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ダルマータ国
47. 精霊国にて 7
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マルゲリータとカトリーヌ、クリスタは荒野を歩きながら、時折休憩をして次の扉を目指した。
「ぶっちゃけどこに扉があるか、なんてことは私は知らないのですよ」
「まあ……そうですよね」
クリスタがあっけらかんとそういうので、マルゲリータは、今歩いている道は果たして合っているのだろうか、と思っていた。
(その方がありがたかったりするけどね……)
ダルマータ国に戻ったら、否が応でも皇子と会って、話をしなくてはならない。
そもそも婚約している身で、失踪したのだから、断罪されても仕方がないのだ。
(せめて一目だけ、もう一度会いたい)
マルゲリータは胸元に隠した宝石をぎゅっと握りしめると、少しだけ気持ちが前向きになれるようなそんな気分になった。
「急がなくて良いですよ……」
マルゲリータはほんの少しの希望から、そう言った。
期待せずにはいられない。
カトリーヌが来たことは意外だった。けれど、カトリーヌが来たということは、ダルマータから精霊国にくる手筈をエドワードが探していたということを意味する。
それはかなり高い確率で、エドワードが精霊国に来るための一手を探していたという可能性だ。
だから、ダルマータに戻る前にあと一目だけでも会えたらと、願わずにはいられないのだ。
「あら、急いで欲しいわ。歳をとりたくないもの」
「………そうですか」
「……あなた、自分の立場がわかっているの?」
カトリーヌの言葉にマルゲリータは背筋がヒュッとなる。
「はい」
「それなら、叶わぬ恋に囚われるのではやめることよ」
「………」
そんなことわかっている。
わかっているけれど、区切りのためにも一目会いたいと願うことがそれほど罪深いものなのだろうか。
王太子妃という立場では、確かに罪深いのかもしれないが、心が期待をしてしまう。
罪悪感がないわけではない。ただ選択肢がなかった。この世界が滅びてしまったら、エドワードに二度と会えないから。
それが悪いことなのだろうか。
マルゲリータはカトリーヌの青色の瞳を見ていると、婚約前に交わしたアルフィアスの横顔を思い出した。
(不思議な方だわ。エドワードもアルフィアス様にも似ているなんて。責められている気分になる)
黄昏時だった。
ダルマータ国王都の外れにある古びた教会に正装したアルフィアスとマルゲリータがいた。
金で買った司祭がビクビクしながら、震えていたが、なんとか祭壇の前に立っている。早く終わってくれ、という心境だろう。
まさか依頼人が王子とは思わなかったのだろう。金に眩んだが、今更悔いても遅い。
祭壇には署名済みの婚約書が置き、これから二人で誓い合うのだ。
アルフィアス皇子がマルゲリータの手を取り、付け焼き刃の司祭の前で言った。
「この契約を交わせばあなたは最悪命を落とすかもしれない。それでも、契約しますか?」
「します」
「あなたにとって、利点はありますか?」
「愛する人の生を望むことはそれほどおかしなことですか?」
アルフィアスはマルゲリータの手を取ると、左手の薬指に大きなサファイアの指輪をはめた。
「いえ。私も同じ意見です」
そう言って微笑んだアルフィアスの顔は、切ない面持ちで、海のような青色に輝く至宝の瞳がマルゲリータをじっとみつめた。
「それでは誓いのキスを」
司祭は小声で言ったので、アルフィアスはマルゲリータの柔らかな頬に触れて口づけをした。
二人が口づけをすると婚約誓約書が七色に光り輝き、契約が成立したことを意味した。
マルゲリータはカトリーヌの青い瞳から目を逸らすと、道端に小さな魔法をかけた。
草花が芽吹いていく。
「カトリーヌ様の意思でこちらに来ましたか?」
「ええ。けれど、クリスタさんとバディを組むとなったのは、夫のヨシュアが決めましたけれどね」
「なるほど」
「納得したかしら?」
万が一にも間違いがおきないような人員配置、ということなのだろう。
一目見せることなどありえない、という意志を感じる。
「はい」
私はもう何にもない。家族も、リュカスも、エドワードも、財産も家もない。
荒れゆく土地の中で領民に苦労をかけさせたくない。だから、財産を全て領地のために使った。
元よりそれを望んだのだから。
「アルフィアス様の元に戻ります」
「それを聞けてよかったわ」
そのとき、クリスタは軽く咳払いをした。
マルゲリータとカトリーヌの言葉を聞かないように距離を置いて歩いていたが、話の区切りがついたと考えたからだろう。
「ついたよ。扉だ」
枯れた草にひっそりと小さな丸い輪が見えた。そこにクリスタは腕時計を近づける。すると、赤色の光がドラゴンの模様となって、浮かび上がった。
マルゲリータの胸はドクドクと激しく音を鳴らした。
「案外早かったね」
「ですね」
マルゲリータは深く息を吸った後、クリスタの両手をギュッと握りしめた。
「私のわがままを聞いてくれてありがとう。貴方がいなかったら、挫けていたわ」
クリスタがエドワードをパルクルトの街で見つけて、導いてくれた。
それがなければ、うまくいかなかっただろうから。
「私の方こそ救われました。あなたは救世主です」
「大げさ」
クリスタはマルゲリータを抱きしめて「きっと大丈夫だから」と小声でそう言った。
なんのことかはわからない。けれどマルゲリータは頷きクリスタに笑顔を向けた。
「それでは戻りましょう」
「はい」
マルゲリータとカトリーヌは赤色の龍の紋様に身体を投げ入れた。
この国を救える楔となれたのか、わからない。けれど、私がこの国で、できることは全てやったわ。
「ぶっちゃけどこに扉があるか、なんてことは私は知らないのですよ」
「まあ……そうですよね」
クリスタがあっけらかんとそういうので、マルゲリータは、今歩いている道は果たして合っているのだろうか、と思っていた。
(その方がありがたかったりするけどね……)
ダルマータ国に戻ったら、否が応でも皇子と会って、話をしなくてはならない。
そもそも婚約している身で、失踪したのだから、断罪されても仕方がないのだ。
(せめて一目だけ、もう一度会いたい)
マルゲリータは胸元に隠した宝石をぎゅっと握りしめると、少しだけ気持ちが前向きになれるようなそんな気分になった。
「急がなくて良いですよ……」
マルゲリータはほんの少しの希望から、そう言った。
期待せずにはいられない。
カトリーヌが来たことは意外だった。けれど、カトリーヌが来たということは、ダルマータから精霊国にくる手筈をエドワードが探していたということを意味する。
それはかなり高い確率で、エドワードが精霊国に来るための一手を探していたという可能性だ。
だから、ダルマータに戻る前にあと一目だけでも会えたらと、願わずにはいられないのだ。
「あら、急いで欲しいわ。歳をとりたくないもの」
「………そうですか」
「……あなた、自分の立場がわかっているの?」
カトリーヌの言葉にマルゲリータは背筋がヒュッとなる。
「はい」
「それなら、叶わぬ恋に囚われるのではやめることよ」
「………」
そんなことわかっている。
わかっているけれど、区切りのためにも一目会いたいと願うことがそれほど罪深いものなのだろうか。
王太子妃という立場では、確かに罪深いのかもしれないが、心が期待をしてしまう。
罪悪感がないわけではない。ただ選択肢がなかった。この世界が滅びてしまったら、エドワードに二度と会えないから。
それが悪いことなのだろうか。
マルゲリータはカトリーヌの青色の瞳を見ていると、婚約前に交わしたアルフィアスの横顔を思い出した。
(不思議な方だわ。エドワードもアルフィアス様にも似ているなんて。責められている気分になる)
黄昏時だった。
ダルマータ国王都の外れにある古びた教会に正装したアルフィアスとマルゲリータがいた。
金で買った司祭がビクビクしながら、震えていたが、なんとか祭壇の前に立っている。早く終わってくれ、という心境だろう。
まさか依頼人が王子とは思わなかったのだろう。金に眩んだが、今更悔いても遅い。
祭壇には署名済みの婚約書が置き、これから二人で誓い合うのだ。
アルフィアス皇子がマルゲリータの手を取り、付け焼き刃の司祭の前で言った。
「この契約を交わせばあなたは最悪命を落とすかもしれない。それでも、契約しますか?」
「します」
「あなたにとって、利点はありますか?」
「愛する人の生を望むことはそれほどおかしなことですか?」
アルフィアスはマルゲリータの手を取ると、左手の薬指に大きなサファイアの指輪をはめた。
「いえ。私も同じ意見です」
そう言って微笑んだアルフィアスの顔は、切ない面持ちで、海のような青色に輝く至宝の瞳がマルゲリータをじっとみつめた。
「それでは誓いのキスを」
司祭は小声で言ったので、アルフィアスはマルゲリータの柔らかな頬に触れて口づけをした。
二人が口づけをすると婚約誓約書が七色に光り輝き、契約が成立したことを意味した。
マルゲリータはカトリーヌの青い瞳から目を逸らすと、道端に小さな魔法をかけた。
草花が芽吹いていく。
「カトリーヌ様の意思でこちらに来ましたか?」
「ええ。けれど、クリスタさんとバディを組むとなったのは、夫のヨシュアが決めましたけれどね」
「なるほど」
「納得したかしら?」
万が一にも間違いがおきないような人員配置、ということなのだろう。
一目見せることなどありえない、という意志を感じる。
「はい」
私はもう何にもない。家族も、リュカスも、エドワードも、財産も家もない。
荒れゆく土地の中で領民に苦労をかけさせたくない。だから、財産を全て領地のために使った。
元よりそれを望んだのだから。
「アルフィアス様の元に戻ります」
「それを聞けてよかったわ」
そのとき、クリスタは軽く咳払いをした。
マルゲリータとカトリーヌの言葉を聞かないように距離を置いて歩いていたが、話の区切りがついたと考えたからだろう。
「ついたよ。扉だ」
枯れた草にひっそりと小さな丸い輪が見えた。そこにクリスタは腕時計を近づける。すると、赤色の光がドラゴンの模様となって、浮かび上がった。
マルゲリータの胸はドクドクと激しく音を鳴らした。
「案外早かったね」
「ですね」
マルゲリータは深く息を吸った後、クリスタの両手をギュッと握りしめた。
「私のわがままを聞いてくれてありがとう。貴方がいなかったら、挫けていたわ」
クリスタがエドワードをパルクルトの街で見つけて、導いてくれた。
それがなければ、うまくいかなかっただろうから。
「私の方こそ救われました。あなたは救世主です」
「大げさ」
クリスタはマルゲリータを抱きしめて「きっと大丈夫だから」と小声でそう言った。
なんのことかはわからない。けれどマルゲリータは頷きクリスタに笑顔を向けた。
「それでは戻りましょう」
「はい」
マルゲリータとカトリーヌは赤色の龍の紋様に身体を投げ入れた。
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