいた。その理由はなんだ?」
「それは……」
先程までの威勢は形をひそめ、義理の姉は口を閉ざした。
「弁明は認めない。この国の法に基づき、裁きを受けよ」
従者たちは手際よく義理の母、姉たちを縛り上げ、屋敷の外へ連れ出した。
鮮やかな手捌きで、エラを長年苦しめてきた存在はいとも簡単に、呆気なく消え失せた。
「貴方を王子陛下の元お連れしたいのですが、よろしいですか?」
エラは目を白黒させて首を縦に振った。
「はい。お願いします」
従者が馬車と服を用意するので、街の宿屋に移動すると言ったので、ひとまず、街まで従者の馬にエラも乗りながら、流れゆく景色をぼーと眺めていた。
そこに、いつか見た虹色に輝くステンドグラスを携えた一軒の古書店をエラは見つけた。
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