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第1章:Eランク
18.聞き込み2
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大聖堂の奥へ進むと、背の高いステンドグラスから差し込む光の中、背を向けて床を磨いている修道女がいた。法衣の裾をたくし上げ、丁寧に雑巾を動かすその姿は、作業というよりも祈りに近い静けさをまとっていた。
彼女が振り返ると、淡い光を受けた頬にほんのり汗が浮かんでいる。年の頃は二十代後半。きりっとした目元が印象的で、清潔感と理知的な雰囲気をあわせ持った女性だった。
ミーナ「こんにちは! 今、お話だいじょうぶですか?」
修道女B「ええ、少しだけなら。掃除を続けながらで失礼しますね」
にこやかに応じながらも、手の動きは止めない。まるで掃除そのものが祈りの一部であるかのような所作だ。
ミーナ「えっと……その、サラさんについて聞きたくて。今度お誕生日で、プレゼントを用意したいなって」
修道女B「あら、それは素敵なことですね。……でも、ふふ、あの方については少し難しいかもしれませんよ」
一郎(お約束の“難しい”いただきました)
ミーナ「サラさんって、修道院に来て、もうどれくらい経つんですか?」
修道女B「ええ、もう五年ほどになるでしょうか。とはいえ、サラ様はまだ二十三歳ですから、修道女の中ではかなりの若手です。入られた当初から、礼儀作法や言葉遣いが抜きん出ていて、目立っていましたよ」
ミーナ「最初からそんなにすごかったんですか?」
修道女B「ええ。祈りの姿勢も、箒の使い方も、声の出し方も、ひとつひとつが端正で……年上の私から見ても、最初は少し圧倒されるくらいでした」
ミーナ「でも、怖そうには見えないですけど……」
修道女B「もちろん。すぐに分かりました。あの方は、ただ上品なだけでなく、誰にでも平等で優しくて。おそらく、ご出身は名のある家柄ではないかと思いますが……それを誇るでもなく、隠すでもなく、自然体のままでこの場にいてくださるのです」
ミーナ「えっ、そうなんですか?」
修道女B「はい。あの所作や雰囲気は、訓練だけで身につくものではありません。けれど、気取ったところはまるでなくて……誰に対しても丁寧で優しい。ほんの少しでも困っていそうな人がいれば、自然とその隣に立っているような方です」
一郎(そりゃ確かに、立ってるだけで“慈愛”オーラ出てるわな……)
修道女B「今では、若手の中でも完全に一目置かれる存在です。私よりも若いですが、あの方が班の指揮を取る日も、そう遠くはないでしょう」
修道女B「ただ……プレゼント選びは、本当に難しいと思います。どんなものをお渡ししても、同じように微笑んで“ありがとうございます”とおっしゃいます。でも、あの方が“欲しい”と何かを求めたところは、私は見たことがありません」
ミーナ「うーん……やっぱりサラさんって、ちょっと不思議な人だよね。あたしだったら、つい“これ欲しいな”って言っちゃうのに」
修道女B「ふふ、確かに。けれどサラ様は、人から何かをもらうよりも“助ける側”にいるのが好きな方ですから」
ミーナ「助ける側……」
修道女B「特に、炊き出しの場では本当に楽しそうですよ。困っている方々に声をかけながら料理を配るときの笑顔は、修道女同士で話しているときよりも、ずっと明るい。あの方自身、“人と直接ふれあえる時間”が好きなのかもしれませんね」
ミーナ「そっかぁ……うん、なんかそれ、ちょっと分かる気がします」
一瞬だけ黙り込んだミーナが、きゅっと拳を握った。
ミーナ「よしっ、じゃあ、あたし、手作りでなにか用意する! あたしの“ありがとう”がちゃんと伝わるように!」
修道女B「それは、きっと素敵な贈り物になりますね。……ああ、もしよければ、サラ様と同期の修道女にもお話を聞いてみてはいかがですか?」
ミーナ「えっ、サラさんと同期の方って、まだいらっしゃるんですか?」
修道女B「ええ。ちょうど今、庭のほうで清掃をしているはずです。よろしければ、案内しましょうか?」
そういって、修道女Bはほうきを壁に立てかけると、手を拭きながら立ち上がった。広い袖を揺らしながら静かに歩き出す背中を、ミーナと俺はそっと追いかけた。
彼女が振り返ると、淡い光を受けた頬にほんのり汗が浮かんでいる。年の頃は二十代後半。きりっとした目元が印象的で、清潔感と理知的な雰囲気をあわせ持った女性だった。
ミーナ「こんにちは! 今、お話だいじょうぶですか?」
修道女B「ええ、少しだけなら。掃除を続けながらで失礼しますね」
にこやかに応じながらも、手の動きは止めない。まるで掃除そのものが祈りの一部であるかのような所作だ。
ミーナ「えっと……その、サラさんについて聞きたくて。今度お誕生日で、プレゼントを用意したいなって」
修道女B「あら、それは素敵なことですね。……でも、ふふ、あの方については少し難しいかもしれませんよ」
一郎(お約束の“難しい”いただきました)
ミーナ「サラさんって、修道院に来て、もうどれくらい経つんですか?」
修道女B「ええ、もう五年ほどになるでしょうか。とはいえ、サラ様はまだ二十三歳ですから、修道女の中ではかなりの若手です。入られた当初から、礼儀作法や言葉遣いが抜きん出ていて、目立っていましたよ」
ミーナ「最初からそんなにすごかったんですか?」
修道女B「ええ。祈りの姿勢も、箒の使い方も、声の出し方も、ひとつひとつが端正で……年上の私から見ても、最初は少し圧倒されるくらいでした」
ミーナ「でも、怖そうには見えないですけど……」
修道女B「もちろん。すぐに分かりました。あの方は、ただ上品なだけでなく、誰にでも平等で優しくて。おそらく、ご出身は名のある家柄ではないかと思いますが……それを誇るでもなく、隠すでもなく、自然体のままでこの場にいてくださるのです」
ミーナ「えっ、そうなんですか?」
修道女B「はい。あの所作や雰囲気は、訓練だけで身につくものではありません。けれど、気取ったところはまるでなくて……誰に対しても丁寧で優しい。ほんの少しでも困っていそうな人がいれば、自然とその隣に立っているような方です」
一郎(そりゃ確かに、立ってるだけで“慈愛”オーラ出てるわな……)
修道女B「今では、若手の中でも完全に一目置かれる存在です。私よりも若いですが、あの方が班の指揮を取る日も、そう遠くはないでしょう」
修道女B「ただ……プレゼント選びは、本当に難しいと思います。どんなものをお渡ししても、同じように微笑んで“ありがとうございます”とおっしゃいます。でも、あの方が“欲しい”と何かを求めたところは、私は見たことがありません」
ミーナ「うーん……やっぱりサラさんって、ちょっと不思議な人だよね。あたしだったら、つい“これ欲しいな”って言っちゃうのに」
修道女B「ふふ、確かに。けれどサラ様は、人から何かをもらうよりも“助ける側”にいるのが好きな方ですから」
ミーナ「助ける側……」
修道女B「特に、炊き出しの場では本当に楽しそうですよ。困っている方々に声をかけながら料理を配るときの笑顔は、修道女同士で話しているときよりも、ずっと明るい。あの方自身、“人と直接ふれあえる時間”が好きなのかもしれませんね」
ミーナ「そっかぁ……うん、なんかそれ、ちょっと分かる気がします」
一瞬だけ黙り込んだミーナが、きゅっと拳を握った。
ミーナ「よしっ、じゃあ、あたし、手作りでなにか用意する! あたしの“ありがとう”がちゃんと伝わるように!」
修道女B「それは、きっと素敵な贈り物になりますね。……ああ、もしよければ、サラ様と同期の修道女にもお話を聞いてみてはいかがですか?」
ミーナ「えっ、サラさんと同期の方って、まだいらっしゃるんですか?」
修道女B「ええ。ちょうど今、庭のほうで清掃をしているはずです。よろしければ、案内しましょうか?」
そういって、修道女Bはほうきを壁に立てかけると、手を拭きながら立ち上がった。広い袖を揺らしながら静かに歩き出す背中を、ミーナと俺はそっと追いかけた。
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